これまでに2回にわたって、ご自身の人生やキャリアについて語ってくださった福原香織さん。 今回は趣向を変えて、さくらインターネットの創業社長である、田中邦裕と対談していただくことになりました!
この日が初対面の2人。コミュニケーションを取るうえで大切にしていることや、今後実現したいことについて語っていただきました。
福原 香織さん(以下、福原):2週間前に、田中さんとお話をしてみたい! とリクエストしたのですが、まさかこんなにすぐお会いできるとは……お忙しいところありがとうございます!
田中 邦裕(以下、田中):普段はあまり緊張することはないのですが、今日は緊張しています(笑)。 もともとアニメは好きで、最近は『ソードアート・オンライン』を見ています。もちろん『らき☆すた』も見ていましたよ。
福原:ありがとうございます!
ふたりを突き動かした”若気の至り“
ーー田中さんは18歳の時にさくらインターネットを創業し、福原さんは15歳で声優を目指し上京されました。お互い若い時に大きな決断をされていますが、その時の心境といま振り返ってみてその判断はどう思いますか?
田中:起業をした当初から一貫して、自分が好きなことをすることが重要だと考えています。そのため、さくらインターネットは「やりたいことをできるに変える」という社是を掲げています。
福原:昔から、その社是なんですか?
田中:実は3年前に明確化されました。僕自身の想いでもあるし、社員のみんなの意見でもあって、みんなで社是を創り上げました。もともと「やるべきことをやる」という前提があまり好きじゃなくて、「やりたいことができるのがいい」という話をずっとし続けていたという背景があります。
僕は15歳で高専に進学しました。高校に行く人が大半のなか、1%の人しか選ばない選択です。福原さんも15歳で上京されたんですよね?
福原:はい。声優になりたいという子どもの頃からの夢を叶えるために、上京を決意しました。田中さんと同じように、ごくわずかな人しか選択しない道に進むのは、とても勇気のいることでした。 後付けですけど、今こうしてお仕事ができているのは、すごくよかったなって実感しています。若気の至りというか……パッションだけで「声優になるぞ」って感じだったので(笑)
田中:若気の至りって重要ですよね。42歳の僕が今から声優になろうとチャレンジするのは、かなりのリスクがあります。でも15歳のときにチャレンジをしていたとしたら、もしダメだったとしてもなんとかなっていたんじゃないかな。
スポーツ選手や声優って、なろうと思ってもなれないことが多いけど、まずはなろうと思わないとなれないじゃないですか。だから後付けで「よかったな」と思うのは当然のことだと思います。
自分のできることが何か、試行錯誤の連続
田中:最近では社外の人のメンターをすることに熱量を持っています。
福原:メンターってなんですか?
田中:話し相手になって、その人自身が本当にやりたいことを見つけ出すお手伝いのことです。例えば起業家の人たちの悩みを聞いて、その中で自分の答えを見出していただきます。 最初は「最近どうですか?」とか、当たり障りのない話をするんです。話が深まっていくと具体的な悩みが出てきて、根本を突き詰めると実は大した悩みじゃなかったりすることもあります。単に話を聞いてほしいだけの人や悩みを解決してほしい人もいて、手法は様々ですが基本的には問いかけをするかたちが多いですね。福原さんはどうですか?
福原:大人になればなるほど、自分がやりたいことだけでなく、誰と何をやりたいかを考えるようになってきました。3年間のフリーランスを経て、最近また声優事務所に所属したんですけど、事務所の社長やスタッフさん達が「福原さんとこういう事が出来たらいいよね!」と、色々想いを伝えてくださり、それがとても嬉しかったですね。
私は今年デビュー15周年イヤーなので、そんなふうに仰ってくれる方たちと一緒に仕事が出来ることがありがたいですし、これからどうなっていくのかとても楽しみです。
いまは新たな環境で自分には何が出来るか、まわりの方たちにどんな貢献が出来るかと、試行錯誤することに熱量を注いで挑んでいます!
田中:周りの人たちと一緒にいて、どういうところが楽しいんですか?
福原:私はアニメデビューが18歳と早く、大ヒットしたアニメ『らき☆すた』の時はまだ20歳でした。一方、まわりのプロデューサーやスタッフの方たちは30代、40代の働き盛りのイケイケな方が多くて、本当の意味で関われていたかと考えると、やっぱり年齢やキャリアの差がどうしてもあって、コミュニケーションが難しい時もありました。
最近は自分も歳を重ねて、周りのスタッフさんに同年代も増えてきました。なかには「『らき☆すた』を見てアニメが好きになり、この業界に入りました!」なんて仰ってくれる方も。私がこの方の人生に関わっているのか…!と考えると、それってとてもすごい事ですよね。そんな時に仕事のやりがいや楽しみが深まったと感じたりします。
察してほしいではなく、きちんと言葉で伝えること
ーー二人の話題は先日、田中がnoteに書いた『社会人の不幸の8割は合意のない期待から』という記事の内容に移った。
田中が書いた内容とは
・勝手に期待をして、裏切られたと思う。この気持ちが自分の中のフラストレーションを生む。
・重要なのは、良いこと、悪いこと、やってほしいこと、やって欲しくないことなどの期待を事前に合意しておくこと。
田中:合意のない期待をしたらダメだよという内容を書いたら、すごくバズりました。相手に自分の気持ちを察して欲しい人って結構いるんですけど、エスパーかよって(笑)。
メンタリングをしている時もこういった相談に出くわしますが、エスパーになるか、それともちゃんと話す人になるかどっちを選ぶかと問いかけると、みなさん後者を選びます。
福原:そうですね。その二択だったら、きちんと話す方を選びますね。私も合意のない期待で失敗してしまうこともあります。例えばですけど、新人の頃の私は、相手に自分の言葉で想いを伝えるという事がとても苦手だったんですよね。
自分の語彙力のなさや、人間力がまだまだ未熟だったのもあって、まわりに察してほしいって思うこともあって。逆にマネージャーさんやスタッフさん達は私に対してこうしてほしい!という期待があって。合意のないままお互いの期待が膨れ上がってしまうことがありました(笑)。
田中:ちなみにその時はどうやって乗り越えたんですか。
福原:日々、自分の行動に気づき続けることですかね。例えば今日失敗しちゃったなっていう時に、なぜそうなってしまったのかを振り返る。成功した時も同じです。とにかく気づき続けるように意識しています。
最近は、自分勝手な押し付けや、この人はこういう人だろう!という決めつけたりする思考をやめたんですよね。ここ数年、自分の意識改革を行動に移してかなり実践しているのですが、いい結果に繋がる事が増えた気がします。
田中:あるべきよりも、ありたい姿の方がいいってよく言いますよね。特に人間関係が悪いという話になると人間が悪いように思いがちですが、関係が悪いだけであって人間自身は悪くない。
さくらインターネットのバリュー(※企業としての価値)で「肯定ファースト」というものがあります。まずは相手を肯定しましょうという意味です。嫌いな人は嫌いなところしか見えないし、好きな人は好きなところしか見えない。
でもどんな人であっても、いいところを見て、まず肯定的に受け入れるということをすれば大抵は喧嘩にはならない。新人時代にマネージャーさんとうまくいけた秘訣はあるんですか?
福原:感謝の気持ちを持つ事でしょうか。上京したての養成所時代、1年くらい全く結果が出なくて、 オーディションも落ちてばかり…。
そんな時に私を見つけて声をかけてくださったのが当時のマネージャーさんでした。「なんとか福原をデビューさせよう!」というマネージャーさんの想いに私自身とても感謝していましたし、信頼していました。 なので私も「なんとかデビューするぞ!」と必死についていきました。大変な事も色々あったけど、変わらずずっと持ち続けていたのは、そんなマネージャーさんへの感謝の気持ちですね。
田中:感謝の気持ちって大切ですよね。僕は学生さんのメンターをすることもあるんですが、年の差が倍くらいありますよ。下手したら子供のような年齢ですよね(笑)。でも、年の差があっても謙虚に話を聞くようにしています。
デビュー15周年を迎える福原さんが実現したいこと
福原:自分の想いを周りの人たちに伝えて、自分自身も成長し続けて、やりたいことを実現していきたいです。 過去にやり残してしまったことも出来る限り回収したいです。
デビュー15周年を迎えるにあたって、今まで支えてくださったファンの方やスタッフさん達などに 恩返しができる1年にしたいと思っています。そこで、新たに所属した事務所では、今までの私だったら遠慮して言えなかったことも、相手の立場も尊重しつつ、自分の意見をきちんと言うようにしています。
社長やマネージャーさんに、私はこういうことをやりたいので力を貸してもらえないでしょうか? と素直に伝えるよう心がけています。受け入れられなかったらどうしようという怖さはもちろんありますが、 ストレートに言葉にすると思いのほか伝わるんですよね。
ファンのみなさんに対しても同じです。変にかっこつけずに、今の私の状況であったり、今の私にはこういう力が足りないけど頑張りたいから、みんなに力を貸してほしい…!と正直に伝えます。結果、以前よりも私とファンの方との絆も一層深まって来ているように思います。
田中:今の話を聞いていて思ったのが「私」という主語を明確にして話すことって重要ですよね。こういうイベントの方がいいと思います。というより、私がこういうイベントにしたいと言ったほうが、同じことを言っていても、ニュアンスが違いますよね。
福原さんが話されたように、協力してほしい・助けてほしいと発信し、フォロワーをつかむ力っていうのはすごく重要だと思っています。自分をさらけ出すと弱みを見せるようで怖いっていう人が多いんですけど、案外相手からは本音が聞けてよかったという意見をいただけたり。やっぱり何がしたいかをきちんと伝えることが大事なんだろうなと思いますね。
田中が挑む「楽しく働ける環境」作り
田中:僕はせっかく同じ会社にみんな集まったんだったら、楽しく働きたいなと思っているんです。なので僕自身はみんなが楽しく働ける環境を作りたいです。
仕事っていうと嫌なものってイメージありますよね。連休の最終日にTwitterのトレンドで仕事に対するネガティブなワードが上がってきたり。
福原:そういえば今朝のTwitterトレンドも満員電車でした(笑)。
田中:満員電車ってよくないですよね! 会社に行くまでに疲れるし、具合が悪くなる人もいるし、悪循環です。IT化がこれだけ進んだのに、なぜ東京で働かなくてはならないんだろうと思います。
さくらインターネットには「さぶりこ」という働き方の制度があり、始業する時間を朝7時から12時まで自由に変更できます。更に30分早帰り制度というのがあるので、7時に始業した人は15時半には帰れるんです。 帰社後は子どもを迎えに行ったり、外部の勉強会に行ったり、副業も可能です。 そうやって多様性を認めつつ、勤務地が東京じゃなくてもいいようにする。その2つの両輪を回していけばもっと幸せになれると思っています。 僕は良い会社を作るということを成し遂げたい。更にその行動を通じて社会そのものが変わればいいな。
若くして大きな決断をした2人。「他者」と関わる中で自分の想いを伝え、相手ときちんと対話をすることで、着実に「やりたいことをできるに変える」ことを実現されているのだと感じました。 新しいことに取り組むことはとても勇気がいることですが、まずは「私はこうしたい!」と言葉にしてみることから始めてみてはいかがでしょうか? きっと「やりたいことをできるに変える」第一歩になるはずです。
≫ あなたの「やりたいこと」をさくらインターネットで一緒に実現してみませんか?
執筆
福島 あゆ美
2019年4月にさくらインターネットに中途入社。社長室所属。普段は執行役員の秘書を務める。
※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。
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