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「もっとロジカルにシンキングしろ!」
いきなりルー語のような言葉ではじまりましたが、実際に前職で上司から言われたことのある言葉です。
そもそもロジカルシンキングってなんだろう? 言葉自体はよく聞くけど、意味はよくわからない。この記事では、そんな方に向けて「ロジカルシンキング」について解説します。
そもそもロジカルシンキングとは?
まずはロジカルシンキングの意味から説明します。ロジカルシンキングは英語ですが、訳すと「logical = 論理的」「thinking = 考える」になります。
論理的に考えるということで、論理的思考や論理思考と呼ばれることが多いです。日本においてはアメリカのコンサルティング会社「マッキンゼー・アンド・カンパニー」がブームの火付け役といわれています。
論理学的な意味でロジカルであるというのは「筋が通っていて矛盾がないこと」。ビジネスシーンにおいてロジカルであるとは「筋が通っていて矛盾がなく、相手が共感してくれて納得してくれること」だといえます。
ロジカルシンキングは実用的な考え方なので、仕事をするうえでも役立ちます。ただし、ビジネスにおいては、相手を論破して打ち負かすことが目的ではありません。それだとケンカになって、人間関係が悪化し、ビジネスがうまくいかない可能性もあります。
「窮鼠猫を噛む(きゅうそねこをかむ)」という有名な故事がありますが、ロジカルシンキングを使って相手を追い詰めてしまうと、いずれ痛い目にあってしまうかもしれません。
相手の共感を得て、納得してもらうためにロジカルシンキングを活用しましょう。
ロジカルシンキングを身につけるメリット3つ
ロジカルシンキングを身につけると、どんなメリットがあるのか?
ほかにもいろいろなメリットがあると思いますが、大きく3つのメリットを挙げます。
メリットその1 コミュニケーション能力の向上
ロジカルシンキングを身につけると、自分の考えと相手の考えの違いを理解できるようになり、自分の主張を正確におこなえるようになります。結果的に説得力が増し、コミュニケーションがスムーズに進みます。
「あなたの話はわかりにくい」と言われたことがある人はロジカルシンキングを身につけることで、わかりやすく話を伝えることができるようになるかもしれません。
メリットその2 問題解決力の向上
仕事に限らず、私たちが生活するうえで問題や課題が発生します。ロジカルシンキングを身につけることで思考力が高まり、問題を整理して解決する能力が向上します。結果的に生産性向上に繋がるともいえます。
問題が発生した場合、問題の発生原因を導き出す。その発生原因をさらに細かくわけていくことで、解決の糸口を発見することができるでしょう。
メリットその3 目標達成までの道筋が見える
仕事をするうえで「KPI/KGI」を設定することがあります。KPIについては「KPIとは? 意味や使い方を具体例をもとにわかりやすく簡単に解説」で詳しく解説しています。
そのKPI/KGIを効率的に達成するための技術として、ロジカルシンキングは役立ちます。目標を達成するために筋道を立てて考えれば、最短で目標達成できるようになるでしょう。
ロジカルシンキングと比較される考え方の紹介
クリティカルシンキングとラテラルシンキングという、ロジカルシンキングと比較される考え方を2つ紹介します。
クリティカルシンキングとは?
ロジカルシンキングと比較される考え方で「クリティカルシンキング」があります。クリティカルシンキング(Critical thinking)は「批判的思考」と訳せます。しかしこの「批判的思考」とは物事を批判的に考えることではありません。物事を客観的に考えることを指します。
ここで一番しっくりきたクリティカルシンキングの説明をご紹介します。
クリティカルシンキングは、与えられた情報や知識を鵜呑みにせず、複数の視点から注意深く、論理的に分析する能力や態度
(引用:鈴木 健,竹前 文夫,大井 恭子,2006年『クリティカル・シンキングと教育―日本の教育を再構築する』世界思想社)
このように客観的に複数の視点から論理的に分析することがクリティカルシンキングには必要ではないでしょうか。
ラテラルシンキングとは?
ラテラルシンキング(Lateral thinking)は「水平思考」と訳せます。1960年代に医師で心理学者のエドワード・デボノが提唱した思考法です。
ラテラルシンキングは思考の幅を広げることが目的です。既存のルールや常識を疑い自由奔放に発想することで、たくさんのアイデアを生み出すことができます。ラテラルシンキングとロジカルシンキングは対立するものではなく、相互で補完する関係といえます。
ラテラルシンキングの事例でよく取り上げられるのが、ダイソンの「羽がない扇風機」です。「扇風機=羽がある」という常識を疑い自由に発想することで、羽がない扇風機を開発することができました。
もうひとつ事例を紹介します。サンコーレアモノショップの「おひとりさま用超高速弁当箱炊飯器」です。「弁当のごはん=事前に炊いたごはん(お米)を入れる」という常識を疑い、弁当箱に炊飯器機能をつけた商品になります。職場でも炊きたてのお米を食べたいという方に好評で、累計販売数5万個を超えるヒット商品になりました。
このように自由な発想をすることで、思わぬアイデアが生まれてヒット商品を生み出すことができるかもしれません。クリエイティブな仕事をするうえで効果的な思考方法です。
ロジカルシンキングで使えるフレームワークを紹介
フレームワーク(framework)とは日本語に訳すと「枠組み」になります。この記事ではフレームワーク=考え方の枠組みと定義します。
フレームワークの活用でできることは、たくさんあります。
- 現状の分析
- 課題を明確にする
- 効率よく問題解決できる
- 新しいアイデアを生み出す など
ここからは、ロジカルシンキングするうえで使えるフレームワークを一部ご紹介します。
MECE(モレなくダブりなく)
MECE(ミーシー、ミッシー)とは、英単語の頭文字を並べた用語です。相互に排他的で重複がなく(ダブりがない)、まとめると余すところがない状態(モレがない)を意味します。
M・・・Mutually(相互に)
E・・・Exclusive(排他的)
C・・・Collectively(集合的に)
E・・・Exhaustive(余すところなく)
ジグソーパズルをイメージするとわかりやすいと思いますが、それぞれがピースごとに独立していて、形が同じものもなく、集合(完成)するとひとつの形になります。
ただし、分類を厳しくしすぎるとキリがありません。有効性を重視して目的を見失わないようにしましょう。
5W1H
5W1HはWhen(いつ)、Where(どこで)、Who(誰が)、What(何を)、Why(なぜ)、How(どのように)から構成されます。
情報伝達をする際の基本的手法で、自分の思考を整理するうえでも役立ちます。
5W1Hについては、「5W1Hとは?5W2Hとの違いや例文も!ビジネスで使える思考法」で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
So What?(だから?) / Why So?(どうして?)
根拠と主張を結ぶうえでSo What(だから?)とWhy So(どうして?)という考え方が大事になります。根拠から主張を引き出すのがSo What(だから?)、主張を根拠から検証するのがWhy So(どうして?)です。それぞれ詳しく見ていきましょう。
So What(だから?)
根拠を挙げてから、主張へとつなげる論理検証法です。じっくり時間をかけて話ができる際には効果的だといえます。
ここで例として人材紹介サービスをおこなっている営業のトークをSo Whatで進めていきます。
営業「最近、御社のサービスが話題ですね」
お客さん「そうなんですよ。ありがたいことです」
営業「来週、またテレビで紹介されるから更に問い合わせが増えそうですね」
お客さん「そうなんです。うれしい悲鳴ですよ」
営業「でも、様子を見る限り問い合わせを受ける人材が足りないみたいですね」
お客さん「だからなんですか?」
営業「問い合わせに対応できる人材をもっと増やすべきではないでしょうか」
Why So(どうして?)
主張(結論)から先に伝えたうえで、どうしてその主張に至ったのかを根拠を挙げていく論理検証法です。時間があまりないときにおすすめです。
先ほどの人材紹介サービスをおこなっている営業のトークを今度はWhy So?で進めていきます。
営業「問い合わせに対応できる人材をもっと増やすべきです」
お客さん「どうしてですか?」
営業「最近、御社のサービスが話題ですし、来週にはまたテレビで紹介されますよね。でもこのままだと問い合わせを受ける人材が足りないと思います」
ロジックツリー
ロジックツリーにはさまざまな種類があります。ここでは代表的な「Whatツリー」「Whyツリー」「Howツリー」について、オウンドメディアを事例に紹介します。ロジックツリーを作る際にもMECE(モレなくダブりなく)を意識しましょう。
Whatツリーは要素分解ツリーとも呼ばれ、問題を要素に分解して把握するためのものです。
Whyツリーは「なぜ?」を深堀りして、問題の原因を探ることに適しています。
HowツリーはWhyツリーで分かった原因を解決するために役立ちます。「どうやって?」を深堀りすることで解決策を探れます。
ロジックツリーは思考を整理するためのツールとして役立ちます。問題の全体像をつかむ際に活用してみてください。
3C分析
3C分析は企業の経営戦略立案でよく用いられるフレームワークです。分析対象は「顧客」「競合」「自社」3つの項目となります。
- Customer(顧客)
- Competitor(競合)
- Company(自社)
3C分析はファクトを集め、KSF(Key Success Factor)といわれる成功要因の発見のもとになります。
4P分析/4C分析
4P分析と4C分析は市場分析に活用できるフレームワークです。4P分析は自社目線、4C分析は顧客目線で考えられます。
まず4Pについて説明します。4つの「P」が頭文字の単語からなるフレームワークです。
- Product(プロダクト:商品)
- Price(プライス:価格)
- Place(プレイス:流通)
- Promotion(プロモーション:販売)
続いては4C分析について説明します。こちらは4つの「C」が頭文字の単語からなるフレームワークです。
- Customer Value(カスタマーバリュー:顧客価値)
- Cost(コスト:経費)
- Convenience(コンビニエンス:顧客利便性)
- Communication(コミュニケーション:交流)
4P分析と4C分析については、こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
SWOT分析
SWOT分析はマーケティング戦略立案で活用されることが多いフレームワークです。内部要因と外部要因を調査し、事業環境を分析します。
- Strengths(ストレングス:強み)
- Weaknesses(ウィークネスズ:弱み)
- Opportunities(オポチュニティーズ:機会)
- Threats(スレット:驚異)
StrengthsとWeaknessesが内部要因、OpportunitiesとThreatsが外部要因です。
SWOT分析の結果をもとに、内部要因と外部要因を掛け合わせて分析することを「クロスSWOT分析」といいます。
SWOT分析はターゲットや目標が変われば見直しが必要です。一度やればそれで完了というものではありませんので、注意してください。
SWOT分析については、「SWOT分析とは? テンプレートを使った事例を紹介」で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
ロジカルシンキングの思考法を2つ紹介
続いてロジカルシンキングの思考法「演繹法(三段論法)」と「帰納法」について解説します。それぞれが真逆のアプローチで考える思考法です。
1.演繹法(三段論法)
演繹法を説明するときによく使われる有名な例文があるので紹介します。古代ギリシアの哲学者アリストテレスの例文です。
全ての人間はいつか死ぬ
ソクラテスは人間である
ゆえにソクラテスはいつか死ぬ
これは一般的で普遍的な「大前提」を提示して、具体的な事実「小前提」を提示、それをもとに「結論」へ導きます。先ほどのアリストテレスの例文をもとに考えると以下のようになります。
大前提:全ての人間はいつか死ぬ
小前提:ソクラテスは人間である
結論:ゆえにソクラテスはいつか死ぬ
演繹法についての注意点があります。それは「大前提」が一般的で普遍的でない場合は、「結論」も間違ったものになりかねないという点です。また組み合わせ方も間違えてしまうと誤った結論になってしまうので注意が必要です。
2.帰納法
帰納法はさまざまな事象から、一般的で普遍的な法則を導き、結論へ結びつける推論方法です。
事象:沖縄県は平均気温が高い
事象:鹿児島県は平均気温が高い
事象:宮崎県は平均気温が高い
結論:よって日本の南は暖かい
帰納法についても注意点があります。データから一般的で普遍的な法則を導き出しますが、収集したデータが偏っていたり、不正確だと結論が間違ったものになりかねません。
しっかりと事象が適切かどうかを判断し、結論にも例外があるかどうかを疑って考える必要があります。
仮説を立てる際に演繹法と帰納法は重要です。
まとめ
ロジカルシンキングは、あくまで目的を達成するためのツール、手段です。あまり厳密さを求めるよりも有効性を求めて仕事に活かしていきましょう。
ロジカルシンキングは実用的な考え方なので、仕事をするうえでも役立ちます。ビジネスにおいては論理的であるだけではなく、相手の共感を得て、納得してもらうためのスキルとしてロジカルシンキングを活用しましょう。
- ロジカルシンキングは実用的な考え方で、仕事をするうえでも役立つ
- ロジカルシンキングを身につけると、コミュニケーション能力の向上、問題解決力の向上、目標達成までの道筋が見えるメリットがある
- ロジカルシンキングと比較される考え方に、「クリティカルシンキング」「ラテラルシンキング」などがある
- ロジカルシンキングで使えるフレームワークに「MECE」「ロジックツリー」などがある
- 演繹法と帰納法は仮説を立てるうえで役立つ
参考文献:照屋 華子,岡田 恵子,2001年,『ロジカル・シンキング』東洋経済新報社
鈴木 健,竹前 文夫,大井 恭子,2006年『クリティカル・シンキングと教育―日本の教育を再構築する』世界思想社