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補助金申請における3つの課題を解決。Staywayが取り組む補助金DX

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国内の総企業数のうち、中小企業は99.7%を占める1。その中小企業をサポートするために、国や自治体が資金の一部を給付するのが補助金制度だ。返済不要で、事業拡大や収益向上の可能性を高めることができる。しかし、IT導入補助金やものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金など3000種類以上募集されており、自社の事業とマッチする情報を探すのに膨大な時間がかかる。さらに、申請手続きは複雑で、採択されても補助金を受け取れるのは約1年半後の場合が多い。このような課題を解決するべく開発されたのが、株式会社Stayway(以下、Stayway)の「補助金クラウド」だ。代表取締役CEO 佐藤 淳さんに、開発背景や現在の状況、今後の展望について聞いた。

佐藤 淳(さとう じゅん) プロフィール

株式会社Stayway 代表取締役CEO。東京大学経済学部卒業後、有限責任監査法人トーマツ(Deloitte Touche Tohmatsu LLC)の東京オフィスに6年間、シアトルオフィスに2年間勤務。退社後、2017年に株式会社Staywayを創業した。2022年より、全国の地域金融機関や事業会社と連携しながら、テクノロジーを用いて補助金申請の効率化を進める「補助金クラウド」を開発・推進。Staywayは、金融庁や日本経済新聞主催のコンテスト「2024年版FINTECH SUMMIT」にて、「”幸福”な成長をもたらす金融」に選出されている。

補助金の3つの課題をDXで解決する

補助金クラウドは、補助金の検索から申請、受け取りまでをワンストップでサポートするサービスだ。利用者は、補助金にまつわる作業コストを大幅に削減し、採択率を上げることができる。2022年に提供を開始してから、順調に提携先が増え、2024年現在は中小企業を支援する金融機関、士業などが導入している。

補助金に採択されると資金繰りの負担が軽減され、新事業への投資や、収益力のアップ、体制整備に取り組むことが可能だ。しかし、補助金の申請には「情報収集・申請書類の作成・後払い」の3つの課題があり、補助金を使いたくても申請できない中小企業が多い。その課題を解決するために、補助金クラウドを開発したと佐藤さんは語る。


「1つめの課題は、情報収集です。補助金の募集は各省庁、都道府県、市区町村がバラバラに開示し、連携していません。そのため、自社の事業とマッチする補助金をどこが提供しているのか非常にわかりにくい。募集期間も異なり、やっと見つけても締め切りが過ぎていることがあります。

補助金クラウドでは、3000種類以上の中小企業向け補助金をテーマ、エリア、企業規模などに分けたフォーマットを用いてデータベース化しました。補助金情報は頻繁に更新されるので、最新情報もくまなくチェックし、まとめています。フリー検索やリコメンド機能を備え、使える可能性のある補助金情報をとりこぼすことなく取得できます」


2つめの課題は申請書類の作成だ。必要書類は補助金によって変わり、フォーマットも統一されていない。なかでも、採択結果を左右する事業計画書を説得力のある内容に仕上げるのが難しい。補助金クラウドを利用した場合、必要事項を記入すると、生成AIが申請書類の下書きを作成。その後、公認会計士の資格を持つStaywayの担当者に相談しながらブラッシュアップすることができる。

最後は、採択されてから補助金を受け取るまでのタイムラグだ。補助金は後払いが原則で、手元に届くのは約1年半後になる。


「採択が決まっても、事業を開始しないと補助金を受け取れません。つまり、申請した事業をおこなうときには、自社で立て替えることになります。そこで、採択されたけれど、資金調達が難しいという事業者さまに向けて、まとまった資金を早期に受け取れる仕組みを用意しています。約1年~1年半後に受け取る補助金を債権と定義して、提携先の金融機関に譲渡。その金融機関から事業者さまに資金をお渡しすることで、日本初の補助金早期受け取りを可能にしました」

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支援機関との提携で全国の中小企業にアプローチ

補助金クラウドの特徴として、中小企業の支援をおこなう金融機関や士業といった機関に向けてサービスを提供していることが挙げられる。補助金の課題を体系的に解決するには、顧客の数が多い支援機関に提供するのが重要だと考えたからだという。金融機関はセキュリティとプライバシーに関する規制が厳しい。クラウド型のサービスを導入してもらうハードルは高くなかったのだろうか。


「当社には、私をはじめ、公認会計士のメンバーが数人います。また、経済産業省から、中小企業支援に関する専門知識と実務経験が一定レベル以上だと認定された『経営革新等支援機関』でもあります。信頼性が担保されていることや、公認会計士の専門知識とデジタル技術の掛け合わせでサービスが成り立っていることについて、しっかりと説明してきました。

補助金の課題に悩んでいるのは金融機関も同じです。補助金クラウドの活用によって中小企業に最新の補助金情報を伝えられれば、その企業の経営課題に合わせた、より具体的な融資の提案ができるようになります。スタートアップながら、提携している金融機関は30行以上。メガバンクにも導入いただいています」


三菱UFJグループや三井住友海上火災保険株式会社など、名だたる企業に導入されているStayway。補助金クラウドを導入する金融機関は、2025年には40行に到達する見込みだ。

補助金申請の支援機関と連携することで、間接的に中小企業のサポートをしている

開発のきっかけは自社の経営危機と補助金申請

補助金クラウド開発のきっかけは、佐藤さん自身が補助金を申請したことだ。佐藤さんは、公認会計士として国内最大級の監査法人で勤務したのち、2017年にStaywayを起業した。


「高校生のころから、いつか事業を起こしたいと思っていました。大学在学中に、『公認会計士なら多くの企業経営者と仕事をする機会があり、起業に必要なことを学べるだろう。いざというときの保険にもなる』と考え、ダブルスクールで資格を取得しました」


大学卒業後、有限責任監査法人トーマツでIPOやM&Aの支援、会計監査の仕事に6年間従事。さらにアメリカ・シアトルで2年間キャリアを積み、起業準備としてコンサルベンチャーに転職した。2017年、満を持してStaywayを創業。民泊の価格比較サイトや、旅行メディアの運営、宿泊施設、観光に関連した地方自治体のプロモーションを支援するサービスなどで、業績を伸ばしてきた。ところが、2019年末からコロナによるパンデミックが始まり、旅行業界は打撃を受ける。存続が危ぶまれたStaywayを救おうと、佐藤さんは補助金の申請をおこなった。

財務や経営に関する専門的な知識がある佐藤さんは、わかりにくいシステムだと思いながらも、総額約数千万円の補助金の給付を受けた。その様子を見た周りのスタートアップ関係者たちから「どうやって申請するの?」と尋ねられたことがきっかけで、補助金の課題を解決するサービスのニーズに気がついたという。


「自分でも資金調達の困難さに直面したので、補助金を使いたい気持ちはよくわかりました。コンサルティングで補助金の課題を解決することはできますし、収益もあります。しかし、『プラットフォームとして成立させたほうが、よりたくさんの人が補助金を活用できるのではないか』と思い、補助金クラウドを開発しました。実際、ニーズは高いです。そこに課題があるけれど誰も解けていない社会課題に取り組んだほうが、会社としての収益は上がる。それを身に染みて感じています」

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補助金の採択率は80%。申請書作成は10分に短縮

補助金クラウドを導入した金融機関から、有効性や操作性へのフィードバックをもらったことも、好調の波に乗る一因となったと佐藤さんは語る。


「みなさん、改善してほしいとおっしゃった部分や、追加で必要とする機能が似ていたんです。クラウドサービスはいくらでもアップデートできるので、どんどん変えていきました。フィードバックをいただいたおかげで、現在の補助金クラウドは、お客さまの満足度が高い状態になっています」


補助金クラウドを使って申請した事業の採択率は80%を超える。2024年度の上半期に、金融機関や士業の事務所を通じて中小企業が獲得した補助金は約650億円だったそうだ。補助金クラウドの導入先にはどのような効果があったのだろうか。


「導入していただいた金融機関や士業の事務所などでは、補助金の書類作成の所要時間が、平均20時間から約10分に短縮されたそうです。事業計画書も、テンプレートに沿って項目を入力するだけで作成できると喜んでいただいています。その結果、リサーチや申請書類作成に使っていたリソースを、お客さまへの的確で早い情報提供や、質問への対応、具体的な融資を提案するために使えるようになったとのことです。ある金融機関では、売上増加が1億円、人件費削減効果は約1000万円とうかがっています」

「中小企業と地域のポテンシャルの開放」を目指す

補助金クラウドの提供開始から約2年。地域に密着している中小企業の支援機関を中心に全国へと広がっていき、「補助金を提供する側」との提携も決まった。


「当社は、『中小企業や地域のポテンシャルを開放する』ことをミッションに掲げています。お金にまつわる悩みを解決することで、本来持っている力を最大限に発揮できる社会を実現したいんです。

また、2024年現在は、自治体にサービスを導入する『補助金クラウドfor Government』の開発に取り組んでいます。中小企業の支援機関だけではなく、補助金を提供する側の自治体にも、補助金に関する相談件数が増え、対応が複雑化しているという課題があります。補助金クラウドを使い、その自治体に必要な情報を得たり、データの更新コストを削減したりすることなどで、補助金関連業務をスムーズにする。それが同地域の支援機関の機能強化にもつながり、より多くの中小企業を継続的に支えられるようになるのではないか、と思っています」


2024年6月、Staywayは2.5億円の資金調達を実施。中小企業のニーズの傾向はデータとして可視化されているが、その課題についてはデータ化が難しい。同社では、新たな事業戦略として、補助金クラウドに集まったデータを収集・分析し、中小企業の経営課題を可視化。その可視化した課題を解決する手段として、データプラットフォーム構築を目標としている。Staywayのこれからに、各方面からさらに期待が寄せられるだろう。

株式会社Stayway

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  1. 2024年版 中小企業白書 ↩︎

執筆

村上いろは

大阪府在住のライター・編集者。制作会社や編集プロダクションを経てフリーに転身。Webメディアなどで記事の企画、取材、執筆、編集に携わっている。趣味は読書と散歩。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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