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技術の進化によって、エンジニアを取り巻く環境は大きく変わっています。なかでもクラウドは、試行錯誤を高速に回し、アイデアを一気にスケールさせるための「前提条件」となりつつあります。
ではそのクラウドを、私たちはどのように学び、どのように使い、未来につなげていけばいいのでしょうか。
本記事では、長年クラウドの最前線に携わってきた日本初のクラウドソリューションアーキテクト・荒木 靖宏が、自身の原体験を交えながら、若いエンジニアに伝えたい学びの姿勢と、「クラウドを前提に考える」ことの意味を語ります。
※本記事は、さくらインターネットのYouTubeチャンネル「さくらのデジタルインフラ学校」で2025年12月24日に公開した動画をもとに執筆しています。

荒木 靖宏(あらき やすひろ) プロフィール
さくらインターネット クラウド事業戦略本部 プロダクトマネージャー
株式会社インターネットイニシアティブ、ネットビレッジ株式会社(現:株式会社fonfun)を経て、ヒューレット・パッカード研究所でモバイルネットワークおよびサービス基盤の研究に従事。2010年、東京大学基盤情報学専攻 博士号取得(科学)。その後、DeNA(株式会社ディー・エヌ・エー)を経て、2011年にアマゾンウェブサービスジャパン合同会社(AWS)へ入社し、13年間ソリューションアーキテクトとして活動。2024年9月、さくらインターネットに入社。
X(旧Twitter):@ar1
ITをおもしろいと感じた原点は「コミュニケーション」
荒木さんご自身がITを学ぼうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
僕がITに興味を持った理由のひとつが「コミュニケーション」です。日本ではITのことをICTと言ったりしますよね。Information and Communication Technologyの「C」、つまりコミュニケーション。コンピューターが「コミュニケーションのための道具」になった瞬間に、これはとてつもなくおもしろいものだと思ったんです。テレビも電話もコミュニケーションの手段ですが、基本的には決まった情報を運ぶだけ。でもコンピューターが入ると、情報を加工したり、組み合わせたりできるようになります。そこが決定的な違いだと感じました。
大学に入ったとき、たまたまインターネットが使える環境がありました。当時はBITNETという学術系ネットワークがあって、いまのTCP/IPのインターネットとは違う仕組みでした。「何がどう違うんだろう?」と考えていくうちに、どんどん下位のレイヤー(通信プロトコル・ネットワーク・ハードウェアなどの基盤技術)に興味が向いていったんです。
多くの人は、「コンピューターゲームを作りたい」「CPUを変えたらゲームがスムーズに綺麗に動くようになった」など、そういう身近なきっかけからITに興味を持つのではと思います。でも僕の場合は「コミュニケーション」でした。たぶん、ちょっと変わり者なんでしょうね。
ただ、どこにおもしろさを感じるかは人それぞれでいいと思っています。ゲームでも、スマートフォンのアプリでも、生活が大きく変わる体験でもいい。学びで大切なことは、「おもしろい」と感じた分野を突き詰めることです。
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デジタル領域とリアル領域の両技術を扱えると視野が広がる
もしいま、IT知識がない状態の学生時代、たとえば16歳に戻ったとしたら、どういった勉強をしていきますか?
この先残りそうな情報技術をやろうと考えると思います。
まずは「スマートフォン」です。2007年ごろから世のなかに浸透してきて、もう20年近く使われ続けています。20年間も使われて、しかも生活をこれだけ変えたテクノロジーはそう多くありません。これはこの先も、しばらくなくならないでしょう。
そのため、スマートフォンをしっかり使いこなせる技術、アプリやサービスを作成できる技術は身につけるだろうと思いますね。
また最近のロボット技術も、かなりおもしろくなってきています。
ロボットアームの制御ソフトウェアはオープンソースも多く、実機も数万円程度で手に入ります。
スマートフォンのなかの世界は、どうしても物理的な感覚がありません。でもロボットアームを実際に動かすと、そこは完全に「物理の世界」です。デジタル領域とリアル領域の両方の技術を扱えるようになると、見える世界が一気に広がる感じがするんですよね。
通信の仕組みまで深く理解して、それを仕事にできる人はごく一部ですが、現場で調整しなければならない場面は確実に存在します。だからこそ、両方の技術を触れるようにしておく価値があると思っています。
新しいことを試し続ければ、未来のクラウドにつながる
クラウドはこれからどう進化していくのでしょうか?
クラウドの歴史を振り返ると、いまあるクラウドの技術では面倒なこと、できないことを解決してきた歴史だと言えます。クラウド上で試してみたら難しかったことを、誰でもできるようにサービス化する。それを繰り返してきたんです。誰もやっていなさそうなことを試し続けること自体が、クラウドを学ぶことであり、つくることであり、クラウドによって世のなかを変えていくことだと考えています。
クラウドの強みは、同じことをやろうとしたときに、千倍、10万倍と簡単にスケールできる点です。だから、たくさんの人が困っていることを力技で解決することができます。新しいことを試すときに、クラウドを離れて考えるより、クラウド前提で考えることが重要です。それが未来のクラウドにつながるのではないでしょうか。
誰も考えたことがないようなアイデアは、ある日突然出てくるものではありませんよね。日々の小さな発明の繰り返しだと思います。「新規性がない」と言われることもあるかもしれませんが、学びは必ず残るので、どんどん試していただきたいです。
新しい技術には、まず触ってみる
これからの時代、エンジニアに必要な力はどのようなものなのでしょうか?
スマートフォンアプリの開発も、初期は本当に大変でした。
AndroidならJava、iOSならObjective-Cというプログラミング言語の指定があり、メモリー管理やヌルポインターで苦労した人も多いのではないでしょうか。
でもKotlinやSwiftといったプログラミング言語が出てきて、一気に楽になりました。その瞬間にいち早く試した人たちは、大きなアドバンテージを得られたと思います。新しい技術のアンテナは高く立てておき、「これ良さそうだな」と感じたら、まず試すことが大事です。
「学びが無駄になるかもしれない」と新しい技術を避けるのは、非常にもったいないことです。新しいものを試せば、確実に力はつきます。つまらないと感じながら古い技術を使い続けるより、新しいものを試せる環境に身を置くとよいでしょう。
なぜインフラを学ぶべきなのか
荒木さんにとって、インフラを学ぶ意義はどういったものですか?
インフラは、もともと最先端だった技術が「当たり前」になったものです。クラウドを提供するための技術すべてがインフラであり、その技術提供者から見ると、さらに下のレイヤーもまたインフラになります。
自分がどの技術の上に立っているかを理解していると、トラブルが起きたときに、自分の範囲の技術の問題なのか、その下のインフラレイヤーの問題なのか判断できます。
ノートパソコンのトラブルでも、「ストレージが原因だな」「ディスプレイ表示の問題だな」と、なんとなくわかりますよね。それはパソコンというものを学んでいるからです。インフラを学ぶことで、通信なのかGPUなのか、といった当たりがつくようになり、結果としてトラブルシューティングも研究開発も速くなる。その点だけでも、学ぶ意味は十分にあると思います。
より深く理解したい方は、ぜひ動画もあわせてご覧ください。
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