「デジタル変革」を成功させて、「DX銘柄(DXに精力的に取り組む企業として経済産業省に認められた企業)」に認定される企業は、戦略立案から組織づくりまで、経済産業省が経営者に求められる企業価値向上に向け実践すべき事柄をまとめた『デジタルガバナンス・コード2.0』に準じた進め方をしています。
加えて、DX を成功させるには、「どのようなデータを活用して新たなビジネスモデルを実現させるか」という「データ活用」の視点も重要です。
本記事では、DX銘柄2023に選ばれた企業のデータ活用事例をご紹介し、DX を成功させるポイントについて解説します。
なお、DX の定義、具体例を知りたい方は「デジタルトランスフォーメーション(DX)とは? 意味や定義をわかりやすく解説」をご参考ください。
DX銘柄2023 上位3社から見るデータ活用事例
DX銘柄2023 で上位評価された 3社のデータ活用事例を、経済産業省が公開する『DX銘柄2023」選定企業レポート』を参考に紹介します。
3社に共通するデータ活用の特徴として、協力会社や取引先などのステークホルダーを、巻き込んだ DX をおこなっています。
DX の実現にはさまざまな技術を組み合わせる必要があります。また、1つの会社だけで DX を実現できるものではないことを踏まえて、データ活用方法を模索する必要があるでしょう。
医薬品関連の DX事例
医薬品を取り扱う中外製薬株式会社では、ビジネスの革新や、1人ひとりに最適な治療法を提供する「真の個別化医療」の実現を目指し、「デジタルを活用した革新的な新薬創出」「すべてのバリューチェーン効率化」「デジタル基盤の強化」「革新的なサービスの提供」の戦略を掲げて DXを進めています。
たとえば、抗体創薬プロセスに機械学習を取り入れ、最適な分子配列を得る取り組みをおこなっています。また、画像解析技術を用いた細胞判定、薬理試験後の臓器選別や計測・判定に利用できる深層学習アルゴリズムの開発も進めています。
ほかにも、RWD(リアルワールドデータ)を活用した、医薬品の承認申請に利用できるエビデンスの創出や、RWD を社内の意思決定の根拠に活用する取り組みも実施しています。
機械関連の DX事例
建設機械メーカーである株式会社小松製作所では、国内外の建設現場の安全性・生産性・環境性の向上を目的に、建設生産プロセス全体のあらゆるデータを ICT で有機的につなぎ、測量から検査まで建設現場を可視化する「DXスマートコンストラクション」に取り組んでいます。
実現に向けて、協力会社と共同で、データ可視化のためのデバイスやアプリケーションを開発しています。また、生産性向上のため、建設機械に GPS やセンサーを取り付けて、機械の稼働管理をおこなう機能を搭載しました。
さらに、従来型の建設機械に取り付けるだけで ICT建機として利用できるキットの開発によって DX を推進しています。
卸売業関連の DX事例
工業用副資材の卸売業を営むトラスコ中山株式会社では、ユーザーへ「必要なときに、必要なモノを、必要なだけ」届けるために DXに取り組んでいます。
たとえば、AI を使ったデータ分析による自動見積もり・在庫管理、ユーザー企業側での棚卸しや在庫管理が不要となる機能を開発し、提供しています。
また、DXに対応するため、「デジタル推進部」を新設し、最先端の IT を駆使して業務プロセスの見直しや再構築をおこなうなど、DXに取り組むための体制づくりも進めています。
DX を成功させるデータ活用のポイント
続いて、DX を成功させるデータ活用について見ていきましょう。ポイントは次のとおりです。
- 主要な事業の自動化を完了させる
- 自社に集まるデータの特性を分析して強みを把握する
- 専門性と信頼性の高いステークホルダーと連携する
主要な事業の自動化を完了させる
DX のためのデータ活用を検討する場合、まずは「自社の主要な事業の自動化」を完了させる必要があります。
DX推進における初期段階は「ICT システムを導入し、自社にデータが集まる仕組みを作る」フェーズだからです。
なお、ICT の意味や、ICT から DX へのビジネス展開について知りたい人は「DX は ICT にどう関係する? 意味のちがいからビジネス展開例まで解説」をご参考ください。
自社に集まるデータの特性を分析して強みを把握する
次に、データの特性を分析し、自社の DX が持ちうる「強み」を把握しましょう。
その「強み」に、次のようなビジネスモデルの要素をかけあわせると、DX のビジネスモデルの原型が見えてきます。
- オンデマンド
ユーザーが必要なときに必要なだけ、商品やサービスを提供する - シェアリングエコノミー
個人や企業が所有する資産をほかのユーザーと共有する - プラットフォーム
システムやサービスの基盤を提供する - データドリブン
データを分析・活用しよりよい意思決定、新しい商品・サービスの開発をおこなう - サステナブル
社会や地球環境を含めた人間の持続可能な発展を前提にした商品・サービスを提供する - フリーミアム
お試しサービスを無償提供する - アドバタイジング
ユーザーではなく広告主から収益を得る
DX に見られるビジネスモデルの要素についてくわしく知りたい人は「DXのビジネスモデルに共通する要素を解説」をご参考ください。
なお、DX を成功させるためにビジネスモデルをブラッシュアップしていくには「DX戦略」が指針となります。
DX戦略について知りたい人は「DX戦略とは?経済産業省の「DXレポート」を中心に解説」をご参考ください。
専門性と信頼性の高いステークホルダーと連携する
前のデータ活用例の項目でも触れたように、DX に成功している企業は、専門性が高く信頼できる企業とデータ連携した DX をおこなっています。
とくに重要なのは、自社の DX に有用なステークホルダーを選定できる技術者の有無です。
DX を推進できる人材は不足しているため、自社ですでに能力のある人を雇用するだけでなく、新たに人材を育てる組織づくりが求められます。
DX推進に必要な人材に関する情報を知りたい人は「DX推進には人材育成が重要? 求められる人材像とスキルを解説」を参考にしてみてください。
本記事では、企業の DX事例や、DX を成功させるためのデータ活用のポイントについて解説しました。自社で DX に取り組む場合には、ぜひ参考にしてみてください。