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街を歩いていると、至るところでカメラを見かける。だが、膨大な映像を人の目で確認するのは限界があり、映像データの利活用にはまだ課題がある。
その解決に取り組んでいる企業が、セーフィー株式会社(以下、セーフィー)だ。同社は、防犯カメラのクラウドプラットフォームを提供し、映像データの蓄積と活用を支えてきた。
そうしたなか、セーフィーが新たに打ち出したのがAIソリューションプラットフォーム「Safie AI Studio(セーフィー エーアイ スタジオ)」である。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)公募の「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/データ・生成AIの利活用に係る先進事例に関する調査」に採択されたことで加速され、実装が進んだ本取り組みは、AIを開発・利用できるプラットフォームを提供し、AI開発者と利用者の間に橋をかける試みだ。AIは、映像をどう活かすのか。同社の取り組みについて、執行役員の植松裕美さんに聞いた。

植松 裕美(うえまつ ゆみ)さん プロフィール
セーフィー株式会社 執行役員 企画本部 副本部長。複数社で、医療系ソフトウェア、テレビやカメラのエンジニアやプロジェクトマネージャー/プロダクトマネージャー、技術営業を経て、2020年2月にセーフィーへ入社。製品・サービスの企画・開発および運用設計を担当し、2026年4月より現職。
35万台超のカメラをクラウド接続。セーフィーの強みと次の挑戦
セーフィーは、防犯カメラの映像をクラウド上に蓄積し、パソコンやスマートフォンから確認できるサービスを提供している。その特徴は、カメラの調達・販売・レンタル、設置から、クラウドプラットフォームの提供まで、一気通貫で手掛けていることだ。
小売や建設、製造、物流、介護など、さまざまな業種で導入が進んでいるセーフィーのカメラ。2026年現在は、全国で35万台を超えるカメラが稼働し、同社のクラウドと接続されている。植松さんが「クラウドカメラのあるところなら、当社のシステムが入っていることが数多くある」と語るように、表には見えにくいものも含め、さまざまな現場を裏側から支えている。
こうした実績を背景に、セーフィーは自社を単なるカメラベンダーではなく、「映像プラットフォーマー」と位置づける。近年では、ネットワーク環境に依存せずにデータを扱えるよう、ローカル側にもデータを取り込む仕組みの開発を進めている。クラウドとエッジの双方で映像を扱う体制を整えることで、より多様な現場に対応している。
一方で、映像データの利活用には課題があった。植松さんは以下のように語る。
「当社は映像のクラウドシステムを強みとしてきましたが、『お客さまを守る目となる』ようなソリューションはごくごく限られた分野でしか開発できていませんでした。そこでAIを活用し、その課題解決にチャレンジしました」

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AI開発者と利用者をマッチングする「Safie AI Studio」
こうしてセーフィーが2026年2月に打ち出した、既存AIモデルの活用・既存AIモデルの再学習・新規AIモデルの開発/提供をおこなえる映像AIプラットフォームが「Safie AI Studio」だ。これによって可能となるのが、映像を活用したAI開発およびその活用だ。将来的には、AI開発者とAI利用者のマッチングを目指している。
これまで、映像分析におけるAIの活用には、開発コストの高さや技術的なハードル、さらには学習データの不足といった課題があった。植松さんによれば、特定の現場に特化したニッチなAI、たとえばクマやシカといった特定の動物、あるいは小売店でカートの不足を検知するAIは、開発にかかる工数や費用の面から導入が難しいケースも多かったという。
「AIの開発は、データの収集や環境構築といった前段階、またAIをつねに稼働し続けるインフラの運用に多くの負担がかかります。ですがセーフィーの場合は、すでに多数のカメラやデータ基盤があり、運用に関してもクラウドカメラとしての実績があるので、その問題はクリアされていました。あとは、開発の基盤をいかに整えるかが課題でした」
Safie AI Studioでは、映像AIソリューションの構築に必要な機能を一体的に提供することで、AIの開発工数を削減し、素早く、低コストでAIを開発・導入できる環境を整えた。さらに、2026年度からは、カメラなどの端末内で動作が完結するエッジAIの活用を予定している。また、利用者もこのプラットフォーム上でAIを利用できる環境を整えることで、ソフトのダウンロードも一切不要とし、開発者と利用者の橋渡し役を担えるようにした。
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このプラットフォーム開発を後押ししたのが、NEDOによる事業採択だ。これにより資金面での課題がクリアされ、プロジェクトが一気に加速したという。
今後セーフィーが目指すのは、単なる業務の効率化にとどまらない。現場の状況をAIが分析して次のアクションを促すAI Transformation(AX)、すなわち、現場の意思決定をアシストする仕組みの実現だ。映像を起点に、現場の省力化や自動化、さらには最適化へとつなげていく。そのための基盤として、映像を「使える」状態にする環境が整えられつつある。
AI活用推進の鍵は「コスト削減」
セーフィーは、映像とそれ以外のデータの組み合わせによる、新たな情報分析も視野に入れている。現在のシステムは映像とAIを組み合わせた分析にとどまるが、今後はそこに音声やセンサーといった多様なデータを交えることで、検知できる要素を増やそうという試みだ。
「将来的には、映像だけでなく音声やセンサーなどのデータも組み合わせて、より高度な分析や判断ができるようにしていきたいと考えています。たとえば、映像と温度センサーのデータを掛け合わせれば、熱中症のリスク検知なども可能になります。こういったニーズは、すでに建設現場などから寄せられています」
だが、こうしたAI活用を広げていくうえで、大きな壁となるのがコスト面だ。AIは有用である一方、「高い」「難しい」というイメージから導入が進まないケースも多い。
「AIはコストや開発期間の問題で、導入を断念されることも少なくありません。だからこそ、もっと手軽に使える環境を整える必要があると考えています」
Safie AI Studioは、まさにそのための試みである。エッジAIの活用などを通じてコストを抑え、さらに暗号化などのセキュリティー対策も徹底し、安心して映像データを活用できる基盤を整えている。
映像を「見る」から「使う」へ。その変化が、いま起きようとしている。
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執筆
畑野 壮太
編集者・ライター。出版社、IT企業での勤務を経て独立。ガジェットや家電など、モノ関連の記事のほか、ビジネス系などの取材を多く手掛けている。最近の目標は、フクロウと暮らすこと。
Website:https://hatakenoweb.com/
※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。
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