みなさま、2020年幕が開けましたね。今年もどうぞよろしくお願いします。
かもめんたるの岩崎う大です。僕は、お笑い芸人、役者、演出家、脚本家、漫画家などの肩書があることからパラレルワーカーとしてこちらで連載をさせていただいている次第です。
実は、この文章を書いてる今現在は2020年の1月15日で、まだどこかお正月気分が漂う中におりまして、昨日の夜「ああ、そういえば次のさくマガの連載の締め切り、いつだっけかなぁ」と担当者様とのやり取りメールを見返したところ「次回締め切りは1月55日でお願いします。」となっており、「あ、やべえ」となったところでした。
しかし、僕もただ遊んでいたわけではないんです。昨日の夕方は、とあるミニドラマの脚本を書いておりまして、その締め切りが1月6日でして…つまり締め切り間近のドラマの脚本を書いているところに、実はその前に締め切りの仕事があったと発覚したわけです。
締め切り仕事をすっかり忘れて
「あ、やべえ」ってなりますよね? でも、まあ、こんなことはしょっちゅうあると言えばあるんです。突然、急ぎの仕事が舞い込んだり。
先日はある締め切り仕事をすっかり忘れてて、自転車に乗っている時に、電話がかかってきて「明日の締め切りのやつ大丈夫そうですか?」と聞かれ、心の中では「あ、やべえ! あれまだ時間あると思ってた…明日締め切り??」とパニックになりながら、「はいはい、今やってるんですけど…ちなみに明日夜でも大丈夫ですか? 送るの。最悪、明後日の朝には…朝、大丈夫??OK! 了解です!」と嘘まみれの返答をしてしまいました。
で、昨日の話に戻るんですが、僕はとりあえず昨日は終日ドラマの脚本に集中して、今日をこの「さくマガ」に捧げて、それが終わり次第またドラマの脚本に戻ればいいんだ! と計画しました。そうしたところ何が起きたと思います? もうこれは自慢話ですよ。
なんと昨日のうちにドラマの脚本終わったんですね! ありがとうございます! 本来、最低でももう一日はかかるであろうと思われてた脚本がなんとか深夜には終わったんですねえ。
何を読まされてるんだと思ってますか? もう少しお付き合いいただけたらうれしいです。今日は「締め切り」というモノについて考えていきたいと思います。何かを生み出し、完成させる仕事に従事する人間にとって「締め切り」とは切っても切れない縁にあると言えます。
締め切りは恐ろしくない
締め切り…この言葉に恐ろしいという印象を持っている人は多いと思います。よく漫画とかで「締め切り」=「恐ろしいモノ」という描かれ方をしているからでしょうか。確かに同時に何本もの仕事を掛け持ちする売れっ子作家さんにとっては締め切りって恐ろしいモノなのかもしれません。
でも、一本の仕事に限った場合、締め切りというモノのイメージは変わってきます。僕にとっては「締め切り」は友達です。ええ、友達です。この「締め切り」、いや親しみを込めて「締め切り君」、もしくは「締め切りちゃん」と呼んでいきましょう。みなさんにも是非彼らとお友達になっていただきたいのです。
例えば、僕の仕事の場合、コンビの新しいコントを収録日までに作らないとけないとします。この時、テーマ「学校」というお題が与えられていたとします。まずシチュエーションを絞りますよね。
例えば「冷めた先生と熱血生徒」「モンスターペアレントとモンスターペアレントにスピリチュアル的アプローチで接する先生」「ガリ勉とヤンキーだけど好きなアイドルが一緒」とか色んなシチュエーションが出てきます。もっと考えればもっと良いシチュエーションが生まれるんじゃないか? 当然の感覚ですよね。
でも、ここにばかり時間をかけてる場合ではないのです。「締め切り君」がいますから。コントはお客さんの前で完成したものを披露するのがゴールです。「こんなに沢山シチュエーションを考えてから、その中で一番良いこのシチュエーションを選んだんですよ!」というストーリーには誰も興味もないし、っていうか知るよしもありません。
いくら時間を掛けて最高のシチュエーションを思いついても、その後の台本にする時間が足りなかったり、稽古する時間がなければ、意味はないのです。
「締め切り君」と良いお友達でいられたら、逆算して、「この時間までにはシチュエーションを決めて、台本作業に取りかからなくては!」と計画していくことができるはずです。
そして台本作業に関しても、稽古時間を確保した作業終了時間を決めなくてはいけません。
締め切りの前に小さい締め切りが
つまり大体の場合、最終的な「締め切り君」の前に小さい「締め切り君」が何人かいるんです。かわいいですねえ。ありがたい限りです。限られた時間の中で最良の選択をしていくんです。ここがミソです。
自分の最良となると「本当にこれが俺のベストか?」となかなか決めあぐねますよね? でも「締め切り君」の中での最良ですから、答えは自然と決まってきます。
「締め切り君」はいつだって平等にやってきます。調子の良いときも悪いときも、アイデアが一杯あるときも、一つしかないときも、それはとてもありがたいことです。そうして我々に答えをくれます。「もうそれでいい」と。
また、「締め切り君」に肩を叩かれるような切羽詰まった状況というのは、できれば避けたい状況です。「お兄さん時間ですよ」と「締め切り君」に言わせたくないじゃないですか。一番理想の関係としては、こちらから連絡して「あ、「締め切り君」?今回もう先に行ってるから大丈夫だよ~」と言えるぐらいがいいですよね。
そして、約束した締め切りとは別に自分の中の締め切りを持つことが、パラレルワーカー、フリーで働く人間には重要だと思います。その時間の区切り方により自分の価値が決まるからです。10万円の仕事に、三日かける人間なのか、それとも半日で終わらせる人間なのか、自分次第ですから。
締め切りは絶対に守る
ちなみに僕は締め切りは絶対に守るようにしています。というのは締め切りが守れたかどうかって明白だからです。自分の作品のクオリティーがいかに高くても、その評価って受け手によって様々ですから、僕のしてる仕事は「好み」「流行」とかに左右されて数値化するのが難しいジャンルのものです。
二人の人間がいて「どちらがイケメンか?」の審議って難しいことがありますが、「どちらが長身か?」っていう問いには測れば答えが出ます。同じように締め切りを守るか守らないか、仕事が早いか遅いかってっていうのは非常に明確ですから、そこを頑張らない手はないのです。
少々話は変わりますが、「守らなきゃいけないなぁ」と思わせられる締め切りのお願いのされ方があります。当然のことかも知れませんが、「締め切り日は、これこれこういう理由でこの日にお願いしたいです。その日を過ぎちゃうと、これこれこういう支障が出てきちゃうんで」と説明してもらえると、守らなきゃと思います。
それと、これはもうあるあるだと思うんですが、締め切りより早く仕事が上がっても、それ以前に出すと、「締め切りまでに時間あるのに、誤字脱字も直さずに送ってきたよ。締め切りまで時間あるんだから見直してから送って来いよ」と思われそうで、一旦寝かす、ということがあります。(これを書くのにとても勇気がいりました)
人情として、全く同じモノが締め切り日当日に送られてきたら、受け取り側は「おお! なんとか間に合わせてくれた!」とプラスの評価で見てくれそうなんですが、締め切り日より早く送ると「え? 早くね? ちゃんとやったの?」って思われそうな気がするんです。 締め切り仕事を依頼する側の人には是非この辺のことを教えていただきたいです。