デジタルトランスフォーメーション(DX)とは? デジタイゼーション、デジタライゼーションとの違いや、具体的な企業事例を紹介

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?具体的な企業事例を交えて解説



突然ですが、「2025年の崖問題」をご存知でしょうか?

2025年の崖とは「デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)が推進されない場合、2025年以降に最大で年間12兆円もの経済損失が生じる可能性がある」ことです。

これには、既存システム(レガシーシステム)が複雑化、老朽化、ブラックボックス化している背景があります。何が問題かというと、システムが複雑化することで

  1. データの活用ができない
  2. システムの維持管理費が高額になる
  3. 保守運用の担い手がおらずシステムトラブルやデータ消滅などのリスクがある 

こうした課題があります。

この状態を放置してしまうと、2025年以降に最大で年間12兆円もの経済損失が生じる可能性があるのです。その状況を回避するために、デジタルトランスフォーメーションの推進が必要です。

しかし、デジタルトランスフォーメーションといわれてもよくわからない、という方も多いのではないでしょうか。

この記事の前半では、デジタルトランスフォーメーションの定義や、企業にとってどのようなメリットがあるのかを解説します。

後半では、デジタルトランスフォーメーションの推進がおこなわれている企業や自治体、行政機関の事例をご紹介します。

 

デジタルトランスフォーメーション(DX)の概念と定義

デジタルトランスフォーメーションは、スウェーデンにあるウメオ大学教授のエリック・ストルターマン氏が2004年に提唱した概念です。

経済産業省は『「DX推進指標」とそのガイダンス』でデジタルトランスフォーメーションについて次のように定義しています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

(引用:経済産業省 デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン DX推進ガイドライン

また経済産業省は『DXレポート2 中間取りまとめ』で「企業は変化に迅速に適応し続けることが大事で、ITシステムのみならず企業文化を変革することがDXの本質であり、企業の目指すべき方向性だ」としています。

デジタルトランスフォーメーションが注目される理由

なぜ、日本でデジタルトランスフォーメーションが注目されているのでしょうか?

「2025年の崖」問題もありますが、結局はデジタルトランスフォーメーションを推進すれば、会社の儲かる可能性が広がるからです。デジタルトランスフォーメーションによって顧客価値が向上されます。そうなれば、顧客から選ばれる企業となり、結果的に儲かります。

ただし、儲けることを考えるのは大事ですが、短期的視点で考えるのではなく、長期的視点で考える必要があります。短期的視点だと、効率化や生産性向上だけを目的としてしまいますが、長期的視点では新規事業や企業風土の変革を考えられるからです。

デジタルトランスフォーメーションのメリット

デジタルトランスフォーメーションを推進することで、生産性向上が見込めます。コスト削減も期待できます。

これまで考えもしなかった、新規事業が生まれる可能性もあります。既存事業でも、ビッグデータを活用すれば、売上を伸ばすことも可能です。

後ほど企業の事例でくわしく紹介しますが、製造業の株式会社フジシールでは、デジタルトランスフォーメーションの推進によって、年間売上を45億円増、年間コストを1.1億円減らせると期待しているそうです。また、鍼灸整骨院を全国に展開する株式会社SYNERGY JAPANでは総労働時間の削減と生産性の向上により、約20%の労務改善がされました。

※株式会社フジシールの売上は975億円(2019年度)

デジタルトランスフォーメーションのデメリット

デジタルトランスフォーメーションを推進するデメリットは「お金がかかる」ことです。ITの導入だけではなく、人材が必要になります。これはレガシーシステムを使っている企業ほど、負担は大きくなるでしょう。

とはいえ、長期的視点で考えるとデジタルトランスフォーメーションは会社に大きな利益をもたらしてくれる可能性があるため、経営層が判断して投資する必要があります。

デジタルトランスフォーメーションのよくある間違い

「うちの会社はFAXでの連絡をやめて、メールで連絡するようにしている。デジタルトランスフォーメーションに成功した」

「書類は電子化して保存しているから、デジタルトランスフォーメーションできている」

このような会社を見かけないでしょうか。これらはデジタルトランスフォーメーションを進めるうえで大事な第一歩ですが、デジタルトランスフォーメーションとまではいえません。

データとデジタル技術を活用して業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争力を高めることがデジタルトランスフォーメーションなのです。

ここで大事になるのが「デジタイゼーション」と「デジタライゼーション」という言葉です。

デジタイゼーション、デジタライゼーションとは

デジタイゼーションからデジタライゼーションに転換することは、情報を伝達する社会から情報を共有(シェア)して、繋ぐ(リンク)時代への転換ともいえます。デジタイゼーション、デジタライゼーションについては次のとおり定義します。

デジタイゼーション

デジタイゼーションとは、既存の業務プロセスをIT化したこと。

  • 郵送やFAXを電子メール化
  • 紙をPDF化
  • 紙のカルテを電子化

このように、手段をデジタル化するイメージです。

デジタライゼーション

デジタライゼーションとは、ITでしかできない業務プロセスへの変革を指します。​

  • 書面契約を電子契約化
  • 手作業からAPI連携によるデータ集計の自動化
  • オンライン診療

デジタルでなければできない仕事の仕方を推進するイメージです。

続いて、アナログ、デジタイゼーション、デジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーションの違いについて、例を挙げて説明します。

アナログ、デジタイゼーション、デジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーションの違い

言葉の説明だけではわかりにくいと思うので、具体的な事例に沿って説明します。

契約の事例

契約を結ぶ際の事例を元に、アナログからデジタルトランスフォーメーションまでの違いを紹介します。

  • アナログ

契約書を紙で郵送して、ハンコを押す。

  • デジタイゼーション

契約書をPDF化し、メールで送る。印刷、押印してからプリンターでスキャンをおこない、PDF化。それをメールで返信する。原本が必要なので、後ほど郵送する。

  • デジタライゼーション

ウェブ上の契約システムで電子署名をおこなう。場合によってはPDF化してタイムスタンプを残しておく。

  • デジタルトランスフォーメーション

現在のような契約書がなくなり、ブロックチェーンベースでスマートコントラクト(契約の効率化、自動化)をおこなう。

保健所の感染者集計

保健所における感染者数の集計の事例を元に、アナログからデジタルトランスフォーメーションまでの違いを紹介します。 

  • アナログ

病院が書類に感染者数を記入して保健所にFAX。それを保健所が別の紙に書き写して都道府県にFAXする。 

  • デジタイゼーション

病院がシステム入力と並行してPDFを作成。保健所にメールで送り、保健所がエクセルで集計し直して都道府県にメールする。 

  • デジタライゼーション

病院のシステムから、都道府県のシステムにデータ連携し、リアルタイムにウェブで公開する。

  • デジタルトランスフォーメーション

病院の計測装置や個人のスマホなどが連携し、リアルタイムで感染リスクをアプリで確認できる。

(参考:さくらインターネット代表 田中邦裕 note

デジタルトランスフォーメーション推進に必要なこと

デジタルトランスフォーメーションの推進で必要なことは、大きくわけると2つあります。

  1. デジタルトランスフォーメーション推進のために経営のあり方、仕組みを考える
  2. デジタルトランスフォーメーションを実現するうえで基礎となるITシステムの構築

大手コンサルティング会社のマッキンゼーが、デジタルトランスフォーメーションによる大規模な企業変革を成功させてきた企業経営層にヒアリングしたところ、次のような要素が成功を生んだそうです。 

  • 経営トップがデジタルトランスフォーメーションの必要性を認識
  • 経営トップが実行にコミット
  • デジタルへの投資(時間・人・テクノロジーなど)に対して全社投資の50%を割り当て

経営トップのコミットメントと、デジタル投資の重要性があらためてわかります。

具体的な実践事例のご紹介

ここからは、デジタルトランスフォーメーションの推進に取り組んだ企業や自治体、行政機関の実践事例をご紹介します。2021年6月に開催されたイベント「Salesforce Live: Japan」に登壇された方々のお話をまとめました。

デジタルトランスフォーメーションの推進を実践している事例を確認することで、自社にも取り入れられることがあるかもしれません。 

まず企業事例を紹介する前に、日本におけるデジタルトランスフォーメーションの推進状況と市場規模について、電通デジタルの方の話を紹介します。

デジタルトランスフォーメーションの推進状況と、市場規模

株式会社電通デジタル データ/テクノロジーソリューション部門 CRMソリューション事業部 シニアコンサルタント 内木 洪介 氏

株式会社電通デジタル データ/テクノロジーソリューション部門 CRMソリューション事業部 シニアコンサルタント 内木 洪介 氏


デジタルトランスフォーメーションといっても、その形態や領域はさまざまだと思います。RPAによるオペレーションの自動化から、ビジネスモデルの抜本的な改革まで、非常に多岐に渡ります。

また、みなさんが連想されるイメージは人によって違うと思います。そんなデジタルトランスフォーメーションですが、企業の取り組みは年々加速傾向です。

企業でのデジタルトランスフォーメーション推進は加速傾向

企業でのデジタルトランスフォーメーション推進は加速傾向


取り組み状況について、2020年度の段階で74%の企業がデジタルトランスフォーメーション領域に着手していると回答しています。また、その割合は年々増加傾向です。

昨年からコロナによって生活が一変しましたが、このコロナによる取り組みへの影響については、50%の企業が「デジタルトランスフォーメーションの取り組みが加速した」と回答しています。

こうした調査結果を裏付けるように、市場規模も年々拡大しています。

デジタルトランスフォーメーション 国内市場規模

デジタルトランスフォーメーション 国内市場規模


デジタルトランスフォーメーション領域への投資金額をベースに市場規模を算出した、富士キメラ総研の調査結果。これによると、2019年度の投資金額が約8000億円に対して、2030年度は約3兆円の市場規模になると算出しています。2019年度比で約3.8倍です。

電通デジタルが考えるデジタルトランスフォーメーションの定義

電通デジタルが考えるデジタルトランスフォーメーションは「"お客さまにもっと喜んでもらうため"の仕組みづくり」です。その"手段"として、デジタル技術を活用します。あらゆる取り組みをするうえで、ユーザーであるお客さまに喜んでもらえることなのか、という視点が重要ですし、判断基準となります。

そうしたお客さまの視点で突き詰めたときに、結果として競争力を高めて、収益性の改善に繋がると考えています。

デジタルトランスフォーメーションについて、もう少し要素分解していきたいと思います。

デジタイゼーションと、デジタライゼーション

デジタイゼーションと、デジタライゼーション


段階的なデジタルトランスフォーメーションとして、デジタイゼーションと、デジタライゼーションに2分割にすることができます。

お客さまにもっと喜んでもらうために、いかにしてデータを活用した顧客理解を進められるか、顧客接点のデジタル化にともなって、いかにして新しい顧客体験を創出事業できるか。今後、さらにデジタルトランスフォーメーションの必要性が高まります。

【機器メーカー事例】横河電機が考えるデジタルトランスフォーメーションとは?

ここから、デジタルトランスフォーメーションに取り組んでいる企業の事例を紹介していきます。

横河電気株式会社は大正4年(1915年)に創立され、100年を超える歴史のある会社です。計測、制御、情報の技術を活用してBtoB事業に取り組んでいます。2019年の売上高が4,044億円、従業員数は18,107人。まさに巨大企業です。そんな横河電機が考えるデジタルトランスフォーメーションとは――

横河電機株式会社 執行役員 デジタル戦略本部長 (CIO)兼 デジタルソリューション本部 DXプラットフォームセンター長 舩生 幸宏 氏

横河電機株式会社 執行役員 デジタル戦略本部長 (CIO)兼 デジタルソリューション本部 DXプラットフォームセンター長 舩生 幸宏 氏

 

横河電機が考えるデジタルトランスフォーメーションには2種類あります。ひとつは「お客さま(ユーザー)への価値」、もうひとつは「社内への価値」です。

お客さまにデジタルサービスを提供する「ビジネスとしてのデジタルトランスフォーメーション」と「社内の生産性向上としてのデジタルトランスフォーメーション」があり、このふたつをバランスよく対応していく。これが、横河電機が考えるデジタルトランスフォーメーションです。

横河電機が考えるデジタルトランスフォーメーション

横河電機が考えるデジタルトランスフォーメーション


現在、クラウド化によって集約が進んできています。集約されると自動化と遠隔化が進みます。更に進むと、企業間の取引やプロセスが、会社の枠を超えて自律化するでしょう。これを、横河電機では「IA2IA(Industrial Automation to Industrial Autonomy)」と呼んでいます。

IA2IA(Industrial Automation to Industrial Autonomy)

データ統合成熟度


今後はいつでも、どこでも、どのようにでも、すべての企業活動が手の上で操作可能になると考えます。この「手の上」というのは、いまはスマートフォンですが、将来まったく別のデバイスが誕生するかもしれません。

すべての企業活動が、オンラインでできるようになる。これがデジタルトランスフォーメーションの究極形だと思います。

DX人材について

DX人材をグローバルな視点で

DX人材をグローバルな視点で


従来の情報システム部門ですと、DX人材は不足しています。ただし、これを強化しないとデジタルトランスフォーメーションが進みません。ただ、なかなか日本でDX人材を獲得するのは難しいので、シンガポール、インド、中国などの海外からDX人材を獲得しています。

横河電機では「ニューノーマル・ワーキングスタイル」として、いつでも、どこでも、どのようにでも働ける環境を作り、デジタルトランスフォーメーションを進めていこうとイメージしています。

【製造業事例】フジシールが取り組むデジタルトランスフォーメーション

株式会社フジシールは、シュリンクラベルとよばれるどんな形の容器にもフィットするラベルや、タックラベルとよばれる加工されたシール用ラベルを製造している企業です。製品は多くの飲料ボトルや日用品に利用されています。製造業として、どのようにDXに取り組んでいるのか、代表の松﨑氏が説明してくれました。

株式会社フジシール 代表取締役社長 松﨑 耕介 氏

株式会社フジシール 代表取締役社長 松﨑 耕介 氏

日本企業の遅れ

まずはじめに、日本とアメリカでデジタルトランスフォーメーションに対して、どれくらい取り組みの違いがあるのか説明します。

デジタルトランスフォーメーションについて、日本の製造業が遅れていることを示すデータ

デジタルトランスフォーメーションについて、日本の製造業が遅れていることを示すデータ

 

アメリカの製造業の営業利益率は8%ほどに対して、日本の製造業の営業利益率は5%にも届きません。なかなか差が縮まらない現状です。また、日本とアメリカではIT投資に対する意識が年を追うごとに差が開いています。

アメリカの製造業のIT投資は売上の約4.1%で、日本の製造業は売上の約1.45%です。日本企業は、ほとんどIT投資の額が増えていない。デジタル変革ができていない。これが現実です。 

フジシールの状況

社内に残るペーパーによる文書

社内に残るペーパーによる文書


フジシールの状況を説明します。現在、社内に16種類くらいのシステムが乱立しています。連携できないシステムとエクセルで、みんな仕事をしているんです。さらに紙の文化も残っています。

そこで現在、業務プロセスの簡素化、効率化に取り組んでいます。簡単にいうと、無駄なプロセスをなくして、ペーパーレス化を進めています。データとして有効活用できる状態で、ペーパーレス化が必要です。また、稟議や承認プロセスの簡略化に加え、電子捺印や電子署名を活用します。

情報資源の共有にも取り組んでいます。これにより、情報や記録を探す時間を排除して、作業時間の短縮を実現したいです。また、各部門が保有するデータをナレッジとして活用・分析し、品質向上と予防保全を実現します。

将来的に目指しているのは、経営データベースを統合して、ERPやほかのシステムとのデータ連携です。

デジタルトランスフォーメーション推進による定量効果ですが、年間売上を45億円増、年間コストを1.1億円減らせると期待しています。

※フジシールの売上高は975億円(2019年度)

デジタルトランスフォーメーションを成功させるには

デジタルトランスフォーメーションを成功させるためには

デジタルトランスフォーメーションを成功させるためには

 

私はフジシールに入社してまだ2年です。その前は日本IBMに25年以上おり、ITを活用した業務変革をたくさん見てきました。そこで学んだデジタルトランスフォーメーションを成功させるために必要なことは、「トップの強いリーダーシップ」と「若手を巻き込んだプロジェクト体制」です。

日本の製造業は、まだまだ生産性向上の余地があると思うので、成長のためにもデジタルトランスフォーメーションが浸透する必要があります。

【ヘルスケア事例】医師が取り組むデジタルトランスフォーメーション

ヘルスケア業界は、コロナ禍でデジタルトランスフォーメーションが加速しています。オンライン診療や医療保険のデジタル手続きなど、これまでは規制もあって進まなかったことが、進んでいる印象です。

そんなヘルスケア業界のデジタルトランスフォーメーションについて、循環器の専門医で、心臓のカテーテル治療をおこなってきた株式会社インテグリティ・ヘルスケア 代表取締役会長 武藤 真祐 氏が説明してくれました。

株式会社インテグリティ・ヘルスケア 代表取締役会長 武藤 真祐 氏

株式会社インテグリティ・ヘルスケア 代表取締役会長 武藤 真祐 氏


コロナ禍でオンライン診療が広く使われるようになったことは、大きな変化だと思います。2020年4月には初診でもオンライン診療が受けられるようになりましたし、疾患の制限もなくなりました。

その中で弊社がいま取り組んでいるのが、患者さんのサポートプログラム「PSP(Patient Support Program)」です。これは医療の質の向上のほか、医療従事者の負担軽減を目標としていますが、最大の目標は患者さんのエクスペリエンス向上です。患者さんにとって「お守り」のようなシステムをどう作っていくか。そのために医師や看護師、薬剤師、患者さんにもインタビューをしてシステム開発に取り組んでいます。

デジタルトランスフォーメーションというと、AI(人工知能)やクラウド、IoT(モノのインターネット)などをどのように使うかといった技術の話に観点がおかれがちです。ただし、それは一つの要素に過ぎなくて、大きな方向性に進むための一つの思想だと考えています。

医療のデジタルトランスフォーメーション

医療のデジタルトランスフォーメーション


いままでは、医療従事者が医療の中身を決めて「いつ外来に来てください」とか「このような治療を受けてください」と患者さんへ伝えるのが普通でした。今回のコロナ禍で、患者さんが自ら考えることが増えてきています。

「オンデマンド」という言葉が非常に重要だと思っています。つまり患者さんが自分の好きな時間、好きな方法で望む医療を選ぶようになります。われわれ医療提供者側も、患者さんに合わせてどのようにサービスを構築していくかを考えなければなりません。そんな時代が来ています。

デジタイゼーション、デジタライゼーションからデジタルトランスフォーメーションへ

電子カルテのように、アナログをデジタル化するデジタイゼーション。その先にデジタライゼーションがあります。これはオンライン診療のような新しい考え方、やり方が普及していくことです。では、その先にあるデジタルトランスフォーメーションは何か。これまでやっていたようなやり方、考え方、組織そのものを変えていく、大きな流れであると思います。

今回のコロナ禍でもわかりましたが、どんな環境下であっても人々は平等に医療を受けられ、適切な医療を享受し、そこに正義がなければいけません。これらを実現するのも、デジタルトランスフォーメーションだと思います。

われわれ医療従事者に限りませんけれども、データを分析したり、インフォメーションを得ることに多くの時間を使ってきました。これをナレッジとして情報を手に入れる。さらには、ウィズダムとして叡智を考えることに人間は時間を使うべきだと思っています。それを実現するのも、デジタルトランスフォーメーションではないでしょうか。

【整骨院事例】デジタルとかけ離れた業界のデジタルトランスフォーメーション 

鍼灸整骨院を全国に展開する株式会社SYNERGY JAPAN。整骨院の業界は、予診票や通院記録などが紙ベースで管理されていることが多く、デジタルとかけ離れた業界といえます。その中で株式会社SYNERGY JAPANがどのようにDXを推進しているのか、成功事例を交えて、説明してくれました。

株式会社SYNERGY JAPAN 取締役 COO 上口 泰正 氏

株式会社SYNERGY JAPAN 取締役 COO 上口 泰正 氏


鍼灸整骨院は日本全国に約5万件ほどあります。ほとんどの整骨院が紙ベースで情報を管理している状態です。診察券や通院記録、業務マニュアルも紙のところがほとんどです。

これまでに感じていた課題

ありがたいことに、弊社にはたくさんの患者さまが来てくれます。しかし、紙のカルテが増えるため、探す手間で時間が取られてしまいます。その結果、長時間労働が常態化しました。

患者さまからは、毎回財布から紙の診察券を探すのが面倒、予約したいのに電話がつながらない、カルテばかり見て自分を見てくれてるのかといった不満の声が……。

さらに経営陣にしてみると、経営状況の可視化が不十分という課題がありました。

そこで、メンバーと患者さまへの価値の最大化を図るため、デジタルの力で変革が必要だと考えました。

患者さまを中心としたデジタルトランスフォーメーションと従業員の働き方改革

患者さまを中心としたデジタルトランスフォーメーションと従業員の働き方改革

DX化の全体像


具体的な取り組みですが、カルテの電子化、アプリやPOSレジの導入をしました。LINEを活用したOne to Oneマーケティングや、チャットボットを活用してオンライン上での接客もおこなっています。

われわれが最初に取り組んだのは、カルテの電子化でした。電子カルテにすることで、作業の効率が飛躍的に上がったのはもちろん、先生と患者さま、先生同士のコミュニケーションが円滑になったことが一番のプラスです。紙からデジタルに変わったことで、業務効率だけではなく患者さま、従業員の「体験」が変わりました。

また、POSレジを導入し、CRMやBIと連携することで経営状況がリアルタイムで確認できます。これにより、経営戦略のスピードも上がりました。パソコンだけではなく、スマホからも確認できます。この結果、総務や経理業務が4分の1に削減されています。

労働時間が減り、生産性も向上

労働時間が減り、生産性も向上


電子カルテとPOSレジの導入によって、従業員の働き方改革も実現しました。総労働時間は減りましたし、一人あたりの生産性が向上しています。なんと約20%の労務改善が実現しました。一番良かったのは、施術者がより「患者さまに向き合える」現場環境になったということです。

顧客の体験と従業員の負担減を実現するには、徹底的なデジタルトランスフォーメーションの推進。ここに解決策があると確信しています。

【グローバル事例】富士通が取り組むデジタルトランスフォーメーション

富士通株式会社は売上3兆8577億円(2019年度連結)、従業員数は全世界で129,071人(2020年3月末時点)。巨大グローバル企業です。IT企業からDX企業に進化するという、富士通が推進するデジタルトランスフォーメーションとは。デジタル化による成功事例も教えてくれました。

富士通株式会社 執行役員常務 CIO CDXO補佐 福田 譲 氏

富士通株式会社 執行役員常務 CIO CDXO補佐 福田 譲 氏


富士通は2020年7月から全社DXプロジェクト「FUJITRA(フジトラ)」をスタートしています。お客さま(ユーザー)に対する、ビジネスそのもののデジタルトランスフォーメーション、富士通社内のデジタルトランスフォーメーションがあります。

全社DXモデル

全社DXモデル


業務の効率を上げる、ビジネスを支える立場にあったITが、いまやデータを活用すると未来が予測できるようになりました。新たなプロダクトを生み出すことも可能ですし、早めに手を打つことによって、未来を変えることもできます。データの価値が非常に高まってきました。

データの利活用をしっかりするためには、

  • データの精度
  • データの鮮度
  • データの正確性

がカギです。これをしっかりと経営で活かしていくために、経営、業務、ITを完全に標準化してデータドリブンな企業に変わっていきます。

富士通は、グローバルやグループ全体の主要な業務のすべてを一つにしていこうと考えています。このプログラムは、ITを導入するプロジェクトではありません。「経営を変えていくためのプロジェクト」と位置づけています。一連の取り組みに1000億円超の自己投資すると決めています。

全世界で7つの要素を標準化していきます。

1.戦略

2.組織

3.制度・ルール

4.データ

5.業務プロセス

6.アプリケーション

7.インフラ

これにより、データドリブン経営を実現していきます。デジタルトランスフォーメーションは、ツール導入だけではなしえません。経営を変える、行動様式を変える、カルチャーを変える。これらが重要です。

富士通では生産性向上のため、具体的な取り組みをおこなっています。ペーパーレス化に取り組んだことによって、営業の生産性向上と意識改革が大幅に進みました。

デジタル化による効率化

デジタル化による効率化


テレワークの活用と定着のため、働く場所にとらわれない仕事環境の整備をしました。業務をモバイルアプリケーション化することで、いつでもどこでもセキュアな状態で業務が遂行できます。

RPA導入による業務の効率化

RPA導入による業務の効率化


業務の効率化のためには、テクノロジーを最大限に利用することも不可欠です。RPAやAIといった最新のテクノロジーを用いた、業務の自動化への取り組みも始めています。

【自治体事例】舞鶴市が取り組むデジタルトランスフォーメーション

京都府舞鶴市では、住民ファースト視点でデジタルトランスフォーメーションを推進しています。自治体のデジタルトランスフォーメーション推進について、新型コロナウイルスのワクチン接種システムを例に挙げて説明してくれました。

 

舞鶴市 総務部デジタル推進課 課長 SDGs未来都市推進本部 チームリーダー 吉崎 豊 氏

舞鶴市 総務部デジタル推進課 課長 SDGs未来都市推進本部 チームリーダー 吉崎 豊 氏

新型コロナワクチン接種システム

住民にワクチン接種を円滑にしていただくには、サポートする各セクションのスタッフが、無駄なく正確にミッションを遂行する必要があります。そのためにはCRMの考え方による一貫したシステムが必要でした。

※CRM・・・顧客との関係を構築・管理するためのマネジメント手法


ワクチン接種システムは急を要しました。要件定義に時間を使って作りはじめる従来のやり方では、間に合いません。そこでクラウドツールを活用して、カスタマイズを進めました。

新型コロナウイルス ワクチン接種事務支援システム資料

新型コロナウイルス ワクチン接種事務支援システム資料


コールセンターにはいろいろな電話がかかってきます。それを記録して反映しないと、スタッフ全員が正しい行動を取れません。みんなが見れる場所に記録しておくことで、ミスのない対応が可能です。

交通の手段がなくて、接種会場まで来れない方にはバスやタクシーの手配をおこなうのですが、台帳を元に対象者を洗い出して、どう支援するかの計画を作る必要があります。その支援機能をシステムに実装しました。

接種券を忘れてきてしまう方もいらっしゃいます。そのときに、その場で再発行が可能なシステムにしました。

みなさん関心の高い予約機能ですが、集団接種が終わったら個別接種になります。自分で予約してもらって接種してもらうやり方です。予約もウェブでできるように実装し、レポート機能もつけます。最新の情報を見られるシステムづくりを考えています。

 

お客さまファーストの共有へ市役所自身がトランスフォームしていく

市役所自身がトランスフォームしていく


ワクチン接種について、市長からは「効率よく、正確にやってほしい」とオーダーがありました。ここでいう「効率よく」は「受けられる住民の方にとって効率よく」です。スタッフにとっての効率よくではありません。これはまさにCRMそのものです。

「市役所ファーストの情報共有」から、「住民ファーストの情報共有」へ市役所が変わっていかなければ、と思っています。

【行政機関事例】経産省が取り組むデジタルトランスフォーメーション

経済産業省が取り組んだ、事業者、国、自治体を繋ぐDX基盤「jGrants(ジェイグランツ」について、システム設計の考え方や運用について説明してくれました。SaaSとPaaSを組み合わせて短期間でシステムを実装する考え方は、とても参考になります。

経済産業省 商務情報政策局 情報プロジェクト室 デジタル化推進マネージャー 横倉 裕幸 氏

経済産業省 商務情報政策局 情報プロジェクト室 デジタル化推進マネージャー 横倉 裕幸 氏


経済産業省が運営する「jGrants」は、事業所さまと事務局さまが使う、補助金の申請プラットフォームです。事業者さまのメリットとしては、補助金が一元管理されているので探しやすくなります。24時間いつでも申請できます。

メインコンセプトは「手続きの電子化」です。申請内容が補助金によって違いますので、柔軟に対応できるような汎用的なシステムを構築しました。

通常このようなシステムは、配布したらあとはマニュアル見てくださいという形で終わってしまいます。ですが、jGrantsはヘルプデスクがサポートします。わからないことがあれば、設定なども助言する仕組みです。

 

事業者、国、自治体を繋ぐDX基盤「JGrants(ジェイグランツ」

事業者、国、自治体を繋ぐDX基盤「jGrants(ジェイグランツ」


補助金には課題があります。紙の手続きが多く、押印も必要でした。さらにその独自のフローであったり、各種手続きに対する個別のフォローや手続きが必要な状態でした。オンライン化ができていないがゆえの非効率な状態といえます。これらを解決するために作ったのが、jGrantsです。

システム構成図

システム構成図


jGrantsは、SaaSとPaaSを組み合わせたクラウドサービスです。開発期間は短く、1年以内に作られたシステムです。「開発スピードを上げて作る」というのが、一つの開発コンセプトになっています。

今後はjGrantsで持っているデータをAPIで吐き出して、事務局さまが使っているシステムと繋ぎ込んで、いままで手作業でやっていった内容を、少しでも楽にしていきたいと考えています。

DX人材育成について

ここまで企業の事例を紹介してきました。続いて、デジタルトランスフォーメーションを推進するうえで必要な「DX人材」についてお伝えします。

IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が定義する、DX人材の6類型があります。

 

人材の呼称例

人材の役割

プロデューサー

DXやデジタルビジネスの実現を主導するリーダー格の人材

ビジネスデザイナー

DXやデジタルビジネスの企画・立案・推進などを担う人材

アーキテクト

DXやデジタルビジネスに関するシステムを設計できる人材

データサイエンティスト/AIエンジニア

DXに関するデジタル技術(AI・IoTなど)やデータ解析に精通した人材

UXデザイナー

DXやデジタルビジネスに関するシステムのユーザー向けデザインを担当する人材

エンジニア/プログラマ

上記以外にデジタルシステムの実装やインフラ構築などを担う人材

▲出典:IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査

 

DX人材=エンジニア、プログラマというイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、この6類型を見ても分かるように、ビジネスの設計やデザインを担当する人もDX人材といえます。こうした人材育成が求められているのです。

デジタルトランスフォーメーションが進まない理由は”人”

「企業のデジタルトランスフォーメーションが進まない理由は”人(ヒト)と組織”であり、根本原因は他人任せ意識にある」と日本オムニチャネル協会会長の鈴木康弘さんは言います。これまでに、多くの失敗事例と成功事例を見てきた鈴木さんだからこそ、気づいたデジタルトランスフォーメーションを成功に導く5つのステップについても紹介してくれています。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

企業のDX化が進まない理由とは? 「成功=ヒト×DX」 

官民連携でDX人材を育成

東京大学教授の松尾豊氏は「日本は遅れていたが、この1-2年でだいぶ前向きになってきた」と言います。

また三重県知事の鈴木英敬氏は「官民連携でDXプロジェクトをやることで、地域の人たちがデジタルについて交流し、地域の人材を育てていこうとしている」と官民連携の重要さについて語っています。行政におけるDX人材の育成プランについても語ってくれています。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

DX人材育成のために必要な産学官の連携とは? 注目は全国の高専生

まとめ

記事の前半では、デジタルトランスフォーメーション(DX)の言葉の意味や、メリットなどについて解説し、後半では、デジタルトランスフォーメーションに取り組む企業の事例をご紹介しました。

デジタルトランスフォーメーションについて、何となくイメージがついたのではないでしょうか。デジタルトランスフォーメーションの重要性は今後さらに増していくと考えられるので、ぜひ取り組んでいただきたいです。

さくらインターネットは、すべての人が「サクセス」する”DX”プラットフォーマーとして、お客さまのデジタルトランスフォーメーション推進を支えてまいります。

 

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