DX のビジネスモデルに共通する要素について解説

DX(デジタルトランスフォーメーション)と呼ばれる変革に取り組む企業は、デジタル技術によって新たなビジネスモデルを模索しています。

 

業種や事業形態、AI や IoT など、組み合わせるデジタル技術の種類によってビジネスモデルは多種多様です。しかし、それらには共通する要素もあります。

 

DX のビジネスモデルを模索する方々の参考となるよう、本記事で解説していますので、ぜひご覧ください。

DX のビジネスモデルに見られる共通要素

DX のビジネスモデルとは、AI や IoT などのデジタル技術の活用を前提に創出する「収益を得る仕組み」を意味します。

 

新たなデジタル技術が社会に浸透するとともに世の中の需要は変化します。そのため、企業は DX戦略に基づき、つねに新しいビジネスモデルを模索し続ける必要があります。

 

なお、DX推進に必要な戦略について知りたい方は「DX戦略とは?経済産業省の「DXレポート」を中心に解説」を参考にしてください。

 

DX のビジネスモデルにおいて、共通する要素は次のとおりです。

  • オンデマンド(On-Demand)
  • シェアリングエコノミー(Sharing-Economy)
  • プラットフォーム(Platform)
  • データドリブン(Data-Driven)
  • サステナブル(Sustainable)
  • フリーミアム(Freemium)
  • アドバタイジング(Advertising)

オンデマンド(On-Demand)

オンデマンド型のビジネスモデルは、ユーザーの需要に応じて、必要なときに必要なだけ、商品やサービスを提供します。

 

有形の商品の発注から提供までおこなうインターネット通販、無形のデジタルコンテンツの販売など、幅広いビジネスモデルに共通する要素です。

 

「たくさん使っても同じ金額」という定額制のサブスクリプション(サブスク)も、オンデマンド型の一種といえますが、一般的に、オンデマンド型は「使った分を支払う」という従量課金制にあたります。

 

ただし、ユーザー自身の意思に応えるだけでは、DX のビジネスモデルとはいえません。

 

たとえば、IoT とセンサーの技術によって計測した天候や気温などのデータと売上の相関関係と、購買前のユーザーの行動を AI で分析し、つねに最適な在庫を提案するなど、ユーザーが意思表示をしていない時点での需要を予測するといった革新性が求められます。

シェアリングエコノミー(Sharing-Economy)

シェアリングエコノミー型のビジネスモデルは、個人や企業が所有する資産をほかのユーザーと共有することで収益を得ます。

 

個人や企業が所有する資産は、家や車といった有形の「モノ」や、オフィスなどの場所、無形のスキルや時間、知識なども含まれます。

 

DX のビジネスモデルとしてシェアリングエコノミーを実現する場合、インターネット上のシステムを介して貸出の仲介をおこない、手数料などで収益につなげます。

 

これまで他者と共有する発想すらなかった対象や分野について、シェアリングエコノミー型のビジネスモデルを構築することで、新たな市場を開拓することができます。

プラットフォーム(Platform)

プラットフォーム型のビジネスモデルは、システムやサービスの基盤である「プラットフォーム」を提供する企業が、プラットフォームを利用するユーザーからサービス利用料や取引手数料を徴収します。

 

事業の初期段階においては、他社のプラットフォームを利用することも多いでしょう。しかし、DX を推進した結果、事業の拡大戦略に入る際には、独自にプラットフォームを持つビジネスモデルに変化せざるを得ません。

 

たとえば、自社商品をインターネット通販の大手サービスで販売していた会社が、DX を推進して独自の集客・販売方法を伴うビジネスモデルを確立した場合、新たにプラットフォームを用意する必要があります。

 

業種によっては、対象顧客の囲い込みや需要を把握するため、ユーザーからの情報発信や、ユーザー同士のコミュニケーションができるソーシャルネットワークサービス(SNS)の性質も持つ基盤をプラットフォームとするケースもあります。しかし、ユーザー同士の交流からトラブルを生む可能性もあるため、慎重にプラットフォームの仕様を設計する必要があります。

データドリブン(Data-Driven)

データドリブン型のビジネスモデルは、データを分析・活用し、よりよい意思決定や、新しい商品・サービスの開発をおこないます。

 

生成AI などのジェネレーティブ型も、データドリブン型の一種といえます。

 

データドリブン型は、分析対象に指定する情報源の「質」によって評価が大きく変わります。

 

そのため、既存の事業で最大手であるなどのアドバンテージが、そのままビジネスモデルの信頼性につながり、本来の強みを活かせます。

 

たとえば、同じ生成AI でも、権利関係がはっきりした情報源を学習したもの、玉石混交の情報源を学習したものとでは、出力の信頼性は比べようがありません。

 

肖像権や著作権などの権利侵害のリスクを負わず、重要な意思決定に活用できるようにするには、システムの性能や仕様も重要ですが、情報源の信頼性がもっとも重要だといえるでしょう。

サステナブル(Sustainable)

サステナブル型のビジネスモデルは、社会や地球環境を含めた人間の持続可能な発展を前提に、高齢化や人口減少、気候変動などの社会問題へ取り組む商品・サービスを提供します。

 

事業の持続可能性(サステナビリティー)を突き詰めると、事業単体のビジネスモデルの妥当性だけでなく、事業をとりまく環境要因も検討する必要があります。さらに、社会や地球環境への貢献を重視したビジネスであることが、サステナブル型の特徴です。

 

サステナブル型には、共通して環境負荷への配慮が見られます。動物実験をおこなわない「アニマルウェルフェア(動物福祉)」を重視する姿勢のように、自然環境保護の枠組みに留まらないケースがほとんどです。

 

なかでも、カーボンニュートラルを掲げ、環境負荷がかかりにくいクリーンエネルギーを推進することを、GX(グリーントランスフォーメーション)と呼びます。

 

GX は、政府が掲げる次の 10年の経済成長戦略の核であるため、DX のビジネスモデルがサステナブル型であることは、政府の公的支援を受けるうえで、欠かせない要素になると考えられます。

 

参照:「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定されました(2023年2月10日)|経済産業省

フリーミアム(Freemium)

フリーミアムとは、「Free(無料)」と「Premium(割増料金)」をあわせた造語です。フリーミアム型のビジネスモデルは、試用は無料で、本格的に使用する際は有料として収益を得ます。

 

「最初の 1ヶ月だけ無料」「1GB まで無料」など、期間や容量などで制限をかけ、その後に有料となるケースがあります。

 

おもに、デジタルコンテンツやサービスの提供などで見られます。オンデマンド型やプラットフォーム型のビジネスモデルを目指す際、利用客に試用してもらうことが重要であるため、今後も根強く残ると考えられます。

アドバタイジング(Advertising)

アドバタイジング型は、プラットフォームを提供する企業が、ユーザーの属性に合わせて広告を表示し、おもに広告主から収益を得るビジネスモデルです。

 

ただし、アドバタイジング要素は、ユーザーに歓迎されない傾向があり、取り入れ方を慎重に検討する必要があります。

 

ユーザーは、コンテンツの閲覧時に広告をブロックする、過度に広告を表示しないコンテンツにアクセスするなどの傾向があります。そのため、広告主に利益をもたらさなくなったり、ユーザーが広告を表示しない他社のプラットフォームを利用するようになったりするかもしれません。

 

そのほか、DX推進の課題や解決策、企業事例などを知りたい方は「日本企業における DX推進の課題と解決策を解説」を参考にしてみてください。