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PMF(プロダクトマーケットフィット)に起業家が挑んで七転八倒した体験談

PMF(プロダクトマーケットフィット)に起業家が挑んで七転八倒した体験談

みなさんは、PMF(プロダクトマーケットフィット)をご存知でしょうか。PMFは「Product Market Fit」の略で、「製品やサービスが市場で受け入れられている状態」を指すマーケティング用語です。

さて、PMFについて私は「そんな状態が作れたら苦労しねーよ」と思っていました。そして、PMFの実例があるものなら見てみたいものだとも、疑っていました。

マーケティングの教科書に必ずといっていいほど出てくる初手「PMF」この理論について解説しているページはたくさんあるのですが、ネットではいざ起業でPMFにチャレンジした記録がまったくいっていいほど見つかりません。

というわけで私は長らく「本当にPMFって、できるのか?」と訝しがっていました。が、起業家になればやってみるしかない。これは、マーケティングを長年経験してきた人間が、PMFというマーケティングの初手で派手にずっこけた体験談です。

PMF(プロダクトマーケットフィット)とはなにか

PMFをルー語的に解説すると「プロダクトが、どれくらいマーケットでフィットしているか」という身も蓋もない表現になります。こうやって羅列すると、最初に湧いてくる疑問は「フィット(受け入れられている)って、どうやって判断するの?」というものではないでしょうか。

あるサービスや製品が、市場でどのくらい受け入れられているかを査定するために最も採用されているのはNPS(ネット・プロモーター・スコア)です。またまたカタカナが出てきたので難解に見えますが、ざっくり「おすすめ度」と理解していただければ、すぐに伝わるかと思います。

NPS

NPSとは、多数の顧客へ「0~10点でこの製品・サービス・ブランドを評価するとして、親しい友人や同僚に勧める可能性はどれくらいありますか?」と、10段階評価で査定させるものです。シンプルでわかりやすい指標なだけに、GoogleやAmazon、Facebookなどの大手企業で広く採用されています。

さて、PMFの定義に戻ってきましょう。PMFとは「人へのおすすめ度」を査定したときに、多数のお客様が10段階中、9点以上をつける状態です。人へのおすすめ度(NPS)では、9点・10点をつける人を「推奨者(Promoter)」と名付けます。推奨者は自社サービス、製品を他の方に広めてくれる、熱心な顧客です。PMFとは、推奨者がたくさんいて、市場に製品が受け入れられている理想的な状態を表すのです。

※NPSが高いからといって、売上に直結するわけではないとするデータもあります。その他MAU(Monthly Active User:月間アクティブユーザー)や、GRR(Gross Retention Rate:総継続率)などを組み合わせて考える企業も増えています。たとえば、ブログサービスの「note」はPMFを考えるうえで、MAUをとても大事な指標にしています。

PMF(プロダクトマーケットフィット)を唱えるのはたやすい

と、定義までご覧いただけたところで「ま、言うのはたやすいよね」と、読者の皆さんも思ったのではないでしょうか。そう、PMFを目標とするのは簡単ですが、実現するのは鬼のように難しいのです。個人的には「売れる商品を作れば、売れる」くらいのトートロジーすら感じます。

しかし、PMFの価値は「目指すこと」です。高い目標も最初から掲げなければ、叶えることはできません。なんとかして顧客に10段階評価で9か10をつけてもらえるよう、目指していくこと。これは確かに、マーケティングの至上命題です。

2016年、私はイギリスのヴィンテージ・ジュエリーを日本へ輸入販売していました。イギリスのアンティークやヴィンテージを好きな人はたくさんいますが、良質なヴィンテージ・ジュエリーを仕入れるには英語力がものをいいます。

当時、イギリスに住んでいた私にとって、輸入販売はとてもやりやすいプロジェクト。まずはECショップを作ってみました。それこそ、顧客満足度が高いPMFの状態を目指して……!

PMF(プロダクトマーケットフィット)が作れない

PMF(プロダクトマーケットフィット)が作れない

いざチャレンジしてみると、PMFは遠い道のりでした。まず、ショップのロゴ。20パターン以上作ってもらったと記憶していますが、作れども、作れども顧客評価が上がりません。

「このロゴ……うーん、ピンとこないですね」

「これは嫌いです」

「なんか違うっていうか」

という言葉を、何度聞いたことでしょう。

そこはかつて乃木坂46のMVも撮影された、オシャレな銀座・数寄屋橋のカフェ。私は大量のボツをくらい、途方にくれていました。

たとえプランAからZを用意したからといって、そのどれかが高い評価を得られるわけではありません。「どれもこれもボツ」という状態が続くのが、PMFの地獄です。迫りくる納期、失われていく売上機会。そして、努力しても改善点は見えてこない。

顧客は正解を教えてくれません。あくまで、作ったプロダクトやアイディア、デザインへ評価を下す受け身の存在です。

「あれもだめ、これもだめって、どうすればいいんだよ!」

と、叫んでも顧客には答えようもありません。それは、マーケターの責任です。

打つ手なし。結局私は、答えの見えないままデザインを確定させました。もちろんそれはPMFを満たしておらず、売上としても「そこそこ、ぼちぼち」という成果に終わりました。

数年かけてPMF(プロダクトマーケットフィット)を達成

数年かけてPMF(プロダクトマーケットフィット)を達成

私のPMFへの挑戦は、これで終わりませんでした。それから数年後、私はPMFの基準である10段階評価(NPS)で「おすすめ度」が9以上のサービスをリリースすることに成功したからです。それが、現在も稼働している短期集中型ビジネススクール「スキルブートキャンプ」です。

スキルブートキャンプでは受講後の事後満足度100%と、まさに理想のPMFを作ることができました。なぜ、あのときは達成できなかったPMFが、スキルブートキャンプではできたのか。

その答えはおそらく、以下の3つにあったと考えています。

  1. テストプランを何度も実施して顧客満足度を上げていった
  2. サービスリリースまでにかかる時間を想定の倍以上確保した
  3. とにかく最上の結果が出るまで、ひたすら手を動かした

この中で一番しんどかったのは、もちろん最後でした。「PMFを目指せ!」と理想論を語るのは簡単でしたが、現実はとにかく無限のリテイクに耐え、デザインや文言を修正しつづける日々。

たとえはウェブサイトのデザインひとつ取っても、現在のスキルブートキャンプのウェブサイトにファイル名をつけたら、version 100と名前がついてしまうはず。それくらい、顧客のヒアリング、修正、ヒアリング、修正を無限に繰り返しました。

PMF(プロダクトマーケットフィット)はつまるところ「努力」

ここまでチャレンジして理解したのは、PMFはシンプルに「投下した努力の量」の話だということです。最初からPMFを達成できる製品やサービスがリリースできれば言うことはありませんが、そんなものはP&G時代にも経験しませんでした。

世界トップのマーケターが集まる会社でもお目にかかれなかったのですから、ベンチャーで泣いている私にPMFが初手から湧いて出ることは、まずないのでしょう。最初の設計でPMFを達成するなんて、麻雀で牌を切るまえにアガるようなものです。

となると、顧客の言葉に耳を傾け続けること、そして常に改善を繰り返していくこと……これが、PMFへ至る最適解といえます。

つまるところ「やりきるところまで、努力しろ」がPMFの正体です。結局、ビジネスに楽な道などないんだなあ……と苦笑しながら、今日も私は手を動かしています。

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執筆

トイアンナ

ライター。外資系企業に勤めてのち、独立。恋愛とキャリアを中心に執筆しており、書籍に『モテたいわけではないのだが』『確実内定』『やっぱり結婚しなきゃ!と思ったら読む本』など。

編集

川崎 博則

1986年生まれ。2019年4月に中途でさくらインターネット株式会社に入社。さくマガ立ち上げメンバー。さくマガ編集長を務める。WEBマーケティングの仕事に10年以上たずさわっている。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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