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自分の不幸を他人と比べる必要なんてない。自分が大事な私は傷つかずに生きる道を探していく

自分の不幸を他人と比べる必要なんてない。自分が大事な私は傷つかずに生きる道を探していく

 

タレントとして芸能界の端のほうで生活している私には最近思っている事があります。SNSでプライベートを何でもかんでもさらけ出しすぎている人が多いなと。

これは自分の反省も込めて書くのですが、今の時代だとSNSですっぴんをさらして、過去の恋愛も赤裸々に語って、自分の恥ずかしい所さえすべてをおおっぴらに話して。そういうのが当たり前になっている気がします。今まで秘密でよかったことをあえてさらけ出すことで親近感を持ってもらえて応援してもらえるのです。

 

オーディションでもフォロワー数を聞かれることがあって、それが選考基準になることもあり、応援してくれる人が少ないとまるで自分に価値がないような気になってしまいます。私もそんな経験がありました。

だから自分に共感して応援してくれる人を増やすために、日常生活の切り売りをしている人が増えている気がしていて。

 

でも、普通に発信するだけだったら何者でもない人は箸にも棒にも掛からないからと、どんどん自分の深い所までさらけ出して、人の目に留まろうとネットの広い海に向けて自分の弱点やつらい経験、もっている障害や病気を発信している人が多いな、多すぎるなと思っていました。

知り合いの女優さんから受けた相談

実際に、そういうやり方について相談を受けたこともあります。

知り合いの女優さんなのですが、新しくYouTubeチャンネルを始めたいと言っていて「私はADHD(注意欠如/多動性障害)の診断を受けたから、それを武器にすればYouTuberとして伸びると思うんだけど、どう思う?」と。

 

その人は美人で、一見苦労してなさそうに見えるけれど、話を聞くと不幸のどん底を経験したことがある人で。

「その経験と強い思いは、人を引き付けるからきっとうまくいくよ」と答えました。実際にコンテンツを作る上で「不幸」や「病気」というワードはつよい誘引力を持ちます。

彼女はすぐに動画投稿を始めて「私はADHDだけど楽しく生活しています」というコンセプトで自分のライフスタイルを映していました。つらい過去を話す時にはカメラの前で涙をながしながら、でも最後には笑顔でまっすぐ前を向いて。

 

不謹慎かもしれませんが、その動画を見た時に羨ましいと思ってしまいました。壮絶な経験があって、それを笑顔で発信できるメンタルがある。私にはできない事ができている、私が持てない武器で勇ましく戦っている彼女をうらやんでしまったのです。

 

しかし、現実は残酷で無名の女優が自身のもつ病気を語ったところで誰も見てくれなかったのです。

「ADHDや病気を公言している人がYouTubeには多くいすぎて話題にもならなかったし、私の不幸なんてありきたりで人の目を引くような力を持っていなかった」と落ち込んでいました。 自分の不幸を人と比べる必要なんてないのに……。

 

もう彼女の顔に笑顔はなくて、もしかすると最初から強がりで笑顔を作っていただけなのかもしれないと、彼女の不幸を羨ましく思ってしまった私を殴りたくなりました。

 

きっとつらかったんじゃないかな

自分のプライベートをさらけ出すつらさ

彼女は、きっとつらかったんじゃないかなと思います。

自分のプライベートをさらけ出して、つらい過去を思い出して、自分の口で世界に発信するという作業のつらさは体験したことのある人なら分かるかと思いますが、身を剥ぐような、一種の自傷行為のような痛さがあります。

 

そんな過程を経て創り出したモノに対して思ったような反響がなく、レスポンスもないとなったら折れますよね。根元からポキっと。

彼女は「自分と同じように、社会で上手くやれない人たちの希望になれるように発信していくんだ」と言っていたのに1,2か月更新したあと動画を出さなくなってしまいました。

 

そんなことがあったタイミングで、私のもとにこんなダイレクトメッセージが届きました。

SAORIさんのファンでYouTubeを拝見させていただいているのですが 喋り方、行動からもしかするとADHDなのではないかと思い連絡しました。僕もそうなので同じ感じがするなと 一度検査を受けられてはいかがでしょうか?

思わず「えっ」と声が出ました。

そうか、自ら発信しなくても勝手に推測されることもあるのか、そして本当のところを知りたいと思われているのかと驚きました。

よく変わっているねと言われてきましたが、自分の性格について深く考えたことなく、指摘されてはじめて自分の中にも誘引力のあるコンテンツがあるかもしれないことに気付きました。

彼女の言葉を借りてしまうと「発信する事によって同じような悩みを持つ誰かの希望になるかもしれない」それが現実味を帯びて私に迫ってきました。

 

でも、誰かに希望を与えた後、自分はどうやって助かればいいのでしょうか。世界中に自分の深い所までさらけ出して無傷ではいられないだろう私は誰に救いを求めるのでしょうか。

ADHDか否かはたいした問題ではなくて、自分をさらけ出すことで過剰に傷ついてしまうことが怖いから、知りたいと望んでくれるファンの方がいてもやはり言えません。私は結局自分の事が一番大切なのです。

 

自分の傷口を見せながら、あなたは一人じゃないから大丈夫だよ、と教えることなんて、自分のプライベートを切り売りすることなんて誰にでもできる事ではなくて、成功した人がいるからとそのスタイルを模倣して傷に傷を重ねると壊れてしまう人は絶対いるとおもうのです。少なくとも私は出来ないことだとおもっています。

自分が傷つかずに生きる道を探す

不幸や傷ついた経験さえもコンテンツにできてしまう世界の端っこにいて、それが良しとされるはやりの中にいて、でもそれで過剰に傷ついてしまうのならばそれは間違っていると言いたいです。おかしいことだと言いたいです。

 

私は今、極力自分が傷つかないように生きる道を探しています。

 

不幸を武器に使わなくてもいいように、普通に明るい幸せを望めるように。

 

アンドロイドの仮面を被って誰にも言わない、知られたくない事は隠しながら、でも前を向いて生きていく道を探しています。

 

 

執筆

アンドロイドのお姉さん SAORI

モデルとして活動していたがアンドロイドパフォーマンスで注目を浴び、以来アンドロイドタレントとして活動中。 フリーランスになり、ラジオ、YouTube、勉強会での登壇などマルチに活動している。
Instagram :https://www.instagram.com/saotvos/

編集

川崎 博則

1986年生まれ。2019年4月に中途でさくらインターネット株式会社に入社。さくマガ立ち上げメンバー。さくマガ編集長を務める。WEBマーケティングの仕事に10年以上たずさわっている。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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