フレックスタイム制とは、「flexible time(フレキシブルタイム)」を略したものです。「一定の期間について、決められた総労働時間内で労働者自身が自由に出退勤時間、働く長さを決められる」働き方で変形労働時間制の一種です。
通常の労働時間制度だと、「9時出勤、18時退勤」のように労働者は勤務時間を決められていますが、フレックスタイム制になると自由な働き方が実現できます。
日本は少子高齢社会なので労働力が不足しており、優秀な人材を採用するためにも働きやすいフレックスタイム制を導入する企業の割合が増えていくことが予測されます。
今回は、フレックスタイム制を導入した企業の事例や基本的ルールについて説明します。
- フレックスタイム制の基本的ルール
- フレックスタイム制におけるコアタイムとは?
- フレックスタイム制におけるフレキシブルタイムとは?
- フレックスタイム制の休日・有給休暇
- フレックスタイム制でも残業代はでる?
- フレックスタイム制のメリットとデメリット
- フレックスタイム制まとめ
フレックスタイム制の基本的ルール
フレックスタイム制は労働基準法第32条の3に規定があります。フレックスタイム制を導入するには就業規則や就業規則に準じるものに定めておく必要があるので注意が必要です。さくらインターネットでは、入社時のオリエンテーションでフレックスタイム制度など働き方について理解してもらうための説明があります。
2019年9月の1カ月間のデータを見ると66.1%の社員、合計327名が期間内にフレックスタイム制を活用しており、一定の成果が出ています。
また、導入のためには以下の7つの事項を労使協定で定める必要があります。労使協定は労働組合、もしくは過半数の労働者を代表した者と締結します。
1.対象となる労働者の範囲
全従業員なのか、特定の部署なのかを定めて明確にします。
2.清算期間
フレックスタイム制において労働者の労働時間を定める期間のこと。清算期間は1カ月とすることが一般的ですが、2019年4月に施行されたフレックスタイム制に関する法改正によって上限が3カ月まで延長されました。
3.清算期間における起算日
起算日は、毎月1日や16日のように清算期間を明確にする必要があります。
4.清算期間における総労働時間(清算期間における所定労働時間)
清算期間を平均し、1週間の労働時間が40時間(特例措置対象事業場は44時間)以内になるように定めなければなりません。
5.標準となる1日の労働時間
年次有給休暇を取得した際に、これを何時間労働したものとして賃金を計算するのかを明確にしておくためのものです。
6.コアタイム
労働者が1日のうちで必ず働かなければならない時間帯です。必ず設けなければならないものではありません。コアタイムについては後ほど詳しく解説します。
7.フレキシブルタイム
労働者の選択により労働の時間帯に制限を設ける場合は、時間帯の開始及び終了の時刻を定める必要があります。フレキシブルタイムについても後ほど詳しく解説します。
フレックスタイム制におけるコアタイムとは?
コアタイムとは、1日のうちで労働者が必ず働かなければいけない時間のことです。コアタイムは必ずしも設定する必要はありません。もし設定する場合にはコアタイムの開始・終了時刻を決定して明記する必要があり、この時間に正当な理由がなく遅刻・早退、欠勤をしてはいけません。
さくらインターネットでは労働時間が8時間で、定時を「9時30分-18時30分」、コアタイムを「12時-16時」に設定しています。さらに勤務時間を10分単位で前後にスライドする事が可能です。
フレックスタイム制におけるフレキシブルタイムとは?
フレキシブルタイムは労働者の裁量で労働時間を決めることができる時間帯のことです。コアタイムと同じく、フレキシブルタイムも必ずしも設定する必要はありません。設定する場合には開始・終了時間帯を明記する必要があります。
さくらインターネットの場合、始業時間帯が「7時~12時」、終業時間帯が「16時~21時」をフレキシブルタイムとしています。
フレックスタイム制の休日・有給休暇
フレックスタイム制でも休日や有給休暇は当然あります。フレックスタイム制の対象労働者が有給休暇を1日取得した場合は、「清算期間における総労働時間を、期間中の所定労働日数で割った時間を基準」として労働したものとして取り扱わなければなりません。
また、フレックスタイム制のもとで休日出勤(休日労働)をした場合、清算期間における総労働時間、時間外労働とは別として扱われます。企業が従業員に休日労働をおこなわせる場合は、36協定(サブロクキョウテイ)の締結が必要となります。
さくらインターネットでは有給休暇が入社時に20日付与され、1日単位・半日単位(半休)・1時間単位で有給休暇を取得できます。
フレックスタイム制でも残業代はでる?
フレックスタイム制でも残業代はでます。先ほど「フレックスタイム制の基本的ルール」の中で清算期間と清算期間における総労働時間を定める必要があると書きました。この清算期間での実労働時間が法定労働時間を超えた分については残業とみなされます。なお、会社が従業員に時間外労働をおこなわせるには36協定の締結が必要となります。
例)清算期間を1カ月で設定した場合の計算方法
ひと月の暦日数が31日の場合に177.1時間が総労働時間だとします。 実労働時間が190時間の場合には12.9時間が時間外労働となり、その分の残業代を請求することが可能です。
また、働き方改革関連法によって時間外労働(残業時間)に上限が設定されました。特別条項のある場合を除いて、上限は原則として月45時間以内、年360時間以内となります。この法律は2019年4月に施行、中小企業でも2020年4月に適用となりました。これに違反した場合、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金といった罰則が科せられるおそれがあります。
さくらインターネットでは、フレックスタイム制と併用できる「さぶりこ タイムマネジメント」という制度があります。
これは、業務効率向上と早めの退社を目的としており、正社員については20時間分の残業手当を先払いで支給する制度です。ほとんどの社員が月間残業時間20時間以内なので、実際の残業時間よりも多くの残業代が支給されることになっています。 また、残業が20時間を超過した場合には超過分が1分単位で支給されます。
フレックスタイム制のメリットとデメリット
フレックスタイム制のメリットは数多くあります。自分自身のワークライフバランスに合わせて始業時刻、終業時刻、勤務時間を調整することで、さまざまなことが実現できます。プライベートが充実することで生産性向上にもつながります。
デメリットもあわせて、いくつかの具体例を見ていきましょう。
フレックスタイム制のメリット
・夫婦が共働きでも子どもを育てやすい
朝の出勤時間を遅くすることで、お子さんが小さくても保育園などの送り迎えができ、夫婦で予定がたてやすくなります。出社前に家族と過ごす時間も確保できます。
・通勤時間をずらして快適な通勤ができる
都市部だと朝は通勤ラッシュで満員電車に乗らないといけなくなり、会社につく頃には疲れ切ってしまいます。出勤時間をずらすことで快適に通勤をすることができます。
・社会人になっても資格取得や勉強をしやすい
退勤時間を早くすれば、資格取得のために学校に通ったり、自身のスキルアップのための時間を取ることができます。
・副業やボランティアなどのパラレルキャリアに挑戦できる
勤務時間を調整することで本業以外の仕事やボランティア活動に挑戦することができます。スキルや経験、人脈などの幅を広げることも期待できます。
フレックスタイム制のデメリット
・職種によっては導入が難しい
時間通りに勤務を開始しなければ取引先や顧客に迷惑がかかる職種(保育士、役所職員など)の場合は職場の同僚と調整すれば可能かもしれませんが、なかなか難しい現実があります。
・コミュニケーションや設備予約の工夫が必要
社員が働く時間がコアタイムに集中するため、打ち合わせが被ってしまう可能性が高まります。また、会議室などの設備予約も重複する可能性があるので予約状況を把握するなど運用の工夫が必要です。
・従業員の自己管理能力が必要
自由度が高くなり、出勤時間を遅くしたことで、逆に遅刻が多くなるケースもあるようです。朝の出勤時間が遅いからといって前日の遅い時間まで過ごすのではなく、仕事に備える自己管理が必要です。
フレックスタイム制まとめ
・フレックスタイム制とは、「決められた総労働時間内で労働者自身が自由に出退勤時間、働く長さを決められる」働き方
・フレックスタイム制を導入するには、以下の7つの事項を労使協定で定める必要がある。1.対象となる労働者の範囲 2.清算期間 3.清算期間における起算日 4.清算期間における総労働時間 5.標準となる1日の労働時間 6.コアタイム 7.フレキシブルタイム
・コアタイムとは、1日のうちで労働者が必ず働かなければいけない時間のこと。必ずしも設定する必要はない
・フレキシブルタイムとは、労働者の裁量で労働時間を決めることができる時間帯のこと。コアタイムと同じく、フレキシブルタイムも必ずしも設定する必要はない
・フレックスタイム制でも休日や有給休暇は当然ある。企業が従業員に休日労働をおこなわせる場合は、36協定の締結が必要
・フレックスタイム制でも残業代はでる。働き方改革関連法によって時間外労働(残業時間)に上限が設定された
・フレックスタイム制のメリットはワークライフバランスに合わせて勤務時間を調整することで、さまざまなことが実現できる
・フレックスタイム制のデメリットは職種によって導入が難しい、セルフマネジメントが必要な点
(参照:フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署 https://www.mhlw.go.jp/content/000476042.pdf)
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