メタバースとは?やり方・始め方をわかりやすく解説

メタバースとは?やり方・始め方をわかりやすく解説

 

最近、よく耳にする「メタバース」。2021年10月にFacebookの創業者であるマーク・ザッカーバーグが、社名を「Meta」に変えたことで話題になりました。FacebookやInstagramといったSNSを主力事業としていた企業が、これからはメタバースに力を入れるという決意の表れといえます。

 

▲出典:Meta The Metaverse and How We'll Build It Together -- Connect 2021

▲出典:Meta The Metaverse and How We'll Build It Together -- Connect 2021

日本でも最近になってメタバース関連の本が数多く出版されたり、メタバースの関連団体が数多く設立されるなど、大きな話題を集めています。いまやバズワードのようになっている「メタバース」ですが、結局どういう意味なのでしょうか? やり方や始め方を含めて、わかりやすく解説します。

 

メタバースとは?

メタバースの定義についてはさまざまあり、確定したものはまだありません。この記事では、メタバースとは「インターネット上の仮想空間に作られた世界」と定義します。

メタバースは英語にすると「Metaverse」です。「Meta(ギリシャ語で”超越した”という意味)」と「Universe(宇宙)」を組み合わせた造語となります。アメリカのSF作家、ニール・スティーヴンスンの著書『スノウ・クラッシュ』で初めて使われました。この小説は1992年に発表されているので、20年前からメタバースという言葉自体はあったのです。メタバース市場は、2024年には90兆円規模になると予測され、さまざまな企業が参入しています。

メタバースの先駆け「Second Life(セカンドライフ)」

2003年にスタートしたSecond Life(セカンドライフ)は、2007年3月末には参加者が約500万人を超え、1日に仮想空間内で取引される金額は約180万ドルに達していました。*1

当時は通信速度が遅く、スマホも普及していなかったのでブームの継続とはなりませんでしたが、2022年の現在でも運営は継続されています。

メタバースで何ができる?

メタバースで何ができるのでしょうか。交流やビジネスなどで、できることが多いです。それぞれくわしく見ていきましょう。

アバターを通じて交流

アバターとは、仮想空間上で活動する自分の分身です。アバターを通じて交流をしたり、さまざまな体験ができます。アバターは自分の分身ですが、自分そっくりにする必要はありません。男性が女性のアバターを使っても女性が男性のアバターを使ってもいいですし、そもそも人間の姿である必要すらありません。自由な姿で交流できるので、多様性が大事とされる現代に合っています。

バーチャルオフィス

▲出典:Gather

▲出典:Gather

 

リモートワークが増え、メタバース上にバーチャルな仕事空間「バーチャルオフィス」を導入している企業も増えています。

「Gather(ギャザー)」というツールには、連日10万人がログインしてバーチャル会議などをしています。多くのメタバース関連ツールとは違い、ドット絵で親しみやすいのが特徴です。VR機器がなくても利用できます。オンライン会議ツールであるZoomやTeamsとの違いは、アバターで過ごせる点です。

オンライン会議ツールだと、カメラをオンにして自分自身の顔を見せるのがマナーのように思われがちです。しかし、アバターを使えばカメラをオンにする必要なく、気軽に同僚とコミュニケーションを取れます。

バーチャルイベント

バーチャルライブやバーチャル展示会などをメタバース上でおこなえます。アメリカのラッパー Lil Nas Xがおこなったバーチャルライブでは、3300万人もの観客を動員しました。

株式会社HIKKYが開催している世界最大のバーチャルイベント「バーチャルマーケット」には、毎回世界中から100万人以上が訪れるそうです。バーチャルマーケットでは、アバターなどの3Dデータ商品や洋服や飲食物などのリアル商品も売り買いできます。JR東日本、NTTドコモ、セブン&アイホールディングス、ソフトバンクなどの大手企業も出展しているイベントです。

じつは身近にあるメタバース

ここ1年くらいで急速に注目を集めているメタバースですが、以前からさまざまな形で私たちの生活の中に溶け込んでいます。代表的な例を一部ご紹介していきます。

ゲーム

メタバースと親和性の高いものがゲームです。代表例として『あつまれ どうぶつの森』や『Fortnite(フォートナイト)』があります。

あつまれ どうぶつの森

▲出典:Nintendo あつまれ どうぶつの森

▲出典:Nintendo あつまれ どうぶつの森

 

『あつまれ どうぶつの森』は、任天堂が販売しているNintendo Switchでプレイできるゲームです。ファンの間では「あつ森」という愛称で呼ばれており、人気は日本国内に留まりません。世界累計で3864万本の売上を記録しています。*2

『あつまれ どうぶつの森』では、無人島を舞台に自分の理想の島づくりを楽しめます。オンラインプレイでは最大8人でお互いの島を行き来したり、季節のイベントに参加したりできます。

Fortnite(フォートナイト)

『Fortnite(フォートナイト)』は、アメリカのEpic Gamesが販売しているオンラインゲームです。2017年にサービスが開始され、全世界に3億5千万人を超えるユーザーがいます。1つの島を舞台に、最大100人が集まって対戦できます。Fortnite(フォートナイト)の魅力はゲームだけではありません。バーチャル音楽イベントも魅力の1つです。

これまでにグラミー賞を受賞したアリアナ・グランデさんや、日本からは米津玄師さんや星野源さんといった人気アーティストもバーチャルライブをしています。

アニメ

アニメの中でもメタバースが描かれています。『ソードアート・オンライン(SAO)』や『サマーウォーズ』は、まさにメタバースを舞台に物語が進みます。

サマーウォーズ

▲出典:サマーウォーズ

▲出典:サマーウォーズ

 

『サマーウォーズ』は、2009年に公開されたアニメ映画です。世界中の人々が集まる仮想都市「OZ」を舞台に物語は進みます。

OZでは、プレイヤーの分身となるキャラ「アバター」を設定して、現実世界と変わらない生活を過ごせます。OZでは世界中の言語が瞬時に翻訳されるので、世界中の人々とコミュニケーションすることが可能です。2019年7月、「OZ on VRoid」がリリースされ、OZが現実のサービスとして楽しめるようになりました。

ソードアート・オンライン(SAO)

『ソードアート・オンライン(SAO)』は、川原礫さん原作のアニメです。アニメの放送開始は2012年に始まり、今年で10周年となります。「ナーヴギア」と呼ばれるVRマシンを装着しプレイできる、次世代型VRゲーム「ソードアート・オンライン」が舞台です(その後、いろいろなゲームが登場します)。

このアニメの中に登場するゲームは、五感のすべてを投影できるフルダイブ型。現実の世界でこの技術を実現するには、まだまだ時間はかかりそうですが、想像するだけでワクワクします。

映画

映画の中にもメタバースが登場しています。『マトリックス』や『アバター』といった作品が代表例ではないでしょうか。

マトリックス

『マトリックス』はアメリカのSF映画です。1999年~2003年に三部作として制作され、2021年には続編となる『マトリックス レザレクションズ』が公開されています。現実だと思っていた世界が、じつはマシンによって作られた仮想空間ということを知り、現実世界の人類を救うための救世主となる話です。

この映画のように、現実世界と仮想空間が融合してどちらがどちらか分からないような世界が訪れるのかもしれません。

アバター

『アバター』は2009年に公開された、アメリカのSF映画です。この映画の中での「アバター」は、人造生命体に人の神経をつないで操作できるようになっています。主人公は海兵隊時代に負傷して、下半身麻痺となっていますが、アバターの身体では自由に動き回れます。

2022年12月には13年ぶりの続編『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』が公開予定です。

医療

(Holoeyesを使った学習 )

(Holoeyesを使った学習 )

 

以前、さくマガでも取材をしたHoloeyes株式会社は、医療メタバースに挑戦しています。Holoeyesは、臨床医療や医療教育のためのソフトウェアを提供している会社です。人体本来の3次元情報をVRで再現し、シミュレーションが可能です。

ARゴーグルをかぶって、録画したデータを見ると、メタバース上で手術の動きと音声・メモが時系列で再生されます。手術をした医師の手の動きに、自分の手の動きを合わせてシャドウイングして、手術の動きを追体験できます。

メタバースのメリット

メタバースにはさまざまなメリットがあります。どのようなメリットがあるのかを見ていきましょう。

場所の制限がない

メタバースはインターネット上の仮想空間なので、世界のどこからでも参加できます。移動しなくても、世界中の人とコミュニケーションが可能です。普段会えないような方とも話せるチャンスがあります。

また、メタバース上のバーチャルオフィスで仕事をすれば、出勤不要です。通勤時間が削減され、そのぶん仕事に充てられる時間が増えるので生産性向上につながります。

非日常的な体験ができる

メタバース上ではアバターを介してさまざまな体験ができます。自宅からでも世界中を旅したり、アーティストの音楽イベントに参加できます。仮想世界でゲームの主人公となり、冒険を楽しむことも可能です。現実社会では体験できないことができるというのが、メタバースが人気となっている背景のひとつではないでしょうか。

メタバースのデメリット

メタバースには、まだまだ課題もあります。テクノロジーの進化や法改正によって、今後はこうした問題も解決するかもしれません。

物理的な接触はできない

現在の技術では、先ほど紹介した『ソードアート・オンライン』のように、五感のすべてを投影できるフルダイブ型は実現できていません。介護や看護といった物理的に相手に触れたりすることはメタバースでは、まだできないです。もしかしたら、今後テクノロジーが進化して可能になるかもしれませんが…。

法律の整備が追いついていない

メタバースは国を越えた空間のため、世界中の人々が集まります。各国で法規制が異なるので、何か問題が起きたときに、どの国の法律が適用されるかなど、確認が必要です。このほかにも、現行法では多くの課題を抱えています。

たとえば、経済産業省が発表した「仮想空間の今後の可能性と諸課題に関する調査分析事業の報告書」に次のような記載があります。

仮想オブジェクトの所有権や仮想空間内におけるキャラクターの経済的価値に関しては、現行法に課題がある。今後、仮想空間の活用が拡大した際には、対応が求められる可能性がある

今後は、国際基準を見据えたルールメイクが必要となるでしょう。

メタバースをビジネスで活用している企業事例

メタバースをビジネスに活用している海外企業と日本企業の事例を紹介します。さまざまな分野で新たな取り組みをおこなっているので、参考にしてください。

NIKE(ナイキ)

▲出典:NIKE NEWS ロブロックスにNIKELANDが誕生

▲出典:NIKE NEWS ロブロックスにNIKELANDが誕生

 

スポーツメーカー大手のNIKEは、ROBLOX(ロブロックス)上に「NIKELAND」を作りました。来訪者は670万人を超えています。プレイヤーは自分のアバターにNIKEのギアを着用させたり、ファン同士で交流も可能です。プロモーションやブランディング向上だけではなく、アバターが着用するギアの売上も見込めます。

ANA(全日本空輸)

航空事業を中心に展開するANAホールディングス株式会社は、2021年5月にANA NEO株式会社を設立しました。ANA NEOは、バーチャルトラベルプラットフォーム「SKY WHALE」の開発・運営を担います。

バーチャル空間における旅行やショッピングなどの消費体験を通じて、リアルを超える体験消費ニーズに応える目的があります。

スマホやタブレットなどの各種端末からアクセス可能な旅のプラットフォームとして、2022年のサービスローンチを予定しているそうです。

三越伊勢丹

▲出典:三越伊勢丹ホールディングス REV WORLDS

▲出典:三越伊勢丹ホールディングス REV WORLDS

 

株式会社三越伊勢丹ホールディングスが展開する仮想都市プラットフォーム「REV WORLDS(レヴ ワールズ)」。仮想新宿を舞台に仮想伊勢丹新宿店が営業しています。ユーザーはアバターの姿で、CG化した仮想新宿の街を楽しめます。仮想伊勢丹新宿店で買い物を楽しみ、実際の商品をオンラインストア経由で購入することも可能です。

「REV WORLDS」では、バーチャルイベントやバーチャル催事も実施しており、「東京ガールズコレクション」や「刃牙」などと、さまざまなコラボもおこなっています。

メタバースとブロックチェーンの関係

メタバースと併せて、ブロックチェーンやNFT(非代替性トークン)というキーワードが話題に上がることがあります。総務省によるとブロックチェーンとは、情報通信ネットワーク上にある端末同士を直接接続して、取引記録に暗号技術を使って分散的に処理・記録するデータベースの一種です。分散型台帳という仕組みで管理されており、一部のシステムが停止しても全体に与える影響を抑えられます。仮想通貨(暗号通貨)に使われている基盤技術です。*3

このブロックチェーン技術を活用してメタバースを作れば、安全性や利便性が向上すると期待されています。

NFTとメタバースの関係

NFTとは「Non Fungible Token」の略で、日本語に訳すと「代替不可能なもの」という意味。メタバース内の土地やアイテムといったものをNFTとして売買できれば、コピーできない代替不可能なものとして残ります。

ただし、ブロックチェーンもNFTもメタバースとは別物です。「親和性があって応用できるかもしれない」という関係性といえます。

メタバースのやり方・始め方

メタバースのやり方・始め方を知りたいという方も多いと思います。とはいえ、メタバースだと幅広いので、この記事ではコミュニケーションを目的としたメタバースのやり方・始め方をお伝えします。

Horizon Workrooms(ベータ版)

▲出典:Meta Quest Workroom

▲出典:Meta Quest Workroom

 

Horizon Workrooms(ホライゾン ワークルーム)はMeta(旧Facebook)社が提供しているビジネス会議向けのツールです。Meta Quest2(旧Oculus Quest 2)を使用して使えます。ツールの使用料金は無料です。テーブルを囲むメンバーの声はVR内の場所に合わせて自動で音量が調整されるため、まるでそこにいるかのような感覚でコミュニケーションに集中できます。

Workroomsアカウントを登録すれば始められます。

Meta Quest Workroomsを始める

cluster

「cluster」は、クラスター株式会社が提供しているメタバースプラットフォームです。Meta Quest2だけではなく、スマホやパソコンからでも使用できます。スマホで始められるので、気軽にメタバース体験が可能です。渋谷区公認の「バーチャル渋谷」もcluster上にあり、さまざまなイベントが開催されています。基本利用料は無料です。

準備は簡単で、アプリをダウンロードしてClusterのアカウントを作成すれば始められます。

clusterを始める

Mozilla Hubs

Mozilla Hubs

▲出典:Mozilla Hubs

 

「Mozilla Hubs」は、Mozilla社のMozilla Mixed Realityチームが製作したVRプラットフォームです。オープンソースでメタバースの機能一式を提供しているため、活用すれば独自のメタバース空間が作れます。

Mozilla Hubsは、ブラウザだけでアクセス可能のため、アプリのダウンロードやアカウント作成が不要です。URLを共有するだけのやり取りで、手軽にメタバースへ招待できます。

Mozilla Hubsを始める

メタバースに関する政府の動き

総務省は2022年8月1日に「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会(第1回)」を開催しました。会議を約7回開催し、2023年の夏頃に報告書を取りまとめる予定です。メタバースの利活用やWeb3の市場が拡大しつつあります。この研究会の目的は次の通りです。

  • メタバースなど仮想空間の利活用
  • 利用者利便の向上
  • 適正かつ円滑な提供
  • イノベーションの創出 など

ユーザの理解やデジタルインフラ環境などの観点から、さまざまなユースケースを念頭に置きつつ、情報通信行政に係る課題整理を目的としています。

まとめ

以上、メタバースについて解説をしてきました。

さくらインターネットでも、株式会社インフィニットループと合同で「メタバースチャレンジ2022」というインターンを開催しました。今後も成長を続けるメタバース分野に注目していきましょう。

 

※掲載されている会社名や商品・サービス名は、各社の商標・登録商標です。



参考:

経済産業省 仮想空間の今後の可能性と諸課題に関する調査分析事業の報告書

KDDI株式会社、東急株式会社、みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社、一般社団法人渋谷未来デザイン バーチャルシティガイドライン ver.1

総務省 Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会

武井 勇樹,2022『60分でわかる! メタバース 超入門』技術評論社

加藤直人,2022『メタバース さよならアトムの時代』集英社