IT・デジタル関連の最新情報や企業事例をいち早くキャッチ
>>さくマガのメールマガジンに登録する
スマートフォン向けゲームを中心としたエンターテインメント事業を展開している株式会社コロプラ(以下、コロプラ)。「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ」「白猫プロジェクト」といった著名タイトルのほか、位置情報を活用したもの、生成AIを組み込み、新しいゲーム体験を取り入れたものなど、次々と新タイトルを展開している。
ゲーム自体にも生成AIを組み込んでいるコロプラでは、社内でのAI活用を2022年末ごろから少しずつ進めてきた。2025年4月には、社内のAI活用率は80%に達したと発表している。それから1年経ったいまの状況はどうなのだろうか。また、非エンジニア層に対し、どのようにAI活用を浸透させたのだろうか。CIO室 AIイネーブルメントグループの山田和毅さんにお話を聞いた。

山田 和毅(やまだ かずき)さん プロフィール
CIO室 AIイネーブルメントグループ所属。2017年4月、株式会社コロプラに新卒入社。新作タイトルの開発や既存タイトルの運営、技術広報やCOLOPL Tech Blogの運営にも携わる。2022年末より社内のAI活用推進を担当。現在はAIイネーブルメントグループで、全社的な業務効率化、エンジニア生産性向上を目指し、さらなるAI活用に取り組む。
2026年6月時点で、社内のAI活用率はほぼ100%に
コロプラのAIイネーブルメントグループは、AIツールの導入支援、活用相談の受付、業務への組み込み検証、活用事例の共有に加え、AIで扱える業務領域そのものを広げる取り組みも担っている部署だ。立ち上げは2025年4月。しかし、コロプラ社内でのAI活用自体は、2022年末からおこなわれていた。
「もともとAI推進チームが、AIをどう業務に組み込むのかを試行錯誤していました。AIイネーブルメントグループは、『あらためてAI推進を部署としてしっかり取り組もう』ということで作られた部署です」
AIイネーブルメントグループができた、2025年4月ごろの同社のAI活用率は約8割。そこから約1年が経過した2026年6月現在、活用率は「ほぼ全員」といってよいレベルにまで上昇した。使用状況はシステムで定期的に確認しているという。
「当初は活用率100%を目標と掲げていましたが、ここまできたいまは、利用者をただ増やすことではなく、どの業務にどの程度AIを組み込むかといった点に注目しています。AIなしで業務が成り立たないレベルにまで組み込むのが目標で、活用の量ではなく質を見ていく段階にきたと思っています」
さくらインターネットが提供する、安心の国内完結型AI基盤サービス「さくらのAI」
>>資料をダウンロードする
マーケティングチームによるCursorのAI活用が契機に
いまではエンジニア、非エンジニアを問わずAIの業務活用が進んでいるコロプラだが、やはり最初はエンジニアの業務活用が中心だった。2023年ごろから、GitHub CopilotやCursor、Claude Codeなど、開発に使えるAIの活用が進行。業界的にも効率化しやすい部類だったこともあり、エンジニア自身も率先して活用していった。
一方、非エンジニア職の業務活用は、まだそれほど進んでいなかった。AI活用のためのガイドライン自体は整備されていたが、当時はそもそも、非エンジニアの実務にそのまま使えるAIツールが、世の中にまだ少なかった。加えて、具体的な活用事例も十分に浸透しておらず、「自分の仕事に、何を、どう使えばいいのか」というイメージを持ちにくかった。こうした点が、活用を広げる壁となっていた。
そこで、コロプラは非エンジニア職向けに「Gemini勉強会」を数回開くなど、活用ハードルの引き下げに努めた。Gemini勉強会は好評で、要約や文章作成といった活用は全社的に進んだものの、より業務に根差した活用はエンジニアに留まっていた。当時、非エンジニアからは「どのような業務にAIを使えばいいのかわからない」「プロンプトが難しくてよくわからない」といった声が寄せられていたという。活用事例の共有が進められていなかったため、より深い活用イメージを持ちにくかったのだ。
加えて、非エンジニアから「こういう業務に使えないか」と要望を寄せられたものの、当時のAIツールの性能が達しておらず、AIでの業務効率化は難しいと判断せざるをえないことも多かったと山田さんは振り返る。
こうした状況を変えたのは、マーケティングチームによるCursorのAI活用だった。
「きっかけは、エンジニアがCursorを多用している様子を、マーケティングチームの社員が見ていたことでした。そこから『Cursorを資料作成に使えないか』という話になり、マーケティングチームの社員の主導で活用が進んでいったのです。この事例を見て、ほかの組織からも『使ってみたい』という声が上がるようになりました」
AIの進化により、「これまでできなかった業務活用」が一気に実現可能に
一部のエンジニアたちが触りはじめ、非エンジニアにもGeminiを使った軽めの活用が浸透。マーケティングチームのCursorの活用事例を機に、ほかの非開発組織のAI活用への関心が上がったコロプラは、2026年に入ったころ、さらに大きな転機を迎えた。それが、Claude CoworkをClaude Teamで使えるようになったことだった。

「Claude Coworkはエンジニア以外の方に向けてつくられているものだったため、GoogleドライブやSlackなど、業務に必要なものがすべて組み込まれています。これまでのAIツールは、さまざまなサービス、ツールを横断しておこなう作業の効率化には対応しきれておらず、『AIで効率化できるのでは』と期待を持った人に『これなら人の手でやったほうが早い』と残念な気持ちにさせてしまっていたのです。それが、これひとつで完結できるようになった。利便性が一目瞭然であり、導入も推進しやすく、単純に使いやすかったということもあり、社内に一気に広がっていきました」
2026年3月、Claude Coworkの活用事例をシェアする場としてSlackに「#shr-claude-coworkチャンネル」を開設。当初は関心の高い10人程度で始めるつもりだったが、興味のある人が想定以上に集まり、いまでは100人を超えるメンバーが参加するチャンネルになっている。メンバーの部署もさまざまで、マーケティングチームや人事・総務といったバックオフィスなど、ありとあらゆる部署の人たちが、活用事例を共有したり、参考にしたりしている。
「Excelやスプレッドシートでの活用や、Excelで書いていたものを資料にまとめる作業がClaude Coworkでできたなど、エンジニアである私が気づいていなかった範囲の活用事例がどんどん生まれてきています。何か発想のきっかけとなるものがあれば、『じゃあ、こんなふうにも使えるのでは』と活用の幅はさらに広がります。事例をシェアできる場を用意したことで、ほかの人にも伝播し、どんどん利用が広がっていったのでしょう」
AIイネーブルメントグループを立ち上げてからの約1年間で、AIツールは劇的な進化を遂げていると山田さんは言う。それは、非エンジニアの業務効率の改善に役立てられるものが出てきただけではない。開発業務に使うAIに関しても、2025年6月ごろから格段に質が良くなっているのだという。
「それまでは、性能的に『ここにはAIが使えないから』と使っていないエンジニアもいたのです。それが、いまではほぼすべてAIに任せられるのではと思えるほどになっています」
Cowork利用者へのアンケートでは、「AIを活用することで仕事の質が上がった」と答えた社員は74%。また、1日あたり短縮できた業務時間に対し、「2時間以上」と答えた社員が40%以上にのぼっている。ただし、AIイネーブルメントグループとして「こう使ってください」といったアプローチはとくにしていない。Slackチャンネルでの事例共有のほか、人事部ではClaude Coworkの活用事例を共有する「もくもく会」を毎週、独自開催するなど、部署内や社内で共有できる事例をシェアした積み重ねが、これらの数字につながっているのだ。
印象的だった活用事例について、山田さんはゲーム企画を考えるプランナーの例を紹介してくれた。エンジニアに企画を説明するための資料づくりにAIを活用し、従来の仕様書という形ではなく、動くものをつくったのだという。
「プランナーは伝えるのがうまいため、仕様書もかなり細かくわかりやすく書いてくれるのですが、それでもエンジニアからプランナーへの確認が発生することがあります。しかし、動くものを見せてもらえれば、言語化が難しい動きなども一発でわかります。イメージの共有がしやすくなったことで、再確認の手間が省け、業務の効率化につなげられたのです」
業務を効率化し、「良いゲーム体験づくり」により注力を
ほぼ全社員が業務にAIを使うようになったいま、見据えるのは業務への組み込みだ。仕事の質が上がり、作業時間の短縮もすでに実現できている。その浮いた時間を「本質的な仕事である、良いゲーム体験をユーザーに届けるところに使ってほしい」と山田さんは語る。AIイネーブルメントグループの目的はただAIを使うことではなく、あくまでも本質的な業務に使える時間を生むための手段として、AIを使ってもらうことなのだ。
なお、浮いた時間の具体的な使い道については、各部署に任せられている。
「本質的なところに注力できるよう、AIに限らず業務効率化をしましょうとだけ伝えています。まだAIによる中核業務の効率化が難しい部署もあるのですが、何も中核業務に使わなければならないものではありません。どのような部署でも、AIで業務効率化できる箇所はあるはず。業務内容や現状についてヒアリングをし、効率化を後押ししていくのも私たちの役目です」
目下、山田さんたちが取り組みを進めているのは、社内のAI活用事例を必要な社員に届けられるようにする仕組みづくりだ。「#shr-claude-coworkチャンネル」だけではなく、それぞれのプロジェクトチャンネルなど、あちこちのSlackチャンネルにAI活用事例にあたる投稿が点在している。そのため、それらを拾い上げ、Geminiが社員の職種・部署に合わせた活用事例を教えてくれる仕組みがすでにつくられている。今後は、さらに活用事例を探す手間を減らすべく、レコメンド機能のようなものを搭載することを考えているという。必要な活用事例を手間なく見られるようにしなければ、全体に浸透させることは難しいというのが、山田さんの考えだ。
定量的な目標も、社内の活用率から別のものへと変わった。今後、山田さんたちが目標とするのは、活用レベルの底上げだ。組織、そして職種ごとにAI活用レベルの定義を決め、Slackの投稿内容やアンケート、ヒアリングからAIレベルを可視化。現状のレベル感と、次の目標を個々が目指せるものをつくろうとしている。
数年前のAIとは大違い。AI活用で自社の業務効率化を
早期に一部エンジニアが生成AIを触り、多くの人の努力や工夫を重ね、本格的にAIでの業務効率化を目指すところまできたコロプラ。まだAIの活用が進んでいない企業に対し伝えたいことを山田さんに尋ねたところ、「まずはAIの認識をあらためてもらえたら」という回答が返ってきた。

「2025年までは、まだAIでできないことが多かったところ、今年に入って業務に組み込めるようになり、ツールも性能も飛躍的に向上しました。性能はすでに実用十分な水準に達しており、どう業務に組み込むかのフェーズにあると思っています。2023年ごろにAIに触れてみて、『うちの業務には使えない』とあきらめてしまっているとしたら、非常にもったいないです。いまのAIでは十分対応できる可能性があるため、『できるにはどうしたらいいのか』という視点で、ぜひ試してみてほしいです」
そのために必要なのは、ガイドラインの策定だ。AIに入れていい情報は何なのか、きちんとまとめ、全社で運用する。その基盤がなければ安心して使えないため、そもそも活用する段階にいけないという。
「セキュリティー部門、技術部門がある会社であれば、そのトップと経営層とでつくるとよいでしょう。もし自社だけでは難しい場合や、機密性の高い事業のため不安がある場合は、AI活用のコンサル会社など、専門家の知見を借りてガイドラインを決めるのがよいと思います」
「ほかの社員の活用方法を見て、何か少しでも刺さるものがあれば、次の活用につながるはず」と語ってくれた山田さん。基盤を整え、エンジニアから非エンジニアへと関心のある層を少しずつ増やし、事例をシェアできる場を用意することで、自発的な広がりを生む。AI活用を進めたいが、いまひとつ進んでいないという企業や、自分たちの業界の仕事で活用できるイメージが湧かないという企業にとっても、参考になる取り組み例なのではないだろうか。
企業に最適化された“安心のAI環境”をワンストップで提供する生成AIパッケージ「さくらのAIソリューション」
>>サービスの詳細を見る
執筆
卯岡 若菜
さいたま市在住フリーライター。企業HP掲載用の社員インタビュー記事、顧客事例インタビュー記事を始めとしたWEB用の記事制作を多く手掛ける。取材先はベンチャー・大企業・自治体や教育機関など多岐に渡る。温泉・サウナ・岩盤浴好き。
※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。
- SHARE