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AIで描く次の時代の成長モデル ― ゲームチェンジの先にある未来(SAKURA AI Conferenceレポート)

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2025年12月11日に開催された、国産AIの共創をテーマにしたさくらインターネット初のカンファレンス「SAKURA AI Conference」内にて、さくらインターネット株式会社 代表取締役社長 田中 邦裕と株式会社THE GUILD 代表 深津 貴之さんが登壇。

「AIで描く次の時代の成長モデル ― ゲームチェンジの先にある未来」と題し、AIによって産業やビジネスモデルがどう変わるのか、人間の創造性がどこに価値を持つのか、次の成長モデルやリーダー像を議論しました。本記事ではその内容をレポートします。

※本記事の内容は、2025年12月の登壇時点での発言をもとに構成しています。

AIが自律的に仕事をしてくれる時代が来る

【田中】私も深津さんもエンジェル投資家をやっていますが、この5年でスタートアップの置かれる環境も変わったように感じます。深津さんは、最近のスタートアップについてどうお考えですか。

【深津】最近は、多くのスタートアップのサービスそのものが生成AIと競合してしまい、提供価値の差別化が難しくなっています。「それならAIで簡単にできてしまう」となり、サービスの存在意義が揺らいでしまうケースが増えているんです。

【田中】独自のAIサービスをつくっても、その後ビックテックが提供するサービスにすぐ実装されてしまう……といったこともありますよね。

【深津】はい。僕たちは、お客さまにも出資先にも「ビッグテックが数年後に参入してくる領域とぶつからないようにするのは、非常に大事」とよく話しています。

【田中】そういう状況でも生き残れる会社とそうでない会社には、どういう違いがあると見ていますか。

【深津】失速しやすい会社は、ビッグテックの生成AIの弱点を見つけて、そこを埋める形でサービスをつくるタイプ。逆に生き残りやすいのは、誰もやらないような非常に泥くさい領域、ビックテックでも優先順位が低いような特定の課題を深く掘り下げているような会社ですね。

【田中】なるほど。マスが大きいことは相手も始めますし、ソフトウェアで解決するものは容易に真似されやすいということですね。
では、AIそのものの進化はどう見ていますか。

【深津】昔の生成AIは一問一答のようなものがメインでしたが、いまは1つの問いからマルチステップで作業し、結果を報告するようになっています。対して、これから先のAIはこちらからお願いするものではなくなり、自律的に仕事をしてくれるものと思っています。
それと、「究極のAIのUXは、そもそも問題が発生しない。ユーザーが意識しなくても機能する」ということです。問題が発生しないので、問題解決というよりは提案型になるんですね。たとえば、生活習慣病のソリューションに対して、これからのAIは、食生活の様子を見ながら食事を考えてくれるし、塩分を取りすぎる前に塩分を控えたメニューを教えてくれるようになります。その結果、そもそも生活習慣病になるリスクそのものを下げられる可能性があると思うんです。まさに、日々の生活に根ざし、ユーザーのロイヤリティを育てるAIですね。

【田中】課題解決型ではなく、そういう提案型のAIのほうが、日々の生活に根付いて長く使ってもらえるかもしれないですね。
2年前と比べると、マルチモーダル化がかなり進んだと思っていますが、ここはどう見ていますか。

>>マルチモーダルAIとは?学習方法や活用事例をわかりやすく解説

【深津】これは僕の勝手な妄想ですが、赤外線などの人間に感知できないものを読み取れるようになるなど、AIが人類の知らない感覚センサーを備えていくことで、人間の感覚では捉えられない情報も含めて、予測や判断の精度がさらに上がっていく気がします。

【田中】なるほど、人間の可聴域や可視域を超えて学んでくれるんですね。人間の限界を超えたセンサーで人間の脳よりも先に反応し、それが統合的に処理されるとまったく違う結果を出してくるわけですね。

【深津】そうなると思います。人類が把握できないレベルの情報まで扱えるようになる気がします。ただ、それは人類がレビューできないデータも多く含まれるので、それを評価可能にしていくステップが必要になるかと思います。

【田中】マルチモーダルといえば、最近はテキストや映像という境目はなくなっていますよね。

【深津】各要素がバラバラに存在するのではなく、統合された1つの概念として扱われるようになっています。全体的に見て動けるようになっていて、人間の匠の技や達人の領域にAIが急速に近づいている印象があります。それぞれ別の要素として丸暗記されていたものが、ネットワークとして接続されていったことが一番大きい要因だと思います。それともう1つがデータの量です。計算資源やネットワークなどが大きく増加しており、基本的には「永遠に」といっていいくらいスケーリングしていくと思います。ただ、究極的にどこに行き着くのかは開けてみないとわからないでしょう。

人間の限界を簡単に超えるAI、人間はどう関わるのか

【田中】いま、AI for scienceといって、サイエンスをAIで変えていくという変化が見えてきています。いままで人が一生を費やしていた研究を、AIが1時間でしてしまう時代になるわけです。「人間の研究がまったく変わる」と言う人もいます。

【深津】極論を言えば、AIが地球にあるすべての最新論文を読み、これからトレンドになりそうなところを優先順で集め、まだ議論されていないものから取り組んでいく、そして新しい発見を継続的に生み出していく。そういうこともあるかもしれません。
AIの一番強みは、解決にいたるまでの経路の探索力だと思います。世の中の大半の問題解決法は、結局、膨大な選択肢のなかから、正解に至る経路を探ることだと思うんです。人間は頑張っても数個の道を検証するのが限界ですが、AIは人間よりもはるかに多くのパターンを同時に試すことができます。人間のほうがクリエイティビティはあるにしても、AIが見つけた「正解っぽい道」のリストから人間が選ぶだけでも、劇的に成果が変わるのではないかと思います。
それから、いずれ「人生データセット」のようなものの取り合いが始まると思います。人ひとりの人生すべてを記録した70億個のデータセットはまだ十分に活用されていない領域です。これらを集めれば、人類の多くの悩みや問いに対して、ヒントが得られるようになると思います。
また、ウェアラブル端末にどこまでデータを活用するかで、その人がAIからもらえるフィードバックの質や量が大きく変わることが起きそうな気はします。

【田中】解像度が上がりすぎる人生がいい人生なのかわからないですが、長生きはできそうですね。

【深津】結局、生き方を決めておかないと、何でもできすぎるので何をやっていいかわからなくなりそうな気はします。

【田中】オープンワールドゲームですね。

自国でAI開発ができる=ビジネスチャンス

【田中】国がAIを開発できるかできないか、これは重要でしょうか。

【深津】できるほうが望ましいけれども、トッププレーヤーの勝負しだい、あるいは G7に参加するようなポジションを目指すかどうかといった戦略にもよると思います。国連加盟国約180か国のうち、多くの国では単独での開発は難しい状況かと思います。
【田中】なるほど。AIデータセンターは、アメリカが日本より何桁も多く投資をしていますが、中国は輸入規制があるので、中国との差は2倍程度しかありません。そして、それ以外の国の投資はかなり少ないです。ある意味、日本は中途半端な状況にあると言えるのではないですか。

【深津】日本は資本額でみると、1桁か2桁少ない規模だと思います。さらに世界からお金を集めてもよいのではないでしょうか。最終的にAIは資本力が大きく影響する競争になるので、中長期で考えるなら、日本の資本だけに頼るより、アジアからの資金をさくらインターネットのような国内基盤に集めるような動きのほうが、むしろかっこいいし、個人的にも見てみたいと思っています。

【田中】じつは、経済産業省がJETROを通じて、途上国のデジタル化やAI利活用を支援するような取り組みを広げつつあります。それから、情報処理技術者試験も、資格自体を海外と日本で共通化できるようにする動きは、すでに始まっています。
これはみなさんにとってのビジネスチャンスになり得ます。最終的にODAによる国際協力の枠組みが終わったあとも、しっかり売上を出していければ、みなさん自身がデジタル貿易黒字を生み出すためのプロセスが回り始めます。そこに日本としての向き合い方があるかもしれませんね。

【深津】そうなると、投資額のゼロが1桁足りない問題もカバーできる可能性が見えてくるかもしれません。

【田中】アジア各国の教育レベルも上がってきているし、一方で日本の国力が下がっていることは認識しないといけません。でもやはり、AIを基礎の部分からつくれる国はほとんど存在していないのも事実ですから、日本のAI開発は単なる経済安全保障の話ではなく、海外でのビジネスを広げるためにも重要だと感じます。

AIのコモディティ化で、既存の社会がリセットされる

【深津】産業革命が始まったとき、蒸気機関やエンジンを最初に握ったところは非常に強かったけれども、100年たつとそれらは単なるインフラになり、やがて最終的な統合ソリューションをつくったところが強くなりました。たとえば自動車も、自動運転化によりクラウドネットワークのほうに価値がシフトしています。テクノロジーはどんどん抽象化されていくので、AIも最後は上に何を載せるかの勝負になっていく気がします。

【田中】おそらく、2030年から2035年にかけて、AIが当たり前になったらそうなるでしょう。AI自体で稼げる期間はそれほど長くないと思います。ITやインターネットもそうでした。
その先で、たとえば全人類がリモートワークになり、駅チカという感覚もなくなれば、最適化された先に求められる新しいインフラは何かという話になります。

【深津】そうなると、既存産業のアセットも、大きく見直されることになりますね。蒸気機関がモーターに切り替わったときに何が起こったか、知っておかないといけません。

【田中】AIによって根元的に変わったところにビジネスの種があるでしょうね。

【深津】僕は、最終的にAI社会を規定するのはやはり物流だと思うんです。つまり、分散型の都市が成立するかどうかは、そこに消費財を安定して届けられるかどうかにかかっています。ですから、物流ベースあるいは人口ベースで考えると未来予測がしやすいのではないでしょうか。

【田中】たしかに。たとえば電気も、自分で発電して自分で使えるようになっていますから、ネットワークの必要性が変わってきています。これから必要になるのは物流、運輸――つまり人が動くためのネットワーク、そして通信です。この2つがあれば、人間は困らなくなるということです。
ただ、将来的な人口のピークは上振れすると120億人ぐらいと言われていて、人類を支えるための資源も大幅に増えるでしょう。資源は限界がありますから、シェアするしかありません。

【深津】究極的には、国際的な枠組みのもとでAIが資源の分配や管理を担うような形になるといいですよね。資本主義の市場原理だけに任せると、最適化されないまま、結局無計画に使い切ってしまうということが起きかねないと思います。

目指すのは、みんながAIを“つくる”多様なAI社会

【田中】この先、人間は働かなくていい人と働く人に分かれるという説もあります。

【深津】僕のなかでの答えは、何かを始める人と続けられる人が結論に近いところにいる、ということです。みんながスーパーAIを与えられても、ほとんどの人は猫の動画やゲームをみることに時間を使ってしまいで何も始めないし、AIに「やらないほうがよい」と言われたらやめてしまいます。そのなかで、あえてやる、そしてやり続けさえすれば、資金調達でも、意見の修正でも、実際のオペレーションでも、 AIが実行を支援してくれる場面が増えると思います。3年ぐらいのタームで見れば、経営にAIを入れる会社と入れない会社では業績に差がつくと思います。

【田中】アメリカに行って感じたのが、AIデータセンターが相当伸びていて、雇用はどんどん減らされていることでした。日本ではそういう兆しがまだあまり見えませんね。

【深津】日本は高齢化かつ人口減少があって、これがAIに対してポジティブに働いているところがあります。たとえば、日本のエンジニアが足りなくて物理的には解決できないから、そのためだけのAIが必要という状況ですね。
そして人間の仕事はAIの未探索領域に飛び込むものになり、統計的な中央値の外側にノイズをぶち込み、AIに揺らぎを与える機能のようなものになるのではないでしょうか。

【田中】では、AIが単一のものになるのか多様性を生むのかについては、どう思われますか。

【深津】個人的には多様性を生むと思います。超企業や超国家、独裁者など、極端に集中した体制はどれも歴史上長続きしにくく、あらゆる分野で分散されているもののほうが生存率が高いです。

【田中】AIが学習するデータがWebから食い尽くされていて、そこからAIが生成したデータでまたAIが学習していると多様性をなくしていくわけで、AIの単一性が起こすAIの崩壊も起こりうるわけですよね。

【深津】僕個人は、多様性のあるAIによるグリッドのようなかたちで解決されるかと予測しています。100万あるAIから、TPOに合わせて10万を選出し、それをグループに固めて1つのAIとして機能させるというところでしょうか。

【田中】それは社会そのものですよね。私は、勝ち負けの世界ではなくみんなが残る世界なのだろうと思います。人間社会におけるAIが生き残る道は、みんながAIをつくっている状態のなかにあるかもしれないですね。
では、最後に何かメッセージをお願いします。

【深津】とりあえずみんな始めよう、まず触ってみよう、続けてみよう、と強くおすすめします。

【田中】ぜひAIを利活用するだけではなく、AIをつくるぐらいの勢いで、みなさんともにAI社会を渡り歩ければと思います。

編集

さくマガ編集部

さくらインターネット株式会社が運営するオウンドメディア「さくマガ」の編集部。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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