2017年に設立された「SAKURA Tempesta(サクラテンペスタ)」は、中学生・高校生を中心に活動しているロボコンチームです。さくらインターネットは、「さくらのレンタルサーバ」を無料提供するなどの支援をおこなっています。
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本記事では、SAKURA Tempestaがスポンサーの1社であるボッシュ株式会社と合同で開催した、無料の中高生向けロボットプログラミングワークショップ「理工チャレンジ2023」について、SAKURA Tempestaに所属する東邦大学付属東邦高校1年生 中山 京柊さんにレポートいただきました。
理工チャレンジ2023の概要
2023年9月23日、東京渋谷区のボッシュのオフィスにて、女子中高生を対象に「理工チャレンジ2023」を開催。午前中はキットの組み立てとプログラミングの基本を学び、午後はチームごとに分かれて点数を競うゲームをおこないました。
理工チャレンジ(リコチャレ)とは、女子学生が、理工系分野に興味・関心を持ち、将来の自分をしっかりイメージして進路選択することを応援するため、 内閣府男女共同参画局が中心におこなっている取り組みです。
SAKURA Tempesta は、ボッシュと共同で2018年からこの取り組みに参画しており、これまでに同イベントを5回開催しています。コロナ禍の影響でオンライン開催が続いていましたが、今回は3年ぶりのオフライン開催となりました。
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プログラムを組んでロボットカーを動かす
本イベントでは、株式会社イーケイジャパンの「KOROBO Lite」 (以下、コロボライト) というキットを使用しました。
コロボライトは、光センサーを搭載したコンパクトなロボットカーです。専用のプログラミングソフトウェア「Palette IDE」(パレットアイディーイー)」を使うことで、誰でも簡単にプログラムを組んでロボットカーを動かすことができます。
まず、1チームあたりSAKURA Tempestaのメンバーが2人、参加者が3〜4人の合計8チームに分かれ、ワークショップをおこないました。
参加者は、SAKURA Tempestaで用意した資料を元にキットを組み立てます。実際にこのようなロボットを組み立てるのは初めてという方も多く、ワクワクとした表情で挑戦していました。組み立てはスムーズに進んでいき、昼休憩前には全員が次のプログラミングの工程に入ることができました。
プログラミングでは、Palette IDEを使ってロボットカーを動かします。
Palette IDEは、「直進」や「左折」などのコマンドを意味するブロックを順番に並べることで、視覚的にプログラミングができます。
参加者は、トライアンドエラーを繰り返してロボットカーの動かし方を習得していきました。簡単な動作を理解してからは、「ループ」や「論理演算」という少し複雑なコマンドについても学び、机から落ちない車、障害物をよける車、ライントレースする車など、ステップアップしていきながらプログラミングを身に付けていきました。
ロボットカーでチーム対抗戦
一通りプログラミングについて学んだあと、いよいよゲームの開始です。
ゲームは、2023年にSAKURA Tempestaが出場したロボコン「FRC」(FIRST® Robotics Competition)を参考に設計しています。1分という制限時間の間に、三角の「コーン」や四角の「キューブ」などの「ゲームピース」を指定された場所に運ぶことで、ポイントを獲得。チーム対抗でこのポイントを競い合います。
利用するゲームフィールド上は黒いテープで線が引かれており、ワークショップ中に学んだ「ライントレース」を活用して、ゲームピースを運びます。車体の改造を通じてゲームピースの運搬をサポートするなど、プログラミングだけでなく、ほかの工夫も可能な非常に自由度の高いゲームです。
ただ進むだけでなく、「指定された場所にゲームピースを静止させる」という難易度の高いミッションが設定されているため、ゲーム開始直後は1ポイントを獲得するのにも苦労していました。しかし、参加者たちは創意工夫を凝らし、徐々に効率的なポイント獲得方法を見つけ出していました。ゲームが進むにつれ、チーム内での議論や協力が活発になり、全員が楽しみながらプログラミングに取り組んでいる様子が見受けられました。最終的には、満点を達成するチームも現れたため、追加の得点要素を設定しました。
ゲーム終了後、興奮冷めやらぬまま表彰式に移りました。1~3位のチームに加えて、2つの特別賞として「リーダーシップ賞」「アイデア賞」を授与。これらの特別賞も、FRCを参考にしています。リーダーシップ賞は、チーム内でほかの参加者をサポートしリーダーシップを発揮した方へ、アイデア賞は、独自性のあるアイデアを思いついた方へ贈られる賞です。
受賞者には、SAKURA Tempestaのチームグッズやボッシュのノベルティなどの特別な景品が贈られました。
イベントを開催するにあたって大変だったこと
理工チャレンジは、9月の開催に向けて5月から準備をおこなってきました。開催にあたり苦労したことを2つご紹介します。
1つ目は、参加者の募集です。
関東圏の多くの学生にリーチすることを目標として、さまざまな広報活動をしました。
学生に興味を持ってもらうことも大変ですが、一日時間を確保して参加していただく必要がありました。また、3年ぶりのオフライン開催ということもあり、参加者数の見込みが難しかったのです。
今回、千葉市の教育委員会の後援を得て、千葉市内の小中学校に17,000枚以上のチラシを配布したところ、定員32名を超える応募をいただくことができました。関西圏など遠方からの参加を希望する方もいらっしゃったことに驚きました。
2つ目は、ワークショップの準備です。
使用したプログラミング環境「Palette IDE」に、SAKURA Tempestaのメンバーの多くが慣れていなかったため、事前にメンバー向けの講習を実施しました。
またワークショップに参加される方に楽しんでいただくために、チーム内でゲームの案を複数用意しました。それらについて多くの議論を交わし、ブラッシュアップ。その結果、参加者から高い評価をいただくことができました。
プログラミングやロボットの楽しさをより多くの方へ
イベント終了後、ワークショップに参加した方から以下のような感想をいただきました。
- 「自分でプログラムをして、線の上を走らせることができて嬉しかった」
- 「ちょっと難しかったけどそれが逆によかった。勉強になった」
- 「プログラミングは難しい印象ですごく苦手だったが、参加してみて楽しいものだと気づけた。すべてが楽しかった」
これまであまりプログラミングに触れてこなかった方たちに、プログラミングの楽しさを知ってもらう、よい機会となったと思っています。
後日おこなったアンケートでも、イベントの満足度について「非常に満足 81%」「満足 19%」という評価をいただきました。
本イベントの参加者が、自宅でもプログラミングに挑戦できるよう、コラボライトを全員に無料配布したことも好評でした。
SAKURA Tempestaは、これからもプログラミングやロボットの楽しさをより多くの方へ伝えるために、イベント開催などをおこなっていきます。
執筆
中山 京柊
東邦大学付属東邦高校1年生、リコチャレ2023広報担当。アウトリーチイベントに興味を持ちSAKURA Tempestaに加入。英語を使って海外チームとの交流もおこなう。
※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。
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