2021年6月、さくらインターネットは、「ホワイト企業アワード2021上半期」で”福利厚生部門”を受賞しました。2020年にも”ワーク・ライフバランス部門”を受賞しており、二度目の受賞となります。
ホワイト企業アワードとは、ホワイト企業認定を受けた企業の中で、世の中に共有すべき制度や取り組みを表彰・発信するイベントです。一般財団法人日本次世代企業普及機構が主催しています。
今回はホワイト企業アワードの授与式に登壇した、人事労務を担当する川村 貴宏にインタビューしました。
川村 貴宏(かわむら たかひろ)
さくらインターネット株式会社 ES本部 ES部 人事労務グループ マネージャー。メーカーの採用・労務を担当した後、2014年にさくらインターネット株式会社入社。労務全般に携わる。同社の働き方制度「さぶりこ」起案者のひとり。
そもそも「ホワイト企業」とは?
ーー今回、「ホワイト企業アワード2021上半期」で”福利厚生部門”を受賞しましたが、川村さんが考える「ホワイト企業」とは、どのような企業でしょうか?
社員が余計な心配をすることなく、自分のスキルや能力を発揮できる会社だと考えています。私が所属する部署は「ES本部」という名称なのですが、これはEmployee Success(エンプロイーサクセス)からきています。まさに社員が成功している状態を作れている会社が「ホワイト企業」といえるのではないでしょうか。
ーー「人事部」ではなく「ES部」という名称からも、取り組みへの意識が感じられますね。コロナ禍で迅速にリモートワーク前提の働き方へシフトしたことが受賞につながりました。リモートワーク前提の働き方について、どのようなことを意識して進めたのでしょうか。
社員が安心して働けるように意識しました。全社リモートワーク前提にすることは、トップダウンで決まったんです。普段、トップダウンで決まることはほとんどありませんが、コロナ禍は緊急事態でしたから。
社員にとっては急なリモートワークで困ることもあるでしょうから、リモートワークの環境を支援するため、手当や制度などの実務的な部分を支えました。
働き方が大きく変わる中で、社員がどのようなことに困っているか、つらい気持ちになっていないかを知るために、週に一回、パルスサーベイの取り組みもおこないました。会社全体を見たときに、必要な制度や施策があると思ったら積極的に提案しています。
リモートワークの課題
ーー社員として、迅速な対応に感謝しています。リモートワーク前提の働き方を進めるうえで、どのような課題がありましたか?
リモートワーク前提以降に新しく入社する方とのコミュニケーションです。疎外感を抱かないようにしたいと考えています。
すでにコミュニケーション活性化の施策として、「作業しながら楽しめる社内報」がコンセプトの社内報ラジオ「さくらじ」が社内で実施されていますが、いまは「社員のオンボーディング」に力を入れて取り組んでいるところです。入社後、ある程度時間が経ったタイミングで、横のつながりが作れるようにしています。あとは福利厚生の観点で、社員同士が業務外でつながりを作れるような施策を検討しています。
ーー施策楽しみにしています。リモートワーク前提の働き方を進めるうえで、人事の立場で一番大変だったことはなんでしょうか?
これもコミュニケーションですね。業務以外でコミュニケーションを取る機会が、どうしても減りました。出社しているときでしたら、自然に雑談できますし、顔色などで体調の良し悪しもわかります。最近入社された方だと、直接会ったことがないので、どんな人かがわからないんですよね。コミュニケーションも、業務上の必要に迫られたものだけになってしまいます。
タスクをこなす業務であれば今の制度や働き方でも全然問題ありませんが、業務外のコミュニケーションを取る場は、今後さらに作っていかなければと思っています。
「当たり前」を見直す
ーー確かに、新しく入った方とは業務以外でも話してみたいですね。リモートワーク前提の働き方になってから1年以上経ちますが、実践してみていかがですか。
いままでは毎日会社に行くのが当たり前でしたが、その「当たり前」を見直したことが一番大きいと思います。会社に行きたければ行ってもいいですが、みんなが行ってるから会社に行くのが当たり前、という考え方はやめました。
一人ひとりが自分の働きやすい場所で働ける。そんな働き方にシフトしています。2021年5月の出社率が7.1%なので、92.9%の方がリモートワークされています。
ーー先月、東京支社に出社したところ、数人しか出社していなかったので驚きました。リモートワーク前提の働き方になり、フリーアドレス制を導入して、東京支社も4フロアから2フロアに適正化しました。大変だったことはなんでしょうか?
東京支社の再構築については、総務部主導で進めていただきました。
【オフィス再構築について、総務部にお話しを聞いた記事】
バックオフィスのお仕事。「リモートワーク前提」や「オフィス再構築」について聞く
ES部としては、法律や事務手続きの絡みで、書類が多かったんです。なので、フリーアドレス制になって個人の机や袖机がなくなって、一時的な戸惑いはありました。
でも、少しずつ社会が変わってきていると感じています。これまで保険や年金の手続きは、紙にはんこを押して出す必要がありました。決められたルールでしたので、社内の工夫だけでどうにかなるものではありません。でも、電子申請できるようになったり、はんこが要らなくなったりしてきています。
とはいえ、まだ紙でやる必要があるものは多いですが……。
あと大変なのは「電話」です。たとえば住宅ローンを組むときに、在籍確認の連絡を会社にすることがあります。リモートワークだと、会社に電話がかかってきても取れないですよね。
この対策として、受電専用の電話番号を用意しました。その番号に電話がかかってくると、24時間留守番電話で対応されます。録音された内容が、Slackに通知される仕組みづくりをしました。外部のクラウドサービスを活用しています。
ーークラウドサービスを活用することで、うまく仕組みづくりをしているんですね。
そうです。勤怠システムも、リモートワーク前提の働き方がはじまったくらいの時期に切り替えました。以前のシステムでは、ベンダーがシステム導入から保守までしてくれていたのですが、設定変更をしたいときにはベンダーのエンジニアを呼ぶ必要がありました。
いまの勤怠システムは、クラウドサービスを活用しているので、その必要がありません。自分たちで設定ができるので、リアルタイムで反映できます。
リモートワークで意思決定が迅速に
ーーリモートワーク前提の働き方に変わったことで、具体的にどのような良い効果が出ているでしょうか?
意思決定が迅速になりました。リモートワーク前だと、会議室が空いていないせいで会議ができず、意思決定が遅れることもありました。オンライン会議なら、会議室を予約する必要がないので、時間さえ空いていればすぐにできます。
私個人としては、通勤時間がなくなったのは大きいです。私の場合、通勤に1時間以上かかるので、浮いた時間でいろいろなことができます。メリハリのある働き方が実践できるようになりました。
ーー会議室問題はありましたね。以前から「さぶりこ」※もあり、働き方改革に力を入れていますが、今後考えている取り組みを教えてください。
※会社に縛られず広いキャリアを形成しながら、プライベートも充実させ、その両方で得た知識や経験をもって共創へつなげることを目指し、2016年10月に策定したさくらインターネットの社内制度。
さくらインターネットは、どのような人に、どのような働き方でキャリアを歩んでいってもらいたいのか。社員に対してどのような考え方をしている会社なのか。これを明文化したいと思っています。
単に働き方や制度だけではなく、その根本にあるものを伝えていきたいです。
たとえば社員は正社員で雇用して、中長期的に活躍してもらいたいと思っています。あらためて、会社全体ですり合わせして展開したいと考えています。
「ジョブ型」というよりは「メンバーシップ型」なんですけど、メンバーシップ型にもいろいろな捉え方があるので、このふたつにわけられるものではありません。
なんとなく世の中的には「ジョブ型雇用が正義」という風潮がありますが、さくらインターネットはジョブ型雇用とは違います。とはいえメンバーシップ型雇用のように年功序列でもありません。
社員が中長期的にサクセスできる働き方を考えていきたいと思っています。
「働きやすさ」を提供して「働きがい」を感じてもらう
ーー「さぶりこ」がはじまってから、もうすぐで5年が経ちます。期待していた効果は出ていますか?
出ていると思います。実際にGPTW※の「働きやすさ」項目で、高いポイントを得ています。
※「働きがい」に関する調査・分析をおこなう専門機関
さぶりこ導入の目的は「働きやすさ」を提供して、「働きがい」を感じてもらうためです。さぶりこ導入前は働き方に柔軟性がなくて、働きやすい会社でも、働きがいのある会社でもありませんでした。
さぶりこがあるから、入社してくれる方も増えてきています。働きやすさについては、だいぶ整ってきました。働きがいについては、まだ道半ばなので、引き続き取り組みを進めていきたいと考えています。
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