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インターネットの発達により、コミュニケーションや情報発信の手段は格段に容易となった現在。ある意味で人と人とのつながりは以前より近づいたともいえるが、その速度や即応性は心理的距離を縮めたとは限らない。心も通わせるインターネットのあり方とはどのようなものか、すべてのインターネット利用者にいま問われているのではないだろうか。
そのような命題に正面から向き合い、リアルとデジタル空間が調和するサービスを提供しているのが、株式会社OND(以下、OND)だ。代表を務めるのは、株式会社はてな(以下、はてな)の創業者である近藤淳也さん。「生きている実感を増やす」をスローガンとし、さまざまなアプローチからサービス展開する同社が2023年にリリースしたのが、ポッドキャスト配信サービス「LISTEN」だ。同社が目指すインターネットサービスのあり方、「LISTEN」のサービス展望について、近藤さんに聞いた。
株式会社OND 代表取締役社長。株式会社はてな取締役。NPO法人滋賀一周トレイル代表理事。トレイルランナー。ときどきカメラマン。
人の温かさに触れ「生きている実感を増やす」サービスを展開
OND創業は、近藤さんがはてなの代表取締役会長を退任した2017年に遡るという。
「はてなの社長を退任して、私は新規事業担当の取締役に就任しました。そのときにはてなの新規事業の1つとして開発したのが、最初のサービス『物件ファン』だったんです。ただ他事業との関連性などから、はてなが持ち続けるのは難しいかもしれないという話になりました。それなら外に出て自分で育てていこうと事業を買い取り、それをきっかけにONDを設立しました」
近藤さんははてなの創業者であり、同社を上場企業に育て上げた経営者でもある。現在でも非常勤取締役として同社に携わっているとはいえ、取締役就任から間を置かずに分離独立してONDを設立し、新しいサービスの開発・育成にコミットする決断をしている。そこにはどのような想いがあったのだろうか。
「はてなではずっとインターネット・サービスをやっていたのですが、もう少し、人間らしさに触れられるものができないかと思っていたんです。そういうなかで、ただ物件情報を載せるだけでなくて、温かみのある住まいや暮らしのイメージをお届けできるようにと『物件ファン』をつくりました。インターネットで利便性を提供するだけでなく、人の温かさに触れられるサービスを。そんな想いで設立からサービスを立ち上げています」
「生きている実感を増やす」。ONDが掲げるスローガンは、まさに提供するサービスに現れている。たとえば「物件ファン」で知り合った不動産会社とのコラボレーションで生まれた「UNKNOWN KYOTO」は、宿泊施設とコワーキング施設、レストランを併設する複合施設だ。京都府・清水五条駅近くの築100年超の建築をリニューアルし、人と交流しながら「仕事もできて暮らせる宿」にした。
また、トレイルランナー向けのGPSのトラッキングシステム「IBUKI」は、ユーザーが現在地をリアルタイムで共有できる見守り機能だけでなく、投稿機能やおすすめコースの共有によりトレイルランニングをより安全に楽しめるサービスだ。
暮らしや仕事、そして趣味。同社のラインナップを見ると、アプローチの仕方はそれぞれ異なるが、根底にはデジタルとリアルが調和しつつ、人と人とのつながりや交流が生まれるサービスが志向されていることがわかる。
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「声日記」が届ける、なんでもない日常のおもしろさ
ONDが2023年に新たにリリースしたのが、ポッドキャスト配信サービス「LISTEN」だ。同サービスではOpenAIが開発した音声認識AIのWhisperを実装し、ポッドキャストの投稿とともに音声からテキストを自動で生成できる。
「物件ファン」や「UNKNOWN KYOTO」、「IBUKI」はリアルに根差したサービスである一方、「LISTEN」はポッドキャスト。これまでとは異なるアプローチに思えるが、このサービス開発にはどのような背景があるのだろうか。
「開発のきっかけは、Whisperの登場でした。音声から高精度の文字起こしができる音声認識AIで、話してポッドキャストを投稿するだけでブログのようなコンテンツを作ることができれば便利じゃないか、というアイデアが出発点です。2023年4月にサービスリリースして、8月にはポッドキャストを直接配信できるホスティング機能をはじめました。それにより、LISTENに音声をアップロードして各種ポッドキャストサービスに直接配信できるようになり、音声コンテンツの配信プラットフォームとしての機能を備えています」
現在、ポッドキャストは大手プラットフォーマーだけでなくラジオ放送局も参入する競合が多いマーケットに思える。なぜONDはポッドキャストに着目したのだろうか。
「いままでのポッドキャストは、どこかラジオ番組を理想とするものだったと思うんですよ。ちゃんとしたマイクを買って、しっかり編集して週1程度で配信する。建付として誰でも配信はできるけれど、参入障壁が高かったと思います。
一方で、視点を変えれば『話す』ことは誰にでもできます。たとえば、読むのに10分かかるブログを書くのはかなり大変ですよね。時間と労力もいるし、文章作成能力や実際に読ませるためのしかけも必要です。しかし、10分間聴くコンテンツを作るのは、スマートフォンで10分話せばいいので、それほど難しくありません」
誰でも簡単に、ブログよりもカジュアルにポッドキャストを始められる。それは、はてなを育てた近藤さんが率いるONDだからこその開発思想だ。実際、「LISTEN」は誰もが無料で自分の音声チャンネルを持つことができて、ブラウザからボタン1つですぐに録音し配信できる。さらに、ただ音だけの発信ではなく、Whisperによって文字起こしされ、サマリーも出力される。「LISTEN」で投稿されるコンテンツの多くはより私的で、日常的なものだ。そのような機能と性質から、同サービスの個人ユーザーの投稿は、自然発生的に「声日記」と呼ばれているという。
「『今日は会社に行ってこれをやって、そのあとこんな買い物しました』といった、本当になんでもない日常を毎日のように配信している方もいます。それが結構おもしろいんですよ。メインのポッドキャストはSpotifyで配信されていて、サブ番組のように『LISTEN』で声日記を投稿してくださる方もいます。
『日常のことは、誰でも書ける』ことがわかってブログを書く人が増えたときのように、『日常を話すぐらいであれば、誰でもできる』と思って投稿してくれる方が増えているんです。そしてブログと同じように、普通の人の『なんでもない日常』というのが、聴いていて本当におもしろい。これは、サービスをリリースしてからあらためて発見したことですね」
安心・安全なコミュニティをつくる機能
このように、ポッドキャスト配信の垣根を下げ、誰でも気軽で日常的に投稿できるサービス設計となっている「LISTEN」の中では、これまでのポッドキャストになかった新しいコミュニケーションが生まれている。つまり、音声を起点とするコミュニティの形成だ。
「これまでのラジオのような形式を求めるポッドキャストの場合、ポッドキャスターとリスナーの関係は非対称的、つまり、明確に『配信する側』と『聴く側』で対峙していたと思います。ラジオ番組のようにお便り募集をかけても、なにもこない番組も多いです。これは実際に私が体験したことですね(笑)。ポッドキャストを毎週のように更新して、数字上の聴者数は見えるけれど、それ以上の関係がない。この非対象性が、いままでのポッドキャストで感じていたさみしさだったと思うんです。
『LISTEN』では、フォローしているのが誰か見えて、フォロワーも気軽に星を付けたり、コメントをつける機能があります。ラジオでいうハガキ職人みたいなものを、コメントとしてもっと気軽に残す文化ができているんです。さらに独自機能として、コメントを音声で返す機能もあります。つまりポッドキャストに対しての返信が、ポッドキャストでされるという循環をつくっているんです」
ユーザーが日々の言葉を紡ぎ、それが新たな言葉を生んで、さらに新しい関係性が生まれていく。あくまで私的で、日常の中で不意に発せられる言葉だからこそ、「LISTEN」に投稿されるポッドキャストには優しい感情が載っていく。そういった優しさの相乗効果を生むような仕組みもある。同サービスにはトラックバック機能や言及機能があるのだ。自身が共感した、あるいは心動かされた投稿の特定部分に言及し、投稿主にも通知できる。リスナーだけなく、ポッドキャスターにとっても「生きている実感を増やす」サービスといえるだろう。
そのようなサービス設計から、2024年3月時点で「LISTEN」のポッドキャスターの数は1,500に達する。国内でのポッドキャスト番組数が数万といわれているなかで、リリースからわずか10か月ほどでこれほどのポッドキャスターを獲得しているのは順調過ぎる伸びだろう。一方で、運営側としては急激なユーザー数の伸長は、喜ばしくも悩みの種であるともいえる。
「サービスが軌道に乗るまではできるだけ出費を抑えるために、共用のレンタルサーバーを利用していました。最初の半年は、Whisperの実装や別の環境との併用もしている状態でした。少しずつユーザーが増え始めて、ホスティング機能も始めてどんどんサーバーが重くなっていって。レンタルサーバーはプロセスの実行時間が長いと、勝手に落とされてしまいます。アクセスしようと思ってもエラーが頻発して、さすがにまずい状況でした(笑)」
そんなときに、思い浮かんだのがさくらインターネットだったという。近藤さんははてな時代からさくらインターネットのユーザーだった。そこで、2023年12月からサーバーを「さくらのクラウド」に変更した。
「率直な感想ですが、めちゃくちゃ快適です!まず当然のことですが、勝手にプロセスが落ちなくなりました。あとはやはりクラウドなので、先日ウェブアプリのサーバーを2個に増やした際、とても簡単にクローンができて助かりました。加えて『日本の会社である』というのが大きいです。
『LISTEN』はいま、日本人のユーザーがほとんどです。そういったなかで、日本にしっかりとしたクラウド環境があるという安心感、そして事業主体も日本人で日本語で親身に対応していただける。日本でビジネスをおこなう企業であれば、それによって得られるベネフィットがあるのではないでしょうか」
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「話すっておもしろい」。それを広げる余地がある。
「話す人」も「聴く人」も自分らしくいられる場。「LISTEN」はまだリリースして間もないが、すでにそのような関係性が生まれている。今後どのような展望を描いているのだろうか。
「いまは、スマホなどの画面を観る時間が飽和していると思います。一方で、 通勤中や家事の間など、『耳が空いている時間』はまだあると思うんですよね。知り合いの日常を聴くだけで、ちょっと楽しくなるし、自分で話したい気持ちにもなってくる。
話すって、おもしろい。それを、もっとたくさんの人に知っていただき、実際に楽しんでもらいたい。サービスを広げる余地は大きいと思っています」
「LISTEN」は、今後同社のサービスともシナジーを発揮していくだろう。ONDとしてはどのような展望を考えているのだろうか。
「技術展開としては、ある意味『1周遅い』ともいえるんです。『IBUKI』でのトラッキングやIoTなどの技術実装も、最先端と比べれば比較的遅めで、さまざまなデバイスの実装がかなりこなれてきて、GPS端末も安価かつ実用に耐える状態だと判断してから採用しています。
ある程度実用レベルに達したものをうまく応用していくことが、当社は得意です。これからもどんどんサービスを広げていきたいので、開発を担うエンジニアやマーケティング、コミュティマネージャーなど、幅広く人材を募集しています。ぜひ、ご連絡いただけるとうれしいです」
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