2022年1月、さくらインターネットの新規事業創出プロジェクト「さくら満開プロジェクト」の一環として、初開催となる「第1回さくらビジネスプランコンテスト」の最終審査会が、Fukuoka Growth Next(FGN)※のイベントスペースで開催されました。本記事では、その様子をレポートします。
このイベントは、換気やソーシャルディスタンスなど、感染症対策をおこない開催しました。
※FGN・・・福岡市の官民協働型スタートアップ支援施設。さくらインターネットも運営事業者として関わっています。
さくらインターネットは、会社に出勤するスタイルから「リモートワーク前提」の働き方へ移り、「変化」に対応することを身をもって体験してきました。
さくら満開プロジェクトは、そんな世の中において、新たなアイデアを形にするプロセスを通じ、新しいフィールドで活躍できる人材・サービスを増やしていくことを目的としています。
初開催となる今回のコンセプトは、「はじめの一歩を踏み出そう」。多数の応募があったなか、一次審査を経て5名のファイナリストが選出。それぞれにさくらインターネットグループの役員が2名ずつメンターとして付き、ビジネスプランを練ってきました。
そんな5名が、最終審査会でプレゼンテーションをおこないました。
ファイナリスト(登壇順)
- 鎌田 達也(事業開発本部 インキュベーション推進部)
- 竹井 清恭(事業開発本部 IoTプラットフォーム事業部)
- 熊谷 将也(さくらインターネット研究所)
- 山田 修司(事業開発本部 インキュベーション推進部)
- 小田島 太郎(事業開発本部 IoTプラットフォーム事業部)
1名あたりのプレゼンテーションは10分、審査員からの質疑応答10分、合計20分程度で、自身のビジネスプランをアピールします。
また、審査員として、社内外より以下の5名の方にお引き受けいただき、大変豪華な審査員陣となりました(五十音順、敬称略)。
- 榎本 一郎 (福岡地所株式会社 代表取締役社長)
- 大柴 貴紀(East Ventures フェロー)
- 小笠原 治(株式会社ABBALab 代表取締役、さくらインターネット フェロー)
- 田中 邦裕 (さくらインターネット 代表取締役社長)
- 安永 謙 (株式会社フローディア CFO、日本ベンチャーキャピタル協会 フェロー)
5名のファイナリストが登壇
まず最初の登壇者は、鎌田達也。
「みんなの本棚 & わたしの本棚」と題して、社員のオススメ書籍共有プラットフォームについて発表しました。
「さくらインターネットに転職した際、未経験の業務を学ぶために本で勉強しようと思いました。でも、どういった本が自分の業務に適しているのかを見つけるのがとても難しかったんです。”みんなの情報がまとまっていればいいのに”と思いました」と言う鎌田。さくらインターネットは長い間さまざまなサービスを提供し続け、多くの人が働いているので、知見はたくさんあるはずだと話します。
1人ひとりの社員が自分のオススメ書籍を入力し、組織で共有できるようになれば、社員のエンゲージメントが向上できるとアピールしました。
2人目の登壇者
2人目の登壇者は、竹井清恭。「私、運動音痴なんですよね」という印象的な導入から話をはじめました。
「多くの人が、”自分は運動ができない”と感じることでいろいろなチャレンジを阻害されているのではないでしょうか。学生時代から、私自身ずっと”越えられない壁”を感じていました。そういった若いころに刷り込まれた感覚が、いろいろなところで自信のなさにつながって、仕事でもプライベートでもいろんな機会を逃している人が多いと思います」。
そこで、運動に対してネガティブな感情を抱き続けていて、運動をはじめても継続できない方に向けたソリューションを考案。それがVRヘッドセットを装着してゲーム感覚で運動ができるアプリ「ねこパンチVR」です。すでにプロトタイプを作成しており、プレイ中のユーザーの映像を使ったPR動画も紹介しました。
3人目の登壇者
3人目の登壇者は、熊谷将也。電子実験ノートSaaS 「Personal Experiment Notebook(以下、Pen)」について発表しました。
材料工学と情報工学を組み合わせたマテリアルズインフォマティクスの研究に取り組む熊谷。そんな熊谷だからこそ実現できるビジネスプランを発表しました。
Penのおもなターゲットとなる研究領域では、多くの課題を抱えていると言います。
「世界的にデータ科学の発展や研究不正防止などを目的としたオープンデータ化の流れになってきています。ただ、現状では様々なフォーマットのデータが不揃いにオープン化されています。この状況は、私が思う理想的なオープンデータの世界ではない気がしていました。そういう思いから、Penが生まれました」。
プロトタイプはすでに完成しており、いくつかの研究機関において実証実験やユーザーフィードバックを得ているとのこと。
4人目の登壇者
4人目は、山田修司。「Fusion」と題してM&A仲介プラットフォームのアイディアを発表しました。
M&Aは社外の人や企業に事業の経営権を譲り渡すことで、事業を存続させていくための仕組みとして、広く世の中で利用されている方法です。
「日本には60歳以上が経営する会社が約127万社、そのうち半数は黒字経営であるにも関わらず、後継者不在のために廃業予定と言われています。今後、その経営者たちが事業を廃業するか、誰かに引き継ぐかという問題に直面しています。M&Aがこの先、10年、20年と大きなマーケットとして成長していくことは確実です」。
「Fusion」の事業内容は、売り手と買い手のマッチング支援、M&A実行支援、M&Aの保険。
「後継者不足やリソース不足といった課題を抱えていたり、成長機会をつかみ取ろうとしている企業に対して、新たな活躍をすることを応援する事業です」。
5人目の登壇者
最後の登壇者は、小田島太郎。「課題管理システム連携サービス」について発表しました。
多くの企業で利用されている課題管理システム(Issue Tracking System、以下ITS)。とくに Redmineや GitHub といったものが有名です。日々の業務において、製品に不具合が発生した、あるいはお客さまから問い合わせがあったなどといった課題を管理するために利用されています。
このITS、ひとつに統一されていれば理想的ですが、さまざまな事情でチームごとに複数利用されていることも多いそうです。
「ITSが分断されると、複数のITSを行ったり来たりして確認、更新などの作業をするのがとても煩雑になります。そこで、課題管理システムの行き来や連絡忘れを防ぐため、裏で自動的に連携してくれるシステムがあれば便利だなと考えました」。
審査基準
審査は以下5つの項目で加点をおこないました(各8点)。
- 解決する課題とその顧客
- 解決しようとしている課題や対象を明確に設定できているか
- 課題を詳細に見つめられているか
- ソリューション
- 課題解決のためのソリューションを適切で、魅力あるものか
- 独自の価値提案(Unique Value Proposition)
- そのソリューションは顧客目線で価値を提供できているか
- すでに市場にある競合ソリューションを把握できているか
- 競合ソリューションがある場合、自身のアイデアの優位性を把握できているか
- 指標・収益
- ビジネスとして持続性のある収益を得る方法はあるか
- 将来的に成長を見込む市場を狙えるか
- 収益以外の成功を測る指標は示されているか
- アントレプレナーシップ
- 事業に対する想いは人を惹きつけるものであるか
- ロジカルに伝えることができたか
さらに、この5つの視点以外で、各審査員独自の視点で10点まで裁量点を加点できます。
最優秀賞は「Pen」
審査員より「5名とも、とても良い内容」「素晴らしいプレゼンテーションだった」などのコメントもいただき、第1回目からとてもレベルの高いビジネスプランコンテストとなりました。審査の結果、最優秀賞は熊谷将也の「Pen」が受賞。
最優秀賞を受けて、熊谷は「大変光栄に思います。本日ご紹介したPenは、ライフワークにもしていきたいと思っているものです。これからもお力添えをお願いできればと思っております。本日はありがとうございました」とコメントしました。
優勝者の熊谷にくわしく話を聞きました。下記記事をご覧ください。
目的は「世界を変えること」。社内ビジコンで優勝した「Pen」とは?
審査員からのコメント
審査員を務めた田中は、「みなさんプレゼンテーションがすごく上手でしたね。数をこなせば、さらにうまくなっていくと思います。第1回目のビジネスコンテストに参加してくださったみなさんに敬意を表したいです」と登壇者を労いました。
さくらインターネットのフェローを務める小笠原も「みなさんすごく良い内容でした。役員からも事業化についてのメッセージは出ているかと思います。それを信じて、将来のさくらインターネットが、いまのクラウド事業ではないもので有名になるという、それぐらいの意気込みでやってもらっていいと思います」と今後に期待を寄せました。
審査員を務めた福岡地所の榎本さんは、「FGNは、さくらインターネットさんと一緒に立ち上げた施設。さくらインターネットのみなさんも、福岡はホームタウンだと思って、ここでいろんな事業を実験して生み出してほしいです」と言います。
安永さんは、クオリティの高さに驚いたとしつつ「NABCという考え方があります。Needs、Approach、Benefit、Competitionです。どんなニーズにどんなアプローチをしているのか、それによってお客さまのベネフィット(利益)はどれくらいあるのか。あとは競合ですね。それを考えて、もう少しブラッシュアップするといいと思います」とコメント。
また、大柴さんはメンターについて「今回、登壇者のメンターをされた方々も、自身の成長に繋がったのではないでしょうか。ビジネスプランを提案した方々と、メンターの方々、相乗効果となって良い感じになっていると思います」と語りました。
今回、さくらのビジネスコンテストに応募した社員やメンターはもちろん、ライブ配信で発表を聞いたほかの社員についても大いに刺激を受けたイベントとなったのではないでしょうか。今後も第2回、第3回と続くことを期待したいと思います。