ガバメントクラウドとは?意味や目的、先行事業の内容をわかりやすく解説

>>5分でさくらインターネットのサービスがわかる!サービス紹介資料をダウンロードする

ガバメントクラウドとは?意味や目的、先行事業の内容をわかりやすく解説

 

デジタル化のメリットを実感できる「デジタル社会」を実現するためには、デジタルガバメントの推進は重要です。社会全体のデジタル化を進めるため、国や地方の行政がデジタル技術やデータを活用し、DX(デジタルトランスフォーメーション)を実現する必要があります。DXについては「デジタルトランスフォーメーション(DX)とは? 意味や定義をわかりやすく解説」をご覧ください。

この記事では、ガバメントクラウドの意味や目的、先行事業の内容を解説しています。

ガバメントクラウドとは?

ガバメントクラウド(Gov-Cloud)とは「政府共通のクラウドサービス利用環境」のことです。デジタル庁のホームページには、ガバメントクラウドについて次のように記載されています。

政府共通のクラウドサービスの利用環境です。クラウドサービスの利点を最大限に活用することで、迅速、柔軟、かつセキュアでコスト効率の高いシステムを構築可能とし、利用者にとって利便性の高いサービスをいち早く提供し改善していくことを目指します。地方公共団体でも同様の利点を享受できるよう検討を進めます。

(引用:デジタル庁 ホームページ

ガバメントクラウドで利用が想定されているクラウドサービス

ガバメントクラウドで利用が想定されているクラウドサービスは、次の通りです。

 

クラウドサービスの種類

クラウドサービスの内容

IaaS(Infrastructure as a Service)

インターネット経由でハードウェアやICTインフラを利用できる仕組み

SaaS(Software as a Service)

インターネット経由でソフトウェアを利用できる仕組み

PaaS

インターネット経由でソフトウェアの開発・運用環境を利用できる仕組み

 

ガバメントクラウドに認定されているサービスを使えば、クラウドサービスが提供する高いセキュリティと可用性、スケーラビリティを利用できます。

ガバメントクラウドの目的

利用者にとって利便性の高いサービスを、いち早く提供し改善していくことが目的です。地方公共団体でも活用できるよう、検討が進められています。

ガバメントクラウドを活用すれば、迅速で柔軟かつセキュアでコスト効率の高いシステム構築が可能となり、日本全体のデジタル化に寄与することが期待されます。

ガバメントクラウドが生まれた背景

ガバメントクラウドが生まれた背景

 

これまで政府では、情報セキュリティや移行リスクへの不安などを理由に、クラウドサービスの利用に前向きではありませんでした。

しかし「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用 推進基本計画」及び「デジタル・ガバメント推進方針」(ともに平成29年5月)を経て、「デジタル・ガバメント実行計画」(平成30年1月)において「クラウドバイデフォルトの原則」が示されました。

クラウドバイデフォルトの原則

クラウドバイデフォルトの原則とは「政府情報システムを整備する際、クラウドサービスの利用を第一候補として検討する」基本方針です。オンプレミス中心となっていた行政システムにクラウドの柔軟性を取り入れ、コストの削減や効率化、セキュリティの向上などを図ります。

 

国産クラウドベンダーが本気で挑む「デジタル・ガバメント」とは?
>>資料のダウンロードはこちらから

ガバメントクラウドを使うユーザーは?

ガバメントクラウドは政府共通のクラウドサービス利用環境ですので、ユーザーは政府や地方公共団体となります。政府は1府2庁11省698システム(2018年時点)、地方公共団体は1741団体あります。

ガバメントクラウド移行のスケジュール

令和2年(2020年)12月に閣議決定された「デジタル・ガバメント実行計画」。これにより、クラウドバイデフォルトの原則を踏まえた政府情報システムの整備が決まりました。

令和7年度(2025年度)までに地方自治体の基幹業務システムを標準化し、国が提供するガバメントクラウドへ移行することを目標とするとされています。

令和3年(2021年)1月に発表された「地方自他体によるガバメントクラウドの活用について(案)」では、地方自治体の業務システムの統一・標準化に向けたスケジュール(イメージ)が公開されています。

 

▲出典:内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室 地方自他体によるガバメントクラウドの活用について(案)p.7

▲出典:内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室 地方自他体によるガバメントクラウドの活用について(案)p.7

 

令和4年(2022年)度までに緊急時給付などを簡便におこなうためのアプリケーション「自治体等共通SaaS(仮称)」などをガバメントクラウドの構築すると公表されています。令和5年(2023年)~令和7年(2025年)を本格移行期として、令和7年(2025年)度末には原則すべての地方自治体で活用開始する予定です。

ガバメントクラウド 検証のための先行事業

地方自治体の基幹業務システムについては、令和7年(2025年)度末までにデジタル庁が調達するガバメントクラウドを活用し、標準準拠システムを市町村が安心して利用できるようにする方向です。その前にガバメントクラウドを安心して利用できると実証するために、先行事業がおこなわれることになりました。

先行事業の目的

先行事業をおこなう目的は、3つあります。

  • ガバメントクラウドや回線を市町村が安心して利用できるか検証するため
  • 標準準拠システムの移行方法検証のため
  • コストパフォーマンスの検証のため

 

令和3年(2021年)に「ガバメントクラウド先行事業」が公募されました。令和3年(2021年)度及び令和4年(2022年)度にかけて実施します。先行事業の内容は下記の通りです。

  • 市町村に対して、市町村の基幹業務システム
  • 都道府県に対して、地方自治体のセキュリティシステム

先行事業へは52件の応募があり、そのうちの8件を採択しています。

先行事業に採択された団体

採択された8団体の規模やシステム構成、採択理由を具体的に見ていきましょう。

 

団体名

団体規模

システム構成

採択された理由

神戸市

20万人以上(政令指定都市)

マルチベンダー

政令指定都市で影響度の高い住基・共通基盤が対象。ほかの大規模単体へのモデルとなりうるため

倉敷市(高松市、松山市と共同提案)

20万人以上

マルチベンダー

3団体が同じアプリを使用。共同検証実施によって構築・移行方法などの検証結果が得られるため

盛岡市

20万人以上

オールインワンパッケージ

現在はハウジング運用のため、クラウド利用経験のない団体のモデルケースになるため

佐倉市

5万人以上20万人未満

マルチベンダー

主要17業務をすべて含む合計27システムに加え、マネージド型のPaaSサービス及びクラウドが提供するテンプレート機能を積極利用し構築・移行するため

宇和島市

5万人以上20万人未満

オールインワンパッケージ

低コストで、主要17業務をすべて含む合計55システムの検証が可能なため

須坂市

5万人以上20万人未満

オールインワンパッケージ

ガバメントクラウド接続に県域WANを共同利用する接続検証を実施。既存のインフラを活用した移行のモデルとなりうるため

美里町(川島町と共同提案)

5万人未満

オールインワンパッケージ

クラウド移行について、複数の方式を検討・試行。費用、移行時間、品質、セキュリティ、作業負担等の観点から比較し、他団体が移行方法を検討する際のモデルとなりうるため

笹置町

5万人未満

マルチベンダー

フレッツ光対象外の地域ならではとして、安価に接続できる回線のあり方を検証。同様の事情を抱える団体のモデルケースとなりうるため

出所:デジタル庁 ガバメントクラウド先行事業の採択結果について(市町村の基幹業務システム)

 

この中でも神戸市は政令指定都市で、人口が150万人を超えています。神戸市の先行事業内容について確認しましょう。

ガバメントクラウド 神戸市の先行事業

ガバメントクラウド上に「住民記録システム」と「共通基盤システム」を移行し、ガバメントクラウドや回線が安全に利用できるか検証。投資対効果も検証します。検証中は既存システムを並行稼働させるようです。

神戸市はシステム運用費用の削減、システムの安定稼働、システム感のデータ連携を円滑にするといった効果を期待しています。

ガバメントクラウドのメリット

ガバメントクラウドのメリット

 

ガバメントクラウドのメリットを4つ紹介します。利用する各自治体だけではなく、住民である私たちにもメリットがあります。

1.コスト削減

ガバメントクラウドを活用すれば、サーバーやOS、アプリを共同利用できます。行政や自治体が個別に開発したり、サーバーを自前で調達する必要がなくなります。

たとえば、民間企業がガバメントクラウド上で開発したアプリを行政や自治体などが選べるようになり、開発コストや運用コストの削減につながります。

2.住民がサービスを使いやすくなる

ガバメントクラウドを活用すれば、情報システムの迅速な構築と柔軟な拡張が可能です。行政手続きのオンライン化や、サービスのワンストップ化などが実現しやすくなります。こうしたことが実現すると、従来よりも行政サービスが使いやすくなり、住民がサービスを使いやすくなります。

3.データ連携しやすくなる

ガバメントクラウドを活用すれば、アプリ移行のデータ移行が容易になります。

しかし、データ連携をしやすくするためには、データの標準化が必要となります。現在、国は地方公共団体の情報システム標準化を推進しています。地方自治体は、このデータ要件・連携要件の標準に適合したシステム利用が、標準化法によって義務化されます。

4.個別のセキュリティ対策や運用監視が不要

セキュリティ対策や運用監視をガバメントクラウドがまとめておこなえば、各団体が個別に対応する必要がなくなります。そのため専門知識のない団体でも、最新のセキュリティ対策が可能となります。

ガバメントクラウドの要件

ガバメントクラウドの要件として、まずは政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)のリストに登録される必要があります。

ISMAPについては「ISMAPとは?制度の概要やクラウドサービスリストについてわかりやすく解説」でくわしく解説しています。

デジタル庁はISMAPのリストに登録されたサービスから、下記要件を満たすクラウドサービスを調達する予定です。

 

【ガバメントクラウドの主な要件】

  • 不正アクセス防止やデータ暗号化などにおいて、最新で最高レベルの情報セキュリティの確保
  • クラウド事業者間でシステム移設を可能とするための技術仕様などが公開され、客観的に評価可能
  • システム開発フェーズから、運用、廃棄に至るまでのシステムライフサイクルを通じた費用が安い
  • 契約から開発、運用、廃棄に至るまで国によってしっかりと統制ができる
  • データセンタの物理的所在地を日本国内とし、情報資産について、合意を得ない限り日本国外への持ち出さない 
  • 一切の紛争は、日本の裁判所が管轄するとともに、契約の解釈が日本法に基づくこと 
  • そのほか、IT室が求める技術仕様(別途ガバメントクラウドを提供するクラウド事業者の調達において提示)をすべて満たすこと 

 

ガバメントクラウドは、複数のクラウドサービス事業者が提供する複数のサービスモデルを組み合わせ、相互に接続する予定です。上記の要件はあくまで予定なので、状況により変更になる可能性もあります。

まとめ

2022年6月時点、日本政府の共通クラウド基盤「ガバメントクラウド」に採択されているのは、2社の海外メガクラウドのみです。経済安全保障上、安定供給が必要な「特定重要物資」にクラウドサービスが指定される流れもあり、国産クラウドへの期待が高まっています。

最後にさくらインターネットの取り組みを紹介します。2021年3月「さくらのクラウド」が、ガバメントクラウドの採択条件である政府のセキュリティ評価制度「ISMAP」に登録されました。

2022年4月には「ガバメント推進室」を立ち上げ、デジタル・ガバメントの推進に向けて取り組む方々としっかりとリレーションを構築していきます。くわしくは、国産クラウドベンダーとしての挑戦!新組織「ガバメント推進室」の取り組みをご覧ください。

まだまだ課題はありますが、今後のガバメントクラウド登録に向けて取り組みを進めていきます。

 

ガバメント推進室の資料ダウンロード

 

ガバメント推進室へのお問い合わせ