プロからプロフェッショナルになるには。かもめんたる岩崎う大

かもめんたるの岩崎う大です。自己紹介をしますと僕はコントを中心としたお笑い芸人である傍ら役者であり、劇団の演出家でもあり、脚本家であり漫画家です。

 

先日のコラムではパラレルワーカーという働き方は結局は「自分」という者のプロフェッショナルになるための過程なのではないかという締めくくりをして、多くの読者の心を掴みました。気持ち良かったです。

 

【前回の記事】

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ところで自分で使っておいてなんですが、「プロフェッショナル」という言葉はとても曖昧なものですね。何事かをしてお金をもらえればそれはその道のプロなのでしょうが、プロフェッショナルと呼べるかは疑問です。

 

プロフェッショナルという言葉にはプロ中のプロという印象があります。できればプロフェッショナルになりたいものです。異論はないでしょう。  

そこで今回は「プロからプロフェッショナルになる」ということについて考えていきたいと思います。  

プロフェッショナルとは?

プロフェッショナルになるには?

プロフェッショナルになるには、まず「プロ」としてのスタートを切るのが必要です。 僕は、「プロ」になるというのは凄く乱暴な言い方をすると「面の皮を厚くすること」だと思います。  

高校生の頃からお笑い志望だった僕ですが、実際に人前でコントを披露したのは大学に入ってからでした。初めて自分の作ったコントを人前でやったのは、早稲田大学の第一キャンパスに当時あったサークルのラウンジのプレハブ小屋の横のスペースで、お笑いサークルの先輩にネタを見てもらった時でした。

 

そう、お笑い芸人のスタートはまずお客さんでない人にネタを見せる所から始まるんです。「ネタ見せ」というやつです。一般社会でいう研修みたいなものでしょうか。  

初めてのネタ見せ。これに良い思い出のある芸人はなかなかいないのではないでしょうか?僕も、あの時のことは今でも覚えています。おもしろいかどうかも知らない先輩にネタを見てもらいました。当時の感覚としては「見させられた」という感覚でした。おもしろいと思って作ったコントを知らない人間に真顔で見られるというのは、味わったことのない苦しい時間でした。  

 

先輩が吐き出すタバコの煙とともに僕に放ったダメ出しの言葉は「声が小さい」の一言でした。

声が小さいという先輩


その時、僕が何より痛感したのは「お笑いって本当に凄い世界だな」という現実でした。自分が考えた作品を「おもしろいですよ!」と言って、他人からお金をもらおうとしてるわけですから、恐ろしい行動ですよね。

声が小さく、おもしろいか?おもしろくないか?の土俵にすら上がれていなかった僕は、「お笑い芸人としての面の皮」を全く持てていなかったわけです。  

プロフェッショナルになれるかの戦い

極端な例を挙げますが、数年前に、地元の友達の結婚式でネタをやったことがありました。かもめんたるのコントの前に、同級生が余興をやったのですが、出番前の旧友たちの緊張ぶりには軽くショックを受けました。元ヤンのような連中が出番前に泡を吹きそうなぐらい緊張していたのです。

芸人の僕は「いや、結婚式でのネタなんて軽くスベって当たり前だろ?」と思って全く緊張していませんでした。果たしてこれをプロと言えるかは審議の対象となってしまいそうですが、プロってこんなもんなんだと思います。 

 

ですが、今回のテーマである「プロからプロフェッショナル」になるのは本当に厳しい道程だと思います。 僕はコントはキングオブコント2013で優勝していますので、コントのプロフェッショナルだとさせてください。お願いします。そうしないとここから話が進められないので。  

かもめんたるを組んだ頃には、芸歴としては10年弱ぐらいだったと思います。この頃にはライブ芸人としての面の皮は充分厚くなっていたので、そこからいかにプロフェッショナルになれるかの戦いが始まるわけですが、奇しくも我々がかもめんたるを組んだ頃にキングオブコントという大会が始まりました。かもめんたるが優勝することになるのは第六回のキングオブコントです。  

 

かもめんたるを組んだ当初ライブでも良くスベっていました。というのも、僕は自分でも嫌になるほどオリジナル志向が強く、お笑いのトレンドに乗ったウケ易いネタを作るのが嫌いでした。一緒にライブで爆笑を取ってる芸人のネタを見ては「そりゃそういうネタやってりゃウケるだろ」と、「お前もそうしろ!」とツッコまれるようなことを常に思っていました。  

 

音楽などでもそうだと思うのですが、やはり知らないバンドの拙い思想強めのオリジナル曲より、コピー曲の方がお客さんは盛り上がります。  

かもめんたるが当時やっていたコント

でも、僕はそういうコントをやるのをプライドが許さず、かもめんたるは気味の悪いネタばかりをやっていました。

当時の僕は、「この冬の時代はかもめんたるというコンビの布教とウケるためのリサーチの時期」だと考えていました。

 

オリジナル思考の強い僕でしたが、スベるというのは生理的に無理で、少しでもお客さんとかもめんたるの中にある共通項を探しながらネタを作っていました。そういう活動をしていることで、段々とライブでのウケも良くなっていきました。

やがて、かもめんたるでライブに出始めたときには笑いの量でかなわなかったコンビにも負けないようになっていきました。 

キングオブコント優勝までにしたこと 

キングオブコントでは、初年度は二回戦で敗退、この時は圧倒的な認知度の低さを感じ「もっとライブに出ないと!」思いました。つまり「布教が足りてない!」と痛感しました。

二年目で準決勝に行けたのですが、この時は大会の層の厚さを感じ「もっとウケるネタを作るためにお客さんと自分の中の共通項をもっとリサーチしなきゃ!」と思いました。三年目では、まさかの二回戦敗退、この時は本当に審査に不服でした。

 

そしてやはりそういう不服な結果というのはかもめんたるの存在の小ささに原因があると感じ、なおさら「布教を頑張らねば!」とライブに出まくりました。そして4年目で三回戦敗退、この時は単純にコント中にミスがあったのでノーカウントととして、5年目で初の決勝、6年目で優勝できました。  

こうやって書くとあまりにも呆気ない道程にも見えますが、「プロ」から「プロフェッショナル」になる過程で、自分たちのコントとお客さんの中の共通項として「適度な不気味さ」「キャラクターを憑依させる」「しっかりとした盛り上がりを入れる」等のお約束を見つけていきました。  

 

そうやって「プロ」から「プロフェッショナル」になった自分が作れるようになったコントは、昔の自分からしたらオリジナリティから離れているモノや、世間に迎合した部分を多く含んでいると思います。そういうモノに手を伸ばし自分の中に取り入れていくことができたのは、これまた「面の皮が厚くなった」結果だと思います。

不必要なプライドや、小さなこだわりや、周りの目が気にならなくなる「厚い面の皮」を手に入れることで、本当に必要なモノにしっかりとフォーカスできるようになるというのが、プロとして続けられること、ひいてはプロフェッショナルになる上で必要なことなんです。  

まとめ

冒頭でプロになるというのは「面の皮を厚くする」ということだと言いましたが、プロフェッショナルになるというのは「さらに面の皮が厚くなる」ということだと結論させていただききます。  

 

イメージとしてはまずは「プロ」として勝負の土俵に上がるための「厚い面の皮」を無理矢理でも持って、失敗したり、傷ついたりしながら、切磋琢磨していくうちに面の皮は自然と厚くなり、それが「プロフェッショナル」の顔になっているというのが理想ではないでしょうか。  

 

つまりプロフェッショナルになりたい我々は「努力の方向を精査しながら頑張るしかない」という、ごく当たり前ですが、安心して身を寄せられる答えに行き着くと思うんです。  

 

 

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