前回までのあらすじ
なぜか鹿児島から青森まで高速道路をひた走り、全てのSAでラーメンを食べることになった。九州を抜けてついに本州入り。死にそうになりながらラーメンを食べ続け、宮島SAにて高速内ホテルを発見し宿泊したところまで。
この旅に課せられたルールは3つ、①全てのSAでラーメンを食べる②残しそうならパスできる③交通ルールを守る。とりあえず、関西を目指してひた走る!
2日目
5:30
早朝5時半より出発だ。このファミリーロッジ旅籠屋(はたごや)は、無料の朝食が付いていてちょっとしたパンやコーヒーなどが準備されている。是非ともその恩恵にあずかりたかったのだけど、朝食は6時半だったか7時から開始らしいので、諦めた。まだまだ先だ。
ひっそりとチェックアウトする。そもそもここでパンを食ってしまったら後々のラーメンに響く。そう、ラーメン地獄がまた始まるのだ。
朝焼けの中を爆走していく。
それにしても、昨日の夜、無理して宮島SAでラーメンを食べたのは完全に正解だった。ホテルにチェックインした直後に夜の街ならぬ夜のSAに繰り出して食べたのは正解というほかない。なぜなら、あそこで食べておかなかったら寝起き状態で食べることになっていたからだ。あの濃厚ラーメンを寝起きすぐはなかなかハードだ。
6:31 小谷SA(広島県) 走行距離 580.3 km
朝焼けの中、小谷SAに到着した。1時間くらい走行したし、ここらで朝食だ。まあ、食べるものはラーメンなのだけど。
早朝から人が多く活気がある。スタバがあったり、パン専門店が入っていたりとなかなか充実したSAだ。
メニューを見ると、どうやら「尾道ラーメン」と「広島ラーメン」の2種類があるらしい。「尾道ラーメン」は昨日の夜に宮島SAで食べたのでここは「広島ラーメン」をチョイスする。
ラーメン009 広島ラーメン 650円
一言でいってしまうと“濃厚”。完全に“濃厚”。とにかく“濃厚”。たぶんここまで食べたラーメンで一番の濃厚さ。もともと広島ラーメンとは醤油とんこつをベースとした比較的あっさり目のあじわいという印象だったが、ここでは独自のアレンジがあるらしく、かなり醤油寄り、それでいてかなり濃厚という感じになっていた。かなり満足度が高く、これを昼食や夕食に食べれば「いやー満足」となる味わいだが、いかんせん、朝に食べるものではない。
さて、こうして濃厚ラーメンを食べているとフードコートの入口あたりの座席から話し声が聞こえてきた。見ると、エグザイルがそのまま年老いたみたいな、年齢層高めのコワモテ集団が大騒ぎしていた。
「キタキタキタ!」
「おお、キタキタキタ!」
何がキタのか知りませんけど、大声を出してるわけですわ。エグザイルのサングラスの破片から生まれてきたみたいな風貌で、大騒ぎしている。嫌ですよね、こういうの。なんだか怖いですし。
その怖そうな感じから何かのギャンブルに夢中になっている感じがしたんですね。時間的に早朝ですから、日本の競馬とかではないと思います。海外のブックメーカーあたりに多額の金を賭けていてヒートしていたみたいな感じがしたんです。それぐらい無法な感じがした。
「こわいなあ」
とか思ってその様子を眺めていたら、そのうちの一人が言うわけですよ。
「でたでた! ついにキティちゃんでた!」
なんかガチャガチャ的な何かをしていたのか、かわいいキティが出たと大騒ぎしているわけですよ。怖そうな連中が。
「やったな、青タマゴちゃん!」
おまけにそのうちの一人、金のブレスレットしてるやつのニックネームが「青タマゴちゃん」というややカワイイ寄りのものであると判明し、どういう経緯でそういうことになったのか気になって仕方なかった。
さて、淡々と次のラーメン目指して高速道路をひた走るのみである。朝の時間もやや深くなってきて、車が増え始めてきた。ちょっとずつ流れの悪い場所がでてきたりして、プチ渋滞みたいになることもしばしば。
それにしてもかなり体がギチギチだ。昨日から狭い運転席に押し込められてずっと運転しているので、体が固い。ここらでパーッと運動でもして体をほぐしたい気分だ。
7:32 福山SA(広島県) 走行距離 630.8 km
体を動かしたいなあと強く念じながら運転していると福山SAに到達した。このあたりはSA設置の理念通り、だいたい50キロ間隔の設置みたいだ。
画像を見ても分かる通り、絶賛改装工事中のSAだった。一瞬、「休業中ならラーメンを食べなくてもいい」という光明が差したが、画像を見ても分かる通り、誇らしげに「営業中」の看板が掲げられていた。
このSAがある福山市は、バラが有名な街なのでSA内にもバラ園があったりする。こうやってみると、SAってのはけっこう地域性が高く、いろいろなものがある。一つとして同じSAはないのだ。
ドッグランまである。車の中で欲求不満になっている犬を運動させるのだろう。僕も完全に欲求不満なのでここで運動してやろうと思ったが、さすがに犬専用っぽいのでやめておいた。
こういったふざけたスポットもある。恋人たちが薔薇で作られたハート形のモチーフの前でラブラブ記念写真を撮れる場所だ。現に、ドライブデート中のカップルが朝もはようからやってきて撮る撮らないでいちゃいちゃしていた。
「やだあ、恥ずかしい」
「撮ろうよ、記念だし」
「三脚とかないと無理じゃん」
「その辺のおっさんに撮ってもらえばいいよ」
「やだあ、私のスマホ触らせたくない」
こんな会話があった。その辺は別にどうでもよくて、その辺のおっさんとしてはこの画像は極めて重要な情報を含んでいる。
これ。
このSAには「ローズアベニューデリカ」ってのがあるよという案内なのだけど、よくよく見ると「おむずび」「パン」「たこ焼き」「お好み焼き」「からあげ」というラインナップ。そう、これは最重要情報だ。
「ラーメンがない?」
もしかしてここにはラーメンがないのかもしれない。それは大ごとだ。大変だあ。さあ、ここにラーメンなかったら本当に大変だなあ。さっきのSAでのラーメン濃厚だったからまだ残ってるなあ。そうかあ、ないのかあ。
ありました。
それも「大阪王将」だ。
さらにその奥にもさらにラーメン屋があったので、完全にダブルラーメン体制だった。誰だよ、ないとかいったの。あるじゃねえか。それもダブル。夢見させるようなこと言うな!
ラーメン010 中華そば 570円
二店舗あるということで、どちらを食べるかさんざん悩んだのだけど、両店舗を何度も行ったり来たりして検討した結果、大阪王将で食べることにした。その理由はあっさり味っぽいからだ。先ほどのSAからあまりインターバルがないので濃厚なものはマジできつい。そういった理由もあるが、あっさりめの味の方が理想とするSAラーメンに近いと考えたからだ。
食べてみると、やはり期待を裏切らぬあっさり醤油味で、麺の太さも適切、マジで全てがちょうどよかった。もしかしたら、全国にチェーン展開する「大阪王将」のこの味こそが理想のSAラーメンになるのかもしれない。そう思った。胃袋的にかなり苦しいが、あっさり系ならまだまだいけることを再認識したラーメンでもあった。
SA内にはマクドナルドもあった。マジ、マクドナルド食べたいな……。
■
さて、気を取り直して車を走らせていく。情報によると次のサービスエリアもそう遠くないが、次からは広島県が終わり、岡山県になるらしい。いったいどんなラーメンが待ち受けているのか。ワクワクしていないけどワクワクしながら車を走らせた。
8:38 吉備SA(岡山県) 走行距離 692.3 km
ついに岡山県入りし、吉備SAへと到着した。そして、降り立った瞬間に分かった。
「ある」
このオーラは絶対にある。
SA内になぜかある五重塔みたいなものを眺めながら建物内へと入っていく。
けっこう大きなSAでお土産物も充実。画像上部に「セブン銀行ATM」っていう案内があるけど、これがとにかく多かった。昔は「あちゃー、金をおろしてくるの忘れたわー、高速降りるまで現金ないわー」と困ったこともあったが、今はかなりの頻度でこのセブン銀行のATMが設置されているので困らない。便利になったものだ。
ラーメン011 醤油ラーメン750円
あっさりめの醤油ラーメン。こういった味わいが続くのは嬉しい。一瞬だけ魚介系統の味がしたので、これまでとは異なった醤油ラーメンなのかもしれない。麺はやや太い中太麺。ただ、この味わいならもう少し細い麺の方が合うのではないだろうか。あっさりめでくどくない味わいだが、値段が750円と考えると少し物足りない。というか、まだ朝の8時台だというのにもうラーメン3杯目だ。本当に大丈夫なんだろうか。胃袋。
早朝という時間だからだろうか、フードコート内は静まり返っていた。ただ、ずっとミスチルの音楽が流れていたのだけど、隣の青年が突如として「すてえええええええええええーええーええー」と歌い出したのでめちゃくちゃ怖かった。
■
これで岡山県のSAはおしまい。山陽道においては1つしかないらしく、次はもう兵庫県のSAだ。ついに関西まできてしまったことになる。延々とラーメンを食べて鹿児島から関西だ。なにやってんだろ。いや、ラーメンを食べているんだろうけど。
9:45 龍野西SA(兵庫県) 走行距離 756.9 km
兵庫県最初のSAである龍野西SAは緑豊かな場所だった。
緑豊かなスペースがあったりして、完全にWindowsXPみたいになっている。
もちろんしっかりとラーメンもあり、どうやら「龍野醤油ラーメン」と「赤穂塩ラーメン」があるらしい。どちらかを選択しなければならない。
「高速SAラーメンの基本は醤油ラーメンなのかもしれないな」
そんなことを言った舌の根も乾かぬうちに、ただ「あっさりそう」という理由だけで塩ラーメンを選択した。
ラーメン012 赤穂塩ラーメン 700円
なんだろう。ドンブリが六角形というだけでめちゃくちゃ意識高いラーメンに見える。
ここまでで初めての塩ラーメンということもあって、透明なスープにかなり心奪われる。おまけにチャーシューではなく“つみれ”が入っている。スープは王道的な塩ラーメンの味わいだが、やや味が薄いように感じた。かなりダメージを受けている今の僕には嬉しい薄さだが、通常だったらやや物足りなく感じるかもしれない。麺に絡めた場合はやはりスープの薄さが気になるが、つみれを食べると妙にマッチする。麺ではなく、つみれに合わせて作った濃さなのかもしれない。美味しいが、やはりSAラーメンは醤油ラーメンかなと再認識した。
■
ちょっとラーメンのペースが速すぎる。胃がはち切れそうな勢いだ。このままでは大変なことになりそうだが、僕にはちょっとした打算めいたものがあった。
ついに兵庫県入りし、このまま関西地方へと突入していく。さらにはその後、愛知方面へと抜けていくわけだ。そうなると、これまでとは違って大きな都市が連続する部分を走行することになるわけだ。
高速を走っていれば気が付くことだが、SAは地方にあることが多い。50kmに1つはある頻度と言っても、都市部はそうではない。なぜなら街中を高架道路で通行するような場所はSAほどの広大な土地を確保することが難しいからだ。
ということで、いま現在は50kmに1つ程度のペースでポコポコとSAがあるが、ここからは減るんじゃないか。さらに、そこでルールで許されている“パス”を有効に使えばかなり胃袋に余裕ができる。何事も戦略的に考えることが賢い生き方だ。
そんな僕の戦略とは裏腹に、けっこう短い間隔で次のSAがやってきた。なんなんだよ。
10:52 三木SA(兵庫県) 走行距離 805.2 km
なかなか大きなSAだったが、お昼前の時間ということもあってか、人はあまり多くなかった。
阪神タイガースの勢力圏に入るらしく、ここからはタイガースグッズが売られている。
このSAに入っているラーメン屋はちょっと変わっているようで「世界一忙しいラーメン屋」という名前がついている。なんとなく興味をそそる店名だ。どうやらこれは関西でけっこう有名なラーメン会社がプロデュースするお店らしい。
ラーメン013 世界一忙しいラーメン 850円
あ、これは美味いわ。かなり好きな味だ。
余白の多いどんぶりの時点でかなり意識高いラーメンの印象を受けるが、味の方も意識高い。しっかりとした醤油ベースなのだけど、あっさりでもある二面性、味わった後にほのかに柚子の香りが漂う。これで入っていなかったら本当に恥ずかしいのだけど、絶対に柚子を隠し味にしていると思う。麺もしっかりとしていてスープの味にマッチしたベストな太さと硬さを選んでいる。正直、午前中だけで5杯目なのでいけるか不安だったけど、ペロリといけてしまった。ただお昼前という時間もあったのか、けっこう暇そうなおっさんが作っていたので、「世界一忙しい」わけではないのかもしれない。
そんなこんなで、かなり美味しいラーメンが飛び出し、限界を迎えつつある胃袋を携えて。いよいよ関西へと突入していく。次回はどんなラーメンが待ち受けているのか。
つづく
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