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アマゾンは初期からビジネスモデルを構築していた。元アマゾン ジャパン広報本部長 小西みさを氏

小西みさをさんにインタビュー

小西みさをさん

AStory合同会社 代表。アマゾン ジャパンの広報責任者を13年、ソフトバンクの海外広報責任者を4年歴任など、エンターテイメント、ITを中心に様々な業界で25年以上のキャリアを積む。2019年7月に「アマゾンで学んだ! 伝え方はストーリーが9割」を出版。

各業界の著名人にインタビューをしていく、この企画。今回は元アマゾン ジャパン広報本部長で現AStory代表の小西みさをさんにお話をうかがいました。アマゾンでのお話や広報業務に必要なことについて語っていただきました。

アマゾンから独立して会社を創業

ーー本日はお時間いただき、ありがとうございます! 早速ですが、小西さんのこれまでのキャリアについて教えてください。

 現在からさかのぼってお話しさせていただきますと、今はAStory(エーストーリー)という会社を経営しております。創業したのが2017年ですね。

AStoryは、主にPRコンサルティングをしています。企業のブランディング強化、PR活動のサポート、トレーニングが主なサービスです。

 

過去3年間で30社以上の企業をサポートしてきました。クライアント企業は業界はバラバラで、IT企業もあれば食品、化粧品を扱っている企業や旅行、ファッション関連などさまざまです。規模も大企業からスタートアップ企業まで幅広くサポートしております。

 

創業最初はターゲットを絞り込んだほうがいいという助言もあり、スタートアップ企業をメインにサポートしますと謳っておりましたが、いろんな企業様からご相談いただくので、現在は業界規模を問わずお手伝いさせていただいております。

 

入社した当時のアマゾンについて

入社した当時、アマゾンのビジネスは「本屋さん」だった

 起業する前はECを展開するアマゾン ジャパンに13年間勤めておりました。現在、アマゾンはECでありとあらゆるものを扱い、Amazonプライムビデオといった動画サービスやAWSといったクラウドビジネスも展開していますが、私が入社した当初はネット上の「本屋さん」と言われていました。

 

商材は本がメインで、これからいろんなものを立ち上げていきますよっていうフェーズだったんです。

実はアマゾンとしては本屋って言われることはあまりうれしくなくて、なぜなら目指しているところは本屋じゃなくて総合オンラインストアだったものですから。

でも当時、取り扱い商品は本がメインだったので本屋と言われても仕方なかった時代だったんです。

 

アマゾンは明確なミッション、ビジョンを持っていた

私が入社した当時からアマゾンは非常に明確なミッション、ビジョンを持っていました。また、それに基づくビジネスモデルをきちんと構築していました。

そこが基点となり様々な事業展開や施策が、どのようにビジョンやミッションに貢献しているのかが重要視されていました。そして、コミュニケーションも、ミッション、ビジョンをもとにいかにお客様にコミットしているのかという視点でおこなってきたのです。

 

その中には本以外の事業もありました。例えば食品を立ち上げたり、ファッションを立ち上げたり、サブスク型サービスを展開したりと、いろいろあったわけですが、その一つひとつが全てアマゾンのミッション、ビジョンを実現するためにやっていることだとコミュニケーションしていくのです。

 

いろんな会社さんがこれ始めました、あれ始めましたと発表するのですが、それがなぜその会社がやるのか。何のためにやっているのかが伝わらずにスポット的な施策に見えてしまい終わってしまうケースが見られます。

アマゾンの場合はなぜ、また何のためにやっているのかを、会社の存在意義にきちんと紐づけていくような、そのようなコミュニケーションをやってきました。

 

私にとってみれば、アマゾンでの経験は事業会社で行う広報業務の集大成的なところまで来ていました。最終的にはアマゾンが自分たちの思い描いているミッション、ビジョンに近づきつつあって、社会の受け止め方もそうなってきたなという感触も得られ、私のミッションは達成したと考えました。

 

そして、アマゾン、その他日本の事業会社で得られた貴重な経験や実績、ノウハウをもっといろんな会社のサポートに活かしていきたいと思い、起業した次第です。

 

小西みさをさんが転職を決めた理由

ソフトバンクからアマゾンに転職を決めた理由

ーーソフトバンクからアマゾンに転職された際に、決め手となったポイントはなんでしょうか。

 ソフトバンクでは孫正義社長(当時)のもとで、海外と国内両方の広報をやっていました。海外向けには孫さんが事業活動しやすい下地を整えていく広報。ソフトバンクってECのパートナーとして最高のパートナーですよということを認知していただくための広報ですね。国内では合弁会社が実現した際の新規ECビジネスについての広報活動をしていました。

 

その後は、ソフトバンクがADSLというブロードバンドビジネスに軸足を移し始め、国内にかなり注力をしはじめました。

私としてはグローバルな仕事に興味があったので、国内に注力するソフトバンクと自分のキャリアの方向性が違ってきたという思いがありました。

 

その頃、アマゾンの広報のポジションのお話をいただいたんですね。当時のアマゾンは超ベンチャーで、私にとって初めてのベンチャー&外資系企業でした。その時に、もしかしたら自分の今までのキャリアを生かして何か新しいことができるかもしれないって思ったんですね。

 

面接を受けてみたらお会いした方々が非常に魅力的だったんです。上司になる米国本社の当時の広報部長も広報の世界で長年の経験がある素晴らしいバックグラウンドを持った方だったので、学べることがたくさんあると思いました。グローバル視点のPRというものを学びたいし、学んだうえで新しい価値を提供していきたいと思ったんです。

アマゾンの採用面接とは

 アマゾンの面接ってすごく大変なんですよ。超ベンチャーで人手不足で困っている時代ですら、すでに敷居が高かったんです。

面接とレジュメだけではなく、アマゾンでリーダーになるための素質があるかどうかを非常によく見ているんですね。

 

アマゾンのリーダーになれるかどうかの要素を複数の社員が多面的に徹底的にレビューして、OKが出たら入社できるんです。ベンチャーだった頃からそういうシステムがあって、私が面接を受けた時も社長や上層部の方を含めて7人ぐらい会いましたね。こんなに長いプロセスなの? と思いましたね(笑)。

 

入社してから分かったのは、アマゾンにはミッション、ビジョン、ビジネスモデル達成に必要な人材(コンピテンシー)を明確化しそして採用し、アマゾン流リーダーをマネジメントする仕組みがあったのですね。

 

ですから経歴だけでは判断しない。リーダーになれる人でないと採用しないという考えは、アマゾンがベンチャーの頃から変わっていないということです。それは徹底していますね。

アマゾンのすごさは「仕組み作り」

ーーアマゾン ジャパンで広報本部長をされていた際に驚いたこと、うれしかったことを教えてください。

 驚いたのは、とにかく仕組み作りがすごいですね。広報だろうが人事だろうが、もう誰だろうが仕組みを作れ! という会社なんです。

 

「善意で人は変わりませんよ」とよく言われました。例えば、なにか仕事で失敗するじゃないですか。「もう二度とこういう失敗はしません。今度は頑張ります」と本人は言うんです。でも変われないことはいっぱいありますよね。

 

仕組みを作ってしまえば、その失敗をもっと減らす・無くすことができます。そういう仕組みを作りなさいということ。何か課題があったとき、何か失敗したとき、そこには必ず仕組みを作れるチャンスがあります。

 

社内コミュニケーションでの仕組みで言うと、アマゾンのビジョン、ミッション、ビジネスモデルをアマゾン社員であれば全員知ってるんですね。

その中で自分たちの部署がどういう役割を担って、どういうゴールを作って達成しなきゃいけないかっていうことが明確になっています。

 

それが全社でしっかりおこなわれているんです。

 

小西みさをさんが考える広報の仕事で一番大事なこと

広報の仕事は戦略的に考えることが大事

ーー広報の仕事で大事なのはどんなことでしょうか。

 広報って外と中を繋げる仕事をしているわけですね。広報の仕事って、企業と社会が互いにメリットを享受できるような、戦略的なコミュニケーションのプロセスを作っていくことだと思っています。会社寄りな見方をしていても駄目ですし、社会寄りな考えだけでも駄目なんですよね。

 

両方の視点の中で、社会に対してどのように会社の存在意義について理解を求めればいいのか、戦略的に考えるのが広報の仕事で大事なことなんだと思います。

そのためにはトップが考えていることを理解しておかなければいけません。それがわかっていないと、社会の方とコミュニケーションすることができませんから。

 

同じ理由で会社の主要なビジネスがどうなっているか、どうなっていくのかということも常に情報としてちゃんと理解しておく必要がありますね。

 

ーー4月から異動ではじめて広報の仕事についた人も居ると思います。広報初心者の方にアドバイスをいただきたいです。

 広報はステークホルダーとしてメディアの方々を相手にすることが多いと思います。メディアの方々から見た広報というのは、会社のイメージそのものになります。なので、広報の方々がどれだけ社会とコミュニケーションしようとしているのかを見られると思います。

 

優秀な広報はレスポンスが早いです。

 

 これにはいろんな意味が含まれています。メディアからしてみると、レスが早いというのは会社が社会とコミュニケーションをすることにプライオリティを置いていると評価するのです。

 

もうひとつは広報が会社、もっというと経営方針や方向性について理解していて、言えること・言えないことを即座に判断できることの表れだと思うんです。ですからまずはレスポンスを早く取れる体制をつくることが大事です。

 

そのためには日頃から会社のことをきちんと理解しておくことが必要ですね。自分で積極的に疑問を持ち、課題を見つけて、上司の方に質問して答えを得る習慣をつけることをお勧めします。

 

広報は後手にまわってはいけません。危機管理も含めて先手先手でやっていく必要がありますので、日ごろから問題意識を持つことが大事です。

あとは、仕事をするうえでゴールを定めることは必要だと思いますので、新人の方は上司の方に「私のこの1年のゴールはなんですか?」と相談してゴール設定をしたほうがよろしいかと思います。

広報は情報収集をしないと務まらない

ーー実務的な面で、活用している広報ツールはございますか?

 信用度の高い情報をちゃんと得るという意味で、毎朝起きると必ず新聞をチェックしています。最近はほとんどアプリで日経新聞、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞など様々な新聞に目を通していますね。ネットでヤフーニュースも見ますし、テレビのニュースも見ています。

 

私の仕事の中で「メディアトレーニング」というものをクライアント様にしています。メディアの取材を受けたり、おおやけで話をしたりするときに、何に留意をして何に備えるべきなのかをレクチャーしているんですね。

 

社会と繋がろうとするときに、無防備じゃダメなんです。社会が今何に興味があって、どういったところで会社として貢献ができるのかを常に理解する必要があります。そういった意味で、やっぱり新聞って信頼のできる情報源ですし有効です。

 

あと、日経ビジネス、東洋経済、週刊ダイヤモンドなどのビジネス系の雑誌をに目を通しておくと、もっと深堀されたビジネストレンドを知ることができ、自社で企画したりPR戦術を考える上で大変参考になると思います。

 

情報収集をしっかりしないと、世の中の「なぜ?」に答えられないので、広報業務の最初の一歩は社内外の情報収集だと言えます。

 

ーー独立をして代表としてお仕事をされていますが、ワークライフバランスについてお聞かせください。

平日は仕事と勉強オンリーです。現在、毎週土曜日にビジネススクールに通っているのですが、卒業するためにはこなすべき課題がたくさんあります。

仕事では私に依頼してくださるクライアントさんの期待にお応えするという大きなゴールがあります。この2つ以外に時間が費やせるものはほぼないですね。

 

元アマゾン ジャパン広報本部長 小西みさをさんの「やりたいこと」

ーーメディアのコンセプトが「やりたいことをできるに変える」なのですが、今後やりたいことについて語っていただきたいです。

 AStory合同会社に加えて、新しい会社『aLLHANz(オールハンズ)合同会社』をパートナーと設立しました。伴走型で企業の新規ビジネス立ち上げのサポートをする会社です。私は新規ビジネスにPR視点を入れて、社会に受け入れられやすいサービスやものづくりのサポートをします。

 

立上げメンバーにはアマゾンで複数の新規事業を立上げた経験のあるスペシャリスト、そして、アマゾンや楽天などでECのロジスティクスを担当してきたスペシャリストがいますので、多角的に新規ビジネスの可能性を検証し、サポートする体制を提供します。

 

特に中堅企業で次の一手を考えていかなければいけないフェーズにある企業で、社内でアイデアがなかなか出てこなくて悩んでいらっしゃる経営者のサポートができればと考えています。

そういった企業に、人を中心とした社内リソースの活用方法や、その他アセット分析を通じて、その会社ならではの新規事業が生まれるようなお手伝いができればと思っています。

 

私は商品・サービス開発の前段階、企画するフェーズでPR視点を入れたほうがいいと思っているんです。そうすることで、社会が求めるものにより近づいていくし、PRもしやすくなるんですね。企業が手掛ける意義も明確化されますし、好循環が作れるのではないかと思っています。

インタビューにご協力いただいた小西さんからお知らせ。

 「アマゾンで学んだ! 伝え方はストーリーが9割」という本を出しています。私がこの本の中でも書かせていただいた中でもおすすめなのが「自分の強み探し」です。

社内で仕事されたり、社外でお話されるときに自分の強みを理解して活用した方が、他者と差別化でき、効果的なコミュニケーションができると思います。

 

自分のその強みの棚卸をして、社内でも社外でも活用していくと、いろんな可能性が見えてくると思うんですね。ご自分の強みを常に認識して仕事をしていくと、より豊かな仕事の仕方ができるのではないかなと思っております。

 

アマゾンで学んだ! 伝え方はストーリーが9割

アマゾンで学んだ! 伝え方はストーリーが9割

 

 

執筆

川崎 博則

1986年生まれ。2019年4月に中途でさくらインターネット株式会社に入社。さくマガ立ち上げメンバー。さくマガ編集長を務める。WEBマーケティングの仕事に10年以上たずさわっている。

編集

武田 伸子

2014年に中途でさくらインターネットに入社。「さくらのユーザ通信」(メルマガ)やさくマガの編集を担当している。1児の母。おいしいごはんとお酒が好き。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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