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「自宅で結婚式は、家が広い神々の遊び」外資系IT企業の社員が語る、現実的なコロナ後の結婚式

「自宅で結婚式は、家が広い神々の遊び」外資系IT企業の社員が語る、現実的なコロナ後の結婚式

こんにちは、2回目の結婚をしたばかりのトイアンナです。結婚式、どうしようかな……なんて言っている間に、あれよあれよと新型コロナウイルスが到来。

キャンセルが相次ぐ結婚式場の一部は唐突に「オンライン結婚式」を打ち出しました。

でも、これまで超アナログだった日本のウエディング業界が、いきなり生まれ変われるの?

というわけで、外資系IT企業にお勤めのかたわら、実際に結婚式も挙げられた「ぱぴこ」さんから、お話をうかがいました。

ぱぴこさん プロフィール

ぱぴこさんのプロフィール 大学を卒業後、外資系IT企業に勤務。
クライアント企業のIT化に携わるかたわら、数年前にご結婚。実は結婚式マニアで、「都内の式場はほとんど把握している」ツワモノです。

今回は結婚式マニア×ITの専門家という2軸を備えたぱぴこさんに、ウエディング業界のIT化についてお伺いします。

絶望的?ウエディング業界のアナログな実態

―ぱぴこさんは、結婚式を「新型コロナウイルスが来る前」に経験されていますよね。

ええ。2018年に挙式をおこないました。当時は、すべてがアナログで。

なにしろ、結婚式場は対面至上主義。結婚式の3か月前から、休日は毎週3~4時間打ち合わせ。全部が対面で、非効率的だと思っていました。

―全部対面ですか? なんでそんなことに?

こちらからオンライン会議を打診しても、前例がないからと受けいれてもらえませんでした。

私はレストラン挙式だったので、お花やドレス、音声、写真などは、それぞれ提携している店舗へ個別で行かなきゃいけませんでした。当然移動もあるので合計20時間が、3か月間の休みから消えました。

といっても、試食やヘアメイクのリハーサルは、対面を避けられないですよね。それはいいんです。

ただ、食事メニューの最終決定、アレルギー対応の打合せなど対面である必要はないと感じた打合せは、多数ありました。

しかも運悪く、私は式直前の3か月と仕事が忙しい時期と重なってしまって。休日出社もあったので、オンラインの打合せを何度も打診したんですが、ダメでしたね。

「対面じゃないとできないです。どうにか来ていただく形で調整してください」としか言われなくて。

―それじゃ、オンラインを断る理由になってないですよね。

そうですね。たぶん「やったことがない」が大きかったんだと思います。

仮にオンラインでやって、トラブルが起きたときに、責任を取り切れないというのが大きいのかなと。プランにない形式をお願いする人間は、クレーマーになりそうというリスクヘッジもあったかもしれません。笑

結婚式のオンライン化は、神々の遊び

―今後、オンライン結婚式というスタイルは一般化するでしょうか。

「オンライン結婚式」は、一部の人しかできないと思います。理由は2つですね。

まず、ホームウエディング(自宅婚)は「配信に耐えられるだけの背景がある家」という前提が必要だからです。

自宅婚を1DKの家でやるかといったら、やらない。でも、新婚はお金もないし、新居は狭い。ご自宅での結婚式は、神々の遊びの話ですよね。

もうひとつは「リアルへの渇望」です。

結婚式をやりたい人は、そもそも「リアルのイベントをやりたい」というモチベーションでやると思っています。

多くの人は、自分が結婚式をやりたいという願望だけでなく、親や周囲の人のためにやります。親世代が「オンライン結婚式」に興味を示すとは、現時点ではあまり想像できません。代わりに、ごく少人数の家族婚になって3密を避けるのではないでしょうか。

ウエディング業界のIT化は、前から進んでいた

―ウエディング業界でIT化が遅れたのは、なぜでしょうか。

コロナが来る前もDX(デジタル技術の浸透で、生活をよくする)推進は各業界でしていたと思います。ですが、フタを開けてみたらほとんどの業界でうまくいっていない。てんやわんやになっているのがハッキリしました。

理由は、新しいことだから。新しいことを導入するって、とても難しいんです。ウエディング業界は激務で、新しいことを検討するのに耐えるリソースがないはずです。また、一般的に対面の接客が主な業界のDXは遅れる傾向があります。

―成功しているのはどういう業界?

業界というより「成功している会社」と「そうでない会社」でコントラストが生まれています。

たとえば、ネットスーパーを見比べてください。Amazon Freshに勝てる使い勝手を、国内のネットスーパーはなかなか提供できず苦しんでいます。

他にも、アパレルではZOZOが成功した一方で、多くのアパレル企業はECはあくまで「現実にある店舗のプラスアルファ」にしかできず、苦戦している印象です。

小売は特に「やれる会社」「やれない会社」の差がついています。

この差は、何年も先を見て経営していたかどうか、です。

オンラインで結婚式

ウエディング業界に長くいた人ほど「対面」を過大評価する

ぱぴこさん:

ウエディング業界の話に戻りますね。

業界歴が長い人ほど「今までの経験」に価値を見出す傾向があります。

ウエディング業界なら、対面主義ですね。

ウエディング業界が長い人も、オンライン会議が効率的なことは否定しないんです。でも、「対面の30分は、オンライン会議の30分より意味がある」という考えから離れづらい。

DXには資金面のハードルもあるけれど、1番大きい障害は思い込みです。

「価値を最大化するために、デジタル化できる部分はデジタル化し、効率的にしましょう」というのがDXの目的です。ですが、ただ「対面であること」が価値という認識なのであれば、そもそも重視する点がズレている可能性はあります。

お客様も「ハレの日だから」と対面を求めてきた

―式場が、お客様のITリテラシーが低いレベルに合わせてきた可能性は?

ありますが、限定的です。もしウエディング業界がITリテラシーの最低レベルに合わせるなら、メールでのやりとりやファイル送付はなく、FAXや電話、郵送しか使えないのでは?

結婚式は基本的に人生で1度。普通の人は人生で複数回、1日に300万、400万のパーティは開催しません。結婚式は、大人の文化祭というイメージですよね。

金額的にも大きく、初めての結婚式で不安もあるため「対面の方が安心だ」と考える人は多いです。これが、年に何度も開催するパーティだったら「オンラインでよくないですか」と、誰でも言えるはずなんです。なんだかんだ、「一生に一度だから」と、私も渋々対面で通っていましたし。

―これからは、オンライン会議のハードルが下がりそうですよね。

そうですね。オンライン会議システムのZoomも普及しました。もっと言えば、LINEならほぼ誰でも持ってます。オンラインミーティングのハードルは高いとは言えません。

オンライン会議で齟齬が起きる不安があっても、議事録を送ればよくない……? とは思いますし。結婚式の準備では対面でも後から議事録や確認事項がメールで送られてきます。席次表もPDFでもらいます。

そこまでができていて、オンラインの打ち合わせができないっていうのは、中途半端なんですよ。

―確かに、席次表が郵送やバイク便でやりとりされていない時点で、実はすでにオンライン化ができているわけですよね。

ウエディング業界がオンライン化を「すべきだった」と言えない理由

―では、ウエディング業界はこれからどんどんIT化(DX推進)すべきだった?

そうは言い切れません。まず、「打ち合わせは完全にオンラインです」と言わないと、お客様によって対応が変わるわずらわしさがありますよね。また、その併用にスタッフが耐えられるのか? などは検討する必要があります。

―確かに「10時から対面、11時からZoom、13時から対面」……なんてことになったら、ウエディングプランナーさんがパンクしそうですよね。印刷資料と、オンラインのスライド資料準備でごっちゃになって。

そうなんです。中途半端なIT導入が、一番負担がかかります。

―ということは、新型コロナウイルスは切り替えのチャンス。

そう。新型コロナウイルスの影響で「基本的に、対面ではお会いできません」という言い訳が作れる。これを機に、双方抵抗感がなく対面主義を変えることができる可能性は高いです。

―確かに、そうですね。ただ、一斉に切り替えるのも大変そう。ぱぴこさんは多種多様なクライアントのDXを支援していると思いますが、そういったとき、DXを図る企業にありがちなミスは何ですか?

“業務フローを考えずに、とりあえず導入する”ことです。

たとえば、業務がどう変わるか検討せず、連絡方法をいきなりLINE会議にしちゃう。会社として会議スケジュールを管理できる・できないか、自社に合っているかを考えない。

「とりあえずオンライン会議だ!」と導入すると、期待した成果や効果もでません。 たとえば、ウエディング業界で一番難しいのはお客様の情報管理ですよね。すぐに想像できるミスの例でいうと、参列者リストをGoogleドライブで管理する流れにしたとしましょう。

ウエディングプランナーさんが、Googleドライブで出席者リストを「URLを見た人は全部編集できる権限」で置いてしまって、個人情報が流出するとか。

―絶対に起こりますね、それ。

新型コロナウイルスが起こす「ウエディング業界の洗礼」

―最後に、新型コロナウイルスがウエディング業界に携わる方のキャリアに、どういう影響を起こしうるか、教えていただけますか。

新型コロナウイルスの影響に限らず、不景気の際は「人気の式場、プランナーだけが生き残る」と思います。

ウエディングプランナーという仕事は無くならないけれど、発信力のある、プランニング力のある人の仕事が残ります。

「名乗っていれば、どうにかなる」

「その職についていれば平気」という仕事は、なくなるだろうなと。

今回、新型コロナウイルスの影響で多くのアパレルショップが休業に追い込まれました。ですが、休業中もTikTokやinstagramでコーディネート提案などをして、売上を作った販売員もいます。店舗がないのにです。

こういったスキルがある人は、たとえ「販売員の人数を削減してAI販売員を導入しよう!」という決定がされても、絶対に生き残れます。企業から離脱して独立するかもしれません。

一方、企業で役職を与えられているだけの人は、デジタルに置き換えられてしまう可能性は高いです。

特に、結婚式場のようなハレの日の業界は、新型コロナウイルスの影響を長期的に受けると思います。

バブル期の式場にあったゴンドラが二度と使われないように、消えていくものが出てくる。そこで何が残るか、サステイナブル(持続的な)生き残りを考えないといけない。

今後も「親族だけの小規模なアットホームウェディング」や、人数を絞ってコストを下げる代わりにこだわった結婚式は増えていくはずで。時代と顧客のニーズをもとにプランを立てられたり、SNSを活用しているプランナーさんの人気は今後より高まると思います。

―ありがとうございます!

新型コロナウイルスの影響が長期的にウエディング業界へ及ぼす影響を、IT業界の知見と、結婚式場の現実を踏まえてぱぴこさんからいただきました。

ウエディング業界に限定せずとも、「今こそオンラインだ!」と走り出した企業は多いはず。そこで、ぱぴこさんのご指摘どおりフローを考えず安易にIT化する具体的なリスク、とても勉強になりました……。

執筆

トイアンナ

ライター。外資系企業に勤めてのち、独立。恋愛とキャリアを中心に執筆しており、書籍に『モテたいわけではないのだが』『確実内定』『やっぱり結婚しなきゃ!と思ったら読む本』など。

編集

川崎 博則

1986年生まれ。2019年4月に中途でさくらインターネット株式会社に入社。さくマガ立ち上げメンバー。さくマガ編集長を務める。WEBマーケティングの仕事に10年以上たずさわっている。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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