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「中の人になってクラウドを”作りたい”」。さくらインターネットへの転職理由とは? 藤原俊一郎(fujiwara)インタビュー【後編】

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さくらインターネットではエンジニアの採用を積極的におこなっています。今回は、2025年2月に入社したクラウド事業本部の藤原俊一郎にインタビューを実施しました。インタビュアーは、一足早くさくらインターネットへ入社したクラウド事業本部 荒木 靖宏。後編となる今回は、さくらインターネットへ転職した理由や、これからやりたいことなどを聞きました。

藤原 俊一郎(ふじわら しゅんいちろう) プロフィール

さくらインターネット クラウド事業本部
面白法人カヤック(株式会社カヤック)のバックエンドエンジニア、SREを経て、2025年2月、さくらインターネットへ入社。ISUCON優勝回数4回、出題3回の経歴を持つ。Amazon ECS向けデプロイツール「ecspresso」を始めOSSを多数開発。著書に『みんなのGo言語[現場で使える実践テクニック]』(共著、技術評論社)、『達人が教えるWebパフォーマンスチューニング 〜ISUCONから学ぶ高速化の実践』(共著、技術評論社)。@fujiwara

「クラウドのコンポーネント自体を作ってみたい」という想いからクラウドを作れるさくらインターネットへ入社

荒木

ここまでは藤原さんのキャリアや開発におけるモットーなどを聞いてきました。
>>前編を読む:便利なOSSを多数開発。“隙間家具職人”の開発モットーとは? 藤原俊一郎(fujiwara)インタビュー【前編】

話は変わりますが、さくらインターネット入社の経緯や、これからやってみたいことなどを聞きたいです。

藤原

機能やツールがいっぱいそろっている、他社のクラウドのうえで開発をしようとすると、どうしても「小さいものを作って、それで間を繋ぐ」みたいな使い方が最適になります。それはそれでよいのですが、もうちょっと違うもの、クラウドのコンポーネント自体を作ってみたくなったんです

ミドルウェアは自分でいちから作っても、デプロイしてIaaSの上で運用する必要があり、そうするとクラウドのマネージドサービスを使ったほうがよいとなってしまう。なので、作りようがないというか、作っても使えません。でも、作りたいなという欲求がじつはありました。そういうものを作りたいんだったら、クラウド自体を作るしかないなと。そっちのほうがおもしろそうだと思い、さくらインターネットに入ったわけです。だから、やりたいことはクラウドのコンポーネントを作ることです。

荒木

うんうん。

藤原

入社直後に配属されたのが、IaaSの基盤開発というところで、IaaSのVM関連の開発の担当になります。それもやりつつ、将来的には何か別のマネージドサービス、いまさくらのクラウドでは、たとえばキュー(シンプルMQ)やAppRun β版(2025年2月時点はβ版の提供)などのいろんな新しいサービスが出ていますが、そういうものの開発もやってみたいです。

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エンジニアが「あ、これ気持ちいいな」と思うものを作りたい

荒木

開発に携わるといっても、いろんな携わり方があると思います。最初のアイデアを出すのもそうですし、そういう人たちに必要な開発環境を用意する、運用環境を用意するなどもあるでしょう。藤原さんだったら、何でもできそうですが、関わり方としてはやはり運用を手伝うというイメージでしょうか?

藤原

どちらかというと、ミドルウェアとかのコードを書きたいですね。運用していない人が書いたコードは絶対使いづらくなるので、コードを書きたいです。そういう意味では、運用をちゃんとやれる状態にしながら、運用する人がコードを書くという状態を維持したいですね。

荒木

なるほど。現時点で「こんなものを作ってみたい」というものは何かありますか?

藤原

現状のさくらのクラウドのサービスだとパーツが足りなくて、IaaS上で全部やらなくてはいけません。AWSなど広く普及しているクラウドに慣れた人に使ってもらうための機能が、ひと通り必要だと思うんですよね。キューやモニタリング、ログを見るなどです。いまはAppRun β版も出ましたけど、まだコンテナ運用に必要な機能に足りないものがあります。それが揃ったうえで、何か独自性のあるものが考えられるといいですね。具体的に何かはこれからです。

荒木

「同じことをやるんだったら速い方がよい」という、ISUCONはまさにそのチューニング競争なわけですが、そのように最速を目指すみたいなことも藤原さんはやれると思うんですけれど。同じものを速くする、同じものを効率的にするというより、新しいことをやってみたいですか?

藤原

いや、両方ですね。遅いものを速くすることには価値があるからやりたいですし、新しいものを作りたいのはもちろんです。

荒木

それこそ「よいものなんだけど、これ遅いから使い物にならんよ」みたいな。 

藤原

そうです。僕は運用や開発をしていて手触りが悪いものは嫌いなんですよ。クラウドを使う人はエンジニアじゃないですか。そのエンジニアがすっと使えて、「あ、これ気持ちいいな」というものを作りたいですね。

荒木

なるほど、エンジニアがすっと使える気持ちいいもの。エンジニアが使ってみたら、「あれ、何これ、思ったより動かない」ということにおもしろみを感じる人もいるとは思いますけど。

藤原

それは本当はストレスじゃないですか。やりたいことがある人がやりたいことができないのはよくないです。

荒木

“「やりたいこと」を「できる」に変える”ですね。 

藤原

そうです。それはさくらインターネットのビジョンでもありますからね。

クラウドを作る”中の人”になって、クラウド本体を使いやすいものにしたい

荒木

小さなツールから大きなシステムまで、たぶん藤原さんはやることになると思うし、どちらもできるとは思いますが、あえて聞きたいです。個人として作ってみたい小さなもの、チームとして作ってみたい大きなものを1つずつ挙げるとしたら、どんなものがありますか?

藤原

そうですね、小さなツールは、いままでのやってきたことの延長でしょうか。さくらインターネットの上で動くもので、補助的に役に立つものです。ただ、そのようなものはじつはないほうがよいというか……。なくて済むなら、なくてよいんですよね。これまでは、不満があって使いにくいと思ったから、その隙間の足りないところを埋めるようなものをずっと作ってきました。でも、そもそもクラウドがそういう隙間がない状態で提供されていれば、隙間を埋めるものも必要ないじゃないですか。その意味では、大きなもので言うと、ちゃんと本体のクラウドを使いやすいものにしたいです。 

荒木

なるほど、そこに繋がってくるんですね。

藤原

個人の好みや、いろいろなユースケースもあるので、100%全員に使いやすいものにするということはできません。だから、それぞれにとっての隙間があって、そこを小さいツールで埋めるのはもちろんありです。ただ、そもそもデプロイツールがないだとか、「公式に提供されてないからデプロイできません」みたいな状態でリリースされても、使いようがないじゃないですか。そういうのはよくないので、使いやすいものをちゃんと提供したいです。

いままでクラウドを外から使ってるだけだと、要望を上げることはできるし、要望通りに実装されることもありますが、とはいえ、よくないところを自分で手を動かして直せるわけではありません。さくらインターネットのエンジニアは”中の人”だから、直そうと思ったら直せる立場にいるというのはよいと思います。

荒木

それはさくらインターネットに入社して、「中から変えてやろう」というか、「中で挑戦してみよう」という気になった理由の1つですか?

藤原

そうですね。中に入らないと結局クラウドは作れませんから。

荒木

アダプターはいっぱい作れるけれど、クラウド本体を作るには中に入らなくてはけないということですね。

一緒に働きたい人がさくらインターネットにいた

荒木

それ以外にさくらインターネットに転職したいと思った理由は何かありますか?

藤原

一緒に働きたい人がいたことです。kazeburoさん(クラウド事業本部 副本部長 長野)tagomorisさん(クラウド事業本部 田籠)など、そういう人たちと1回働いてみたかったんです。

荒木

その人たちとは、イベントなどでは過去に何度も一緒になっていますよね。

藤原

それでいうと、ISUCONで一度tagomorisさんと一緒になったことがあるんです。ISUCONで僕は何回も優勝していますが、優勝したときは同僚か元同僚と組んでいたんですよ。tagomorisさんと組んだときは、もちろん知り合いではあったけれど、同僚でもないという状態でした。結果としては、全然うまく動けなくて予選落ち。やっぱりイベントとかで一緒になってやるぐらいだと、普段の仕事の距離感とはちょっと違うので、どこまで相手に踏み込んでいいのかがわからない。いろんなコミュニティなどで仲良くしている人はいっぱいいますが、一緒に働いて、ある程度の時間を共有しないとわからないことはあるんですよね。そういう信頼関係がないと、たぶんISUCONでは勝てないです。うまく動けないんですよね。どこまで突っ込んで指摘していいのか、一瞬判断が遅れたりしますし。

荒木

ISUCONは、単に速いCPUを当てればいいとか、そういうものじゃないですもんね。

藤原

そうなんですよ。これをやってくださいっていうのも、どういう風に頼んだらいいのか、普段からやっていないと、どうしても頼むほうに遠慮があったり余計なことを言ったりして、うまく動けないんですよね。

荒木

いわゆる阿吽の呼吸ができる、そういう3人じゃないと勝てない、シビアなものなんですね。

藤原

ISUCONは時間が決まってる競技だからロスがあると勝てない。それで普段から一緒に仕事をするということで、tagomorisさんやkazeburoさんなどと働いてみたかったというのは、結構大きな理由ですね。

荒木

ISUCONではリモート参加も可能ですが、それによるロスがあると勝てないように思います。リモートでチャレンジしたことはありますか?

藤原

ISUCON11のときは、僕はリモートで自宅にいて、チームメイトであるカヤックのメンバー2人は会社の会議室だったんです。だから、半分リモートですね。それで優勝できたので、リモートでも全然悪くないと思います。ただ、それは完全に普段の信頼関係ができたうえでの話です。普段の信頼関係をちゃんと作っていて、対面でもときどき会ってコミュニケーションを取っているような間柄であれば、リモートでも大丈夫です。

リモートワークで大事なのは「信頼関係」

荒木

さくらインターネットはリモートワークを前提とした働き方となっています。沖縄から北海道まで、基本的にどこに住んでいても働けるし、日本中から誰でも参加できる場が用意されています。いまの「リモート環境であっても信頼関係があればISUCONでも勝てる」というお話は、リモートワーク中心のさくらインターネットにとっても背中を押してくれる感覚はあると思います。「いや、リモートでも俺は勝ったし」みたいなことを言える人がいないと、逆に「やっぱり1か所の拠点に集まったほうがよいよね」という声が出てきそうな気がしますね。

藤原

そうですね。そういう意味では、3人中1人リモートでも優勝できるぐらいパフォーマンスは出せるというのは明らかになっています。

荒木

一方で、それは信頼関係を作ってからできることだと。

藤原

はい。それがないとダメだと思います。リモートでも対面でも、どちらにしろ信頼関係がないとダメです。

荒木

さくらインターネットはその信頼関係を作るための場ということを一生懸命、マネジメントチームなどが作ろうとしています。同時に、草の根的なことも大事じゃないですか。一緒にご飯を食べに行くこともあるし、それこそ一緒にコードを書くみたいなことが1番よいのかもしれません。

ものづくりが好きな人と一緒に働きたい

荒木

入社理由で「この人と一緒に仕事したかったから」というお話もありましたが、「藤原さんがいるならさくらインターネットに入りたい」という方もこれからいっぱい出てくると思います。藤原さんが、これからさくらインターネットで一緒に働きたいという人物像を教えてください。

藤原

一緒に何かものを作っていく仕事だから、やっぱり僕はものを作るのが好きな人がよいとは思います。「手段と目的」じゃないですが、クラウドの開発という仕事における目的は「ものを作ること」です。だから、それ自体がちゃんと好きな人、興味がある人がよいですね。「仕事として言われたらやりますよ」というスタンスの人だと、やっぱりよいものはできないと思っています。

荒木

それはそれでかっこいいのかもしれませんが、好きでやっている人を超えるのはなかなか難しいですね。

藤原

そうですね。たぶん一緒に働いていて楽しいのは、好きでやっている人のほうかなという気がします。

荒木

藤原さんはもうそろそろIT業界30年目。20代ぐらいの若手エンジニアになにかアドバイスはありますか?

藤原

自分のことは完全に生存バイアスなので難しいですよね。僕が成功したわけじゃないですけど、成功した人のやり方を真似してもうまくいくとは限らないんです。

荒木

そうですよね。でも、そこはあえてちょっと言うとしたら……。

藤原

「こうしておけ」とは言えませんが、やっぱりやっている仕事を好きになることだと思います。好きなことを仕事にするとつらいとよく言いますが、逆に、やっている仕事を好きになるぶんには問題ないんですよ。だって、つらかったら好きになれませんから。

荒木

確かにそうですね。

藤原

だから、やっている仕事があんまり最初は好きじゃなかったとしても、それが好きになれたら、それは向いているということだと思うので、そういうものを大事にしたらよいのではないでしょうか。

好きなことと得意なことは往々にして違うんですよ。僕はたまたま好きなことと得意なことが一致しているので非常に楽なんですが、違う人のほうが多いでしょう。なので、好きなことをやってうまくいかないと挫折してしまいます。それで、好きなものも嫌いになってしまう。でもそれとは別に、得意なことがなにかありますよね。やってみて得意だったことを好きになればうまくいくので、どちらかというと得意なことを見つけることのほうが大事です。

荒木

得意というのも、本人が思っている得意と、周りから見ている得意は結構違っていますよね。たとえばプログラマーだと、私などもそうですが、プログラムを書いていると結構時間が経つのを忘れる、というか、時間が早く経つんですね。これはよく考えると、時間あたりの生産性は悪いんじゃないかなという気もしますが、本人としては楽しいんですよね。

藤原

そうですね。得意なことは、自分があまり苦しまずにやれるけれど、結果が出るものです。苦しまないで結果が出るのが、つまり、得意ということだと思います。苦しんで結果を出すのは続かない可能性があるので、本人の意識としてあまり大変じゃないと思っているけれど、なぜか人から評価されるということは得意なんだと思います。人によって苦もなくできることは違います。苦もなくできて、人にたまたま評価されることがあって、その得意なことをうまく好きになったらよいのではないでしょうか。

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(撮影:ナカムラヨシノーブ)

取材

荒木 靖宏

さくらインターネット クラウド事業本部 株式会社インターネットイニシアティブ、ネットビレッジ株式会社(現:株式会社fonfun)を経て、ヒューレット・パッカード研究所でモバイルネットワークおよびサービス基盤の研究に従事。2010年、東京大学基盤情報学専攻 博士号取得(科学)。その後、DeNA(株式会社ディー・エヌ・エー)を経て、2011年にアマゾンウェブサービスジャパン合同会社(AWS)へ入社し、13年間ソリューションアーキテクトとして活動。2024年9月、さくらインターネットに入社。

執筆

田籠 聡

さくらインターネット クラウド事業本部。大学卒業後、インターネットサービスプロバイダ、ITインフラ系のSIerで働いたのち株式会社ライブドアに入社し、インフラ担当やデータ分析関連を担当するプログラマーとして勤務。その後、トレジャーデータ株式会社に参画し、バイアウトなどを経験したあと離職。フリーランスとして技術顧問や個人サービス開発などに数年携わったのち、2024年8月にさくらインターネットに入社。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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