さくらインターネットの最新の取り組みや社風を知る
>>さくマガのメールマガジンに登録する

国や自治体の情報システム基盤として活用される「ガバメントクラウド」。さくらインターネットが提供する「さくらのクラウド」は、デジタル庁が令和5年度および令和8年度に募集した「ガバメントクラウド整備のためのクラウドサービス」の双方において、国産企業として唯一採択されました1。しかし、その道のりは決して平坦なものではありませんでした。最初に技術要件書を見たとき、開発チームは機能面でも体制面でも「いまのさくらのクラウドとの距離」を痛感したといいます。
今回は、ガバメントクラウドへの挑戦を技術・組織の両面から支えたSRE本部 本部長 長野 雅広に、プロジェクト開始から2023年の仮認定、2026年の正式採択までの歩みを振り返りながら、組織の変化や次なる挑戦まで聞きました。

長野 雅広(ながの まさひろ) プロフィール
2021年1月にさくらインターネットへ入社。大学在学中から京都でスタートアップ企業に参加。2006年に株式会社ミクシィに入社し、2010年に株式会社ライブドアに転職。Webサービスのチューニングコンテスト「ISUCON」の創設に関わる。2015年に株式会社メルカリに入社し、SRE組織を立ち上げたのち、21年1月にさくらインターネットに入社。26年4月、新設のSRE本部 本部長に就任。
X:@kazeburo
技術要件を全員で読む「読書合宿」
初めてガバメントクラウドの技術要件書を見たとき、率直にどう感じましたか?
私が最初に見たのは、さくらインターネットが令和5年度ガバメントクラウドに応募する前年の2022年版の技術要件書です。そのときは、「いまのさくらのクラウドとはまだ距離があるな」というのが率直な印象でした。シンプルに言えば、求められる機能が十分ではなかったんです。 ただ、それ以上に大変だったのは要件を読み解くことでした。「なぜそれが必要なのか」「どのような利用を想定しているのか」までを理解するのに、とても時間がかかりました。
いつ頃から本格的にプロジェクトが始まったのでしょうか?
2023年です。じつはそれ以前にも、社内ではガバメントクラウドへの応募可能性を検討していました。ただ、当時は機能面や体制面を踏まえると要件を満たすことが難しく、応募を見送る判断となりました。それでも、「いつかは挑戦したい」という想いは社内にあったんです。
大きな転機となったのが、2023年5月にデジタル庁が実施した市場調査です。次期ガバメントクラウドのあり方についてクラウド事業者から意見を募る機会があり、そこでさくらインターネットとして「こうした形であれば取り組める」「国産事業者として貢献できる」といった考えを伝えました。その後、2023年7月に社内でガバメントクラウドへ本格的に取り組む方針が示され、挑戦が本格的に動き出しました。
開発方針はどのように固めていったのですか?
仮認定に向けた提案資料の作成が本格化した2023年11月、技術要件書を読み解く「読書合宿」を社内で実施しました。東京支社に主要メンバーが集まり、約300件の技術要件を一つひとつ読み合わせながら、「これはどういう意図だろう」「既存技術で対応できるのではないか」「ここは新規開発が必要だ」と議論を重ねました。
合宿は3回にわたっておこないました。私自身、要件書にひととおり目を通すだけで3日かかったほどで、その難しさと要求範囲の広さを痛感していました。こうして要件への理解を深めながら、開発方針やスケジュール、採用計画を一気に具体化していったのです。
採択を目指すうえで、強みになったと思う自社の技術はありましたか?
基盤の技術です。仮想サーバー基盤そのものを自社で開発していたことは、非常に大きかったと思います。さらにデータセンターから運用まで一貫して担い、ネットワークやソフトウェアまで含め、さまざまなレイヤーを理解していることが強みでした。
ガバメントクラウドとしての「さくらのクラウド」の強みは?
>>資料のダウンロードはこちらから
10人程度だったチームが100人を超える組織に

そうして2023年11⽉に提示されたすべての技術要件を満たすことを前提とした条件付き採択を受けたわけですね。その後、技術要件を満たすため、開発チームはどのように組織されていったのでしょうか?
もともとの開発チームは10人程度。各々の専門領域を固定せず、ひとつのチームとして全員が多様なシステムを同じように扱えるようにする、たとえるなら「アメーバ型」の組織でした。しかしガバメントクラウドへの対応では、多数の機能を同時並行で開発しなければなりません。より生産性を高め、開発スピードを上げる必要があります。そこでチームを複数に分け、それぞれが特定の領域を担当する体制へ移行しました。各自の担当範囲を絞る代わりに、チームとして専門性を高める。仮認定後は採用も進めながら、各チームが責任を持って開発を担う形に変えていったんです。
採用を進める際に意識していたことはありますか?
まずはチームの核となるエンジニアリングマネージャーを採用し、その人たちを中心にオンボーディングやチームづくりを進めました。結果として、開発組織は100人を超える規模へと成長していきました。
採用ではリファラルにも力を入れました。私はこの業界に約30年います。最近は、クラウドを前提とした開発経験が中心の方が多いでしょう。一方で、私が知る経験豊富なエンジニアは、クラウド前提となる以前のことを知っているので、クラウドをどう作ればいいのかがわかるんです。そうした多様な経験を持つ方々にお声がけしました。
今回のプロジェクトを通じて、クラウドを作る技術が継承された面もあるのでしょうか?
さくらインターネットは継続的に新卒採用もおこなっています。経験豊富なベテランエンジニアと新卒が同じチームで働くことで、若手に対して技術の継承ができている部分はあると思います。平均年齢を上げてしまったかもしれませんが(笑)、組織として多様な経験が加わり確実にプラスになっています。
新しいメンバーが多く入るなかで、カルチャー面で苦戦したことはありましたか?
意識の統一です。
ガバメントクラウドという言葉から、「国専用の特別なクラウドを作る」と受け止められることもありました。でも本質はそこではなく、私たちが力を注ぐべきなのは、「クラウドをよりよいものに改善していく」こと。ガバメントクラウドで終わるものではなく、継続していく取り組みです。その結果としてガバメントクラウドの要件を満たし、より多くのお客さまへ価値を提供できるようになるのです。その考え方を浸透させるために、同じメッセージを繰り返し発信しました。
さくらインターネットのガバメント分野への取り組みとは?
>>資料のダウンロードはこちらから
顧客の実現したいことを支えるために技術を使う
プロジェクトを通じて何が変わったと感じますか?
一番大きな変化は、顧客視点がより強くなったことです。
以前の開発チームは、技術者集団として「本質的なものを追求する」文化が強かったと思います。みんな技術が大好きで、よりよいものをつくりたいという想いを持っていました。それはいまも変わりません。
ただ、「『やりたいこと』を『できる』に変える」というさくらインターネットの企業理念の捉え方をあらためて考えるようになりました。昔は「やりたいこと」に自分たちのやりたいことが入ることも多かったかもしれません。しかし本当に実現すべきなのは、お客さまのやりたいことです。お客さまが実現したいことを支えるために技術を使う。お客さまに価値を届けることを前提に開発を進める文化が、組織全体に根付いていきました。
組織としての成果を実感した瞬間は?
最初は月50〜60件程度だったリリース数が、2025年11月頃には300〜400件規模となり、その後は500件を超える水準まで増加しました。もちろん件数だけで開発力を測ることはできませんが、この規模のリリースが可能となり、継続的に改善を届けられる組織へ進化したことは間違いありません。新しく加わったシニアエンジニアやマネージャーがもたらした知見も大きかったと思います。
そして2026年3月に、令和5年度および令和8年度に募集されたガバメントクラウドへ正式に採択されました。官公庁に限定せず、今回の取り組みによってどのような反応がありましたか?
さくらインターネットやさくらのクラウドが、これまで検討対象とならなかったお客さまにも、候補に入れていただけるようになりました。クラウドだけでなく、GPUなどほかの当社のサービスも併せて利用することを検討いただける機会が増えてきたと感じています。
ただ、正式採択はゴールではありません。サービスとして継続的に価値を届け続けなければ意味がない。「ここからが正念場だ」と気持ちを切り替えて、全社一丸となってこれからも取り組んでいきたいですね。
ガバメントクラウドとしての「さくらのクラウド」の強みは?
>>資料のダウンロードはこちらから
プロジェクトで得た経験を、次の挑戦へ

現在はどのような仕事を担当しているのでしょうか?
SRE本部の本部長として、データセンター運用や24時間365日の監視運用を担う組織を率いています。
クラウドサービスは、作ることだけでなく安定して運用し続けることも同じくらい重要です。しかし運用の仕事は表に出る機会が少なく、その価値が十分に伝わりにくい側面があります。
だからこそ、運用を支える人たちの価値をどう発信するか、どう採用につなげていくかが大きな課題です。人口減少によって人材確保がますます難しくなるなか、サービスを支える基盤をいかに維持し、発展させていくかに挑戦しています。
ガバメントクラウド対応での経験は、現在の仕事にどのように活かされていますか?
もともと私はソフトウェアエンジニアとして、監視や障害対応など運用領域を専門としてきました。一方で、ガバメントクラウドのプロジェクトでは、組織づくりやマネジメントに多くの時間を費やし、チームのパフォーマンスをどう高めるかを考え続けてきました。
それがいま、オペレーションの価値向上や組織力の強化、人材採用、そして社外への発信に活かされています。運用という重要な領域の価値をさらに高めていきたいですね。
社会を支えるパブリッククラウドを一緒に作りませんか?
>>さくらインターネットのエンジニア採用情報を見る
今回ご紹介した内容は、統合報告書『SAKURA no REPORT 2026』の制作にあたり実施したインタビュー をもとに再構成したものです。統合報告書では、このインタビュー内容を時系列で振り返る企画として掲載しているほか、さくらインターネットの強みや成長戦略、ESGへの取り組み、代表取締役社長・田中邦裕のインタビューなども掲載しています。ぜひあわせてご覧ください。
New
New