こんにちは、アンドロイドのお姉さんです。
最近の事を話すと、東京に住んでみたり、地元である大阪に戻ったりという生活をしています。
テレビやラジオなど、仕事の収録は東京でおこなわれるので、その都度行ったり来たりしていたのですが、また東京に住みたいという気持ちが沸き上がってきてしまい……。マンスリーでホテルを取ったりして、東京の街に拠点を作って生活しています。
最近よく聞くデュアルライフ(二拠点生活)的な、はっちゃけていうとアドレスホッパー的なことをしています。
お笑い芸人さんなんかは、大阪の劇場に出るために朝から新幹線で移動して、その日の夜には東京で別の仕事をする、そんなスケジュールを頻繁にこなしているイメージがあります。
一緒にラジオ番組をやっているノンスタイル井上さんも、大阪と東京を行ったり来たりしているのをTwitterでよく見て、忙しそうだなあと勝手に思ったりしています。
人気の芸人さんでもそんなスタイルで成り立つのだから、大阪-東京間の2時間半で着く距離、頻繁に撮影があるわけでもなく、リモートで完結する仕事も増えてきた私がわざわざ東京に住む必要性もないように思えます。
でも、どこかで東京じゃないと生きられない気がしてしまうのです。
大阪と東京のデュアルライフ
今年の3月に仕事が激減して、東京で借りていた賃貸の家も引き払い、家族がいる実家に戻りました。
久しぶりに戻った実家は暖かく、優しかったです。優しすぎてわがままだった10代の頃に戻ってしまったかのような錯覚をしてしまうくらいに。
たった4年間東京に住んでいただけなので、本質は変わっていないと思いたくて、東京人のイントネーションも、エスカレーターで左に寄って立つ癖もすぐに抜けて、また地元の人と同じになれると思っていました。そうなったらもう大阪にずっといればいいと思っていました。
でも、時々どうしようもない気持ちになってしまうのです。友達の結婚報告が続いたり、幼なじみの子どもが大きくなっていたり。
当たり前ですが、地元の時間も確実に進んでいて、いわゆる普通の生活という名のレールからずいぶん遠い所に来てしまっているような気がする私には、今から追いつく事は出来そうにもなくて、置いていかれた気になって。自分の好きなことをしていたい気持ちに後ろめたささえ抱いてしまうのです。
周りの人と同じようにちゃんと仕事をして、結婚して、人生の道筋を立てないとダメだと思ってしまうと、今までやってきた事を自分で否定してしまいそうになって。そうなる前に私は新幹線のチケットを買って、いったん東京に避難するのです。
東京にいる際、どこに滞在しているかというと、ホテルやゲストハウスを利用しています。東京でも行ったことがあまりないエリアに住んでみたいと思いアプリで探すのです。
1ヶ月間滞在した蔵前のゲストハウスは、相部屋のドミトリーの部屋だと月3-4万円で暮らせます。私は個室を取っていたので月9万円くらいでした。それでも東京で住む家賃や光熱費を考えるとゲストハウス暮らしのほうがトータルで安かったりします。
ゲストハウスでデュアルライフ
泊まったゲストハウスは共有スペースが充実していて、コワーキングスペースもあるのでいろいろな出会いがあって、そんな生活も楽しいかもしれない、と期待を抱いて住み始めました。
しかし、住民の人も、私もかなりの引っ込み思案なのでなかなか輪に入れないという事態に陥りました。
「そうだ、東京の夜は孤独だった」と三軒茶屋に住んでいた時にも感じていた事をよりにもよってゲストハウスの個室で思い出しました。憧れの東京にいるはずなのに、実家にいる時とは別のどうしようもなさが襲ってきて、飲み会のノリでインストールしたティンダーを開いて、コンタクトを取ったりはしないものの、近所に自分以外でこんなにも孤独な人がいるのかと確認してみたり。
ホテルの前に流れる隅田川を見ながら、人と一言も会話をしていないんじゃないかというその日を振り返って、綺麗にライトアップされた橋とビルの明かりが輝く夜景を見続けていました。
川を見るとほんとに心が安らぐのです。バックパッカーで東南アジアを回っていた時のこと。最終地点のベトナムでケータイを無くして途方に暮れて、お金もないなかで、防寒のためにレジャーシートを身体に巻き付けて、川を眺めながら日が暮れるのをずっと待っていたあの時の事を思い出すのです。
あの絶望に比べたら今の孤独なんてなんでもないと思えて心安らぐのです。
ゲストハウスで友達ができた
そんな日々の中、1ヶ月も過ごしていると流石に友達ができました。おじさんの友達です。そのおじさんとは共用キッチンでよく顔を合わせるので喋るようになりましたが、お互いの職業などはあまり話さず(私の事ももちろん知らない)料理の話や好きな本、映画の話をずっとしていて……。
それがなんだか何者でも無くてもいいよと言われたようで、表に出る仕事をしている以上、普段からある程度キレイに取り繕って、愛想笑いをすることも多いのですが、おじさんと話すその瞬間は着飾る必要なんてなくて。
自分の中のあまり使わないはずの知識の引き出しをたくさん開けて、学生時代に読んで衝撃をうけた村上龍の本の話までしちゃったりして、おじさんと素の魂のトークを繰り広げました。
こんな風に気楽な人との関わり方は久しぶりで、やっと楽しいなと思えました。ゲストハウスならではですね。 ドライだと思っていたゲストハウスの住民たちにもちゃんと向き合ってみると、面白い人がたくさんいました。「雨だから1日何もしなかった」「隅田川を見てたら日が暮れてた」みたいな、私と似たような生活をしていて、同類だからそんなダメな日でも笑って許しあって。
ちゃんと出来ない日々を肯定してくれるのです。他人だから、深く関わらないから、期間限定の関係性だからだろうけれど、それでも確かに救われました。
東京に住んだからといって、自分自身が一気に変わるわけではないし、抱えていたモヤモヤがきれいさっぱり無くなるなんてことは無いと思います。
だって、インドに行ったって全然人生観が変わらなかった私です。そこには説得力を持たせたいです。
でも、いろんな人がいて、いろんな話をして、自分と向き合う時間を作ることで。普通なんて、「こうあるべきだ」という価値観なんてたいした事じゃないと、そんなことにこだわる必要もないなと思えたりもしました。
いつか終わりが来るデュアルライフ
仕事や時間、金銭面などの問題もあるので、いつまでこんな行き当たりばったりな生活が続くのかは分かりませんが、いつか終わりが来る生活です。
またどうしようも無い気持ちに追われたり、笑っていろいろな事を許してくれる他人に出会いたくなった時には、知らない土地に行って、着飾らない自分のままで生活するんだろうなと思います。
▼アンドロイドのお姉さん SAORIさんが書いた記事
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不自由な働き方を変えるため、髪型を変えた。アンドロイドお姉さんの新しい挑戦
執筆
アンドロイドのお姉さん SAORI
モデルとして活動していたがアンドロイドパフォーマンスで注目を浴び、以来アンドロイドタレントとして活動中。
フリーランスになり、ラジオ、YouTube、勉強会での登壇などマルチに活動している。
Instagram :https://www.instagram.com/saotvos/
※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。
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