さくらインターネット
さくマガ公式SNS
お問い合わせ

国産という選択肢を確立し、「提供する側になる」というミッションに挑む

さくらインターネットが提供する、安心の国内基盤AIサービス「さくらのAI」 
>>資料をダウンロードする 

2025年12月11日に開催された、国産AIの共創をテーマにしたさくらインターネット初のカンファレンス「SAKURA AI Conference」内のセッション「国産という選択肢 ─ 技術主権か、テクノロジーの自由か」において、株式会社Preferred Networksビジネス開発部 部長 関 享太さん、株式会社miibo 代表取締役CEO 功刀 雅士さん、日本電気株式会社 AIテクノロジーサービス事業部門 主席プロフェッショナル 千葉 雄樹さんが登壇。さくらインターネット フェロー 小笠原 治がモデレーターを務めました。急速に発展する生成AI市場のなかで、日本の強み・課題、国産AIを選ぶ意義など、登壇者が語った内容を一部抜粋してお届けします。

※本記事の内容は、2025年12月の登壇時点での発言をもとに構成しています。
生成AIを取り巻く環境は急速に進展しているため、最新の活用事例とは異なる可能性があります。

生成AIの最新状況――急速な変化と日本の課題

小笠原

今日は、大手メーカーでAIに取り組まれている方、スタートアップとして存在感を示してこられた方、そしてミドルウェアやその先で顧客との接点を作られている方にお集まりいただきました。今回は、日本国内でどのようにAIを使ってもらいたいかについて話し合い、「国産AIとは、ただ守るだけのものではなく、使い続けることで育つ選択肢」という視点を持って帰っていただきたいです。

まず、AI市場の急速な動き、日本独自の制約、そして日本だからこそチャレンジできている点についてお聞かせください。

千葉さん

私は事業戦略の策定に関わる機会がありますが、3か月も経つと、言っていることが全く変わっているというのは日常茶飯事です。だからこそ「未来を言い当てる」のではなく、変化に対してどう軌道修正をしていくかが重要です。さまざまなことを積極的に試していくなかで、私たちにできることは何か、お客さまに認められるにはどこを育てればいいのかを常に追い求め続けるしかありません。そこで歩みを止めてしまうと、私たち自身が振り落とされてしまう。特別なことをするわけではなく、愚直に、楽しみながら取り組んでいます。

小笠原

とても大切なことですね。AIに関わっていると、よく未来の予測ばかり聞かれますが、私たちは予言者ではなく、行動して未来を作ろうとしている側。だから「こういうふうにしたい」という話になるんですよね。

関さん

いまは非常に面白い時代だと思います。一方で、ChatGPTの登場以降、すごい勢いでさまざまなサービスが毎日のように登場して、驚くことに慣れて感覚が麻痺しつつあるとも感じます。

いまは、言語モデルだけではなく、拡散モデルを使った動画生成など多様化しており、一つひとつのインパクトが大きいんですよね。とはいえ、そのど真ん中で日本も戦えている現状を率直に楽しんでいます。

生成AIの日本ならではの前提条件としては、いまだに「いかに大量のデータを使って学習させるか、パラメーター数を増やすか、計算量を確保するかで指数関数的に能力が変わる」と信じられているところがあり、ここを突き詰めるのが王道なのだろうと思います。一方で、データの工夫次第で、モデルサイズが結構小さくても性能のいいものができるという話もあります。これはエンジニアリングという観点からも非常に面白いテーマだと思っています。

小笠原

功刀さんは、そのようなモデルを多くの人が使えるようにする側ですよね。いまの急速な動きはどのように見ていますか。 

功刀さん

miiboを個人開発から始めて法人化する過程で感じたのは、「AIに驚くことが終わり、静かに実用フェーズに入った」ということです。みなさんも、驚くことを忘れて自然と実用的に使っているAIが増えているはずです。

ただ日本に関して言えば、「日本リージョンで使っていいのだろうか」といった判断で、ワンテンポ遅いと感じるところがあります。海外ではすでに主要な業務で使われているものが、日本では最近になってようやく使われるようになってきた印象があります。

小笠原

私も大学で教えていると「教育の場で使っていいのかどうか」という議論が出ます。「使うのはよいが、どこが悪用のラインなのか」を決めなければいけないのですが、その基準が曖昧で、それは日本的な制約としてあるのかもしれませんね。

基盤モデル搭載済みGPUサーバーで推論処理ができる 
APIサービス「さくらのAI Engine」 
>>サービスの詳細を見る 

国産AIには安心感、信頼感がある

小笠原

みなさんは、国産の「さくらのAI」「さくらのクラウド」を選んでくださっていますが、国産を選んだときのポイントはどのようなところだったのでしょうか。

関さん

海外のリージョンに機密情報や個人情報が渡ってしまったり、それが学習に使われてしまったりするのは問題があるという話がありました。インフラからモデルを含めて全て国産であることで大きな安心感を得られる方もいるため、それは訴求ポイントだと思っています。最近の世界情勢が不安定なこともあり、将来に不安を感じられるお客さまにとっては心強いのではないでしょうか。

小笠原

「日本が国産AIを作れる状態を担保できる、担保すべき」という話もしていきたいのですが、功刀さん、モデルを選べるプラットフォームを提供している立場から見ると、国産のよさはどこにありますか。

功刀さん

僕は、miiboのようにモデルを選択できるプラットフォームには、絶対に国産の選択肢が必要で、そのためには信用が大事だと思っています。実際に業務の中心的な用途で使えることがAIの価値ですが、そこで使うには信頼されないといけません。

小笠原

「絶対に国産」でやるべきというポイントを、お一人ずつ教えていただけますか。

千葉さん

たとえば、日本の仕事の進め方や日本語のドキュメント作成、また文化的背景や文脈で、国産のAIや基盤、技術が求められる状況は実際にあります。具体例こそ挙げませんが、「そこにうまくマッチしている」と感じているお客さまは結構いらっしゃるかと思います。

関さん

国産でやるべき理由はたくさんあります。海外製のモデルを使うのではなく、日本で作れるようになっていなければならないという大義名分は当然ありますね。それに、海外製のモデルに勝てるユースケースもだいぶ見つかってきています。一方で、いかにしてお客さまが持つデータや情報とつなぎ合わせていくかはとても重要で、そのようなエージェンティックな動きはどうやって既存のモデルに追随していくのか、そこは大きな論点になるかと思います。

小笠原

弱みも正直に見ていきたいのですが、いま提供されているサービスで国内モデルを選べたとしても、いまのところはまだ選ばれにくいように見えますか。

功刀さん

正直、海外のモデルを使いたい人はまだ多いと思います。現時点では精度も高いですし、そこは課題ですね。

ただ、ほとんどの生成AIの学習データはウェブの情報がほとんどであるなら、まだ利用できていないデータも多いはずです。そこに国産のモデルがあるのなら使うべき、という話もあります。モデルの性能の進歩も重要ですが、どれだけコンテキストをプロンプトに入れられるかのほうが重要になると考えると、日本社会のさまざまな場所にLLMが張り巡らされていることが大事です。そこで「それが国産か海外製か」と考えると、やはり国産であることは強みになってくると思っています。

いつまでも提供“される”側ではいられない

小笠原

私には、国内でAIのエコシステムを回していかなければ、という危機感があるんです。10年~15年で日本の人口は約1,500万人減少すると言われていて、これは四国と九州の人口が丸ごと消える規模です。そして、日本語は世界人口の2%しか話者がいない少数言語ですし、日本経済を見ると生産性が高いとはいえません。そうした国にアメリカのビッグテックがいつまでもサービスを提供し続けてくれるとは限りません。みなさんはいまインターネットを当たり前に使っていますが、ずっと提供される側でいられるでしょうか。

この状況において、どういうエコシステムを構築すればよいか、そしてエコシステムが回り始めるための条件は何か、みなさんのお考えを聞かせてください。

功刀さん

国産モデルが進化し発展していることに、みなさんが実感をともなって熱狂することでしょうか。国産モデルのAIを業務効率化のために使う、さらに、「トップラインに上がった」という話がたくさん出てきて、伝播していく。それが熱狂につながる。そのような盛り上がりのなかで、国内でAI発掘やビジネスコンテストが増えてくると、エコシステムが形成されると思っています。

関さん

まずは、国内のAIがどんどん使われるための環境が出てくることでしょうか。現在、大半の方は国産モデルを使ったことがないと思いますが、ほかのモデルは結構使っていますよね。まずはそういう生成AIを普段から使うことです。それもチャットインターフェースだけで使うのではなく、業務にどんどん取り込んでいく。その先で、いろいろなユースケースに特化したアプリケーションが出てきますが、そのアプリケーションの裏側でAIが非構造なデータだけを処理していたり、じつはLLMが回っていたりというものもたくさん出てくると思います。そのようにして、生成AIの利用環境、推論環境が増えていくことが必要です。

2つ目は、AIにしっかり学習させていくためにどう仕組みを作っていくか、レギュレーションなどとセットで考えていくことだと思います。現実問題、学習用途ではNVIDIAの牙城を崩すことは難しいと思いますが、AIが学習するためのデータに関しては、まだ私たち側に主権があることが重要です。まだウェブ上にない非構造なデータ、たとえば、製造業が持っている情報など、日本には有効活用されていないデータが山ほど存在します。これを次世代のためにしっかり学習させていくことが重要でしょう。

千葉さん

そもそもいまの日本は、AIエコシステムが回り始める前の段階にあるのではないかという感覚もあります。ちょうど1年前、北米出張で現地のハイパースケーラーの方と話をした際、ようやく社内の生成AIの利用率が60%を超えたと聞きました。ChatGPTが登場して2年目ぐらいのタイミングでその状況なので、日本はさらに1年ぐらい遅れているのだろうかという印象も抱きました。

ですから、いまの日本には、日々AIを使いながらそのよさを実感している人がまだまだ少ないのかもしれません。みなさんにとってAIの存在自体が当たり前になって、それがどういう技術で実装されているかということすら意識しない状態になったら、私たちが作っている国産の技術が一定割合で使えるところが自然と生まれてくると思います。

AIが“意識されない”社会でこそエコシステムは回り出す

功刀さん

いま千葉さんがおっしゃった「AIが日常に溶け込んでいる状態」が、エコシステムが回っているということなのかもしれないですね。その状態があったうえで、本当に実用的なものが流通しはじめたときに、「ここに使われるLLMって何がいいんだろう」という議論が自然と起こるのではないでしょうか。

小笠原

恐らく、いまはまだAIを「使っている」感覚なんでしょうね。では、どんなAIがあったら生活や仕事に溶け込んでいくでしょうか。最後に、私たちはどこを目指すのか、展望をお聞きしたいと思います。

千葉さん

自分の行動履歴から生み出されたデータをAIがうまく活用してくれて、それを自分でコントロールし、恩恵を受けている――そう実感できる仕組みづくりが大事かと思います。AIの恩恵を受けている実感がデータの主権というかたちで実装されることは、理想的な状態ではないでしょうか。

関さん

個人的によく言っているのが、LLMやSLMではなくPLM(Personal Language Model)というのがあってもいいかなと、いろいろな場で話しています。5~10年後には超巨大なモデル、AGI(Artificial General Intelligence=汎用人工知能)やASI(Artificial Superintelligence=人工超知能)と呼ばれるようなものができてしまうかもしれません。

そのとき、「AIに全ての判断をゆだねる人間であっていいのか」という話は当然出てくると思っています。でも、そこで自分の行動習慣や考え方を端末上で学習し、カスタマイズしてテーラーメードしてくれるようになっていたら、より豊かになるはずです。1つの巨大なAIだけにすべての判断を任せるのではなく、うまくAIと共存する関係も築けるのではないでしょうか。そのためにも、ラップトップやスマホより規模が小さくても高い精度を持つモデルを作っていくことは、エコシステムの発展に貢献するだろうと考えています。

功刀さん

AIは、「やりたいこと」に割く時間やそこへ到達する経路を最適化するところによさがあると思います。そして、人間が本当に思い通りに使えるAIが登場したときに重要になるのは、やはりコンテキストです。身の周りにあるコンテキストを吸い上げて、その人に最適な提案をしてくれることが重要ですが、AIに読み込ませてもいいデータかどうかという整理が必要になってくるという話もあります。国産モデルのエージェントを張り巡らせ、最適なデータを取得して、その人がやりたいことを最短で導いてくれる世界が来るといいですね。

小笠原

今回は、国産AIをめぐってさまざまな議論ができました。なかでもコンテキストの重要性が大きなポイントとなりましたが、それだけでなく、実用性やエコシステムの広がりといった視点も印象に残りました。これらの要素がそろうことで、国産モデルは今後、より魅力的な選択肢になっていくと思います。

さくらインターネットが提供する、安心の国内基盤AIサービス「さくらのAI」 
>>資料をダウンロードする 

執筆・編集

さくマガ編集部

さくらインターネット株式会社が運営するオウンドメディア「さくマガ」の編集部。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

すべての記事を見る

関連記事

この記事を読んだ人におすすめ

おすすめのタグ

さくマガ特集

働くすべてのビジネスパーソンへ田中邦裕連載

みなさんは何のために働いていますか? この特集では、さくらインターネットの代表・田中が2021年から2022年にかけて「働くすべての人」へ向けてのメッセージをつづりました。人間関係を良好に保つためのコミュニケーションや、必要とされる人になるための考え方など、働くことが楽しくなるヒントをお伝えします。

さくらの女性エンジニア Real Voiceインタビュー特集

さくらインターネットでは、多様なバックグラウンドを持つ女性エンジニアが活躍しています。この特集では、これまでの経歴や現在の業務内容、めざすキャリア、ワークライフバランスのリアルなど、さまざまな角度から「さくらインターネットの女性エンジニア」を紐解いていきます。

転職組に聞く入社理由「なぜ、さくら?」

さくらインターネットには、有名企業を何社も渡り歩いてきた経験豊富な社員がいます。本シリーズでは『転職組に聞く入社理由「なぜ、さくら?」』と題し、これまでのキャリアや入社理由を紐解きながら、他社を経験しているからこそわかる、さくらインターネットの魅力を探ります。

Welcome Talk「ようこそ、さくらへ!」

さくらインターネットには、さまざまなバックグラウンドを持つ仲間が次々と加わっています。本シリーズ『Welcome Talk「ようこそ、さくらへ!」』では、入社直後の社員と同じ部署の先輩による対談を通じて、これまでの経歴や転職理由、関心のある分野や取り組みたいことについてざっくばらんに語ってもらっています。新メンバーの素顔とチームの雰囲気を感じてください。

若手社員が語る「さくらで始めるキャリア」

さくらインターネットで社会人としての第一歩を踏み出した先輩たちのリアルな声を集めました。若手社員のインタビュー、インターンの体験談、入社式レポートなどを通じて、キャリアの始まりに役立つヒントや等身大のストーリーをお届けします。未来を考える学生のみなさんに、さくらのカルチャーを感じていただける特集です。