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GMOやピクシブ、アニメイトラボやメルカリなど、数々の企業を経験してきた田面木宏尚が、2026年2月に執行役員としてさくらインターネットにジョインしました。入社のきっかけは、社長 田中邦裕が投稿したnoteの記事に共感したこと。入社から約4か月、いまのさくらインターネットにはまだまだ課題が多く、そのぶん改善のしがいがあると言います。経営のどこに課題を感じ、どのような改革に取り組んでいるのか、話を聞きました。

田面木 宏尚(たものき ひろひさ)プロフィール
さくらインターネット 取締役
秋田県出身。早稲田大学卒業後、GMOクラウド株式会社(現GMOグローバルサイン・ホールディングス)にてCS・新規事業に従事。2014年にピクシブ株式会社取締役COO、2016年より株式会社アニメイトラボ代表取締役社長。2017年に株式会社メルカリへ執行役員として参画し、メルカリジャパンCEOなどを歴任。2022年以降は同社の海外展開を統括。2023年有限会社カイカイキキアドバイザー就任。現在、上級執行役員として経営戦略・データ戦略およびマーケティングを管掌。
社長のピュアなモチベーションに共感した
なぜいま、さくらインターネットにジョインしたのでしょうか?
仕事を選ぶときに、「どの産業が伸びるか」とかではなく、「何がやりたいか」で選びたかったんですよね。前職のメルカリを辞めたあとにそういうことを考える時間があって、いろいろな方と話をしました。ありがたいことに、一緒にやらないかというお声がけも多くいただいて、実際、アドバイザーや業務委託などいろいろな仕事をしていました。
そのようなとき、社長の田中さんの「さくらインターネットは上場から20年となりました」というnoteの投稿を読んで、非常にピュアに仕事と向き合っている人なんだと感じました。田中さんって学生時代のインターネット黎明期にサーバーを立てて、それを誰かに使ってもらったことが事業の原体験になっていますよね。それを30年ずっと続けていまに至る。僕はいろいろな寄り道をしてきたからこそ、原体験に基づいたモチベーションで事業を続けていくことの難しさもわかるし、その大切さにもあらためて気づかされました。
それに、僕は自分が何かをやりたいというよりは、誰かのやりたいことを実現させることが好きなんです。田中さんとは長い知り合いなのでこれまで話す機会もあったのですが、このnoteの投稿を読んであらためて「あぁ、この人は社名のとおり、『インターネット』をつくりたいんだなぁ」と思って。この人のピュアな気持ちを実現させたい、と思ったんです。
入社前、さくらインターネットにどのような印象を持っていましたか?
「歴史があり、しっかりとした企業」という印象でした。起業から30年、上場から20年という中で、試行錯誤を重ねながら、ここまでの会社に成長してきたのだろうな、と。
実際にさくらインターネットに入ってみて、そのイメージは変わりましたか?
そうですね、変わりました。
まず思ったのは社内の仕組み化・標準化において、より良くできる領域が数多くあるということ。私にとっては、それがむしろ魅力でした。改善点を発見し、解決に取り組み、価値を生み出せる余地が大きいと感じたからです。
それから「じゃあこれを改善していこう」と取り組みはじめたとき、一人ひとりが改善に対して素直だということ。一般的には、組織の変化には少なからず反発や調整がともなうものですが、改善の背景や目的をていねいに共有すれば、多くの人が前向きに受け止め、協力してくれます。
だから僕も積極的に、毎週の経営会議で「これやりましょう」「あの取り組みは見直しましょう」と提案していたらすべてやることになってしまって、いまは若干手いっぱいになっているくらいです(笑)。
社員に対して、ほかにはどんな印象がありますか?
一般的には、豊富な知識や高い専門性を持っていることが「優秀さ」と捉えられることが多いのかもしれません。しかし、僕は少し違う考えを持っています。「まずはやってみる人」とか「失敗をおそれずに実行し、トライアンドエラーを繰り返して答えを見つける人」が優秀だと思っています。その点で、さくらインターネットにはそうした「まずはやってみる」という姿勢を持つ人が多いと感じており、一緒に働いていて非常に心強いです。
経営をデータと理論でエンパワーする
いまのさくらインターネットの課題について教えてください。
当社は田中さんをはじめとする、経営陣の見識に裏付けされた先見性によって成長してきた会社です。一方で、市場環境や事業構造が複雑化するなかで、これまで以上にデータを活用した経営が重要になってきていると感じます。
さくらインターネットはこれまで、データセンター投資やGPU投資などを大胆に実行してスケールし、事業を成長させてきた実績があります。これからのAI時代において今後さらに成長していくためには、市場のデータ、お客さまのデータ、あらゆるデータを活用し、それに基づいた蓋然性のある戦略策定と意思決定をより加速させていくことが重要だと思います。さらに、この戦略の根拠と実現可能性を組織全体に共有し、さくらなら実現できる!という共通認識を醸成することで、社員一丸となって実行できる状態にすることが重要と考えています。
そのため、現在は経営や事業に必要なデータを整備し、可視化しながら意思決定できる環境づくりを進めています。データを活用した経営基盤を強化することが、これからのさくらインターネットにとって大きなテーマの1つだと思っています。
そういった課題を、具体的にどのように解決していく予定ですか?
まず取り組んでいるのは、お客さまに関するデータを一気通貫で管理し、より正確に把握できる環境を整えることです。長年の事業運営の中で、データが複数の部署に分散しているという課題は多くの企業に共通していますが、当社でも同様の状況がありました。そこで現在はお客さまがどのようにサービスを認知し、利用し、継続・脱退に至るのかという一連の行動をデータで可視化し、継続的に分析できる基盤づくりを進めています。
そのうえで、データ戦略チームを立ち上げて、これらのデータと市場環境や動向と組み合わせながら、お客様の課題やニーズを多面的に捉え、短期的な改善アクションから中長期の戦略立案にまでつなげています。
では、もう改革は動きはじめているんですね。
現在はダッシュボードの試行や部門横断でのモニタリングの取り組みもスタートしています。営業・カスタマーサクセス・マーケティングなどのメンバーが定期的に集まり、データを基にした課題を共有し、改善に向けた議論を行っています。こうした取り組みによって、お客様の動きや変化をよりとらえやすくなり、具体的なアクションにつなげるサイクルが回り始めています。
「お客さまの役に立つ」ことがさくらの存在意義
ここまでさくらインターネットの課題と改革についてお聞きしましたが、逆に、「ここは変えたくない」という点はありますか?
田中さんが大切にしてきた「さくらインターネットが存在する意義」を、僕も大事に守っていきたいです。それが、お客さまに中長期的にさくらを使っていただくことにつながると思うので。
たとえば、「ここに先行の需要があって、お金をたくさん儲けられるからこれをやりましょう」といった考え方はしたくない。そうやって需要の先食いをしたところで、短期的に数字が上がったとしても、中長期で見ると必ずしも良いことではない可能性がありますよね。そうではなく、しっかりさくらインターネットのサービスにメリットを感じてもらって、長く使っていただく方をさらに増やす。そういったやり方のほうが「さくららしい」と思います。
「さくらインターネットが存在する意義」は何だと考えますか?
「インターネットによってできることの幅を広げてお客さまの役に立つ」ことを第一にしてきた誠実さこそが、さくらインターネットの存在意義だと考えています。
田中さんは学生時代に趣味の一環として自分で構築したレンタルサーバーを友人に無料で提供し、トラフィックが増えすぎて辞めざるを得なくなったとき「有料でいいから続けてほしい」と言われたことがきっかけで、それをビジネスにしました。サービスを使って「使い続けたい」と感じたお客さまがいままでに大勢いらっしゃったからこそ、ビジネスとして成立してきたんです。さくらのサービスがあったことでビジネスがうまくいったお客さまや、初期投資を抑えてベンチャーとして成功した企業も多くいます。そのようにお客さまに「やりたいこと」が「できる」に変わって、よろこんでもらうことが、さくらインターネットの事業の根幹だと思います。
さまざまな会社を経験してきているからこそ見える、さくらインターネットの強みとは何でしょうか?
良い意味でトップダウン組織であることです。田中さんの意思が明確なので、みんなが一丸となって同じ方向に向かっているところは強みだと思います。やはり田中さんと同じように「お客さまの役に立ちたい」「国産のクラウドで日本の役に立ちたい」と思っている人が多いですね。全員で同じ方向を向いて、さらに戦略性を研ぎ澄ませていけば、かなりのパワーで進めると思います。経営陣に対してもマイクロマネジメントでは全然なくて、むしろ大方針やコアにしたい考え方などは共有してもらい、あとは任せてくれる。僕自身はとてもやりやすいです。
キャリアを重ねてからのジョインだからこそ、心がけていることはありますか?
謙虚であること、そしてチームで働くことを楽しくすること。この二つでしょうか。
後から入った人間が「自分のやり方」を持ち込みすぎると、うまくいっているものまで壊してしまう。だからまずは、すでにある良さを理解することを大事にしています。
周りのメンバーが力を発揮していて、チームとしてうまく機能していて、成果が目に見えて、その結果チームが仕事を楽しめている。そういう状態をつくれたときこそ、僕は嬉しいんです。自分が何を成し遂げたか、職場が自分の承認欲求を満たしてくれるかどうかは、正直あまり重要ではなくて。だから自分の役割は、前に出ることよりも、それが実現できるように後ろから支えることかなと思っています。
やはり現場で毎日向き合っている方のほうがより本質的な感覚を持っていると思うこともあります。だからこそ、自分の考えを押しつけないように丁寧にヒアリングをして、メリット・デメリットの両面から判断することを心がけています。
あとはAI関連のプロダクトをとにかくたくさん使うことと、当社のサービスをたくさん使うこと。お客さまの視点を知るために、実際にテストで申し込みをしてみて、自動申し込みのフローや、どういうメールが来るのかなどを確認しています。
さくらは見た目と中身にギャップのある会社
さくらインターネットに限らず、このAI時代において、「会社」というものはどのように変化していくと考えますか?
難しい質問ですね。ちょっと変な表現かもしれませんが、まず、おそらくこれからは会社では「チャーミングな人」が活躍するようになるのではないかなと思っています。定型的な作業はすべてAIがやってくれるようになる一方で、一緒に働いていて面白い、とか、あの人に会いたい、とか、そういう部分はAIでは今のところ補完できない。
AIによってすべての知見の価値が等しく薄まるわけではないと思っていて。AIが学習データから導けることの価値は急速に下がる一方で、「この人が言うなら間違いない」という信頼や、現場で泥にまみれてきた人だけが持つドメイン知識──まだ言語化されていない、データになっていない一次情報の部分は、むしろ希少になっていくはずです。だから薄くなるのは「調べればわかる知見」のほうで、信頼と地に足のついた経験はむしろ効いてくる。
そのうえで、成果に対して愚直にやっているか、AIを使いこなせているか、周りを巻き込んで楽しく仕事できているか。そういう「人間らしいチャーミングさ」がより浮かび上がってくると思います。作業がコモディティ化するからこそ、最後に残るのはその人と一緒に働きたいかどうか、その人を信じられるかどうか、なのかなあと。
これからさくらインターネットでどのような人と一緒に働きたいですか?
冷蔵庫を開けて、バラバラの食材を見たときに「めんどくさいな」と思うか、「さて何をつくろうか」と考えるか。僕は完全に後者なんです。
さくらインターネットも、外からは完成された会社に見えるかもしれませんが、実際の中身はまだ仕組みづくりの途中にあります。言い換えれば、これからいくらでも形を変えていくことができる。そうした未完成な状態を前向きにとらえて、自分の手で価値を作っていくことを楽しめる方と一緒に働きたいと思っています。
最後に、さくらインターネットへの入社を検討している人へのメッセージをお願いします。
僕、よく「怖い」って言われるんですよ。実際はぜんぜんそんなことなくて。内面はけっこう繊細だし、気も小さいんです。そのギャップで、苦労したこともあります。
でも、この経験を通して思うのは、外から見ただけではなかなか本質はわからないということなんです。実際に近づいてみて、時間をかけて触れて、はじめて見えてくるものがある。
さくらインターネットも同じで、外からは整った会社に見えるかもしれませんが、実際には挑戦の余地が多く残っている。まだまだ変化の途中にあります。
だからこそ、先入観で判断するのではなく、ぜひ一度中をのぞいてみてほしい。そのうえで、この環境を面白そうだと興味を持ってくださる方に、ぜひ仲間になってほしいです。