さくマガ公式SNS
お問い合わせ

うつ病は心の風邪ではなく、心の癌だ。僕はこうして付き合い方を見つけた

うつ病は心の風邪ではなく、心の癌だ。僕はこうして付き合い方を見つけた

前回の記事「心の『本音』に耳を傾けよう。適応障害になり、僕は大好きだった仕事を辞めた。」の中で、過去のうつ病体験記を紹介しました。正確には「適応障害」という病気なのですが、発症直後は強い抑うつ症状に苦しみ、日常生活もままなりませんでした。

実際、専門医でもうつ病と適応障害の区別をするのは難しいと言われています。

うつ病はよく、「心の風邪」という表現がされます。「現代社会に暮らす誰もがうつ病になるリスクがある」という意味では、たしかにその通りです。

 

しかし、僕は自分の経験や色んな人のうつ病体験を知る中で、「うつ病は心の風邪なんて生易しいものではない。心の癌だ。」と思うようになりました。

うつ病は、「死」に至る病

医療環境が発達した現代の日本では、風邪で死ぬことはほとんどなくなりました。持病の有無や年齢にもよるかと思いますが、例えば僕のような20代の若者や働き盛りの30代、40代の人であれば、食事や睡眠さえしっかり取っていれば、一般的な風邪で死に至ることはまずありません。

しかし、うつ病は違います。何も対処せずに放置しておくと、最悪「死」に至ることもあります。

 

そう、「自殺」という形として。

 

日本は年間約3万人が自殺する国です。その要因として、うつ病などの精神疾患が特に重要であることが自殺既遂者に対する調査(厚生労働省)からも明らかになっています。

サラリーマンの方であれば、高熱でも出ない限り、ただ風邪を引いただけで会社を休むのは難しいと思います。特に上司が厳しい人であれば、「風邪を引いたので休みます」とはなかなか伝えにくいですよね。

 

僕の想像でしかありませんが、「薬飲んで何とかしろ」と言われそうです(笑)。

でも、「癌になったので今日は仕事を休みたい」と伝えれば、どれだけブラックな会社であっても「今すぐ病院に行ってこい」と言われるはずです。

 

風邪は自然治癒でも良くなっていく病気ですが、うつ病は放置していたら死に至る病です。社会人がうつ病を発症する原因の多くは仕事に関係していますが、無理をして働き続けていたら、なおさら死ぬリスクが高まります。

だからこそ、うつ病は「心の風邪」ではなく、「心の癌」という表現をするべきだと思うのです。

2年経った今でも、「うつ」は再発する

実はこの記事を書いている3日前、僕はうつ地獄に襲われていました。

僕がうつ病を発症したのは、今から約2年前の2018年5月です。以前の記事でも書いたように、休養生活の後に起業した団体からは離れることになったものの、2019年からはフリーランスとして仕事ができています。

ただ、うつ病や適応障害のような心の病気には、明確な「完治」というものが存在しません。外傷を負っているわけでもないので、いつ、どうなれば病気が完治したといえるのか、判断は難しいです。

 

仕事に復帰してからすでに一年以上が経っているというのに、今でも定期的に「うつ」の波がやってきます。3日前もそうでした。

トリガーは様々です。明確な原因がわかっているわけではありませんが、仕事のしすぎで疲れやストレスが溜まっていたり、家族や友人と言い争いをしたりすると、それらが引き金となり、心の中に眠っていた鬱が表に出てくることがあります。

「うつ病」は一進一退を繰り返しながら、少しずつ快方に向かっていく

心の浮き沈みを繰り返すことに、一時期は悲観していました。「病気は治ったと思っていたのに…」「これからずっと、この苦しさと向き合わなくてはならないのか…」と。

でも一つ言えることは、一進一退を繰り返しながらも、症状は確実に良くなっているということです。あくまでも僕個人の経験ですが、かつてのように何日間も寝込んだり、全く仕事が手につかなくなったりすることは、最近ではほとんど無くなりました。

 

そしてまた、鬱との付き合い方もわかってきました。気分が乗らない時は無理に自分を鼓舞するのではなく、「少し休みたい」という心の声に耳を傾けるようにしています。

癌のように治ったと思っていたら、ある日突然再発することもある。でも、一進一退を繰り返しながら、少しずつ回復に向かっていく。時を経るにつれて、病気との向き合い方もわかってくる。

それが、うつ病だと思います。

悲観してもいられないし、僕はこの経験を発信しようと決めた

最初にも書いた通り、うつ病は現代社会を生きる人なら誰でもかかるリスクがあります。その意味では、「うつ病は心の風邪」という表現は的を射ています。

心の病気は現代社会に生きる限り、避けられない病気だと思います。人類の長い歴史を考えてみれば、この数百年で人間の身体は大して進化していないにもかかわらず、社会は驚異的なスピードで変わっているからです。

 

その変化に、僕たちの身体が追いつけるわけがありません。

心療内科や精神科で治療を受けているうつ病患者は、氷山の一角と言われています。その下には、医師にうつ病だと認識されていない人や、本人がうつ病だと自認しておらず、病院に足を運んですらいない人がたくさんいます。

だからこそ、うつ病を克服した人が自分の経験を発信することには、意味があると思うのです。

 

「一度でもうつ病になってしまうと、心に“再発スイッチ”ができてしまう」

かつてそう聞いた時、僕はこれからの人生に絶望しかけました。実際、発症から2年が経った今でも定期的に鬱の波が襲ってきます。

でも、悲観ばかりしてはいられません。だから僕は、この経験を発信すると決めました。

 

そうすることで誰かの支えになれたら、再発も悪くないと割り切れるからです。

かつて病気を発症して間もない頃の僕は、「すべてが終わった」と考えていました。でも、今ではここまでポジティブになることができています。

 

たしかにうつ病は、「風邪」と表現するほど生易しいものではありません。その恐ろしさを認識するためにも、「癌」という表現の方がふさわしいと僕は思います。

でも、上手く付き合っていく方法も、ひとり一人見つけられるはず。僕のこの記事が、今苦しみの渦中にある人の支えになれば嬉しく思います。

 

※この記事は専門医監修によるものではなく、あくまでも適応障害を経験した当事者目線で語っている内容になります。本人、もしくはご家族やご友人に適応障害やうつ病の兆候がある場合、または患っている場合、専門医に相談するようにしてください。

 

 

 

執筆

原貫太

1994年生まれ。フリーランス国際協力師。早稲田大学卒。 フィリピンで物乞いをする少女と出会ったことをきっかけに、学生時代から国際協力活動をはじめる。これまでにウガンダの元子ども兵や南スーダンの難民を支援。出版や講演、ブログを通じた啓発活動にも取り組み、2018年3月小野梓記念賞を受賞。

編集

武田 伸子

2014年に中途でさくらインターネットに入社。「さくらのユーザ通信」(メルマガ)やさくマガの編集を担当している。1児の母。おいしいごはんとお酒が好き。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

すべての記事を見る

関連記事

この記事を読んだ人におすすめ

おすすめのタグ

特集