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アフリカで思った。好きなことを仕事にしながら、世界も変えていきたい

前回の記事では、僕の肩書である「フリーランス国際協力師」の説明を中心に、どんな仕事をしているのか、どれくらいの収入があるのかといった話をしました。

>>肩書 フリーランス国際協力師の「新しい働き方」 原貫太

こういった記事や講演会を通じて「国際協力を仕事にしている」と伝えると、多くの人は僕に対して「アフリカ支援を頑張っている人」というイメージを持つようです。

もちろん、アフリカでの支援活動にも取り組んでいます。ただ、僕の仕事にかけるモチベーションは何も「アフリカの困っている人たちを助けたい」だけではありません。

今回はフリーランス国際協力師のテーマでもある「自由に働きながら、世界を変える」を中心に、僕が今何を目指しながら日々の仕事に取り組んでいるかお伝えします。

現場支援には関わり続ける

前回の記事でも軽く紹介しましたが、僕はウガンダ共和国の小学校に通う女子生徒たちに布ナプキン製作のトレーニングを行ったり、公衆衛生環境の改善を目指した手洗い指導をしたりしています。

みなさんが「国際協力」と聞いたら、おそらく一番にイメージされる活動でしょう。

そもそも僕が国際協力に目覚めた最初のきっかけは、大学一年生で参加したフィリピンのボランティア活動です。現地滞在中、物乞いをする一人のストリートチルドレンと出会ったことがきっかけで、国際協力の道を歩むことになりました。

その後、大学在学中は駆け抜けるように国際協力の活動に携わってきました。例えばNGO(非政府組織)のインターン生としてウガンダの元子ども兵社会復帰支援に携わったり、自分でも新しくNGOを起業して、紛争で傷ついた南スーダンの難民を支援したり。

その意味で、学生時代から「現場」に立ち続けてきた自負はあります。そして、これからも国際協力のプレイヤーとして「現場」に立ち続けるつもりです。

南スーダン難民の支援に携わる筆者
南スーダン難民の支援に携わる筆者(2017年夏撮影)

どれだけ経験を積んだり、社会的な影響力が増えたりしても、「困っている人の力になりたい」という原点は忘れたくありません。そしてまた、現場での支援に関わり続けることが、「国際協力師」を名乗る自分のブランディングにもつながっています。 

新しい国際協力の関わり方を確立したい

プレイヤーとして現場に立ち続ける思いがある一方、僕にはまた別の大きなモチベーションがあります。それが「新しい国際協力への関わり方を確立したい」です。

国際協力という仕事は、基本的には何らかの組織に所属しながら行うものと考えられています。「国際協力師」という言葉は2007年頃、NPO法人宇宙船地球号(注:現在は解散)が提唱し始めた職業人の概念ですが、そこでの定義は「生活するのに十分な“給料”をもらい、プロとして国際協力を持続的に行っている人々」となっています。

「給料」と言うくらいなので、何らかの組織に属することが前提とされています。実際、国際協力師に当てはまる人たちは以下5つを指すと言われていました。 

  • 国際公務員(国連職員、世界銀行職員、等)
  • 政府機関職員(JICA職員、JBIC職員、JETRO職員、等)
  • 政府機関専門家(JICA専門家(技術協力専門家)、等)
  • 有給NGOスタッフ(国際大型NGO有給職員、等)
  • 開発コンサルタント会社職員

 難しい言葉が並んでいますが、例えばユニセフやJICAといった団体名であれば皆さんも一度は聞いたことがあるかと思います。

これら国際協力を行う組織がたくさんある一方、僕が名乗る「フリーランス国際協力師」は、個人で国際協力を仕事にする人を指します。

もちろん、これまでも個人としてアフリカなどの農村部に入り、草の根の支援活動をされてきた方はたくさんいます。私の周りにもそういった方たちがいますが、皆さん強い信念を持ち、地道な活動を何十年も続けられてきています。

ウガンダ北東部の小学校で布ナプキン製作のトレーニングを行う様子
ウガンダ北東部の小学校で布ナプキン製作のトレーニングを行う様子

アフリカ支援を仕事に 

しかし、残念ながらそういった草の根の活動には、これまでは世間からの注目はあまり集まることはなく、収入や活動資金を確保する難しさが常に付きまとっていました。

社会的な発信力も、それほど大きくはなかったかと思います。そのため、今でも「国際協力を仕事にしている」「アフリカ支援を仕事にしている」というと、この道に詳しくない一般の方からは「どうやって食べているのですか?」と、真剣な表情で質問されることがあります。

しかし、今の時代にはそう、インターネットがあります。僕が活動するウガンダ北東部は同国の中でもかなり僻地(へきち)にありますが、それでもほぼ問題なくインターネットを利用することができます。

インターネットさえあれば世界中のどこに暮らしていても仕事ができるし、収入も生み出せる。情報発信を続ければセルフブランディングに繋がり、社会的な発信力を高めながら、現場での活動を応援してもらうこともできます。

僕はこの5年間、特にソーシャルメディアでの発信に取り組み続けた結果、Twitterのフォロワーは23,600人(記事執筆時点)、ブログは毎月10万回以上読まれるメディアにまで成長しました。

個人で働くのは、短期的には社会に起こせるインパクトは小さいかもしれません。それこそ国連に入ったり、NGOに就職したりした方が、数カ月から数年単位で考えると、より大きなインパクトを生み出せると思います。

ただ、僕が「フリーランス×国際協力」という道を切り拓き、その生き様を社会に発信し続ければ、この働き方が若い人にとって一つの選択肢になるかもしれない。そして、同じ道を志す「仲間」が一人、二人…と増えていったら、長期的に見た時に社会は大きく動くのではないか。そう考えています。

好きなことを仕事にしながら、社会もちゃんと良くしたい

働き方改革が叫ばれ、日本でも仕事を取り巻く環境が大きく変わろうとしています。

ブログもYouTubeもやっている僕が言うのもあれですが(笑)特にこういった界隈(かいわい)に目を向けてみると「好きなことを仕事にしよう」というメッセージが至る所にあふれています。

もちろん、好きなことを仕事にすることは、その人の幸せにつながることだと思います。僕自身、今取り組んでいる一つ一つの仕事は自分の好きなことだし、それで食べていくことができているというのは、幸せなことです。

しかし、僕は「好きなことを仕事にする」先に、常に「社会を良くする」「困っている人の力になる」という視点を持ち続けたいと考えています。

ウガンダ滞在中はマラリアを運ぶ蚊から身を守るため、蚊帳の中で作業する
ウガンダ滞在中はマラリアを運ぶ蚊から身を守るため、蚊帳の中で作業する

もし、みんなが好き勝手に生きてしまえば、その歪みはきっと「社会的弱者」と呼ばれる人々に押寄せられます。それに、日本国内だけではなくグローバルに世界を捉えたら、僕がこの記事を書いている今この瞬間にも、世界の不条理に苦しめられている人たちがいます。

自分が国際協力に関わることになった原点を思い出した時、僕はその存在を忘れたくないのです。だから、好きなことを仕事にして「自由に働く」幸せを謳歌(おうか)しながらも、その先には常に「世界を変える」ことを見据えて働きたい。

そして、僕よりもさらに若い人たちが「自由に働きながら、世界を変える」というメッセージに共感し、同じ道を目指してくれる。そんな日が来ることを目指して、これからも「フリーランス国際協力師」としてその生き方を発信し続けたいと思います。

国際協力を仕事にする具体的な方法を知りたい方は、こちらの記事もご覧ください↓

国際協力を仕事にするには?具体的な7種類の職業を紹介します

執筆

原貫太

1994年生まれ。フリーランス国際協力師。早稲田大学卒。 フィリピンで物乞いをする少女と出会ったことをきっかけに、学生時代から国際協力活動をはじめる。これまでにウガンダの元子ども兵や南スーダンの難民を支援。出版や講演、ブログを通じた啓発活動にも取り組み、2018年3月小野梓記念賞を受賞。

編集

武田 伸子

2014年に中途でさくらインターネットに入社。「さくらのユーザ通信」(メルマガ)やさくマガの編集を担当している。1児の母。おいしいごはんとお酒が好き。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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