国内初!京セラコミュニケーションシステムの車道を無人走行する自動配送ロボットが描く未来

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SF作品で描かれている世界がやってくるのかもしれない。そう思わせてくれるのが、京セラコミュニケーションシステム株式会社が開発した、車道を無人走行する自動配送ロボット。この自動配送ロボットは、ラストワンマイル配送、買物弱者の支援などのために活用される見込みだ。開発の経緯から実用化の予定まで、モビリティ事業に携わる水迫 浩昭さんと村上 宙也さんに聞いた。

(写真左)水迫 浩昭(みずさこ ひろあき)さん プロフィール

経営企画室 モビリティ事業 担当部長。電機メーカーで通信機器開発に携わったのち、1991年に京セラ株式会社に入社。社内外のインフラ設計・構築・運用を担当する。1995年に京セラコミュニケーションシステム株式会社に転籍し、BIS事業部に配属。2015年より西日本(大阪)社外向けシステム設計・開発担当。2021年よりモビリティ事業に関するソフトウェア開発・研究を担当する。

(写真右)村上 宙也(むらかみ みちや)さん プロフィール

経営企画室 モビリティ事業企画 課長。2011年に京セラ株式会社に入社し、自動車部品事業本部にておもにピエゾ素子を用いた商品開発に携わる。2019年よりモビリティ事業に関する新規事業開発を担当。2022年に京セラコミュニケーションシステム株式会社へ兼務出向し、モビリティ事業に関する企画・マーケティングを担当する。

コロナ禍がきっかけで、運ぶ対象を人から物へ変更

ICT、通信エンジニアリング、環境エネルギーエンジニアリング、経営コンサルティングの4つの事業を主軸としている京セラコミュニケーションシステム株式会社。得意としているICTと通信エンジニアリングの技術を掛け合わせたのが自動配送ロボットの開発事業だ。自治体、地元事業者、関連事業者などと協同しながら、サービスの実現を目指している。

正面から見ても、運転席がないことがわかる(画像提供:京セラコミュニケーションシステム)

配送ロボットに使用しているのは、ミニカー(長さ2.5m以下×幅1.3m以下×高さ2.0m以下)に準じたサイズ。最高速度が15km/hで、「人が追い付くのが難しい速さです」と村上さんはいう。車体には、サイズの異なるロッカーや、温冷蔵機能、決済機能を備え、複数の事業者によるサービス提供をこの1台でおこなうことが可能。電気で動くことから環境への負荷が軽いことも特徴だ。自動運転は、ロボットに取り付けられたセンサーで周囲と現在地を捉えることでおこない、前後左右に設置されているカメラを経由して遠隔で監視と必要に応じた操作をしている。

「自動運転バスの技術実証に参画したことから、当初は人を運ぶことを想定した事業を検討していました。ところが、新型コロナウイルスの拡大により、人の移動が激減。非接触で物を運べることへの需要を感じ、2020年に自動配送ロボットを運用するための事業を検討、開始しました」と水迫さんは振り返る。

 

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実証実験開始までにはたくさんの課題が

ロボットは海外から輸入したものを使用している。そのままで利用することは難しく、日本仕様に合わせることに苦戦を強いられた。「これが一番大変でした」と水迫さんは笑う。

ロボットの調整をし終えても、すぐに走らせることはできなかった。公道で実証実験を実施するためには、その地域を管轄する警察の許可が必要だ。そのため、地域の警察と走行ルートの視察をおこなった。

実証実験のモニターは、地域住民から募った。モニター参加登録、配送予約、荷物の到着案内などはメッセンジャーアプリ「LINE」を通じておこなうが、そこにも苦労があった。

「当社のロボットを知ってもらい、モニター登録してもらうために、地域の学校や自治会に複数回訪問し、チラシを配りました。しかし登録者数が思うように集まらなかったため、地域のお祭りや、集会といった人が多く集まる場所にロボットを連れていきました。実際に使ってもらい、利用に対するハードルを取り除くためにいろいろな策を練りました。」(水迫さん)

と、実証実験開始前にさまざまな壁を乗り越えてきた。

いざ、実証実験開始!

準備が整い、いよいよ2021年8月から9月にかけて、北海道石狩市石狩湾新港の一部地域の区画内で国内初(2021年8月時点)の実証実験を開始。1台をコンビニエンスストア、クリーニング業者、宅配業者など事業者間でシェアリングし、小売店商品や企業間輸送貨物などを配送した。

コンセント、船、風力発電、灯台など石狩市の特徴が描かれている(画像提供:京セラコミュニケーションシステム)

「ロボットには、港湾都市であり、再生可能エネルギーの地産地消を掲げる石狩市らしいデザインを施しました。じつはこのデザイン、当社の社員が手掛けたんです」と笑顔の水迫さん。

第1回目の実証実験では、安全を確保するために、遠隔で監視をおこなう以外にも、自動配送ロボットの前後に1台ずつ自動車を走らせ、走行ルートに一定の間隔で監視する人間を配置した。

幕張新都心内の公園で販売。公園に入る際はスタッフが誘導を行った(画像提供:京セラコミュニケーションシステム)

2022年3月には千葉県千葉市の幕張新都心で、モニター参加者が小売店で購入した商品を自宅マンションまで配送する買い物支援サービスの実験を実施した。また、7月から8月にかけては公園などで商品を販売する無人移動販売サービスの実証実験をおこなった。

「2021年に石狩市で実証実験をした際、ロッカーの扉の開閉はスマートフォンでおこなう仕様でした。2022年の実証実験からタッチパネルを導入し、現金以外であれば、ほぼすべての決済に対応できるようにしました」と、水迫さんは改良したことを明かした。千葉市での実証実験では、自動配送ロボットの前後を走る自動車の導入をやめ、走行ルートを監視する人間もポイントを絞って配置した。

同年11月には再度石狩市において、住宅街である緑苑台東地区内を走行。配送拠点を中心に、複数の受け渡し場所へ配送する個人向け配送サービスと、千葉市でもおこなった無人移動販売サービスを検証。このとき、初めて2台のロボットを公道で走行させた。

「実証実験は3年目に突入し、警察の許可もスムーズに下りるようになりました。実証実験をおこなう走行ルートの視察の際、土砂降りになってしまい、途中で中止をしたことがありました。通常であれば、再度日程調整をしてから許可が下りるまでに1~2週間ほどかかります。ところが、そのときは警察署の担当者が『明日やりましょう!』といってくださいました。こちらの気持ちをくみ取ってもらえるのはありがたいですね」(水迫さん)

自動配送ロボットのファンも! 社内外からポジティブな声

「通学時間帯に住宅地を通ることもあるので、注目は浴びていますね」と村上さんは話す。「かわいい!」「いつ実用化されるの?」「未来を体験できる貴重な取り組み」「家の近くで購入できてよい」「雨や雪の日こそ役立ちそう」「もう少し早く、遠くまで行けたらうれしい」など地域住民であるモニターから、さまざまな声が上がっている。

「前例がないことに取り組んでいるので、メディアに取り上げていただける機会も多く、『自分たちの仕事が注目されている』ことがモチベーションにつながっているように感じます。実証実験に参加してくださる地域の方の存在も大きいですね。自動配送ロボットのファンの方から直接感謝の言葉をいただくと、この事業に携わる意義を感じます」(村上さん)

「冬は降雪があるため、石狩市での実証実験はお休み中です。地域の方からは「来年またよろしくね」「楽しみに待っています」という声をいただいています。私たちもそういったお声をモチベーションにしながら事業に取り組んでいます」(水迫さん)

「人手不足に悩む小売店やサービス業や、再生可能エネルギー関連の企業の方なども視察に来ています。当社としても必要な機能やサービスの種類など、使い方を一緒に考えてくれる仲間がほしいので、社外から注目されることはうれしいですね」(水迫さん)

2人が話すように、同社内での士気も高そうだ。

課題はあるが、自動配送ロボットが街を行く日も遠くない!?

社内外からポジティブな声が上がる一方で、課題も決して少なくない。

技術面でいえば、悪天候時の走行における安全性の保障が課題の1つとして挙げられる。大雨や雪の日は、カメラのレンズに雨粒が付いたり、見渡しが悪くなったりすることから、遠隔での直接的な監視が難しくなる。また、自動走行ロボットを実現させるには、自動走行することを前提とした空間や道路、そして法律といったインフラ・制度の整備も欠かせない。2023年度から経済産業省を中心に、ロボットの自動走行における調査事業が開始。法律が変更になる可能性があるため、同社もこの事業に期待を寄せており、積極的に協力する姿勢を見せる。

「このロボットを自動車と見なすのか、あるいは原動付自転車として見なすのか。それによって対応すべき法規制が異なります。仮に軽自動車として見なされると、衝突試験などをおこない、安全面の規格をクリアしなければいけません。我々も更なる技術的改善を行い、実証実験を通じて検証をしながら、社会実装に向けて取り組んでいきます」(水迫さん)

最後に、気になる今後の展開について聞いた。

「どちらかといえば私個人の意見ですが、2030年くらいには街をあたり前のように走っているイメージを持っています。『いつ社会実装されるのか』と聞かれて、あと『3~4年くらいは掛かります』と答えると驚かれるくらいです」(水迫さん)

「あまりにも自然に走っているので、初めて見た方はどなたもびっくりするんですよ」(村上さん)

車道を走る無人自動配送ロボット開発の先駆者として、誇りと自信を見せてくれた水迫さんと村上さん。京セラコミュニケーションシステム株式会社の自動配送ロボットの活躍に期待を抱く人も少なくないはずだ。

 

京セラコミュニケーションシステム株式会社

 

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