三井住友フィナンシャルグループが実践する「金融機関のDX」

三井住友フィナンシャルグループ 執行役専務グループCDIO(最高デジタルイノベーション責任者)の谷崎 勝教氏が、Sansan株式会社が開催した「Sansan Innovation Project 2021」に登壇。Sansanの代表取締役社長 寺田 親弘氏と対談しました。

三井住友フィナンシャルグループの経常収益は、3兆9023億円(2021年3月期)と、とんでもない額です。

そんな超巨大金融機関が推進するデジタルトランスフォーメーション(DX)とは――

金融機関にこそDXが必要

金融機関にこそDXが必要

寺田 親弘氏(以下、寺田):本日は、「ちょっと未来を描くDX」について、お話を聞かせていただければと思っております。

最近では、デジタル庁の発足が話題になっています。さまざまな企業に求められているデジタルトランスフォーメーション(DX)ですが、個人的には金融機関にこそDXが必要だと思っています。金融は社会のインフラですので、まだまだイノベーションの可能性があると感じていますが、いかがでしょうか。

谷崎 勝教氏(以下、谷崎):金融機関、とくに銀行には預金や為替、融資といったいわゆるレガシーのような機能があります。これについては、半世紀以上にわたってIT化を進めています。社会生活のインフラになっていて、それが浸透している部分もありますが、ずっと改善し続けるものです。

店舗のようなチャネルがスマホアプリに変わっていくように、顧客接点がこれから変わっていくと思います。そこにイノベーションの可能性が、たくさんあると思うんです。いろいろなお客さまに対して新しい体験を提供できるといった意味では、非常に楽しみな領域です。

寺田:フィンテックという分野で言いますと、新たなサービスや他業種からの参入もあります。こうした変化は、谷崎さんの目から見てどのように見えていますか。

谷崎:新しいフィンテック企業は、既存の金融機関ではサービスとして不便な点や不足している点に着目して参入してこられているのでしょう。それは利用者にとってはサービスが良くなることなので、僕は歓迎すべき事象だと思っています。

自分たちもフィンテック企業と同じようになりたい

自分たちもフィンテック企業と同じようになりたい

寺田:驚異的な感覚はあまりないのでしょうか?

谷崎:ある意味、驚異的な感覚もあります。彼らの動き方や、顧客接点の作り方、どうやってお客さんに満足してもらおうかといったモチベーションなどは、僕らにとっては足りない部分もあります。模範として参考にさせていただこうと思っています。

われわれも社内ベンチャーを作ってですね、フィンテック企業と同じような考え方でいろいろな新しいサービスを展開しようと考えています。競争しながらも、最終的には日本がより住みやすい社会になっていくためには、非常に大切な相手だと思っています。「We are the Fintech」という言葉を時々使うのですが、自分たちもフィンテック企業と同じようになりたい気持ちがありますね。

寺田:三井住友フィナンシャルグループ様にはSansanも導入いただき、ちょっと未来の働き方をいち早く実践している企業だと思います。実際に働き方を変えていくうえで、実感することや変化を感じることはありましたか?

谷崎:たくさんあります。われわれはコロナ禍に入る前の段階から、デジタル化された社会をある程度想定しながら、オンライン会議などを準備していました。

それとともに三井住友フィナンシャルグループとしては、ビジネスカジュアルになったり、レイアウトが変わったり、コロナの機会を通じて変化を実感しております。

デジタルを前提とした世の中にならざるを得なくなった

デジタルを前提とした世の中にならざるを得なくなった

寺田:これから世の中が少しずつアフターコロナ・ウィズコロナに向かっていってほしいなと思いますが、今後のビジョン、展望について、ぜひ教えていただきたいです。

谷崎:コロナ禍を通じ、デジタルを前提とした世の中にならざるを得なくなったことを、ほとんどの人が理解できたと思います。

銀行の立場からお客さまの活動を見ますと、大企業の方たちは自分たちでデジタル化への対応が何とかできると感じます。ただ、そこまで対応できない会社も結構いらっしゃいます。

そういう会社に対して、われわれがお手伝いをしていきたいと思い、中堅・中小企業向けのサービスで「プラリタウン」というSaaSプラットフォームの会社を昨年立ち上げました。

日本のデジタル化は遅れていると言われますが、逆に伸びしろがすごくある世界なので、面白いと思っています。

DXに向かっていくマインド・姿勢

寺田:最後に、われわれビジネスパーソンがちょっと未来の働き方を実践していくにあたって、DXに向き合っていくマインド・姿勢についてアドバイスをいただけますか。

谷崎:そんな、アドバイスというほど偉そうな立場にはありませんが、僕が考えているDXとは、手段やツールのイメージがあります。DX自体が目的ではありません。

DXを何のためにおこなうのか「パーパス」がしっかりしていないと、あやふやなものになってしまうし、何をやったらいいのかもわからなくなってしまいます。「何のためのDXか」は、企業によって全然違うのではないでしょうか。

何のためにDXをやるのかをしっかりと考えていただいて、お客さまと従業員に対して打ち出していくことが大切だと思っています。

われわれも企業の中のマインドセットや企業カルチャーを変えていかないといけません。デジタルにおける働き方や仕事の仕方は相当変わってきていると思うので、われわれも一生懸命やっています。

組織的にはいろいろなイベントをしたり、個人に対してはうちの社長が社長製造業を謳っています。デジタルサービスの会社を作って、若手の職員をそこの社長にしているんです。

ほかにも、社内のSNSを使っていろいろなアイディアを募集しています。企業のカルチャーそのものを変えていくことは、手段のひとつとしてあると思いますので、これから日本の企業はいろいろな形で、とても楽しみなところがあると思っています。

寺田:ありがとうございます。それぞれの会社がパーパスを持って手段としてDXを取り入れて、マインドも含めたものを連鎖していく姿が浮かびました。