原型となるサービスを含めれば、フラーは 10年にわたり App Ape によるデータ分析をおこなっている。同社がクライアントワークを開始したのは 2017年のこと。これまでの自社プロダクト開発で培った技術力、そして App Ape によるアプリ利用動向データの知見やデータ分析のノウハウが揃う同社にスマホアプリ開発のニーズが寄せられたのは、自然な流れといえるだろう。
AI が生成した文章やイラストが一般化し、映像や音楽などマルチモーダルへの応用も実用段階になってきました。一方、拡大する AI創作物に対する不信や不安から規制を求める声もあり、国内外で議論が広がっています。クリエイターは今後どのように AI と歩むべきなのでしょうか。さくらインターネットは北海道のクリエイティブコンベンション「NoMaps2023」において、「AI が拡張するクリエイティビティ」と題し、生成AI がもたらす新たなクリエイティビティのあり方を議論するセッションを 2023年9月14日に開催しました。本レポートではその一部をお届けします。
クリエイターの生成AI活用シーン
田中 邦裕(以下、田中):モデレーターを務めるさくらインターネットの田中です。日本が AI を牽引しているのをご存知でしょうか。先日開催された「G7広島サミット2023」のなかで、「広島AIプロセス」というものが議論されました。これは生成AI を巡る国際的なルール形成に向けた議論で、その成果文書として「G7広島AIプロセスG7デジタル・技術閣僚声明」が採択されました。AI の利活用に関して国際的な枠組みをつくるため、各国の共通理解やリスク対応などさまざまな議論がなされたのです。
続いて AI分野における当社の取り組みを少し紹介させてください。当社は、経済安全保障推進法に基づく特定重要物資である「クラウドプログラム」の供給確保計画に関する経済産業省の認定を受けました。そして AI時代を支える GPUクラウドサービスの提供に向けて、130億円規模の投資をおこない、大規模クラウドインフラを整備することを 2023年6月に発表しました。日本のデジタル社会を発展させるために必要不可欠な、AI に関わるコンピューティングリソースの安定供給を確保し、日本の AI 発展に寄与すべく、サービス提供に向けて準備しています。
田中:そうですね。あとは私もよく原稿執筆する際に、生成AI のお世話になっていますね。ChatGPT って、プロンプトで AI と会話した履歴が残りますよね。そしてこのプロンプトの履歴を追うことで、その原稿がどういう AI との対話プロセスで書かれたのかがわかりますから、いい資料になりますよね。たとえば本を購入してくれた方に、その本のもととなったプロンプトをプレゼントするのもいいかもと思います。
たとえばロボット掃除機に生成AI が組み込まれて会話ができるようになったとしましょう。ロボット掃除機のうえにスマートフォンなどをのせて、「きみは掃除機だけどいまから映画の撮影手伝ってよ。カメラ動かして」とお願いしたら、ロボット掃除機が「私は本来掃除機ですが、安全が担保できる範囲でお手伝いさせていただきますね」って、スマートフォンを抱えて走ってくれるかもしれない。そうなってくると、脚本・撮影・主演・演出が「全部俺 with ChatGPT」という映画撮影ができる。もちろん、みなさんが想定してないような家電の使い方がされて、事故も起きる可能性もありますが……。
田中:『ドラえもん』の世界の始まりのようですね。そしていま深津さんがおっしゃってた事故の可能性はもちろんあって、大事なのは生成AI の学習がどのようにされたかという追跡可能性(トレーサビリティ)です。いまはグローバルで ChatGPT をみんなでチューニングしてるわけですが、個別化がだんだん必要になってきます。製品に組み込まれた AI の場合はなおさらです。事故が起きたときに、当然警察はその機械が悪いということで調べるわけですが、これから AI を追跡しないといけなくなりますよね。
深津:そうなんです。いろいろな偶然と奇跡と利害の調整が重なって AI に関しての規制が比較的ゆるくなっているのは日本の特徴ですね。世界でもめずらしいことです。ただ、いまになって、「自分の漫画を勝手に学習に使われた」と揉めたりしています。なかなか難しいですが、数年かけて利害を調整していくことになりそうです。
田中:じつは海外の AI研究者や企業家の間で「日本で研究開発や起業したほうがいいのでは」というまさかの動きが出ています。世界的に有名な AI の有識者たちが日本で会社をつくったり、引っ越してきています。日本ってなにせ人件費が安いし、住むコストも安いし、治安もいい。ビジネスでいきなり何かを禁止されたりすることもない。日本は、英語があまり通じないこと以外のビジネスの障壁があまりないんですよね。
深津:生成AI のおかげでリアルタイム翻訳ももうすぐできそうですしね。いままで日本人が世界で苦戦する最大の理由は言語だったと思うんですけど、これから AI が英語でのビジネスメールなどを対応してくれるようになると、日本にいながら海外の仕事をして、海外のお金が日本に落ちるようになる。そうすると少子高齢化や円安という時代のなかで、日本のチャンスがたくさん出てきそうですね。
田中:AI がいろいろなものをボーダーレスにしていくということと、そして AI の研究や開発、ビジネスの拠点として日本が非常に都合がいいという 2点ですね。
深津:そうです。また、いろんなものがいま AI に置き換えられていっていますが、ご飯がおいしいというのはなかなか置き換えられない要素なので、生活環境が充実している日本はいいポジションになってくるでしょうね(笑)。
田中:衣食住の環境が非常にいいんですよね。そこへさらに AI がやってきた。グローバル化が最近終焉を迎えたなかで日本のポジションが上がって、おもしろいことになっていくと思います。
深津:いままでお金持ちや超人、特別な人にしかできなかったなにかが、みんなができるようなものになる。それがテクノロジーだと僕は思っています。すごい精度で細工をしたり、モノをつくり出したり、何年もかけて練習しないとできない演奏をしたり……そういう超人的だった技術が生成AI によってみんなに解放されました。AI がますますクリエイティビティを拡張していくだろうと思いますし、みなさんもそれをポジティブに受け入れていただけるとうれしいです。漫画を描いたり小説をつくってみたり、ぜひ AI と一緒に何かへチャレンジしてみてください!
【取り組み例】 結婚祝金などを同性婚や事実婚の場合にも支給するほか、女性活躍推進にも取り組み、2023年10月には新たに 4名が執行役員に就任しました。現在、社外取締役の約4割、執行役員の約3割が女性となっています。そのほか、属性(年齢)の多様性確保として、新卒採用数を拡大し、2024年度は前年度の約2倍の採用人数となっています。これは先輩社員が新入社員に教えることでの学び合う文化づくりにもつながっています。また個性の多様性としては、希望者に「FFS(Five Factors and Stress)」や「MBTI(Myers-Briggs Type Indicator)」を受講してもらい、自己理解を深めるきっかけづくりをしています。
【取り組み例】 「さぶりこ」(Sakura Business and Life Co-Creation)と総称したさまざまな制度を用意しています。各制度は併用も可能です。たとえば、業務を早く片付けたら定時30分前に退社OK な「ショート30」と、その日の勤務時間を 10分単位でスライド調整できる「フレックス」を合わせれば、7:00~15:30(早い時間)や 12:00~20:30(遅い時間)とすることができ、業務前後の私用や保育園の送り迎えなどの都合に合わせた勤務時間の調整が可能です。社員の活用頻度を見ながら内容を見直し、更新することでより使いやすい制度にしています。
データセンターを自社運営してビジネスをしている会社は IT業界内でも多くないと思います。さくらインターネットの事業・商材は特殊なので、営業経験者や IT業界経験者でも最初は戸惑うんですよ。だから、最初にしっかり育てて戦力にしていくということをしていかないと、人が定着しないんですよね。私が入社した当初とちがい、セールスエンジニアに技術面はカバーしてもらえますし、まったく IT の知識がない方でも研修である程度の知識が蓄えられ、半年~1年後には結果が出せるようになってきました。数年前からそういった組織づくりに力を入れてきたのが、実を結びつつあります。