メンバーシップ型雇用とは?意味や特徴、企業事例などを詳しく解説

メンバーシップ型雇用とは?意味や特徴、企業事例などを詳しく解説

(イラスト:ジョンソンともゆき)

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メンバーシップ型雇用とは、従来の日本企業で取り入れられていた総合職採用・年功序列制度・終身雇用の雇用システムです。また、メンバーシップ型雇用は新卒一括採用という特徴もあります。

この記事では、メンバーシップ型雇用の意味や特徴、メリットやデメリットから企業事例まで幅広く解説します。メンバーシップ型雇用とよく比較されるジョブ型雇用との違いも紹介しますので、雇用問題について関心のある方はぜひ参考にしてください。

メンバーシップ型雇用とは

メンバーシップ型雇用とは

 

2021年2月、日経新聞電子版にさくらインターネットに関する記事が掲載されました。

記事には「さくらインターネットは職務内容を限定しないメンバーシップ型の雇用を維持して、長く働きやすい環境整備を進める」と書いてあります。

メンバーシップ型雇用では、勤務地や業務を特定しないゼネラリストを長期的に育成することで、企業で長く働ける人材を確保します。

メンバーシップ型雇用が日本に根付いたのは、高度経済成長期でした。経済成長期において成長を続けていくためには、より多くの労働力を安定的に確保する必要があります。企業が一括で人材を採用し教育する日本型の雇用制度は、労働力を長期的に確保するためには最適な雇用形態でした。労働者は職能を身につけられるうえにその後の生活まで保障されるため、安心して定年まで働けたからです。加えて、労働組合が企業ごとに結成され、不当解雇などから労働者を守る体制が築かれました。メンバーシップ雇用は高度経済成長期を支えた雇用形態であり、労働者もこの働き方を受け入れていたのです。

メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用との違い

メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の違い

メンバーシップ型雇用が「人に仕事をつける」働き方であると言われるのに対し、ジョブ型雇用は「仕事に人をつける」働き方です。

ジョブ型雇用とは

ジョブ型雇用は欧米において主流の雇用形態で、最近は日本でも注目されています。ジョブ型雇用は、勤務地や業務内容が限定的で、専門性をもったスペシャリストを雇用する特徴があります。

ジョブ型雇用についてはこちらの「ジョブ型雇用とは?意味や企業事例、メリット・デメリットなどを紹介」でくわしく解説しています。

 

ジョブ型雇用は職務記述書(ジョブディスクリプション)を作成し、職務の内容や範囲を明確に決めたうえで採用する考え方です。重視されるのは、その人が有しているスキルであり、専門性と実力が評価されます。

またジョブ型雇用ではスキルや成果に応じて給与が変わり、社員教育も企業が進んでおこなうことは少なく、自主的なスキルアップが求められます。

ジョブ型雇用では、終身雇用や年功序列によって生活が保証されることはありません。そのため、労働力の流動性は高くなるのです。国にもよって違いはありますが、転職や解雇はメンバーシップ型雇用に比べて起こりやすくなります。

このような特徴をもつジョブ型雇用は、労働者の自主性とマネジメント能力を前提とする雇用形態であると言えます。メンバーシップ型雇用が企業に「入社」するイメージであるのに対して、ジョブ型雇用は仕事をするために企業に「就職」するイメージがふさわしいと言えるでしょう。

メンバーシップ型雇用の企業事例

メンバーシップ型雇用は、日本の高度経済成長期には多くの企業が採用していました。その代表的な企業として、トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)が挙げられます。

高度経済成長期より、トヨタは昇級方式の採用や見習社員制度の実施、従業員への新車斡旋、定年退職者の海外旅行制度の実施など、就職から定年後まで働き続けることがメリットとなる制度を導入し続けてきました。

また、会社と労働組合との間で労使宣言を調印し、社員と企業との相互的な信頼を築き上げて来ました。これらの施策は、一人ひとりの社員を大切にすることで企業を成長させる、典型的なメンバーシップ型雇用であると言えます。

メンバーシップ型雇用(終身雇用)を守るのが難しくなった?

しかし2019年、トヨタの豊田章男社長によって「雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」という発言がなされたことから、雇用形態の見直しがトヨタ、ひいては日本の企業全体の問題であると認識されはじめました。

(参考:日経ビジネス「終身雇用難しい」トヨタ社長発言でパンドラの箱開くか

 

このような問題意識から、メンバーシップ型雇用を活かしつつジョブ型雇用を取り入れる企業が増えてきました。たとえば味の素株式会社では、管理職以上の社員には職能を明確にするジョブ型雇用を取り入れつつ、一般社員に対しては職務の明確ではないメンバーシップ型を採用しています。

一方でジョブ型雇用への移行を積極的におこなう企業もあり、富士通では幹部社員に対して7段階の格付け制度を導入し、一般社員に向けても次第に従来のメンバーシップ型からジョブ型へ移行する方針を打ち出しました。

冒頭に紹介したように、さくらインターネットでは専門的な知識やスキルだけでなく、職場内での連携を重視したメンバーシップ型雇用を取り入れています。またリモートワーク前提の働き方を導入しており、働く場所にとらわれないことも特徴です。

メンバーシップ型雇用の現状とこれから

サントリーの新浪社長が「45歳定年制」を提言して、大きな反響がありました。企業としては、定年を引き下げて終身雇用をしたくないのかもしれません。しかし、働く従業員の立場から考えると、メンバーシップ型雇用(終身雇用)には大きなメリットがあります。

メンバーシップ型雇用のメリット

メンバーシップ型雇用における社員側のメリットとしてまず挙げられるのは、雇用の安定性です。終身雇用、年功序列の制度によって社員は安定してひとつの企業で働き続けられます。

また、社員教育を企業が担うため、スキルのない新卒社員も安心して教育を受けて働けます。加えて、ゼネラリストを育成するメンバーシップ型雇用では、ジョブローテーションをすることで、企業が必要とするスキルを満遍なく身につけることが可能です。

 

ジョブローテーションは社員が新鮮な気持ちで働くことを可能にし、新たな可能性に気がつく可能性も秘めています。また仕事に対するやりがいを継続的に与えることにもつながるでしょう。

企業側のメリットとしては、社員が会社への帰属意識を高めるため、離職率の低減に寄与し、愛社精神を持った社員の育成を可能にしてくれます。とりわけ会社の都合を理解し、さまざまな仕事を柔軟にこなすゼネラリストを育成することができます。

 

また経営方針の転換や欠員補充など、企業の都合に合わせてジョブローテーションが可能であるため、状況に応じた柔軟な対応を取ることができるのです。

メンバーシップ型雇用では社員と企業が定年まで付き合うことを前提とします。そのため信頼関係や仲間意識は自ずと強まり、これらを活かした組織運営が可能であることこそ最大のメリットだと言えるでしょう。

メンバーシップ型雇用のデメリット

メンバーシップ型雇用における社員側のデメリットとしては、異動や転勤の可能性があることです。

ジョブ型雇用の場合は職務記述書(ジョブディスクリプション)にもとづいた職務をおこないますが、メンバーシップ型雇用の場合はそうとは限りません。部署異動で未経験の職務をおこなう可能性もあります。また転勤の可能性もあるでしょう。

 

企業側のデメリットとして、育成に時間がかかることが挙げられます。メリットの裏返しにもなりますが、ジョブローテーションをおこなうことで社員にいろいろな仕事を経験してもらい、ゼネラリストとして育成をしていきます。

期間をかけて育成をしていくので、途中で社員が退職をしてしまうと、それまでの育成にかけた時間やコストが無駄になってしまう可能性があります。

海外と日本の働き方の違い

外と日本の働き方の違い
 

日本のメンバーシップ型雇用に対して、欧米ではジョブ型雇用が一般的です。一例として、アメリカ合衆国において一般的な雇用理念に「任意にもとづく雇用(Employment at-will)」というものがあります。

これは雇用主と従業員が自由な意志によって雇用関係にあり、いついかなる理由であっても自由に雇用契約を破棄できるものだという考えです。

そのため、雇用主は特別な理由がなく解雇できるし、従業員もいつでも退職できます。もしも不当に雇用契約を破棄されたと従業員が考える場合は、提訴するなどの行動を自由にできます。ここでは雇用主と従業員は対等な関係です。

 

「任意にもとづく雇用」はジョブ型雇用の根拠となる理念であり、定年までひとつの企業で勤め続けることを前提としていません。新卒一括採用などの習慣はなく、個人は自分のスキルが活きる職場を見つけ、従業員として会社に入ります。

また、アメリカでは日本の労働基準法のような雇用関係を守る統一的な法律はありません。代わりに、公正労働基準法という残業代や最低賃金など給料に関する法律が重要視されています。加えて、雇用機会均等法によって人種などによる差別が禁止されており、これらの法律が不当な解雇など雇用関係にまつわる裁判において重要視されます。

メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の良いところを組み合わせる

終身雇用、年功序列とあわせて語られるメンバーシップ型雇用は、時代遅れだとしばしば批判の的になる雇用形態です。

たしかに課題のある雇用形態ですが、雇用を安定させたり社員の帰属意識を高めるなどの大切なメリットもあります。これらの優れた点を活かしつつ、新たな雇用形態を模索することこそが企業に求められているのです。今後はメンバーシップ型雇用とジョブ型雇用、両方の良いところを組み合わせることが大事になってくるのではないでしょうか。

メンバーシップ型雇用 まとめ

  • メンバーシップ型雇用とは、従来の日本企業で取り入れられていた総合職採用・年功序列制度・終身雇用・新卒一括採用の雇用システム
  • メンバーシップ型雇用が日本に根付いたのは、高度経済成長期
  • ジョブ型雇用は、勤務地や業務内容が限定的な専門性のあるスペシャリストを雇用する特徴がある
  • メンバーシップ型雇用における社員側のメリットは雇用の安定性
  • メンバーシップ型雇用における企業側のメリットは離職率の低減、ゼネラリストの育成
  • メンバーシップ型雇用における社員側のデメリットは、異動や転勤の可能性があること
  • メンバーシップ型雇用における企業側のデメリットは、生産性が上がりにくいこと

 

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