ガバメントクラウドとは?概要や自治体の導入メリットや課題、対象クラウドサービスなどを解説

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ガバメントクラウドとは?意味や目的、先行事業の内容をわかりやすく解説

デジタル化のメリットを実感できる「デジタル社会」を実現するためには、デジタルガバメントの推進は重要です。社会全体のデジタル化を進めるため、国や地方の行政がデジタル技術やデータを活用し、DX(デジタルトランスフォーメーション)を実現する必要があります。DXについては「デジタルトランスフォーメーション(DX)とは? 意味や定義をわかりやすく解説」をご覧ください。

この記事では、ガバメントクラウドの意味や目的、自治体の導入メリットや課題、対象サービスを解説しています。

ガバメントクラウドとは?

ガバメントクラウド(Gov-Cloud)とは「政府共通のクラウドサービス利用環境」のことです。デジタル庁のホームページには、ガバメントクラウドについて次のように記載されています。

政府共通のクラウドサービスの利用環境です。クラウドサービスの利点を最大限に活用することで、迅速、柔軟、かつセキュアでコスト効率の高いシステムを構築可能とし、利用者にとって利便性の高いサービスをいち早く提供し改善していくことを目指します。地方公共団体でも同様の利点を享受できるよう検討を進めます。

(引用:デジタル庁 ホームページ

クラウド・バイ・デフォルト原則

ガバメントクラウド導入の前提となる考えが、「クラウド・バイ・デフォルト原則」です。クラウド・バイ・デフォルトの原則とは「政府情報システムを整備する際、クラウドサービスの利用を第一候補として検討する」基本方針です。オンプレミス中心となっていた行政システムにクラウドの柔軟性を取り入れ、コストの削減や効率化、セキュリティの向上などを図ります。

ガバメントクラウドを使うユーザーは?

ガバメントクラウドは政府共通のクラウドサービス利用環境ですので、ユーザーは政府や地方公共団体となります。国の行政機関は1府2庁11省、地方公共団体は47の都道府県と1,724の市町村があります(2024年2月現在)。

ガバメントクラウドで利用が想定されているクラウドサービス

ガバメントクラウドで利用が想定されているクラウドサービスは、次のとおりです。

クラウドサービスの種類

クラウドサービスの内容

IaaS(Infrastructure as a Service)

インターネット経由でハードウェアやICTインフラを利用できる仕組み

SaaS(Software as a Service)

インターネット経由でソフトウェアを利用できる仕組み

PaaS

インターネット経由でソフトウェアの開発・運用環境を利用できる仕組み

ガバメントクラウドに認定されているサービスを使えば、クラウドサービスが提供する高いセキュリティと可用性、スケーラビリティを利用できます。

 

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ガバメントクラウド移行のスケジュール

ガバメントクラウド移行は段階的に実施されています。これまでのおもなできごとや今後の予定は以下のとおりです。

年月

おもなできごと・今後の予定

2020年12月

「デジタル・ガバメント実行計画(改定)」閣議決定。「クラウド・バイ・デフォルト原則」を踏まえた政府情報システム整備が周知される

2021年1月

「地方自他体によるガバメントクラウドの活用について(案)」発表。「地方自治体の業務システムの統一・標準化に向けたスケジュール(イメージ)」が公開される

2021年10月~2024年2月現在継続中

「ガバメントクラウド先行事業」公募実施。8事業者を採択し、現在も継続的に検証中。

2022年10月

令和4年度におけるガバメントクラウドの対象となるクラウドサービスを決定

  • Amazon Web Services(AWS)
  • Microsoft Azure
  • Google Cloud
  • Oracle Cloud Infrastructure

2023年11月

令和5年度におけるガバメントクラウド整備のための新規クラウドサービスを決定

  • さくらのクラウド(※2025年度末までにすべての要件を満たす条件付き)

~2025年度末

地方自治体の基幹業務システムを標準化し、原則すべての地方自治体で活用開始を目指す

ガバメントクラウド 検証のための先行事業

地方自治体の基幹業務システムについては、令和7年(2025年)度末までにデジタル庁が調達するガバメントクラウドを活用し、標準準拠システムを市町村が安心して利用できるようにする方向です。その前にガバメントクラウドを安心して利用できると実証するために、「ガバメントクラウド先行事業」がおこなわれることになりました。

先行事業の目的

先行事業の目的は、以下3つです。

  • ガバメントクラウドや回線を市町村が安心して利用できるか検証するため
  • 標準準拠システムの移行方法検証のため
  • コストパフォーマンスの検証のため

令和3年(2021年)に公募がおこなわれ、2024年2月現在も継続して実施されています。先行事業の内容は下記のとおりです。

  • 市町村に対して、市町村の基幹業務システム
  • 都道府県に対して、地方自治体のセキュリティシステム

先行事業へは52件の応募があり、そのうちの8件が採択されました。

先行事業に採択された団体

採択された8団体の規模やシステム構成、採択理由を具体的に見ていきましょう。

団体名

団体規模

システム構成

採択された理由

神戸市

20万人以上(政令指定都市)

マルチベンダー

政令指定都市で影響度の高い住基・共通基盤が対象。ほかの大規模単体へのモデルとなりうるため

倉敷市(高松市、松山市と共同提案)

20万人以上

マルチベンダー

3団体が同じアプリを使用。共同検証実施によって構築・移行方法などの検証結果が得られるため

盛岡市

20万人以上

オールインワンパッケージ

現在はハウジング運用のため、クラウド利用経験のない団体のモデルケースになるため

佐倉市

5万人以上20万人未満

マルチベンダー

主要17業務をすべて含む合計27システムに加え、マネージド型のPaaSサービス及びクラウドが提供するテンプレート機能を積極利用し構築・移行するため

宇和島市

5万人以上20万人未満

オールインワンパッケージ

低コストで、主要17業務をすべて含む合計55システムの検証が可能なため

須坂市

5万人以上20万人未満

オールインワンパッケージ

ガバメントクラウド接続に県域WANを共同利用する接続検証を実施。既存のインフラを活用した移行のモデルとなりうるため

美里町(川島町と共同提案)

5万人未満

オールインワンパッケージ

クラウド移行について、複数の方式を検討・試行。費用、移行時間、品質、セキュリティ、作業負担等の観点から比較し、他団体が移行方法を検討する際のモデルとなりうるため

笹置町

5万人未満

マルチベンダー

フレッツ光対象外の地域ならではとして、安価に接続できる回線のあり方を検証。同様の事情を抱える団体のモデルケースとなりうるため

出所:デジタル庁 ガバメントクラウド先行事業の採択結果について(市町村の基幹業務システム)

この中でも神戸市は政令指定都市で、人口が150万人程度(2024年1月時点)という大規模な自治体です。神戸市の先行事業内容について確認しましょう。

ガバメントクラウド 神戸市の先行事業

ガバメントクラウド上に「住民記録システム」と「共通基盤システム」を移行し、ガバメントクラウドや回線が安全に利用できるか、またその投資対効果も検証。検証中は既存システムを並行稼働させているようです。

神戸市はシステム運用コストや、制度改正時の改修コストの削減などといった効果を期待し、この先行事業に手を挙げたそうです。

地方自治体がガバメントクラウドを導入するメリット

ガバメントクラウド利用のメリットを4つ紹介します。利用する各自治体だけではなく、住民である私たちにもメリットがあります。

1.コスト削減

ガバメントクラウドを活用すれば、サーバーやOS、アプリを共同利用できます。行政や自治体が個別に開発したり、サーバーを自前で調達する必要がなくなります。

たとえば、民間企業がガバメントクラウド上で開発したアプリを行政や自治体などが選べるようになり、開発コストや運用コストの削減につながります。

2.住民がサービスを使いやすくなる

ガバメントクラウドを活用すれば、情報システムの迅速な構築と柔軟な拡張が可能です。行政手続きのオンライン化や、サービスのワンストップ化などが実現しやすくなります。こうしたことが実現すると、従来よりも行政サービスが使いやすくなり、住民がサービスを使いやすくなります。

3.データ連携しやすくなる

ガバメントクラウドを活用すれば、アプリ移行のデータ移行が容易になります。

しかし、データ連携をしやすくするためには、データの標準化が必要となります。現在、国は地方公共団体の情報システム標準化を推進しています。地方自治体は、このデータ要件・連携要件の標準に適合したシステム利用が、標準化法によって義務化されます。

4.個別のセキュリティ対策や運用監視が不要

セキュリティ対策や運用監視をガバメントクラウドがまとめておこなえば、各団体が個別に対応する必要がなくなります。そのため専門知識のない団体でも、最新のセキュリティ対策が可能となります。

ガバメントクラウドの要件

ガバメントクラウドの要件として、まずは政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)のリストに登録される必要があります。

ISMAPについては「ISMAPとは?制度の概要やクラウドサービスリストについてわかりやすく解説」でくわしく解説しています。

デジタル庁はISMAPのリストに登録されたサービスから、基本要件や技術要件を満たしているか審査し調達します。

ガバメントクラウドの対象クラウドサービス一覧(2024年2月時点)

現在ガバメントクラウドの対象となっているクラウドサービスは以下の5つです。

  • Amazon Web Services(AWS)
  • Microsoft Azure
  • Google Cloud
  • Oracle Cloud Infrastructure
  • さくらのクラウド

「さくらのクラウド」が国内初のガバメントクラウドに条件付きで認定

2023年11月に、さくらインターネットが提供するIaaS型クラウドの「さくらのクラウド」が、2023年度にデジタル庁が募集した「ガバメントクラウド整備のためのクラウドサービス」(ガバメントクラウド)に国産サービスとして初めて認定されました。本認定は、2025年度末までに技術要件をすべて満たすことを前提とした条件付きの認定です。

経済安全保障上、安定供給が必要な「特定重要物資」にクラウドサービスが指定される流れもあり、国産クラウドへの期待が高まっています。

今後は「さくらのクラウド」の開発強化に加え、周辺機能の一部はMicrosoft社の製品などのサードパーティ製品を用いて開発を実施し、2025年度中にガバメントクラウドとしての機能拡充を目指します。

>>さくらインターネット、ガバメントクラウドサービス提供事業者に選定

 

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※2024年3月4日 一部内容を更新