ふるさと納税は簡単に説明すると「好きな自治体に寄付すると、返礼品をもらえて節税できる制度」を指しますが、いくつかバリエーションがあります。
それぞれのふるさと納税の「仕組み」にフォーカスして、官公庁の公式サイトから出典の図解とともに、流れについて、初心者の方にわかりやすいよう簡単に解説します。
本記事では、株式会社SoLabo 代表取締役 田原 広一が税理士有資格者の立場から、節税対策になる「ふるさと納税」で個人や企業法人がおこなうべきことについて助言も添えます。
田原広一(たはら こういち)プロフィール
株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者。お客さまの融資支援実績は、累計4,500件以上(2021年7月末現在)。自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。問い合わせゼロのオウンドメディアをWEBマーケティングを駆使し、毎月1,000件以上の問い合わせが取れるまで成長させる。
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ふるさと納税にはバリエーションがある
ふるさと納税にはいくつかバリエーションがあります。
寄付をする者が個人か企業か、そして個人のケースは確定申告の有無によっても、適用される仕組みや名称が少し変わります。
また、そのバリエーションがあることを踏まえて定義すると「ふるさと納税は個人または法人が好きな自治体・使用目的で寄付をするとリターンがあり、節税ができる制度」と言えます。
そもそも、ふるさと納税とは?
個人が寄付する「ふるさと納税」は、個人が好きな自治体を選んで寄付すると、返礼品を受け取れて、所得税や住民税の控除が受けられる制度を指します。
寄付した自己負担額から2,000円を差し引いた全額が、翌年の所得税(復興特別所得税を含む)および個人住民税から控除されます。
参照:No.1155 ふるさと納税(寄附金控除)|国税庁
通常、ふるさと納税は寄付のお礼に送付される「返礼品」と「税金の控除」がお得であるとされます。
ほかにも、クレジットカード支払やネット通販サービスの利用などによるポイント付与対象となるため、いわゆる「ポイ活」ができるのもメリットです。
一方、手続きが複雑で難しく見えるデメリットがあります。
実際、偽サイトで寄付金を騙し取られる被害が出ており、ふるさと納税の仕組みを理解したうえで、詐欺にあわないよう注意する必要があります。
会社員が簡単にできる「ワンストップふるさと納税」の仕組み
お勤めの会社員の場合、ふるさと納税の「ワンストップ特例制度」が適用され、確定申告をせずに簡単にふるさと納税ができます。
寄付後に自治体から送付される「ワンストップ特例申請書(寄附金税額控除に係る申告特例申請書)」という書類を1つ書いて、返送するだけで完了です。
ふるさと納税をおこなった翌年度の住民税が減額されます。
図解:ワンストップふるさと納税の仕組み
ワンストップふるさと納税の流れ
- 自身の給与額から控除対象になる「寄付できる上限金額」を確認する
- 寄付先の自治体を選び、返礼品を選ぶ
- 寄付手続きをおこなう
- 返礼品を受け取る
- 寄付先にワンストップ特例申請書を返送する
なお、ふるさと納税で「寄付できる上限金額」は、家族構成や自身の給与収入の金額などで算出できます。
概算目安であれば、次の総務省の対照表が参考になります。
参照:ふるさと納税のしくみ 「全額控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安」:ふるさと納税ポータルサイト|総務省
EXCEL形式のファイルを開ける端末であれば、総務省の表の下にある「寄附金控除額の計算シミュレーション」をダウンロードし、活用するのも有効です。
ほかにも、返礼品や寄付手続きができるオンラインサービスなどで、サイト上で項目を入力すれば寄付額を算出できるシミュレーターを用意しているところもあります。
なお、「ワンストップふるさと納税」で注意したいのは、確定申告をする場合「ワンストップ特例制度」が適用できない点です。
まず、ふるさと納税をする先の自治体の数が6団体以上となる場合、ワンストップふるさと納税の特例の適用外となり、確定申告が必要です。
また、ふるさと納税による寄付金控除と、別の控除(例えば医療費控除など)と併用するケースでも「ワンストップ特例制度」が適用できません。
確定申告をすれば寄附金控除と医療費控除などの別の控除の併用はできますが、控除をあわせると、ふるさと納税の控除対象になる「寄付できる上限金額」が下がるため、寄付手続きをする前に確認が必要です。
自身がふるさと納税でワンストップ特例が適用されるかどうか、参照先で確認してください。
参照:寄附金控除(ふるさと納税など)を受けられる方へ(PDF)- I ふるさと納税ワンストップ特例について|国税庁
ネット通販のように使える「楽天ふるさと納税」もある
ネット通販大手「楽天」が、返礼品選びと寄付手続きを担う「楽天ふるさと納税」というサービスを提供していますが、これも「ワンストップふるさと納税」を前提にしたサービスです。
参照:楽天ふるさと納税|Rakuten
楽天アカウントがあれば、返礼品を選んで寄付金を決済し、配送されてくるところまで、楽天のネット通販サイトと似たシステムでおこなえます。
ただし、自治体から送られてくる「ワンストップ特例申請書」を書いて送り返すのはサービスの範囲外なので、忘れずに自身で書類を書いて送る必要があります。
なお、確定申告が必要な方でも、寄付先の団体が発行する「寄付受領証明書」やその他必要な添付書類を集められるのであれば、「楽天ふるさと納税」のサービスを利用してのふるさと納税は可能です。
確定申告が前提の「ふるさと納税」の仕組み
確定申告が必要な方が「ふるさと納税」をする場合は、寄付先の団体が発行する「寄付受領証明書」を添付して確定申告します。
ふるさと納税した年度の所得税の還付とともに、翌年度の住民税の減額ができます。
図解:確定申告が必要なふるさと納税の仕組み
確定申告が必要な場合のふるさと納税の流れ
- 自身の所得から控除対象になる「寄付できる上限金額」を確認する
- 寄付先の自治体を選び、返礼品を選ぶ
- 寄付手続きをおこなう
- 返礼品と寄付受領証明書(受領書・領収書)を受け取る
- 確定申告をおこなう
自治体以外に寄付をした場合は「寄付受領証明書」以外にも、寄付をした先がふるさと納税の対象であることを示す「証明書の写し」が必要です。
参照:寄附金控除(ふるさと納税など)を受けられる方へ(PDF)- Ⅲ 確定申告で寄附金控除を受けるための手続|国税庁
なお、本記事では、できるだけ簡単にわかりやすく説明することを狙いとしているため、ふるさと納税についてもっとくわしく知りたい方は、管轄となる総務省のウェブサイトをご参照ください。
参照:ふるさと納税ポータルサイト|総務省
企業法人が寄付する「企業版ふるさと納税」の仕組み
企業版ふるさと納税は、正式には「地方創生応援税制」と呼ばれる特別措置の制度です。
国が認定する地方公共団体が実施する、地方の活性化によって日本全体の活性化を図る「地方創生」の取組み(地域再生計画)に対し、企業が寄付をすると、法人税を軽減します。
2016年(平成28年)から実施されており、その後の税制改正で2024年度(令和6年度)まで、企業版ふるさと納税の特別措置を延長しています。
図解:企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)の仕組み
企業型ふるさと納税の流れ
- 控除対象になる「寄付できる上限金額」を確認する
- 寄付先(自治体の地域再生計画)を選ぶ
- 寄付手続きをおこなう
- 寄付受領証明書を受け取る
- 税制控除の税務処理をおこなう
「企業型ふるさと納税」の仕組みは、会社に対して寄付先から経済的な見返りがないことを除けば、個人がおこなう「ふるさと納税」とほぼ同じです。
企業版ふるさと納税の寄付の上限金額は、次の表の通りです。
種類 |
対象の税 |
いずれか金額の小さいパターンが適用 |
地方税 |
法人住民税 |
・ 全寄付額の4割 ・ 法人住民税法人税割額の2割 |
法人事業税 |
・ 全寄付額の2割 ・ 法人事業税額の2割 |
|
国税 |
法人税 |
・ 全寄付額の1割 ・ 法人住民税の寄付額が4割に達しない場合、その残額 ・ 法人税額の5% |
※参照元の内容を元に再構成
参照元:企業版ふるさと納税リーフレット(PDF)|内閣府 地方創生推進事務局
なお、企業型ふるさと納税の寄付先は、地域再生計画の認定を受けた地方公共団体に限られるため、探すには内閣府のウェブサイトを参照します。
参照:内閣官房・内閣府総合サイト 地方創生 - 企業版ふるさと納税ポータルサイト|内閣府 地方創生推進事務局
「企業版ふるさと納税(人材派遣型)」もある
企業版ふるさと納税は、あくまで自治体の地域再生計画に対する金銭的な支援のみをおこなうものですが、企業法人が専門性の高い人材を派遣して計画に参画する「企業版ふるさと納税(人材派遣型)」が登場しています。
図解:企業版ふるさと納税(人材派遣型)の仕組み
寄付の種類が増えただけで、流れは企業型ふるさと納税と同じです。
企業法人の抱える専門性の高い人材の派遣と、金銭的な支援という2種類の「寄付」を通じて地域貢献ができるため、寄付金がより効果的に使われるようになると推測されます。