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ティール組織は日本の働き方を変えるか? 事例をもとに考える

ティール組織は働き方を変えるか?パネルディスカッションイベント

10月9日(水)にサイボウズ株式会社 東京オフィス Parkで株式会社技術評論社主催のイベント「ティール組織は日本の働き方を変えるか? その本質とは?」が開催されました。今回は各社事例紹介パートの模様をレポートします!

スピーカー
サイボウズ株式会社 代表取締役社長 青野 慶久 さん 
さくらインターネット株式会社 代表取締役社長 田中 邦裕 さん
株式会社ソニックガーデン 代表取締役社長 倉貫 義人 さん
株式会社ゆめみ 代表取締役 片岡 俊行 さん

モデレーター
株式会社豆蔵 取締役 羽生田 栄一 さん 

「ティール組織は日本の働き方を変えるか? その本質とは?」ってどんなイベント?

「ティール組織」をクローズアップし、日本におけるティール組織の可能性やその本質について議論を深めていくため、それぞれの視点から働き方や組織のあり方を更新し続ける4名の経営者をパネリストに迎え、これからの働き方についてディカッションしました。

経営者やマネジャー、人事担当、働き方のアップデートに関心のあるすべてのビジネスマンに向けたイベントです。

豆蔵 羽生田さん

ティール組織とはなにか?

羽生田さん:株式会社 豆蔵の羽生田です。技術評論社から出版されている『[イラスト解説]ティール組織――新しい働き方のスタイル』(フレデリック・ラルー著)を監訳しました。

ティール組織とは「組織のメンバー全員が自律的に動き、組織の仕組みや目的も常に進化していく新しい組織の形」です。役員が目的を決めたり、株主が押しつけてくるというものではありません。

誤解しないでいただきたいのですが、ティール組織が一番よい組織ということではなく、いろいろな組織の運営方法があることを知っていただきたいです。ティール組織について詳しく知りたい方はぜひ、『[イラスト解説]ティール組織――新しい働き方のスタイル』を読んでいただければと思います。

ここからは、各登壇者の方にお話をうかがっていきたいと思います。まずは、ゆめみの片岡さんからお願いします。

ゆめみの片岡さん

働き方の再発明

片岡さん:ゆめみの片岡です。ゆめみの紹介の中で、ティール組織との関わりを紹介したいと思っています。実はですね、5000万人が毎月使っているサービスをゆめみが作っています。

いろいろな企業と一緒に、 単なる受託ではなく、同じチームという関係性で開発をおこなっているので、ゆめみではこれを『B and B to C』事業と呼んでいます。

「Quality(質)」と「Agility(機敏)」の両立を価値として提供していたのですが、お客様の期待にこたえるにはもっと組織を大きくしていかなければならなかったんですね。

ただ、組織を大きくするとさまざまな問題が起こるので、組織の構造を変えていこうと思いました。そんなときにティール組織という考え方に出会ったんです。

本を読んでいて、「誰もがどのような意思決定でもおこなうことができる。ただし、意思決定の前に『深く影響があるすべての関係者』と『その分野の専門家』から助言を求める必要がある」という助言プロセスの部分が響いて、会社のすべての意思決定プロセスを助言プロセスをベースに見直しました。実際に生まれた制度をいくつかご紹介します。

  • 全員CEO(最高経営責任者)制度:全員が意思決定権を持っている。
  • 二重メンバーシップ:社員はメンバーオプション契約を締結することで、意思決定権限や有給取り放題制度などさまざまなサービスを利用できる。
  • イエローカード制:禁止行為を定め、守れなかった場合にイエローカードを社員同士が付与できる。2枚イエローカードが付与されるとメンバーオプション契約は解約される。

こういった「働き方の再発明」をする際には本質や原理原則に立ち戻るようにして、うそ偽りのない気持ちに耳をかたむけるようにしています。あと、組織設計は事業やミッションのための手段だと心得ることが大切だと思っています。

ソニックガーデン 倉貫さん

売上目標はないが、自然に伸びている

 倉貫さん:ソニックガーデンの倉貫です。もともとはエンジニア出身です。最近、メディアで取りあげられたり、「働きがいのある会社」ベストカンパニー賞などをいただいたこともあります。

わたしたちはシステム開発をしている会社で、一般的にはシステムを納品してお金をいただくというのが普通だと思いますが、納品後になにか問題があるとお客様が困ってしまうので、納品をなくしました。

開発のサブスクリプション化をし、時間単位ではなく、成果単位での契約をしています。また、本社オフィスを無くしたので、出勤する必要がありません。いまでは全社員がリモートワークとなり、インターネット上のオフィスに出社する事が普通になっています。

あと、管理職はいません。全員がちゃんと自分の仕事をしましょうということです。指示することも、命令することもありません。有給休暇も取りたければいくらでも取っていいですし、会社の経費も自由に使っていいです。人事評価もないので、賞与はみんなで山分けしています。売上目標はないのですが、自然に売上は伸びていますね。

まとめると、次のとおりです。

  • 納品のない受託開発:月額定額制で開発をする「サブスクリプションモデル」。成果単位で契約。
  • 通勤のない働き方:全社員がリモートワーク。仮想オフィスを用意しインターネット上のオフィスに出社。
  • 管理のない会社経営:管理職がいない。その分、セルフマネジメントが必要となる。

時間内で全部を話すことはできないので、詳しくはわたしのブログと書籍をごらんください。

kuranuki.sonicgarden.jp

さくらインターネット 田中さん

性善説をもとに社員を信じる

田中さん:さくらインターネットの田中です。エンジニア出身で、高専(高等専門学校)でロボットを作っていました。「趣味はなんですか?」 と聞かれることがあるんですけど、「趣味はサーバです」と答えるほどサーバが好きです。

27歳で上場をして、上場した年齢が4番目に若く、素晴らしい記録だと思うじゃないですか。ただ、2年で債務超過になり、最速債務超過ランキングでも4位になっています。売上が伸びず、多くの人が辞めてしまったことをきっかけに、働き方について見直すようになりました。

あと、2014年に青野さんが企画してくれて、「原丈人さんを囲む会」をおこなったんですね。原さんは「公益資本主義」を提唱されている方なんですけれども、原さんとの出会いによって「みんなが良くなる」という価値観が入ってきたのもきっかけの一つです。

さくらインターネットの人事ポリシーとして「性善説 社員を信じる」というものがあります。性善説をもとに、人事制度を作っているんですね。それが『さぶりこ(Sakura Business and Life Co-Creation)』制度です。いくつか紹介させてもらいます。

  • さぶりこショート30:仕事が早く終われば定時の30分前に退社できる。
  • さぶりこフレックス:勤務時間を自分で選べる。10分単位でスライド可能でショート30と併用も可能。
    フレックスタイム制とは? さくらインターネットでの導入事例を紹介
  • さぶりこパラレルキャリア:起業や別会社での就業、ボランティアを通して、さまざまなキャリアに挑戦できる。
  • さぶりこリフレッシュ:柔軟な有給休暇制度。休暇は1時間単位から取れ、2日以上の連続休暇で1日につき5,000円支給される。

働き方改革とよくいわれますが、経営者から変わっていく必要があると思っています。わたしは2年前に1ヵ月間バカンス休暇を取ったんですけど、会社がまわらないんじゃないかという不安があったんです。それと同時に会社がうまくまわってしまったらどうしようという不安もあったんですね。

結果はうまくまわってました(笑)。社長ってそんなもんだと思うことで組織はよくなるのかなと思います。

サイボウズ 青野さん

多様性は強さ。組み合わせたらさらに強くなる

青野さん:サイボウズの青野です。わたしたちのキーワードは「100人100通りの働き方」です。「男性」「女性」といったカテゴリで分けないで、一人ひとりを重んじませんか? という考えですね。

もともとはベンチャー企業なので、昔はみんな長時間労働が大好きで、週に1回徹夜会議があったんですよ。2005年に離職率が28%まであがってしまって、「これはマズイぞ」となっていろいろと対策を始めました。

辞めていく人の理由はさまざまということが分かり、一律のやりかたではあかんぞということで「100人いれば、100通りの人事制度があってよい」という人事制度の方針をかためました。

働き方の多様化へのチャレンジをいくつか紹介します。

  • 働く時間と場所の選択:残業なし、短時間勤務、在宅勤務、週3日勤務等を選択できる。
  • 副業(複業)の自由化:誰でも基本会社に断りなく副業できる。
  • 人事部感動課:社内に感動を作る専門職種がある。
  • 自由に作れる部活動:自由に部を作れて、部員ひとりあたり、年に1万円支給。
  • 大人の体験入部:誰でも他の部署に体験入部できる。

他にもたくさんありますが、キリがないので省略します。日々、議論をしていて、人気のない人事制度はリニューアルや統廃合されています。こうした取り組みの結果、離職率は28%から5%前後まで改善し、売上も伸びています。

多様性が大事とよくいわれますが、多様性は強さだと思うんですよ。組み合わすとさらに強くなるし、違うからこそ強いと思っています。

まとめ

今回のイベントでは、各社の働き方について事例をまじえて紹介していました。

イベントに参加された皆さまが熱心にお話を聞いていたのが印象的です。働き方については誰もが関心のあることだと思います。まずはこれまでの働き方を見直して、新しい働き方を考えてみてはいかがでしょうか。

執筆

川崎 博則

1986年生まれ。2019年4月に中途でさくらインターネット株式会社に入社。さくマガ立ち上げメンバー。さくマガ編集長を務める。WEBマーケティングの仕事に10年以上たずさわっている。

編集

天内 雅晴

さくらインターネットでWebマーケティングを担当。プロダクト企画担当を経て、現職。現在、パラレルキャリアとして、広告運用代行の業務をおこなっている。

編集

武田 伸子

2014年に中途でさくらインターネットに入社。「さくらのユーザ通信」(メルマガ)やさくマガの編集を担当している。1児の母。おいしいごはんとお酒が好き。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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