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ミライロIDを広げて、障害者やそのご家族の”やりたいこと”を”できる”に変えたい

 2021年2月12日、株式会社ミライロは第三者割当増資による資金調達を発表しました。引受先には、さくらインターネットも含まれています。

障害者の視点からダイバーシティ&インクルージョンの推進を行う「ミライロ」が2億8,000万円の資金調達を実施

その株式会社ミライロ代表取締役社長の垣内さんに、起業したきっかけや、これから目指す社会について語っていただきました。

前回の記事:ミライロ 垣内社長に聞く、障害を価値に変える「バリアバリュー」に込められた想い

垣内 俊哉(かきうち としや)さん

垣内 俊哉(かきうち としや)さん プロフィール

1989年生まれ。2010年、立命館大学経営学部在学中に株式会社ミライロを設立。障害を価値に変える「バリアバリュー」を企業理念とし、デジタル障害者手帳「ミライロID」の開発や、ユニバーサルデザインのコンサル事業を展開。一般社団法人日本ユニバーサルマナー協会 代表理事や、日本財団パラリンピックサポートセンター アドバイザーも務める。

「仲間との出会い」が大きなきっかけに

ーー垣内社長は大学在学中に学生起業されていますが、起業したきっかけについて教えてください。

 障害があって歩けない。そんな自分自身を、受け入れられない時期がありました。どのようにして自分自身を受け入れていこうか、と考えていく自己受容のプロセスの中で起業しようと決めました。

何か大きなことをすれば、自分を受け入れられるのではないか。自分のことを好きになれるのではないか、と思ったんです。

もうひとつ、大きなきっかけがあります。大学で民野 剛郎に出会ったことです。現在、民野はミライロの取締役副社長をしています。民野は私に対する向き合い方が「何かしてあげよう」ではなく「何か一緒にしよう」と対等です。彼がいたからこそ、起業する最後の一歩を踏み出せました。

「プレゼン龍」優勝時の写真。左下が垣内社長、右下が民野副社長

「プレゼン龍」優勝時の写真。左下が垣内社長、右下が民野副社長

 ベースとしては、自分を受け入れられない自己否定の部分と、何とかしたいという焦燥感。でも、この程度のことではパワーは出ません。「一緒にやろう」と言ってくれる仲間であったり、自分がやろうと思っていることが、本当に社会の役に立つんだと実感を持てたこと。これにより、しっかりと会社を経営していこうと思えました。

自分がやろうと思っていることが、本当に社会の役に立つと思えたのは、ビジネスコンテストでバリアフリーに関するプランが評価されたからです。「これならいける」と手応えを感じました。

バリアをバリューに変えていけるという成功体験を得て、大学2回生のときに起業、3回生のときに会社を設立しました。

「ミライロID」で障害者と社会を結ぶ

ーー垣内社長は常々「社会性と経済性、両輪あってこその継続」とおっしゃっています。御社が考えている今後の事業展開について教えてください。

 ベースとなるのはデジタル障害者手帳「ミライロID」です。障害のある方々の声をしっかり届けていくためにも、パイプを作っていかなければなりません。ミライロIDに関しては今後、ますますユーザーが増えていきます。

(ミライロID)

ミライロID

 多くの障害のある方々との接点を持つことで、企業と障害者、自治体と障害者を結び、結果として商品やサービス、街がよくなっていくことに繋げていけると思っています。 

国として「電話リレーサービス」が法律でしっかりと動いていくことが決まりました(2021年7月1日から開始予定)。

国のインフラとして進む以上、より手軽に障害のある方々に情報保障がされるようにします。

※障害のある人が情報を入手するにあたり、必要なサポートをして情報を提供すること。

そのうえでも、スマートフォンやパソコンで彼らと円滑なコミュニケーションがとれるパイプが必要です。ミライロIDが普及すれば、それをより促進していけると考えています。いままでは、障害のある方への情報保障が手軽ではありませんでした。 

残念なことに、東日本大震災の際、障害者は健常者と比べて2.5倍の比率で亡くなっています。これは逃げ切れなかった、周囲のサポートを受けられなかった、避難に関する情報を受け取れなかったからです。

スマホにミライロIDを入れておけば、障害のある方へ情報を繋げられます。情報保障の面でも、ミライロIDの可能性は非常に大きなものがあると考えています。

ーーさくらインターネットも「ミライロID」のような障害者の生活に関わるデジタルトランスフォーメーション(DX)化の推進を支援していきたいと考えています。垣内社長が「社会課題×DX」を推進していくうえで、重要だと思うことを教えてください。

 「アクセシビリティ」が重要です。デジタル庁の方針としても、一丁目一番地として多様な方がアクセスできる環境づくりを進める、と掲げられています。

今後、法律がしっかり明文化されることを踏まえると、誰もがアクセスしやすいウェブサービスやアプリケーションにしていかなければなりません。

まず最初にアクセシビリティをしっかりと考えていくことが、DXを推進する前提になると考えます。

その前提を踏まえたうえで、障害のある方が「選択肢を持てる」ことが必要です。

たとえば、新幹線の予約はこれまでインターネットではできませんでした。いまは、できるようにはなっていますが、最終的には窓口で乗車券を購入する必要があります。なぜかというと、障害者の本人確認が窓口でしかできないからです。現状では形だけのDXであって、本当に障害者にとって使い勝手がいいわけではありません。

 ミライロIDに登録すれば、事前にインターネット上で本人確認ができ、乗車券の購入まで可能になる、という状態にしていきたいです。これは新幹線だけに限りません。障害者が関連する手続き、申し込み、決済のすべてをインターネット上でできるようにしていきたいです。

いままでできなかったことを、できるようにしていく。これが、どんなサービスにおいても必要になるだろうと考えています。

コロナの影響で情報保障がスタンダードに

コロナの影響で情報保障がスタンダードに

ーーコロナの影響で、世の中が大きく変わりました。垣内社長がコロナ禍で感じたビジネスの変化を教えてください。

 多くの首長が記者発表するときに、手話通訳の方が隣に立たれて手話通訳をする状況がスタンダードになりつつあります。情報保障の面で、障害のある方へ情報を届けていく方向へ進んだ。これは大きな進歩です。

事業では、ミライロIDの普及が加速しました。現在、2000を超える事業者が導入してくださっています。これは、ソーシャルディスタンスの必要さが広まったことで、普及した面もあると思います。窓口で障害者手帳を確認する場合、どうしても確認に時間もかかります。そうすると密になってしまいますから。

 課題は、障害者に対する取り組みへの意識低下があると思います。多様な方々に配慮していく必要があるのは明らかですが、少し鈍化していることは危惧しなければいけません。

ただ幸いにも、ESGやSDGsを、どの企業も自治体も政治家も意識しています。障害者は、SDGsを考えるうえでシンボリックでわかりやすいです。最初に取り組みやすいところでもあるので、このSDGsの流れはありがたい面もあります。

SDGsの達成に、弊社も寄与していきたいですし、本当に障害者が求めている商品、サービス、街づくりってどんな形だろうか、しっかり議論していく。これが重要だと思います。

株式会社ミライロが求める人材

ーーこれから御社が事業拡大をしていくうえで、求める人材について教えてください。

 「社会貢献に対する意欲」と「ビジネスに対する意欲」。この一定のバランスが必要です。弊社がやっていることは、一見すると社会貢献が強く見えがちです。でも基本の仕事は、決してきれいなことばかりやっているわけではありません。いまはやっていませんが、飛び込み営業など、泥臭く辛抱強いこともやります。

社会的な意欲、加えてビジネスに対する意欲を持っておく。まさに「三方よし」が重要です。

「バリアバリュー」を掲げる弊社では、多様な人材を集めています。年齢・性別・身体特性は問いません。同じような人材を集めようとは思っていません。みんなが同じようなスキルを持っていて、同じような考え方をしていると、いざというときにマイナスに働く可能性もあるからです。

 また弊社では、ユニバーサルマナーをお伝えする取り組みをおこなっています。多様な方々に対する向き合い方をお伝えしている以上は、やはり多様な方々と向き合える視点や姿勢を持っていてほしいなと思います。

いまの若い方は、この姿勢を持っている方が多いです。昔と比べると、アニメや漫画でも障害者についてだいぶ描かれるようになっていますから、多様性をしっかりと考えられる素地があります。

垣内社長の「やりたいこと」

垣内社長の「やりたいこと」

ーーさくマガのコンセプトが「やりたいことをできるに変える」なのですが、垣内社長が今後やりたいと思っていることはなんでしょうか。それをできるに変えるために努力していることを教えてください。

 歩けるようになろう。歩けなくてもできることを探していこう。いまは”歩けないから”できることを探していこうに変わっています。

できることを増やしていくことが、私個人にとってもそうですし、社会全体の障害者やそのご家族のためにも必要です。残念ながら、まだやりたいことをできるに変えられている障害者やそのご家族は決して多くありません。

これを、しっかりとできるに変えていきたいです。そのためにも、ミライロIDを広げていくことが重要だと考えています。

 ミライロIDが使える場所は、急激に増えています。使えない場所がないくらいまで広がっていけば、障害のある方が障害者手帳を毎日持ち歩かなくてもよくなるはずです。障害者手帳を見せることに心理的な抵抗を持っている方が大勢いらっしゃいますが、その負担を減らせます。

障害のある方のためにある制度が、障害のある方にとって苦痛になってはいけません。

また、向き合う事業者の方にとっても、苦痛になってはいけません。これらを解消していくことで、障害のある方の負担や事業者の負担を軽減していきたいです。

「共感」を広げていく

 何ごとも、言葉の言い換えが必要だろうと考えています。障害のある方が、障害者手帳を見せるときに「すみません、障害者手帳あります」と言うケースが多くあります。「すみません」から入るのは、障害者手帳を見せる本人にとっても、見せられる側にとってもよくありません。

これを「すみません」ではなくて「ミライロIDあります」に変えたいです。「ポイントカードあります」のように気軽に使えれば、心理的負担を感じません。

ミライロIDでは「障害者割引」という考え方を変えようとチャレンジしています。具体的には、ミライロID上で「クーポン」を発行する取り組みです。外食であれば、ロイヤルホストさんや吉野屋さん。小売であれば、ローソンさんやファミリーマートさん。ネット販売では眼鏡のJINSさんに参画いただいています。

障害者だから割り引いてあげるではなく、また来てもらおう、また買ってもらおうという意味でのクーポンです。「障害者割引」から「クーポン」に言葉を変えられれば、障害があるから割り引いてもらって申し訳ない、という気持ちになりません。

このように障害のある方が日頃使っているもの、企業が向き合ってきたものをトランスレートしています。「ユニバーサルマナー」も言葉の言い換えでした。

 障害者のサポートは従来、医療・福祉・介護の分野でとらえられていました。多くの人にとって他人事だったんです。そこで「マナー」という言葉にしました。「マナーができたら、ちょっとかっこいいよね」と変えることで、とっつきやすくなりますよね。

どこか距離を置いてしまっていたものを、とっつきやすくしたり、触れやすくする。日常的に使いやすくすることが重要だと思います。今後も「共感」を広げていきたいです。

※本記事では「障害者」と表記しています。「障がい者」と表記すると、視覚障害のある方が利用するスクリーン・リーダー(コンピュータの画面読み上げソフトウェア)では「さわりがいしゃ」と読み上げられてしまう場合があるためです。

 

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執筆

川崎 博則

1986年生まれ。2019年4月に中途でさくらインターネット株式会社に入社。さくマガ立ち上げメンバー。さくマガ編集長を務める。WEBマーケティングの仕事に10年以上たずさわっている。

編集

武田 伸子

2014年に中途でさくらインターネットに入社。「さくらのユーザ通信」(メルマガ)やさくマガの編集を担当している。1児の母。おいしいごはんとお酒が好き。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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