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「キャリアのために死ななくていい」就職活動支援をしている私が就活生に伝えたい言葉

「キャリアのために死ななくていい」就活支援をしている私が就活生に伝えたい言葉

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 こんにちは、トイアンナです。私はリーマン・ショック期に就活をしていたなごりから、人様の就活支援を始めました。

気づけば10年近く就活生を支援する、謎のオバちゃんになっていました。近年はエントリーシートを年に400通くらい読み、100人くらいの相談に乗っています。

 ただ、転職活動や就職活動をしていると、正社員以外の人生があまり見えなくなります。そりゃそうで、高学歴で何十通もエントリーシートを書きながら「俺は・私は正社員を目指さないぞ!!」と思っていたら、なかなか変わった人だなあ、という扱いは受けるでしょう。

ただし、その思想は人を殺しうる、という話をしたいと思っています。

まじめで優しく、慕われる彼女は「就活生」になった

 過去に、知っている就活生が死んでしまったことがあります。当時はまだリーマン・ショックの余波が残っており、いい大学を出ていても、無い内定となる学生がちらほらいました。

彼女はとても人当たりのいい女性でした。都内で名が知られた女子大に在籍しており、学習塾で長年アルバイトをしていました。業務時間を超えて生徒の相談に乗っていることから、生徒や親御さんからも人気のある先生でした。

 さらに彼女は勉強熱心で、必修単位と呼ばれる大学で絶対に取らねばならない授業だけでなく、追加でさまざまな分野の科目を履修していました。先生からも真面目な生徒として知られていました。

ですが、これらの経験は、彼女の就活を助けてくれませんでした。

就活で求められるエピソードと、実体験のギャップ

 就活では、鉄板で求められるエピソードの条件が決まっています。それは「チームの中で、自発的に動き、数字であらわせるような成果を出した」経験。

たとえば、どんなに努力していても、ひたすら家でモネの絵を模写していた文系学生は、就活で評価されにくくなります。なぜなら、モネの絵がうまいことと、会社で活躍できるかどうかには、関連性があまり見られないからです。美大のデザイナー採用なら話は別ですが、一般的な学生の「努力」としては、あまり評価されない部類となります。

 彼女の場合は塾講師が「チームの中で、自発的に動き、数字であらわせるような成果」になりそうなものですが、彼女は個別指導で、しかも勉強が苦手な学生から苦手意識を取り除くため、成績アップは一切期待しない指導をしていたようです。

それでも、就活指導であれば「成績が落ち込んでいた学生の出席率を●%上げました」といった数字を出すことはできます。ただ、私は彼女を指導する立場ではなかったし、彼女もそういうものを私に求めてはいなかった……と、私は思い込んでいました。

無い内定から、塾へそのまま就職

無い内定から、塾へそのまま就職

 とにかく、私は彼女を支援しませんでした。支援したから命を救えたなんていう、おこがましい驕りはありません。ただ、事実として私は彼女を助けませんでした。

彼女は50社以上落ちて、落ちて、落ち続けました。そのとき、彼女のエントリーシートを見せてもらった記憶があります。誠実さは伝わってくるけれど、他の学生との差別化があんまりできていないかもなあ……と思ったことは、覚えています。

 ただ、彼女は圧倒的に「いい人」だったので、彼女がそのまま就活で苦戦するとは思っていませんでした。当時の私は「そのまま頑張れば、きっと内定するよ」と、無責任な言葉を投げてしまいました。そのことを思い出しては、後悔しています。

彼女は内定が出ず悩み、結局そのままアルバイト先だった塾へ就職しました。塾が就職先として誤っていたというつもりはありません。ただ、彼女にとっては妥協して得た職でした。

人気絶頂の塾講師から、死を選ぶまで

 とはいえ、彼女は人気の先生でありつづけました。なにしろ、彼女より熱心な先生なんていなかったからです。生徒のために泣き、笑える先生はそういません。彼女はそういう先生でした。私が生徒だったら、彼女に教わりたかった。

彼女が死んだのは、就職して3か月目でした。彼女の「自主的な」残業時間は、月150時間を超えていました。

 誰もが……友達すら、彼女の労働時間を知っていましたが、あまりにも喜んで働く彼女を、誰も止めようなんて思っていませんでした。いま思えば、アルバイト時代と違って進路実績のプレッシャーがきつかったのだろうとか、もともと体も強くなかったからしんどかったでしょうとか……。

思うことはたくさん、あります。もう彼女がいないのに、思うことはやめられません。

就活をしない人生もあるし、人生は思ったより甘い

 その中でも一番考えるのが「もし、いま彼女を後輩として就活支援できたら」という想像です。たぶん、エントリーシートを見るし、模擬面接もするでしょう。

でも、それより先に「就職しなくても、人生食べていけるから」という話をすべきだったんじゃないか、と思うのです。正社員にならなくてはいけない、大企業じゃないと……。そりゃあ、大企業に内定できたらラッキーだけれども。

 だけど、人の大半は大企業で正社員をやっていないし、途中で私みたいに辞めちゃったりもするし。でも、食べていけています。

当時の私は、大企業を信仰していました。いや、今でも好きです。家賃補助に甘えたいし、MBAをタダで取らせてほしい。でも、そうじゃない人生も案外悪くないし、居心地のいい中小企業ってたくさんあるし。

そんな「例外」について、もっと触れていかなくちゃ。そうしないと、大手企業の無い内定が人を殺してしまう。しかも優しくて賢いひとが、死んでしまう。

キャリアのために、死ななくていいよ

キャリアのために、死ななくていいよ

 就活とか、転職というのは、あくまで人生を上向きにするオプションだと思っています。そりゃあ、できたらいいけど、しなくてもいい。キャリアのために死ななくていい。

それが分かっているはずでも、いざ就活や転職の渦中に放り込まれると、できなくなってしまう。「残念ながら今回はご希望に沿いかねる結果と……」という文言に、人格否定を感じてしまう。

だから、何度でも繰り返し伝えていきます。就職のために、キャリアのために死ななくても食べていけます。人生は舐めたら、けっこう甘いもんです。

 「毎年無い内定の人が、どんだけ日本にいると思ってるんだ。それでもみんな、それなりに働いてるよ」

 と、就活産業にいる人間こそ、意図的に叫んでいかなきゃいけない。私を動かす原動力のひとつには、こんな思いがあります。

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執筆

トイアンナ

ライター。外資系企業に勤めてのち、独立。恋愛とキャリアを中心に執筆しており、書籍に『モテたいわけではないのだが』『確実内定』『やっぱり結婚しなきゃ!と思ったら読む本』など。

編集

川崎 博則

1986年生まれ。2019年4月に中途でさくらインターネット株式会社に入社。さくマガ立ち上げメンバー。さくマガ編集長を務める。WEBマーケティングの仕事に10年以上たずさわっている。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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