経済産業省によるとIT人材は2030年には45万人不足すると予測されています。(参考:経済産業省 IT人材需給に関する調査)
システムエンジニアも人材不足で、多くの企業が採用ページで募集をおこなっています。さくらインターネットでも募集中です。
>>システム開発エンジニア(販売管理システム)<東京>|採用情報|さくらインターネット
そんなシステムエンジニアとは、どのような仕事をして、どのようなスキルが必要なのか。現役のシステムエンジニアの方に記事を書いてもらいました。
ネットワークエンジニアについての記事はこちらをご覧ください。
- システムエンジニア(SE)とは
- システムエンジニアの仕事内容
- 実際に携わってきた仕事
- システムエンジニアが使う手法やツール
- システムエンジニアの魅力
- システムエンジニアに必要なスキル
- あると便利な資格
- システムエンジニアの給料事情
- システムエンジニアの将来性
- まとめ
システムエンジニア(SE)とは
ビジネスにおいては、新規事業を立ち上げたい、現在の業務を効率化したいなどさまざまな要件(要求)が生まれます。システムエンジニアとは、広くは「ビジネス上の要件とITとの橋渡しをして要件を実現する人または職種」のことをいいます。「ビジネスとITとの翻訳者」ということもあります。
一般的に、プログラムを作るプログラマーに対して、システムエンジニアは仕様書(設計書)を作る役割として位置づけられることが多いです。SE(エス・イー)、システムズエンジニアなどとも呼ばれます。
システムエンジニアという用語を耳にしたことはあっても、その仕事内容やキャリアについては、あまり知られていないかもしれません。
その理由として、システムエンジニアの役割が多岐に渡り、企業や個人によっても捉え方がしばしば異なることが挙げられます。
たとえば、これまでシステムエンジニアと呼ばれてきた役割について、現在は次の表のように細分化されています。
ITスキル標準では、IT技術者を「SE」、「プログラマ」といった名称で包括的にくくるのではなく、ビジネスの実状に沿うように職種や専門分野を分類定義し、それぞれレベルに対して個人のスキルを評価する尺度を多面的に提供しています。
システムエンジニアとは、広くは上の表のすべての職種を指します。
特に「ITアーキテクト」「ITスペシャリスト」「アプリケーションスペシャリスト」「ITサービスマネジメント」は、一般的にシステムエンジニアの守備範囲と考えられています。
このように、システムエンジニアが求められる場面は非常に幅広く多様なのです。
システムエンジニアの仕事内容
では、システム開発における一般的なフェーズごとに、システムエンジニアの仕事を見ていきましょう。
図のとおり要件定義からはじまり、設計、開発、テスト、運用の流れとなります。
要件定義「やりたいことをハッキリさせる」
要件定義フェーズの目的は、「何をシステム化したいか」を明確にすることです。
システムエンジニアは、このフェーズで中心的な役割を担います。具体的には、ステークホルダー(関係者)から要件を引き出して、分析・整理した結果を要件定義書としてまとめます。
要件を引き出すには、ヒアリングや調査をおこないます。
ステークホルダーを集めてブレインストーミングをしながら、要件を抽出することがあります。この場合は、システムエンジニアがファシリテーターとなってセッションを進行し、参加者全員が見えるホワイトボードに要件を書き出していく方法がよく採用されます。
要件定義では、最初から明確に説明される要件だけでなく、潜在的な要件も引き出していきます。類似の事例を参照したり、経営課題から業務上の課題へとブレークダウンしたりすることで、言語化されていない要件への気づきを促します。
また、ビジネス上の機能要件に加えて、非機能要件も洗い出します。非機能要件とは、システムが満たすべき性能や品質に対する要件です。セキュリティ、稼働日や時間、処理量や応答時間などに対する要件が相当します。
非機能要件はアプリケーションや業種に関わらず一般化できるため、システムエンジニアは経験値から今回検討すべき項目をピックアップします。
抽出した要件は、一覧にして優先度を付与します。優先度を踏まえて、今回のシステム開発で実現する対象範囲を決定します。
システムエンジニアが中心となってまとめる要件定義書は、この後のシステム開発や運用において、立ち戻って確認すべき「原点」となります。
設計「要件から設計書を作る」
設計フェーズにおいても、システムエンジニアが主体的に活躍します。
システムエンジニアは利用者目線で書かれた要件定義書の内容を、システムを構成するプログラムへと落とし込めるように設計します。
一般的に設計フェーズでは、基本設計から詳細設計へと設計の詳細度を深めていきます。外部設計・内部設計などと呼ぶこともあります。
設計する対象としては、次のようなさまざまなシステムの構成要素です。
- アーキテクチャー(全体構造)
- アプリケーション(スマホやPCで動くアプリ、サーバーで動くアプリケーション・プログラム、機械の中に組み込まれるプログラムなど)
- システムインフラ(サーバーやPCなどのハードウェアとOSやソフトウェアなどとを合わせたアプリケーションを支える土台部分)
- データ
- ネットワーク
- 運用
システムの規模や複雑さによって、全体をひとりのシステムエンジニアが設計することもあれば、各分野の専門のシステムエンジニアが分担して設計することもあります。
どのように設計するかは、システムエンジニアの腕の見せどころと言えるでしょう。システム開発をおこなうITベンダーは標準的な設計手法を定めており、企業にとっての知的財産としています。
また、対象領域やのちに開発で利用するプログラミング言語によって、設計手法を変えることもあります。
設計フェーズでシステムエンジニアが作るのは、仕様書(設計書)です。要件をもれなく仕様書に落とし込み、正しく動作するシステムを後続のフェーズで開発するための重要な成果物となります。テスト仕様書の元にもなります。
開発「設計書をコンピュータ語に翻訳する」
一般的に、開発フェーズにおけるプログラミングはプログラマーが担当します。プログラマーは、プログラムの作成とプログラム単位のテスト(単体テスト)完了までの責任を持ちます。
企業やプロジェクトによっては、システムエンジニアが開発部分もカバーすることがあります。就職や転職の際には、企業がいう「システムエンジニア」のジョブディスクリプション(職務記述書)を確認することをおすすめします。
テスト「設計通りに動くかを確認する」
テストフェーズでは、複数のプログラムを組み合わせた統合テストや、業務の流れの中でプログラムを使ってみる運用テスト、高負荷をかけて応答時間や処理時間が要件範囲内に収まるかを確認する性能テストをおこないます。
システムエンジニアは設計フェーズで作成した仕様書をもとに、テストシナリオやテストケースを洗い出してテスト仕様書を作成します。開発が終わったプログラムは、テスト仕様書に基づいてテストされます。
運用「継続して価値を生み出す」
システムは作っただけでは何の価値も生みません。システムを動かすことによって新たなビジネス要件が実現されることで、ようやく価値を生み出します。
運用フェーズにおけるシステムエンジニアの仕事には、システムが安定稼働を継続して価値を生み出していけるよう、システムを保守していくことがあります。
ビジネスを取り巻く環境は常に変化しています。利用者が増えれば扱うデータ量も増えていきます。これまでになかった新しいセキュリティの脅威に見舞われるかもしれません。
システムの安定稼働は、同じことの繰り返しだけでは実現できません。システムの状態に異常がないかを監視しつつ、新しい要件を取り込んでいくことが必要です。
さらに、企業が目指す方向へとシステムも変わっていくことが求められます。
運用フェーズに入ってからも、システムエンジニアはどのような要件をシステムに取り込むか、分析や要件定義をおこないます。続いて設計・開発・運用をおこないます。
システム開発とは一度作って終わりの一直線ではなく、運用を含めたサイクルの繰り返しなのです。そのサイクルを回していく主役としてシステムエンジニアは位置付けられます。
実際に携わってきた仕事
より具体的なシステムエンジニアの仕事をイメージしていただくために、私が実際にシステムエンジニアとして経験した仕事の中から、いくつかをご紹介します。
アプリケーションを作る
私がシステムエンジニアとして携わってきたアプリケーションは、主に企業の業務を支えるものです。たとえば、要件定義から設計・開発・運用までのすべてのフェーズにたずさわった初期の仕事に、自動車の販売管理システムの刷新プロジェクトがあります。
- 販売会社で日々発生する大量の販売データをどのように収集するか
- データを、どこに、どれだけの期間保管するか
- データをどのような視点で分析するか
- 分析結果をいつまでにどのように見せるか
これらについて、営業部門も巻き込んだチームで要件定義をおこないました。設計・開発でのポイントは、データベース設計とツール選定にありました。
前日の大量の販売データからの分析結果を、翌朝営業や経営層が参照するのに間に合わせるため、適切なサイズと柔軟性を持った中間データベース(データマート)の設計が必要と判断しました。
開発期間を短縮するためにBIツールやパッケージソフトの採用も検討しましたが、当初は処理時間と柔軟性に課題がありました。必要な情報をタイムリーに提供すること、利用者が使いやすいことを重視した結果、データマートの作成にはSQLを駆使し、分析結果は社内で使い慣れたExcelで見せるなど身近なツールを活用することにしました。
洗練された仕組みではありませんが、タイムリーな情報提供と使いやすさが受け入れられて、長く使われ続けたシステムです。
システムインフラを作る
システムインフラとは、アプリケーションを動かすための、必要なサーバーやネットワーク、PC、スマホなどで構成される仕組みです。
システムインフラを設計するにあたって、ベースとなるのは非機能要件です。経営目標や業務上の課題から出てくる要件(機能要件)に対して、非機能要件とはシステムの品質に対する要件です。
非機能要件には、「同時にアクセスできるユーザー数を1000に」「応答時間は3秒以内」「障害が発生してもシステムの停止時間を数分以内に収める」「扱うデータは重要情報として外部から守る」などがあります。
金融や製薬など、業界基準としてシステムの信頼性に求める非機能要件もあります。たとえば「障害が発生してもシステムの停止時間を数分以内に収める」ために、サーバーやネットワークを二重化して、たとえ片方が停止しても、もう片方に即時に切り替わるホットスタンバイ構成としました。
最近はシステムインフラを自前で作らず、クラウドを利用するケースが増えています。その場合はクラウド提供ベンダーのサービスレベルを確認して、非機能要件に見合うプランを選択しています。
システムを運用する
システムを安定稼働させるためには、異常がないかを監視したり、万一障害が発生した際にも短時間で復旧できるようにバックアップを取得することによって備えます。昨今は、さまざまなセキュリティ上の脅威からシステムを守る対策を施す必要性が高まっています。
システム運用に関する取り組みのひとつに、コンティンジェンシープランの作成があります。コンティンジェンシープランとは、震災発生など緊急時の対応手順についてまとめたものです。
大規模システム障害が発生した直後の初期対応、その後の暫定対応と本格復旧のための手順を取りまとめました。ウォークスルーを繰り返して、現実的な手順となっているかの見直しをおこなっています。
この他にシステムエンジニアとしての経験を生かして、IT戦略やIT計画の立案に携わるなど、CIO (Chief Information Officer) を支援する役割を担うこともあります。
システムエンジニアを長く続けていく中で、さまざまな仕事に出会うことがあります。一方、特定の領域を深掘りしていくシステムエンジニアもいます。
自分の希望だけで仕事を選択することはできませんが、多様なシステムエンジニアのタイプのうちどのタイプとしてキャリアを進めていきたいか、キャリアプランを定期的に考えてみるとよいと思います。
システムエンジニアが使う手法やツール
企業やプロジェクト、クライアントにおいて標準的な手法やツールが決まっている場合は、共通言語として利用するのがよいでしょう。事例やノウハウを知的財産として共有しやすいからです。
ここではいくつかの手法やツールをご紹介しますが、実際に仕事の中で試しながら、自分なりの「道具」を見つけていくとよいでしょう。
ビジネス領域の理解や整理のために
設計や運用の対象となるビジネス領域を把握するには、自分で図解してみるのが一番です。「ビジネスモデルキャンパス」や「ビジネスモデル2.0」のように、すぐに描き始められるものをどんどん使ってみるのがおすすめです。
要件定義のために
要件定義の手法やツールについて短くまとめることは難しいですが、重要なことは
- 対象領域の現状と課題(As-Is)
- 対象領域のあるべき姿(To-Be)
をそれぞれ把握することによって、現状(As-Is)とあるべき姿(To-Be)の差を明らかにすることです。その差が、システム化対象範囲となるからです。
また要件定義では、機能要件と非機能要件の両方を洗い出すことも重要です。
要件定義における手法やツール、進めるうえで考慮する点については、「ユーザのための要件定義」にくわしい情報があります。
また、とくに非機能要件については「非機能要求グレード表」に網羅的にまとめられています。ここから、必要な項目をピックアップするとよいでしょう。
設計のために
企業の業務システムのように規模的に大きい場合や、複数の機能や技術要素から構成されるシステムについては、いきなり細部の設計に入るのではなく全体的なアーキテクチャー設計から始めます。
構成要素と相互関係を決める静的なアーキテクチャー設計は、複数の視点(ビュー)からの全体図を描きます。
主要機能と外部連携の全体図(エンタープライズ・ビュー)、必要な業務機能一覧(サービス・ビュー)、システムインフラ機能連携(ITシステム・ビュー)、アプリケーションごとの主要構成(ソフトウェア・ビュー)などを概要から詳細へと図示していきます。(参考:社会保険庁 アーキテクチャー設計の考え方と成果物のイメージ)
処理の流れを決める動的なアーキテクチャー設計には、ユースケース図やシーケンス図などを記述します。ユースケース図は、システムと利用者(アクター)との相互関係と振る舞いを表すものです。シーケンス図は、処理の流れを表します。
外向けホームページなどWEBアプリケーションの設計においても、静的な画面デザインデータだけでプログラミングに入ってしまうのではなく、動的なアーキテクチャー設計を必ずおこないましょう。
クラウド上でシステムを開発する際には、典型的なアーキテクチャーパターンと構成が用意されている場合があります。あらかじめどのようなパターンがあるかを頭に入れてから、全体を設計するのもよいでしょう。
設計手法やツールは、その後の開発言語や稼働環境との相性も考慮する必要があります。
特にプログラミング開発をせずにWEBアプリやパッケージソフトを活用する場合は、アプリで何ができるか、制約は何かを確認した上で設計をおこなう必要があるでしょう。
プロジェクト管理のために
大規模プロジェクトでは、専任のプロジェクトマネジャーがプロジェクト管理の責務を負いますが、システムエンジニア自らがプロジェクト管理もおこなう場合があります。
進捗管理には「WBS (Work Breakdown Structure)」を使います。
最近はクラウドアプリ(SaaS)のプロジェクト管理ツール(Asana,Backlog,Trelloなど)が多く提供されていますので、ExcelにWBSを記述して管理するよりも、便利なツールを選ぶことができます。SaaSについては「SaaSとは?IaaS、PaaS、ASPとの違いは?サービス代表例も紹介」で詳しく解説しています。
システムエンジニアの魅力
続いて、システムエンジニアの仕事をするうえで魅力に感じることを3つご紹介します。
1. 作って動かすというシンプルな喜び
ものづくりは楽しいと思いませんか。システムエンジニアの仕事の中にも、ものづくりに通じる喜びが発見できる場面があります。
複雑と思われた仕組みを紐解いてシンプルに設計できたとき、設計通りにシステムが動いた瞬間、問題の原因が判明して完璧に修正できたとき、誰しも「よしっ!」と心の中でガッツポーズを作っているはずです。
こうした小さな喜びは、システムエンジニアとして働くモチベーションを形作っているに違いありません。
2. さまざまな技術や人との出会いの豊富さ
システムエンジニアは、複数の技術を組み合わせてシステムを作り上げていきます。そのため、新しい技術を知ることのできる機会に溢れています。技術だけでなく人との出会いも多様です。
さまざまな企業や部門において、経営層からマネジメント、現場を動かす人たちの話に耳を傾けて、チームで課題解決の道を探ります。プロジェクトでは、ステークホルダーがチームとして活動するため、企業や部署の垣根を越えたコミュニケーションが生まれます。
システムエンジニアほど、境界を超えてさまざまな出会いのある仕事はありません。
プロジェクトが始まるたびに、まるで新しい会社に転職したような変化があり、飽きることはありません。
3. 人や社会を動かすほどの可能性
システムエンジニアは、システム作りの地味な裏方という見方があります。しかしシステムエンジニアが動かすことができるのは、プログラムやシステムに限りません。
システムが業務を支え、人を動かし、企業を動かします。さらには社会をも動かします。よくも悪くも、大勢の人やその命にさえ影響を与えることがあるのです。システムが及ぼす効果や影響に想像力を巡らせれば、システムエンジニアとして一種の「使命感」に身が引き締まることがあります。
こうした捉え方は、仕事への緊張感だけでなく、システムエンジニアであることの魅力ももたらしてくれていると思います。
システムエンジニアに必要なスキル
システムエンジニアとして仕事をしていくうえで、求められるスキルを3つに絞って説明します。
1. 論理的思考
システムエンジニアに求められる論理的思考(ロジカルシンキング)とは、
- 漏れなく全体を捉える
- 具体的なところから共通点を見つけて抽象化する
- 抽象的なところを細分化して具体化する
- 構成要素同士の相互関係を明確にする
- 因果関係を説明する
- 設計上の決定について明確に理由付けする
といったものです。
要件定義フェーズでは、誰もが正確に理解できる客観的な要件として言語化、文書化します。設計フェーズは、論理的思考を駆使して仕様書(設計書)を作っていく、システムエンジニアの主戦場です。
こうした論理的思考は、仕事の段取りや曖昧さを切りわけて具体化し、解決策を見出すなど、システムエンジニアに限らず仕事全般に活用できるスキルといえます。
2. コミュニケーション能力
システムエンジニアに求められるコミュニケーション能力とは「聞く力」「伝える力」のことです。
システムエンジニアの仕事を「ビジネスとITとの橋渡し」と表現したように、複数の相手とのコミュニケーションが発生します。このとき、論理的思考を組み込んだ、一連のコミュニケーション能力が求められます。
「聞く力」とは、相手が何を言いたいのかをじっくり傾聴することです。そこでは、適切な質問を投げかけて、潜在的な要求を顕在化していくやり取りも必要になってくるでしょう。想像力を働かせて意図を汲み取ることも必要です。
「伝える力」とは、正確かつわかりやすく伝えて共感や賛同を得ることです。伝える相手によって、要件やITへの理解の深さが異なります。また論理的な説明で正確に伝えるのか、相手の視点に立ってナラティブに説明するのか、相手によって伝え方を変えることも大切です。
よいものを作っても、伝えて価値を共有できなければ意味がありません。口頭での説明力に加えて、文章や図などを使ってプレゼンテーションするスキルも求められます。
3.自ら学び続けること
システムエンジニアを取り巻く環境は、常に変化し続けています。一度習得した技術や手法も、技術や適用する環境が変われば、使えなくなることもしばしばです。システムエンジニアに限らずIT分野で働くには、IT技術の動向に加えてIT技術が適用されるビジネス領域にもアンテナを張り、常に情報をキャッチしていくことが必要です。
まず、システムエンジニアも「手を動かす」経験から学びましょう。どんなプログラミング言語でも小さなプログラムでもよいので、実際にビジネス現場で使われるプログラムを作ってみましょう。
システムインフラを設計するシステムエンジニアなら、サーバーやネットワークデバイスにOSやソフトウェアをインストールしてみましょう。実際に手を動かしてみることで、設計上考慮すべきことや効率的な設計方法、テストの重要性などが実感できます。
次に、さまざまな手法を学んで、自分なりの手法を編み出しましょう。プロジェクト管理、要件定義、設計、開発、テスト、運用管理などについて、世の中で標準とされている手法やよく使われている手法があります。
よさそうなものを選んで、実際に使ってみるのが一番効果的な習得方法です。そこから使いやすく、ステークホルダーに理解されやすいようカスタマイズして、自分なりの手法に仕立てましょう。
さらに、ビジネス環境へと学びを進めましょう。ビジネス要件を導き出す際の理解が深まります。コンサルタントが得意とする領域にスキルを広げることができ、プロジェクトの「超上流」と呼ばれるフェーズから参画できるようになります。
このように、新しいことに興味を持ち学び続けることで、システムエンジニアとして技術力を深め仕事の幅を広げていくことができるでしょう。
あると便利な資格
システムエンジニアの仕事に就くにあたって、必須となる資格はありません。しかし一部の企業では、特定の資格取得によって手当が追加されたり、昇進の際に加点評価されることがあります。
日本の企業で比較的採用されることの多いシステムエンジニア向けの資格として、IPA(情報処理推進機構)が提供している国家試験の「情報処理技術者」があります。
(参考: IPA 独立行政法人 情報処理推進機構情報処理技術者試験の概要)
情報処理技術者試験には、基本試験・応用試験に加えて、専門分野ごとの高度な知識や技能が問われる試験区分があります。
ITストラテジスト、システムアーキテクト、プロジェクトマネージャ、ネットワークスペシャリスト、データベーススペシャリスト、エンベデッドシステムスペシャリスト、ITサービスマネージャなどです。
IT利用者の立場での知識や技能を問うITパスポート試験、情報セキュリティマネジメント試験などもあります。スキルアップの手段としても活用できる資格といえるでしょう。(参考: IPA 独立行政法人 情報処理技術者試験の区分)
実務レベルで「あると便利な資格」に、ITベンダー提供の認定資格があります。仕事の中で使用する技術について体系的に知識を習得するためには、ITベンダーの認定資格とそのトレーニングが活用できます。
ITベンダー提供のトレーニングや認定試験の中には、高額のコストがかかるものもあります。業務での必要性を明確にしつつ、勤務先に一部負担を要望してみることも必要となるかもしれません。
資格取得を含めたシステムエンジニアとしてのスキルアップは、会社任せにせず自律的に計画・実施していきましょう。
システムエンジニアの給料事情
政府統計e-Statの賃金構造基本統計調査(令和元年)をもとに計算してみると、従業員10名以上の企業におけるシステムエンジニアの平均年収は 569万円 (38.8歳) となりました。もちろん企業によって年収の幅があります。就職や転職を検討している方は、気になる企業の情報を確認してみてください。
昇給の基準や評価方法も企業によって異なりますが、システムエンジニアとしてキャリアアップするには、スキルを発揮して高い成果を出していくことが鍵となります。成果を出すとは、システムエンジニアとしてプロジェクトの遂行や完了に大きく貢献したり、有用な提案を積極的におこなって採用されたりすることです。
キャリアアップにつながる高い成果を出すには、与えられた仕事を予定通り完了させることに加えて、「プラスα」を心がけてみましょう。
プラスαとは、経験したノウハウを一般化して、今後の仕事や社内の仲間で再利用できるようにすることです。
具体的には
- 事例情報やノウハウ集、テンプレートなどにまとめる
- まとめた成果物を社内で共有する
- 経験をもとにコーチングをおこなう
などが挙げられます。
プラスαを意識して仕事に取り組む習慣は、知的財産を生み出し、専門分野での実績を高め、システムエンジニアとしてのキャリアアップに繋がっていくでしょう。キャリアアップの他の選択肢として、「フルスタックエンジニア」を目指す方向性があります。
フルスタックエンジニアとは、設計も開発も、アプリケーションもシステムインフラもと多能工的に何でもこなせるエンジニアのことです。
スキルの幅広さと奥深さの両方を持つフルスタックエンジニアになるには、経験と実績を積む必要があります。またどんなことでも頼まれがちなため、過重労働を避けるために、自ら仕事量をコントロールするスキルも必要です。
ハードルが高めのフルスタックエンジニアですが、とくに中小企業やスピード感が必要なプロジェクトにおいて需要は高く、昇給のチャンスも多いと考えられます。
システムエンジニアの将来性
システムエンジニアは、将来に向けて多様性が広がっていくでしょう。これは選択できる仕事の幅が広がっていくということです。
冒頭で述べた広義のシステムエンジニアの役割「要件とITの橋渡しをおこなって要件を実現すること」は、変化の激しいIT領域において必要性が高まっています。
細分化・専門化されて呼び名が変わったとしても、「システムエンジニア」としての仕事は、今後も必要とされるに違いありません。
一方で、「システムエンジニアの仕事は、AIに奪われる」との予測もあります。
比較的簡単に自動化できるような要件は、AIの登場を待たずとも近日中にシステム化されるでしょう。しかしビジネスを取り巻く環境はより複雑になり、新しい技術も次々登場しています。
激動する環境において、システム設計の仕事も複雑さを増していきます。AIがカバーできる領域「以外」にも広がっていくので、結局システムエンジニアの仕事はなくなりません。
同時にダーウィンの進化論のように、システムエンジニアも環境の変化に適応していかなければ生き残れないともいえます。
システムエンジニアならば、環境への適応に留まらず、自分が携わりたい仕事を企画・提案して作り出せる強みを持っています。自律的にキャリアを切り拓くシステムエンジニアが増えることで、システムエンジニアの将来がさらに明るいものになっていくと信じています。
まとめ
今回は現役のシステムエンジニアの方に記事を書いてもらいました。社内のシステムエンジニア経験者の方にもお話をうかがったところ、「システムエンジニアは体力が必要な仕事」とおっしゃっていました。
システムエンジニアの業務は幅広いため仕事量が多く、最新の知識や技術を学ぶ必要があるので、体力が必要になるといえます。
- システムエンジニアは「ビジネスとITとの翻訳者」
- システム開発の一般的なフェーズは「要件定義、設計、開発、テスト、運用」
- ビジネス領域の理解や整理のために、図を描くのがおすすめ
- システムエンジニアの仕事には作って動かすというシンプルな喜びがある
- システムエンジニアに必要なスキルは論理的思考、コミュニケーション能力、学び続けること
- 資格は必須ではないが、「情報処理技術者」「ITベンダー提供の資格」を取得することがおすすめ
- システムエンジニアの平均年収は569万円※年齢38.8歳、従業員10名以上の企業。
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執筆
佐藤裕美(さとうひろみ)
フリーランスのライター兼システムエンジニア。さまざまなITお困りごとに対応している経験から、正確でわかりやすい記事づくりを心がけています。
※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。
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