さくらのクラウド検定で国産クラウドの技術を身につけよう
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仙台市が主催する「SENDAI X-TECH Innovation Project」において、2024年度から新たにスタートした「クラウド利活用人材育成プログラム」のキックオフがおこなわれました。このプログラムは、オンラインのハンズオンやワークショップなどに参加し、「さくらのクラウド検定」合格を目指すものです。
初日となるキックオフの基調講演において、さくらインターネットの執行役員 髙橋 隆行が登壇。さくらのクラウド検定が目指す「DX人材の育成」と、なぜいまIT教育が必要なのか、日本が抱えるデジタル貿易赤字やデジタル競争力低下などの課題について語りました。本記事では、その内容を一部抜粋してお届けします。

髙橋 隆行(たかはし たかゆき) プロフィール
さくらインターネット株式会社 執行役員
東京都出身。カスタマーサポート、プリセールスエンジニア経験を経て2006年にさくらインターネットに入社。運用現場業務に従事したのち、2011年に運用執行役員に就任。2016年に営業管掌として異動、非営利団体KidsVentureの立ち上げ、グループ会社代表取締役経験を経て、現在はテクニカルソリューション本部を管掌し、パートナー戦略策定やユーザーへの教育支援に従事。
さくらインターネットについて
さくらインターネットは1996年に創業し、クラウドサービスをはじめとするITインフラを提供しています。さくらインターネットのサービスは、大きくカテゴライズすると「クラウドサービス」「物理基盤サービス」「周辺サービス」の3つにわかれます。本日お話するのは「さくらのクラウド」が中心になりますが、さくらインターネットはこのような多岐にわたるサービスによってお客さまに価値提供する企業です。

当社の特徴は、垂直統合・自前主義です。データセンターの設計から運用、サービス開発、サポートまでを自社で手掛け、柔軟性の高いITインフラを提供しています。また、国の支援を受けながら、ガバメントクラウドや国産の生成AI事業にも注力しています。
>>(ニュースリリース)さくらインターネット、ガバメントクラウドサービス提供事業者に選定
本日は、IT教育の重要性と人材育成の取り組みについてお話する前に、総論から各論へフォーカスしていきましょう。
ガバメントクラウドへの取り組み
まず、ガバメントクラウドへの取り組みについてお話をさせていただきます。
突然ですが、もし日本にクラウド事業者やサービスが存在しなかったら、どのようなリスクがあるでしょうか。
データが国内に存在しない、クラウド技術が国内に根付かない、有事の際にサービスが利用できなくなる、デジタル貿易赤字の拡大、デジタル競争力の低下……いずれも深刻な問題です。こうした課題を背景に、国産クラウドの確保が求められています。
2021年、デジタル庁の発足時にガバメントクラウドに選定されたのは、海外の大手クラウド事業者のみでした。こうした中で、日本国内でもクラウド技術を確保して自国のデータを国内企業が管理し、特定の事業者への依存を避ける必要性が高まりました。そこで、さくらインターネットではガバメントクラウドへの応募を決意し、2023年11月、さくらインターネットの「さくらのクラウド」が、ガバメントクラウドに2025年度末までに技術要件をすべて満たすという条件付きで認定されました。

デジタル貿易赤字とデジタル競争力
日本のデジタル貿易赤字は2023年通年で5.5兆円に達しています。1 とくに外資のクラウドサービスやAIの利用が進むほど、海外企業への依存が高まり、さらなる赤字拡大が懸念されているのです。
日本のデジタル競争力は、IMDの調査で67か国中31位と微妙な位置です。2 技術面では向上が見られますが、新しい技術を理解・構築するための知識や将来への備えが不足しています。日本の小中学校の理数教育は世界トップレベルであるものの、成人後にその強みを活かせていない現状を反映した結果といえるでしょう。
日本は現在、海外のデジタルサービスに依存しすぎており、技術革新の停滞を招いています。これは単なる懸念ではなく、実際に国内でのイノベーションが停滞しているという問題に直結するのです。また、価格決定力を失い、為替の影響を受けやすくなるほか、サプライチェーンリスクも増大しています。海外の不安定な状況によってサービスが停止する可能性があるため、経済安全保障の観点からも自国でデータを守る必要があります。
しかし、IT鎖国的な考え方をしていいわけではありません。海外の優れた技術を積極的に活用し、それをもとに国内でも同様の技術を開発、過度な海外依存を避けつつ国内の技術力を高める必要があります。また、国家機密を扱うデータについては、取り扱う場所に十分な配慮をしなければなりません。経済安全保障の観点からも、国内でのデータ保護が求められています。
これらを踏まえ、日本の企業が積極的に活動できる状況をつくることが非常に重要だと考えています。
DX人材・リスキリングの必要性
現在、第4次産業革命の時代に突入しており、IoTやAI、ロボット技術の活用により、仕事の発展や多様化が進んでいます。
日本では、2008年をピークに人口減少が続いており、この状況に対応するためにはテクノロジーを最大限に活用し、産業を維持しながら、人の労働力をより重要な分野に集中させることが求められています。
しかし、多くの日本企業では、デジタル人材を採用・育成する体制が整っていないため、自社内でDXを完結することが難しい状況です。これに対し、米国では非IT企業にもエンジニアが在籍していることが多く、組織全体でDXを進めている点で大きな差が生じています。
日本は少子高齢化が進んでいますが、現在の日本の人口ピラミッドを見ると、40代から60代の層が最も多く、約4,000万人にのぼります。この世代は豊富な経験と知識を持ち、今後も多方面で活躍する意欲が高いと考えられます。リスキリングを通じて新たなスキルを身につけることで、社会のさまざまな場面でその力を発揮し続けると考えております。
そのため、企業は完成されたDX人材を外部から採用するのではなく、既存の人材を含めたリスキリングを推進し、全方位でDX人材の育成に取り組むことが重要です。
DX人材育成のポイント
「2025年の崖 3」という問題を聞いたことがある方も多いかと思います。今年はレガシーシステムを刷新しなければならない時期なのです。企業が人的資本経営に力を入れて人材の価値を引き出し、さらにそれを高めるために、従業員に活躍や教育の機会を積極的に提供する必要があると思います。
また、経済産業省では、DX人材不足に対して「デジタルスキル標準」を定め、各企業への支援をおこなっています。「DX推進人材」に求められるのは、共通知識を持つことです。すべてのビジネスパーソンや新社会人に対して、ある程度のリテラシーの底上げを図らないと、DXは加速しません。デジタルを「使う」だけでなく「つくる」こと、そのサイクルをまわすことで全体のレベルを上げていくことが重要なのです。
DX人材の育成のポイントは3つあります。
1つ目は、「全方位で取り組む」こと。国内で競争や足の引っ張り合いをしている場合ではありません。会社の利害を超えて教育に取り組み、日本全体のデジタルスキルが上がれば、結果として各企業が大きな利益を得られるはずです。
2つ目は、「DX人材の育成=目的ではない」ということ。DXや人材育成自体がゴールではありません。もっとも大切なのは、その企業や個人が「やりたいことをどれだけ実現できるのか」です。DXはあくまでも目標を達成するための手段にすぎません。やりたいことを実現するために、人材育成に取り組むという視点が欠かせないのです。
3つ目は、「人材が活躍できる仕事や会社、社会をつくる」ことです。人材を育成するだけでは不十分で、その人たちが力を発揮できる環境を整える必要があります。
さくらインターネットの取り組みと今後の展望
さくらインターネットは、DX人材の育成を支援するために、企業・学校・子ども向けなど多様な取り組みをおこなっています。
企業向けには、2024年4月に「さくらのパートナーネットワーク」を立ち上げました。これは、技術的な支援や、販売促進の支援を通じて、パートナー企業との連携を深め、共に成長していくための提携プログラムです。DXの取り組み方がわからない、ITエンジニアが不足しているといった課題を抱える企業を支援するために、当社が持つ知見を活かして活動中です。
>>(関連記事)パートナーシップの強化であらゆるお客さまに最適なサービスを。さくらインターネットの新たな「セールスパートナー制度」
学校向けとしては、かねてより「高専支援プロジェクト」として全国の高等専門学校(高専)の学生向けに教育支援活動をおこなっています。2023年3月には高専機構(独立行政法人国立高等専門学校機構)と包括連携協定を締結しました。これは、さくらインターネットと高専機構が相互に人材・技術・資源などを活用することで社会貢献を図り、ひいては産業発展を目指すことを目的としているものです。この取り組みを通じて、当社のサービスや計算資源を提供し、学生たちが世界で活躍できる素地をつくっていきたいと考えています。
また、子ども向けには「KidsVenture」というプログラミング教室を運営しています。将来の選択肢を広げるために子どものうちからデジタルを知ることが重要であるととらえて、子どもたちに電子工作やプログラミングに興味をもってもらうことを目的としています。
2024年に「さくらのクラウド検定」を新設
2024年4月には、新たにスキルを測る物差しとして「さくらのクラウド検定」をリリースしました。この検定のコンセプトは、「ITとDXの教育コストを限りなくゼロにする」ことです。受検料はかかりますが、参考書を買わなくてもいいように、教育コンテンツはすべて無料で提供しています。ぜひ皆さんに積極的に活用していただきたいと思っています。
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また、私の友人である福井県の企業である株式会社jig.jp 取締役 創業者・福野(泰介)さんが、さくらのクラウド検定の教育コンテンツをGitHubにアップロードし、改善点をIssueとして管理するといったことを自主的にしてくださいました。これを見て、日本企業が持つ素晴らしい知識をもっとオープンソース的に活用すべきではないかと改めて感じました。
具体的にどのようにしていくのかは検討の必要がありますが、さくらのクラウド検定のコンテンツをより幅広く使っていただき、多くの方のデジタルスキル向上に貢献できるよう、今後も取り組んでいきます。
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