高速SAのラーメンはなぜ美味いのか、鹿児島から青森まで全てのSAでラーメンを食べてきた。①

「やりたいこと」を「できる」に変えるWEBマガジン「さくマガ」をご覧の皆様こんにちは。インターネットでよく分からない文章を日々公開しているpatoと申す者です。

今回、この「さくマガ」に寄稿するにあたり、こんなやりとりがありました。

「何かやりたいことないっすか?」

と「さくマガ」編集部より突然の質問だ。

その質問の趣旨をよく理解していなかった僕は、ちょっとピントのズレた答えを出してしまったのだ。

「そういや高速のSA(サービスエリア)で食べるラーメンってめちゃくちゃ美味いですよね。なんでですかね。是非とも食べてみてその謎を解き明かしたいです」

かなり素っ頓狂な感じだ。ちょっと何を言ってるのか理解に苦しむ。そうしたらこう返ってきた。

「あ、じゃあ鹿児島から青森まで全部のSAで食べてきてくださいよ。それを連載で5回くらいに分けて掲載しますんで」

ちょっと何がどうなったのかいまだによく理解していない。でもたぶん、これが「やりたいこと」が「できる」に変わった瞬間なのだろう。コンセプトどおりだ。たぶん。

本当にこうするしかなかったんだろうか。今でもそう思う。

 

桜島の噴火写真

 

そんなこんなで、ちょっと理解が追いつかない点がまだありますが、とりあえず鹿児島にやってまいりました。桜島です。

おー、桜島だなーと眺めていたらドーンと噴火したのでビックリしました。なにより周囲の人が噴火に関して全く気にもとめておらず、いたって普通、そういうものかよ、と驚きました。

 

1995年(平成7年)のことでした。九州自動車道が全線開通し、鹿児島から青森までが一本の高速道路で結ばれることになり九州と本州が一つになったのです。すごいですよね。ずっと高速に乗ったまま鹿児島から青森まで行けるんですよ。

そんな、2000キロを超える長大な高速道路において、やはり休憩施設は外せません。そこで食べる食事はワクワクしてきますし、土産物の売店なども心躍るものです。

今回、そのSA全てでラーメンを食べる、という訳の分からないチャレンジをすることになったのですが、せっかくなので、「最も美味いラーメン」「最も高速SAのラーメンらしいラーメン」を決め、なぜ高速SAで食べるラーメンは美味いのかという謎に迫ってみようと思います。

なんか「高速SAのラーメン」ってイメージがないですか? 特にまずいわけでもなく、かといって絶賛するほどの美味いわけでもなく、けれども、なんだか記憶に残る、みたいなそういうイメージないですか。僕はあります。それがなんなのか、この旅で明らかにしていきたいです。

それにあたり以下のルールを制定しました。

 

1. 全てのSAでラーメンを食べる

高速道路には二種類の休憩施設があります。それがSA(サービスエリア)とPA(パーキングエリア)と呼ばれるものです。一般的に、サービスが充実しているのがSAといわれていますが、近年ではその境界は曖昧になっています。

かなりサービスが充実していて、SAかよと言いたくなるレベルのPAもあり、そこでもラーメンを提供しているとは思いますが、今回はSAに絞らせていただきました。PA入れたら気が狂うレベルになるので。基本的に50キロに1つの目安で整備されているSAでラーメンが提供されている場合は、それを食べます。それだけです。

 

2. 残しそうなときはパスしていい

連続でラーメンを食べるわけですから、中には「ちょっと満腹で食べられないな」という場面も出てくると思います。その場合は、非常にもったいないし失礼なので最初からパスをしてよいこととします。逆説的に言うと、頼むということは残さず食べるということです。

 

3. 交通法規を守って明るく楽しく

当たり前ですが、制限速度など交通法規を遵守します。運転中の画像撮影はご法度ですので、ダッシュボードに固定したスマホによるインターバル撮影を用いています。

 

それでは、ルールを守ってスタートです。

 

1日目 10:00 鹿児島IC(鹿児島県)走行距離0 km

 

鹿児島IC

 

さて、長い長い高速道路の始点に当たる「鹿児島IC」だが、明確にここが鹿児島ICだぞという場所がないようだ。本来なら料金所なり入口なりの明確な場所があるが、終点であり始点という特性上、料金所はかなり進んだ先にあるようだ。

ただし、この辺が高速道路の始まりだろう、みたいな場所はある。ここを曲がったら高速道路だぞという表示があったので、ここを旅の始点とした。ちなみに移動手段はレンタカーです。

 

10:21 桜島SA(鹿児島県)走行距離22.6 km

 

最初のSA、桜島SA

 

すぐに最初のSAがやってくる。「桜島SA」だ。桜島の名前を冠しているが、桜島にあるとかそういうわけではない。頑張れば桜島を望むことができるという位置にある。西郷隆盛の顔出しパネルがちょっとした悪夢かってくらいある。

 

SAの中に入ってみる

 

この雰囲気。これだよ、これ。この雑多な雰囲気の中で食べるラーメンが最高なんですよ。

おまけに、現在は朝の10時半、今日は死ぬほどラーメンを食べることが予想されるため、前日の夜から食事を抜いていました。かなり空腹なので早くラーメン食べたい! もう我慢できない! とケロッグのごとく駆け寄りました。

ラーメン! ラーメン!

 

ラーメン、無いやん

 

ラーメン、なかった……。

メニューは「うどん」や「そば」が中心で「ラーメン」の影も形も存在しない。「ラーメンが存在する場合食べる」というルールなので、存在しないので食べない。初っ端からこんなことになるとは思わなかった。

とにかく、ないものは仕方ありません。目が回りそうなほどの空腹を携えて、再度、車を走らせます。

 

新日本プロレスのバスが追い越していった

 

新日本プロレスのバスが追い越していった。前日の鹿児島大会を終えてこれから移動するのでしょうか。なんにせよ、すごい速度で爆走していた。

11:28 山江SA(熊本県)走行距離98.2 km

 

山江SAへ到着

 

桜島ICから1時間あまり、あっというまに宮崎県をかすめ、熊本県入りし「山江SA」へと到着した。山間に存在する比較的小さなSAだ。

 

よくわからないオブジェ

 

ちょっと世界観がよくわからないオブジェが点在する。そんなSAだ。

完全に空腹だ。果たしてこのSAにはラーメンがあるのか。ちょっと小さいSAだし、どうやらセブンイレブンが入っている売店があるようだ。その大半をセブンイレブンが占めていて侵食されて本体みたいになっている。もしかしたらフードコート的なものがないのかもしれない。あったとしてもスナック軽食程度でラーメンないのかもしれない。そんな不安が脳裏をよぎった。そうなったらそもそもこれ、企画倒れになるんじゃないか。

 

熊本ラーメン

あった。よかった。本当に良かった。企画も成立する。 建物の隅の方にやや狭めのフードコート的な場所があり、そこでしっかりと熊本ラーメンが提供されていた。

ラーメン001  熊本ラーメン 650円

 

ラーメン001  熊本ラーメン 650円

 

濃厚な豚骨スープに中太麺、これが熊本ラーメンの特徴だ。この山江SAの熊本ラーメンは、濃厚な豚骨であるが麺はやや細いように感じた。特に麺の上に乗せられた「もやし」のしゃりしゃり感が心地よく、濃厚なスープに絡んで美味しかった。空腹も手伝って簡単にペロリである。

 

 

次のSAに向けて走り出す。まだまだ空腹なのでぜんぜんいけそうだ。

この人吉から八代の間を走る区間は、トンネルが23個連続で登場してくるトンネル地帯としても有名だ。その中には6キロや5キロと尋常じゃない長さを誇るものもある。これらの長距離トンネルの手前にはトンネル通行用に信号機がある。高速道路なのに信号機があるのでちょっとした違和感を覚える。

僕は1995年当時のニュースを薄っすらと覚えているのだけど、たしかこのへんのトンネルが開通したことによって鹿児島から青森までが高速道路で繋がったはずだ。つまりここが最後に繋がった場所。それだけ難所の工事だったのだろう。

23個連続のトンネルが終わると熊本県の八代市の市街地が見えてくる。パッと視界が開けるので印象的だ。

12:24 宮原SA(熊本県)走行距離137.4 km

 

宮原SA(熊本県)

 

けっこうな賑わい

 

3つめのSA、熊本県内においては2つめとなる宮原SAは混みあっていた。お昼の時間ということでSA自体はけっこうな賑わいを見せていたが、その反面、フードコートはそこまで混んでいる感じではなかった。中央下部の看板に堂々と「熊本ラーメン」と書かれているので仕方がないことだが2連続で熊本ラーメンを食べることになりそうだ。

ラーメン002 熊本ラーメン 680円

 

熊本ラーメン 680円

 

同じ“熊本ラーメン”であるが、先ほどの山江SAのものとは大きく異なる。おそらく同じように豚骨スープがベースになっているが、こちらはその白濁した色が茶色くなるくらい鶏がらスープが投入されているようだ。より、濃厚な味わいになっている。さらには、そのスープに負けないように麺も太くなっている。これがスープと絡むことによって、なかなか深い味わいを演出している。とても美味だったが、さすがに短い時間でラーメン2杯はけっこうくるものがある。なかなか厳しい戦いになりそうだ。

腹が満たされた感じになりつつ次のSAを目指す。地図によると次のSAは「北熊本SA」である。完全に悪い予感しかしない。名前からいって明らかに熊本に属するSAだ。ということは9割以上の確率で“熊本ラーメン”がでてくるはずだ。さすがに濃厚な熊本ラーメンを短時間で3杯連続はかなりやばい。とんでもないことになりそうだ。

 

景色に飽きてくる

 

まだ運転を始めて3時間程度だが、本格的に高速道路の景色に飽きてくる。ずっと変わらない景色、濃厚な熊本ラーメンで胸やけ。予想以上に厳しい戦いになりそうだ。

 

13:41 北熊本SA(熊本県)走行距離184.0 km

 

北熊本SA

 

北熊本SAに到着した。

気のせいかもしれないが、降り立った瞬間に熊本ラーメンの匂いがした。完全に嗅覚が鋭敏になっている。絶対にある。ありやがる。

 

やっぱりあった

やっぱりあった。

 

ラーメン003 熊本ラーメン 700円

ラーメン003 熊本ラーメン 700円

 

気づいてしまったのだけど、高速道路を北上するにつれて650円→680円→700円と同じ熊本ラーメンでも徐々に値段が高くなっている。そして、北上するにつれてスープが濃厚になり、麺が太くなっている。何か理由があるのだろうか。この麺はかなりツルツルしていた。同じ熊本ラーメンでも随分と違うんだなあと実感した。熊本ラーメンはとんこつがベースにあるはずだけど、これは特にとんこつの風味が少なかった。独特の進化を遂げた結果なのかもしれない。これも3連発の成果だ。連続して食べたからこそわかる違いだ。

少し食べるペースが落ちていて、かなりきつい、食べきれるだろうか、とゆっくりと食べていると隣のカップルの会話が耳に入ってきた。

 

「わたし本当に熊本ラーメン好きなんだなあ」

「佐和子はさ、ほんといつもそれだよね」

「うん、わたし熊本ラーメン大好き! 何杯でも食べれちゃう!」

 

ゼッタイだな。本当に何杯でも食べられるんだな。言っておくけど、熊本ラーメン3連発、かなりきついからな。3杯でこれだぞ、え? お?

あんなヒョロヒョロの体で3杯食べられるか。おまけに佐和子、ちょっと残しとるし。なんなんだよお前は、と憤りつつ、なんとか完食。次も熊本ラーメンだったら絶対にパスする。

さて、次のSAめがけて走り出す。ここで大きな認識の変化があった。

「スピード違反しちゃったらどうしよう」

僕はけっこうせっかちな性分なので高速道路で気づいたらスピードが上がっているなんてことがある。だからスピード違反をしないように気を付けようと考えていた。けれども、こういう旅をしてみて分かる。ゆっくり走るのだ。

これは“SAに到着したらラーメンを食べる”というルールのためだ。つまり、いま到着したら食べきれない、という満腹感のためなんとかインターバルをとろうとゆっくり走るのだ。かなり安全に、ゆっくり、移動していく。

14:48 広川SA(福岡県)走行距離 232.6 km

 

福岡県にはいった

 

ついに熊本県が終わり、福岡県入りである。やった、熊本ラーメンじゃなさそう。

 

なぜか空いているフードコード

 

なぜだか分からないけど、フードコートはめちゃくちゃ空いていた。もう3時になろうかと時間で、昼食と夕食の谷間の時間だからなのかもしれない。

 

やった、久留米ラーメンだ!

 

やった、久留米ラーメンだ!

ついに熊本ラーメン地帯が終わり、久留米ラーメン地帯へと突入した。呪縛が解かれた。

ラーメン004 久留米ラーメン 830円

 

ラーメン004 久留米ラーメン 830円


また北上したことによってラーメンの値段が上がった。こりゃ青森に到着するころには3000円くらいになってるのかもしれない。

やや太めで硬めのストレート麺に濃厚なとんこつスープ、というものが久留米ラーメンの特徴だ。またもや濃厚とんこつか、とちょっと怯んでいたら、意外なほどあっさりな味わいだった。まるで塩ラーメンを食べているかのようなすっきりとした塩味に、あっさりと後を引かない味わい。3連発熊本ラーメンで慣らされていたという事情もあるのだろうけど、かなり新鮮な味わいだった。一気に食べた。久留米ラーメン素晴らしい。

 

広川SAを後にし、またもやインターバルをしっかりととるためにゆっくりと車を走らせていく。福岡や北九州などの大都会が近くなってきたので、交通量もかなり多い。おそらく次の古賀SAが九州最後のSAになるだろう。

16:38 古賀SA(福岡県) 走行距離 291.7 km

 

古賀SAに到着


古賀SAははちゃめちゃに大きなSAだった。色々と充実しすぎだろうという場所だ。駐車している車の数も多いし、行き交う人も多い。あと、お店も多い。

 

かなり広いフードコート

 

かなり広いフードコートがある。

 

博多ラーメン

 

博多ラーメンのお店がある。

 

自家製生麺を作っているとは

 

まさかSAの中で自家製生麺を作っているとは思わなかった。けっこう手間がかかってそうだ。

 

ラーメン005 博多ラーメン 700円

 

ラーメン005 博多ラーメン 700円


博多ラーメンの特徴としては、真っ白いとんこつスープに極細麺というものだ。基本的に替玉を前提とした趣のあるラーメンが多い。

ややとろみのあるミルキーなスープ、博多ラーメンとしてはちょっと太いかなと感じるラーメンだったが、全体的にあっさり目に仕上がっているので本日5杯目のラーメンでもしっかり食べきることができた。ただ、王道的な博多ラーメンとは少し違うのかな、と感じた。博多以外で食べる博多ラーメンのごとき印象だ。

さて、これで九州のSAは終わり、次からは本州のSAを攻めていくことになる。ちょうど福岡県と山口県の境である関門海峡に差し掛かったところで日が暮れてきた。

 

日が暮れてきた


関門海峡大橋の隣にある「めかりPA」から望む。ちなみにこのPAは絶賛工事中で簡易店舗で売店などの営業を行っていた。工事前はレストランなどもあったようだが、この時は営業していなかった。

と、九州を駆け抜けたところで第1回は終わり。果たして本州ではどんなSAラーメンが待っているのか。果たして食べきれるのか。いつ青森に到達するのか、夕日を眺めながら考えた。 つづく

画像協力 ちえさん@kirishimaonsen

 

進んだ地図