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3Dクリエイターの課題を解決する新プラットフォーム『MEW(ミュウ)』ー吉本アートファクトリーの挑戦

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3D技術を軸とした開発・製造を中心に、教育事業や3D向けのソフトウェア開発などを手掛ける、合同会社吉本アートファクトリー(以下、吉本アートファクトリー)。同社は、3D技術の新たな展開を見据え、さくらインターネットが運営するオープンイノベーションのための施設「Blooming Camp」が提供する「BLOOMING DRIVE」に参加。プログラム内で提供される専門家によるアドバイス、マッチング支援、仮説検証、成果発表などのサポートを通じて、同社はさらなる浮上躍進の足がかりを掴んだという。そうした3D事業に対する想いや、「BLOOMING DRIVE」で得られた成果について、代表の吉本 大輝さんとCTOの中島 一崇さんに話を聞いた。

(写真・左)吉本大輝(よしもとだいき)プロフィール

合同会社吉本アートファクトリー代表/株式会社吉本3Dファクトリー 代表取締役/一般社団法人日本3D教育協会代表 代表理事
京都造形芸大油画卒/3D技術を用いた造形・設計・映像・XRなどのデザインを得意としており、在学時に「造形・デザイン事務所 吉本アートファクトリー」を設立。現在は1000万色以上のフルカラー3Dプリンターを用いた在庫を持たないフィギュア開発に注力。教育活動にも力を入れており、日本財団 海と日本PROJECTと連携した中学生向けの3D研究プログラム『海洋研究3Dスーパーサイエンスプロジェクト』も実施中。

(写真・右)中島一崇(なかしまかずたか)プロフィール

合同会社吉本アートファクトリー最高技術責任者(CTO)
情報理工学 博士
元 東京大学大学院 情報理工学系研究科 創造情報学専攻 特任助教
元 国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)さきがけ 専任研究者
デジタルファブリケーション、三次元形状処理の分野の第一人者。国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)さきがけ予算を史上最年少で取得し、研究に従事。 

3D事業の可能性を大きく広げた出会い

大学在学中から3Dの原型師やモデラーとして活動していた吉本さんの事業が大きく動き出したのは、中島さんの存在が大きかったという。東京大学大学院で形状処理に関する研究をしていた中島さんが、3D表現に関する学びを深めるため、芸術分野の専門学校に通ったことがきっかけで吉本さんと出会った。吉本さんは当時のことを次のように振り返る。

「仲の良い3Dアーティストが専門学校の講師をしていて、そのご縁で中島さんと出会いました。いろいろな会話を通して、3D制作をするなかで私が感じていた課題を中島さんであれば突破できるんじゃないかと思い、当時立ち上げたばかりの吉本アートファクトリーに誘うことにしました」

中島さんも、吉本さんとの出会いに大きな可能性を感じたという。

「当たり前のことかもしれませんが、3Dを扱うクリエイターの方々は既存のソフトを使用して作品をつくることが大半でした。そこでソフト自体を開発することで、より幅広い表現や、私も気づかなかった利便性を高めることに繋がるんじゃないかと考え、一緒に事業を進めることを決めました」この出会いにより、2人はさっそく新たな事業の立ち上げを進めていく。それが、クリエイター向けの3Dモデル特化型WEBサーバーソフト「MEW(ミュウ)」だ。MEW のなかには3Dに特化したさまざまなアプリケーションが搭載されており、ファーストリリースに向けとくに重点的に開発に取り組んでいるのが、3Dプリントに特化したアプリケーションの「TORIDE(トリデ)」にあたる。

「TORIDE」の画期的な点としては、 以下が挙げられる。

  •  サイズや使用素材を入力するだけで見積もり金額を即時表示
    従来、何度もデータをやり取りして見積もりを取っていたコストを大幅に削減。
  • 3Dプリント不可の形状を自動で検出・修正
    3Dプリントできない形状を自動で検出し、修正も可能。
  • データ圧縮による不正利用・著作権侵害の防止
    サイト上で閲覧できるデータを意図的に圧縮し、不正利用や著作権侵害を防止。
  • 1個から注文可能
    吉本アートファクトリーの3Dプリンターを活用することで、ロットを気にせず1個からでも注文が可能。
  • 注文までワンストップ・オンデマンドで完結
    見積もりから注文まで、全ての手続きをオンライン上で完結できるため、時間や手間を大幅に削減。

現状の3Dプリントでは、見積もりや3Dプリント可否のチェックなどの作業がほぼ100%人力でおこなわれているのに対し、TORIDEではこれらのチェックをプログラムで自動化。

ユーザーはブラウザからオンデマンドで、サービス提供者である吉本アートファクトリーが介入することなくチェック・見積もりをおこなうことが可能。

3Dモデル特化型WEBサーバーソフト「MEW」

吉本さんが「3Dクリエイター達にとって一番の課題だ」と考えたのは、自身が持つ技術を収益化することだ。

「3Dクリエイターの収益化には、依頼制作と在庫販売の2つの方法がありましたが、どちらも手間とリスクが伴いました。依頼制作では基本的には納品時にデータの権利を手放す必要があり、クライアントとのコミュニケーションコストやデータの互換性も課題でした。一方、在庫販売では、個人クリエイターにとってロット数が負担となり、在庫リスクや保管場所の確保も問題でした。これらの課題を解消できるソフトウェアの開発が、このプロジェクトの発端です」

MEWは、データの編集・配信・管理をひとつのプラットフォーム上で完結できるという画期的な仕組みを採用している。これまでは、業務ごとに別々のソフトウェアを使い分ける必要があったが、この手間が一気に改善される。

しかしそのなかで、大きな課題となっていたのが、MEWを世の中に伝える方法だった。中島さんはいう。

「実際に使ってもらえれば、この画期的なソフトの魅力を知ってもらえる自信はありました。でも、まず触ってもらうにはどうすればいいのか。そこを吉本さんと何度も話し合いを重ねていきましたね」

そんな時、吉本さんは、知人を通じて、さくらインターネットの「BLOOMING DRIVE」という取り組みを知ったという。

「MEWを運営するにあたり、サーバー管理をどうするかという問題もあったため、さくらインターネットさんにサポートをお願いし、さまざまな方の意見を聞きながらプロモーションに関するアイデアを相談するためにも、BLOOMING DRIVEへの参加を決めました」

  >>BLOOMING DRIVEについてはこちら
「やりたいこと」は「できる」に変わる。さくらインターネットの本社機能を有する、新たなイノベーション拠点「Blooming Camp」

多種多様なアイデアが結集する場所へ

専門家からのアドバイスや、ビジネスサポートに加え、成果発表による検証などもできるBLOOMING DRIVE。当初は、不安もあったという吉本アートファクトリー一同だが、参加直後からこの取り組みの魅力を感じたという。吉本さんは次のように話す。

吉本 大輝さん

「正直な気持ちとして、どうしてここまで手厚くサポートしてくれるんだろう?と思いましたね(笑)。こちらからひとつ質問をすれば、専門の方はもちろん、異業種の方々からも多様な視点でご意見をいただける。それには本当に助けられました」

また、2人が感じていたプロモーションに関する不安についても、さまざまな立場の人から意見やアイデアを募るなかで、画期的な企画を思いつく。中島さんがいう。

「クリエイターの『売りたい』とファンの『買いたい』がすでに存在するため、そこにまずMEWを届けられたらよいのではないか、と考えました。ソフトをリリースする以前に、固定のファンを持つクリエイターの方々にご協力いただき、作品をアップしていただく。そして、リリース直後から作品を購入できるようなプロモーションプランにたどり着いたのです」

このプロモーションにより、リリース直後からクリエイター側と購入者側の双方から利便性に関する意見を募ることができる。また、3D作品のファンコミュニティから自然に話題が生まれ、効率よくソフトの周知をおこなえるのが利点だった。

このアイデアが生まれたあと、「BLOOMING DRIVE」のメンバー達から思いがけないサポートを受けたと吉本さんは語る。

「アイデアだけではなく、クリエイターに関する豊富な情報提供にご協力いただけました。私たちもその分野の知見は十分持っていると思っていましたが、BLOOMING DRIVEには多種多様な業種の方がおられるため、思わぬ方向からのご提案に刺激を受け、楽しみながら企画を推進できました」

3D業界の新たなプラットフォームを築く

BLOOMING DRIVEへの参加を経て、吉本さんは3D技術は幅広い分野で求められていると改めて実感したという。

「これまで、3D事業の取引先の大半はホビー業界でした。時折、医療分野や工業分野などのお客さまもいましたが、BLOOMING DRIVEへの参加を通して、幅広い業界に求められていることを実感できました。それだけ事業を拡大できる可能性があるということなので、事業を推進する自信につながりましたね」

また、BLOOMING DRIVEへの参加と前後し、新たな活路を見出すプロジェクトもスタート。同社が躍進するさらなる希望となっていると中島さんはいう。

中島 一崇さん

「読売新聞と連携し、ドローンなどで撮影した約3万2千枚の写真から、国宝・犬山城を3D化するプロジェクトに参加しました。写真や動画としてだけでなく、3Dデータとして歴史的価値の高いお城の記録を残すという取り組みでした。お城の細やかな造作だけではなく、断面図表示も可能にする専用の3Dビューワーを開発し、メディアでも取り上げていただきました。今後も、このような価値がある文化財や建造物を3Dで立体的に記録するというニーズにもお応えしていきたいですね」

3D分野に特化し、クリエイターと消費者の双方にとって、より良い環境を生み出し、業界全体の活性化に寄与しようと取り組む吉本アートファクトリー。将来の展望として、吉本さんが次のような話をしてくれた。

「文章や写真、イラストに関しては、クリエイターと消費者が直接繋がるプラットフォームがいくつか存在しています。3D分野に関しては、吉本アートファクトリーが先駆者になりたい。世界最大の動画共有サービスであるYouTubeのような存在になれたらいいなと思っています」

中島さんも同様の想いを持ちながら、業界の課題解消を目標にしていると話す。

MEW TORIDEの操作画面

「3Dのデータ作成には、3Dデータ特有の特殊な知識が必須です。当社が手掛けるMEWには、作成したデータの不備や構造上の問題点を指摘する機能を組み込むことで、よりライトな知識で多くの人が3Dを扱えるようになります。それにより、喫緊の課題となっている3Dエンジニア不足の解消にもつなげられるはずです」

2人の熱い想いが、3D業界の新たな未来を切り拓いてくれるだろう。合同会社吉本アートファクトリーの今後に期待が高まる。

合同会社吉本アートファクトリー

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執筆

橋本 未来

大阪府出身。 広告制作を中心に、書籍の企画・編集や記事の執筆などを行うコピーライター。 関西屈指の編集者・高田強が所長を務める、コンテンツプロダクション「エース制作所」で、各種コンテンツの企画・制作などにも従事している。
note:https://note.com/7891m/

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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