仕事を知らない上司が異動してきたとき、どう対応すればいいのか?

>>さくらインターネットの採用情報を見る

環境はポケモンと同じように変化する。

みなさんは昨年発表されたスマートフォン向け睡眠ゲームアプリ「Pokémon Sleep(ポケモンスリープ)」で遊んでいますか? 僕はリリースされた瞬間にダウンロードして、毎晩真面目に寝ている。「寝るだけなら楽勝」と想像していたのに、思いのほか、育成がなかなか進まずもやもやしている。それにしても、睡眠時間を娯楽に変えてしまうポケモンには驚くばかりだ。

なぜ、ポケモンは僕らを魅了するのだろうか? いくつかの理由が考えられる。僕は、それぞれの人生においてそれぞれのポケモンが存在するからだと考えている。たとえば上司。どんな上司(ポケモン)をゲットして育成していくのか、そういう視点からみることによって厳しい現実も多少楽しく思えてくる。

ポケモンが進化して能力や外見を大きく変化させるのと同様に、何年か仕事を続けていると、ときどき、自分を取り巻く環境が大きく変化することがある。その変化に対応できるかどうかが働く僕らには求められる。変化に対応できるかどうかが職業人生にかかっていると言っても過言ではない。

環境の変化は要因によって2種類。

環境の変化は大きく分類すると2種類だ。種類によって対応も異なってくる。まずは変化のタイプを見極めることが大事だ。初接触のポケモンがどのタイプなのか、見極めるのとまったく同じだ。

1つは、自らが新しい環境へ移ることによる変化。転職や異動がこれに当たる。事前に想像したとおりの変化もあれば、想像とはかけ離れた変化に苦しむこともあるだろう。だが、苦しんでも、納得はできる。自分の行動が原因で生じた変化だからだ。「こういう展開もあるとは予想できなかったが、せっかく新しい場所へ飛び込んだのだから何とかしてみよう」と想像していなかった事態も前向きにとらえることができるだろう。

2つ目は、自らの行動が原因ではない変化。たとえば上司の異動。ある日、新しい上司がやってくる。その人物が仕事や業務に精通している人物なら混乱は起きない。だが、現実はそううまくいくばかりではない。他業界から招かれた人物や他部署から異動してきた素人が自分の上司になる。新たな上司は変化をもたらす。だが、わかっていない。わかろうともしない。そして影響力を誇示するかのごとく、干渉してくる。「業界のことも知らないのに!」とイヤな気持ちになり、最悪、出勤したくなくなる。要因が自分ではないため、頭に来る。なんでこんな目に遭わなければならないのか、と。どちらのケースも、僕らは受け入れるほかない。ポケモンがわざを忘れるときのように「1、2の、ポカン!」と消すことはできない。それが人生というものだ。

 

>>さくらインターネットの採用情報を見る

自分に原因がない環境の変化への対応が問題だ。

1つ目の自分の行動が要因のものについては種をまいたのは自分だ。自分の責任において対処するほかない。だが、予想と違っていたとはいえ、その環境の変化は自らが希望したものに含まれる。「新しい環境になればこれくらいの苦労は仕方ない」というポジティブな諦めで乗り越えていけるだろう。

問題は自分の行動を原因としない変化に巻き込まれるケースだ。たとえば先ほど例にあげたように異業種や他部門から異動してくる上司。一般的に、上司は職業能力が高く、知識が豊富で、調整能力に長けている人物であるはず。もちろん、例外として、能力や人格や性格が劣悪で現場を知らず経験のない人が上司になることはある。

とくに他業種や他部署からやってくる上司には注意が必要だ。超優秀と超劣悪の2種しかいないからだ。デキル人材は枯渇しているので、本当に仕事ができる人物ならば元の組織から出されないと考えるのが自然だろう。超優秀な人物が立て直しのために派遣されるケースもあるが例外ととらえてほうがいい。というのも、僕が在籍している営業部門においては、「会社の事業に直接携わるポジションに能力的に劣悪な人物を配置して事業に直接的な被害が出るくらいなら、営業開発部門に異動させて塩漬けしておいたほうがいい」という理屈で人事異動の受け皿になってきたからだ。こうした人事がハマって業績に大きく貢献した話を28年の会社員生活で僕は聞いたことがない。

責任感・能力・資質に加え経験や実績が豊富で魅力のある人物なら、どんな業種、部署からやってきても大歓迎だ。新しい風を起こしてくれるという期待が高まる。逆に、責任感・能力・資質に欠け、人間的皆無が絶望的な人は組織に新しい風邪をひかせるだろう。風邪をひかせる上司を想定して備えることができればベストだが、現実的に、そんなことをしている暇はない。でもつねに予想して慌てないように覚悟を決めておくことくらいならできる。

Q「業界や現場を知らない上司をどう扱えばいいの?」
A「役割を限定させる」

上司は、業界や現場を知っているいないにかかわらず、会社のボスにアピールしなければならない。とくに他業界や他部署から異動してきた上司は会社から新しい風を期待されている。アピールしなければならない熱は高い。そして、彼らにできることは、唯一の武器「他の業界での経験を活かす」しかない。それが厄介なのだ。

「他業界での経験を活かす」は大変結構。すべてが無に帰すわけではない。化学反応を起こして会社を飛躍させる可能性が1%ほどあるだろう。残念ながら残り99%は「他業界での経験」を活かせずに終わる。彼らの持つ経験のすべてがダメなのではない。新たな業界や現場について知らないから、活かせないのだ。相手のポケモンの持つ耐性を知らずに攻撃を仕掛けているようなものだ。効果的に戦えない。

【対策】実際の仕事や現場を知っている僕らが新たな上司をうまく活用していく。新しい道具だと考えよう。たとえば、金融機関からやってきた人ならば、営業職が苦手とするチーム全体のコストの削減に取り組んでもらうとか、技術畑から異動してきた人なら、業務全体の自動化を進めてもらうとか、活用の方法は見つかるはず。それを彼らのプライドを損ねないように提案していく。

他業界からくる上司がうまくいかないのは、彼らの強みである分野に限定せず、専門外の分野まで監督させようとするからだ。限定によって専門分野での強さを発揮させて、なじませてから、全体を監督する流れに持っていけばいい。

Q「『この業界のことはあまりよく知らない』という言い訳をする上司がムカつきます。」
A「言い訳できない環境をつくる」

他業種からやってきた上司は、失敗したとき、またはうまくいかないとき、「この業界のことはあまりよく知らないから」という言い訳をするのが特徴である。そんな発言を受ける部下に言わせればたまったものではない。そこは「じゃあ責任者を辞退しろよ」と言いたくなる気持ちをぐっと抑えて、言い訳を許さないように普段から取り組んでおこう。

【対策】「部長がいないと会議は成立しません」などと言って彼らの自尊心をくすぐって(なぜか自尊心は人並以上のものを持っている)折々のミーティングには参加させて言質を取っておく(要録音)、議事録を作成するなどの逃げられない状況をつくり意識させておくといい。そうやって「この業界のことはあまりよく知らない」が発動しにくい状況下におく、または「この業界のことはあまりよく知らない」が発動されでも3秒後に「業界は知らなくても、この事案については熟知しておりますよね」と言えるようにしておこう。要するに言い訳と泣き言を許さない準備をしておくということ。ここまでやっても責任感が芽生えず「業界を知らないから」というような上司なら、排除へ向けて別の手を考える必要があるだろう。

自分に原因のない変化を自分のものとして扱う。

結局のところ、異動してくる上司が、どんな経験や実績を持っていても、新たな場所について理解しようとする意思があるかどうかにかかっている。1ミリでもその意思があれば可能性はひらける。逆に、その上司ポジションを腰掛け程度に考えているのなら、状況は厳しい。それでも僕らは上司を選ぶことができない。上司の異動という環境の変化にうまく対応していくしかない。

パターンは人の数だけあるので、万能な解決策は存在しないが、解決につながるヒントはある。それは、異動してくる上司は素人だと認識することだ。もちろん上司によって素人レベルは異なる。他業種から謎の経緯でやってきた上司は、素人レベルで「最高」に位置づけられる。素人に最初から高いハードルを設定してその能力をはかろうとするから絶望するのだ。上司がトンデモ指示を出しても「素人だから仕方ない」と諦念して対応していく。諦めているだけでは状況は悪い方向へ変化していくだけである。上司が変えられないのなら、その場所で先輩にあたる僕らが彼らをよい方向へ導いていけばよい。

僕は会社員になって28年になる。他業種出身の上司も何人か経験している。最後まで元の世界にこだわりなじめなかった人もいる一方で、会話を通じて、現場を理解してもらい、元の世界での経験を活かせるようになった上司もいる。他業界から、現場や仕事のことを知らない偉そうな上司がやってくれば環境は変わる。その変化をよい方向へ持っていくことも、悪い方向へ流されるままにもできる。自分に原因のない環境の変化を自分のものとして考えていくことでわずかでもよい方向へ持っていける可能性はあるのだ。

 

>>さくらインターネットの採用情報を見る