DX投資促進税制とは?経済産業省や国税庁の出典を示しながら解説

DX投資促進税制とは?経済産業省や国税庁の出典を示しながら解説

 

DX投資促進税制とは何かをテーマに、経済産業省や国税庁の出典を示しながら解説します。DX(デジタルトランスフォーメーション:読み方は「ディーエックス」)という、事業のあり方を変革するデジタル化が国に推進され、税の優遇施策がおこなわれています。

事業者はDX投資促進税制を活用するにあたり、官公庁の発信する情報を読み解く必要があります。

本記事が一助になれば幸いです。

DX投資促進税制はDXのための投資をおこなう事業者への優遇措置

「DX投資促進税制」は、DXで事業を変革するための投資に対し、指定期間内の税の優遇をおこなう措置を指します。

事業者が税優遇を受けるには、期限までに大きく分けて2つのアクションが必要です。

  1. 要件を満たしてDXの認定を受ける
  2. 事業計画書(認定事業適応計画)を作成し、電子申請する

DX投資促進税制はいつからいつまでの投資が対象になる?

DX投資促進税制は「税制の施行が明らかになる日(2021年3月31日)」から「令和5年(2023年)3月31日までに、取得等をし、事業の用に供した認定事業適応計画に記載した設備」の投資に対して適用されます。

*カッコ内は引用:DX投資促進税制Q&A:No.6、No.12|経済産業省

 

「取得」とは、「ソフトウェアや機械等の所有権を得たこと、つまりソフトウェアや機械等の購入等をしたこと」だけでなく、設備の検収を完了させた状態を含めます。判断に迷うケースは所轄の税務署に相談したうえで申請する必要があります。

参考:DX投資促進税制Q&A:No.13|経済産業省

 

また、DXの認定は独立行政法人情報処理推進機構(IPA)がおこないますが、申請からDXの認定までに60日かかります。なお、実カレンダー上で約3〜4か月かかるため、スケジュール管理に注意が必要です。

参照:DX認定制度 申請から認定取得までの期間について|独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

DX投資促進税制が適用されるDXの具体例と認定要件

DX投資促進税制が適用されるDXの具体例と認定要件

 

一般的に、DXには次の要素が含まれます

  • リアルタイムでのデータの集約と共有、システム連携
  • ロボットやIoT、AIなどの最先端技術を活用した自動化や無人化

一般的なDXの意味や定義、具体例をおさえたい方は次のコンテンツをあわせてご覧ください。

 

ただし、一般的にDXを呼ばれる要素があっても、必ずしもDX投資促進税制の適用を受けるとは限りません。DX投資促進税制が適用されるDXは、IPAの示す「DX推進指標」に基づき、ビジネスモデルや企業文化などの変革を伴う「価値」を創出している必要があります。

参照:DX推進指標 (サマリー)|独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

 

DXの取り組みには成熟度があり、経営者が取り組みを理解していないもの、システム関連部門だけが頑張るものは成熟していないDXとみなされ、優遇税制の適用外になる可能性が高いです。

全社戦略として経営者も全社員もDXのビジョンを共有し、持続的に行える組織づくりをおこない、最終的にはグローバル市場での競争力につながるDXが求められます。

なお、DX投資促進税制に認定された企業の具体例を知りたい方は、次をご覧ください。DXの概要だけでなく、認定省庁や詳細資料、実施状況報告書が閲覧できます。

 

また、IPAに認定されたDXの具体例は、DX推進ポータルにて、DX認定された事業者の申請書をダウンロードし、個別に確認できます(Word形式・読み取り専用)。

DX認定制度 認定事業者の一覧|DX推進ポータル - 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

DX投資促進税制の概要

DX投資促進税制の概要

 

DX投資促進税制の概要として、対象事業者や対象設備、対象投資額、税制措置について解説します。

なお、国が税の優遇をおこなってまでDXを推進する背景については、次のコンテンツで解説する「DXの必要性」をご確認ください。

DX投資促進税制の概要

対象事業者

青色申告書を提出する法人で、「認定事業適応事業者(*1)」

参照:No.5924 デジタルトランスフォーメーション投資促進税制(情報技術事業適応設備を取得した場合等の特別償却又は税額控除)|国税庁

*1 産業競争力強化法|e-Gov 第21条の28(課税の特例)第2項に規定される。要は、必要な手続きを行なった事業者を指す。

対象設備

事業の用に供されたことがない次の設備および資産(*2)が対象

  • 情報技術事業適応設備(ソフトウェア、器械装置、器具備品など)
  • 事業適応繰延資産(ソフトウェア利用費やクラウドシステムへの移行に係る初期費用など)

*2  DX投資促進税制Q&A:No.14 「事業の用に供する」とは、具体的にどのタイミングを指すのか。|経済産業省)

対象投資額

  • 国内の売上高0.1%以上が投資額の下限
  • 設備と資産をあわせて300億円が投資額の上限(300億円を上回るケースは300億円まで適用)

参照:産業競争力強化法に基づく事業適応計画の認定(DX投資促進税制)|経済産業省 関東経済産業局

*3 グループ外の他法人とのデータ連携が含まれる場合は5%の税額控除が適用可

税制措置

対象設備の購入や取得の費用について3%(*3)の税額控除、または特別償却30%を適用可

注:「カーボンニュートラル投資促進税制」と合わせて当期法人税額の20%までの税額控除上限あり

DX投資促進税制の要件

DX投資促進税制の適用を受けるには「デジタル要件」と「企業変革要件」を満たす必要があります。

デジタル(D)要件

  1. データ連携
  2. クラウド技術の活用
  3. IPAによる「DX認定」の取得

企業変革(X)要件

  1. 生産性向上、または売上上昇が見込まれる(過去5年のROAなら1.5%、売上高伸び率5%向上等を示す)
  2. 計画期間内でコスト削減が見込まれる(商品の製造原価が8.8%以上等を示す)
  3. 全社の意思決定に基づく(取締役会等の決議文書等を添付する)

*参照先の情報を一部抜粋して再構成

参照先:産業競争力強化法に基づく事業適応計画の認定(DX投資促進税制) 制度の概要|経済産業省 関東経済産業局

 

データ連携とクラウド技術の活用なしにDXを設計するほうが難しいため、デジタル要件は、本記事の冒頭でも説明した「DX推進指標」を参考に取り組みをチェックし、「DX認定」の申請し、認定をされることで満たせると考えてよいでしょう。

参照:DX推進指標 (サマリー)|独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

 

企業変革要件については、事業適応計画の認定のための申請書類で必要事項を記入し、申請し、承認を受けることで満たせます。

DX投資促進税制の手続きの流れ

DX投資促進税制の手続きの流れ

 

DX投資促進税制の手続きは、次の通りにおこないます。

  1. 税制の適用要件を確認して事前相談をする
  2. IPAに申請してDX認定を取得する
  3. 事業適応計画と必要書類を用意して電子申請する
  4. 計画通りに設備投資をおこなって税務申告と報告をおこなう

手続きの全体フロー図をご覧になりたい方は、次の資料もあわせてご覧ください。

参照:産業競争力強化法における事業適応計画について p.33 【参考】DX投資促進税制に関する手続のフローイメージ|経済産業省

1.税制の適用要件を確認して事前相談をする

まず、DX投資促進税制の適用要件を確認します。

要件に合致するかどうかの確認したら、申請前かつ計画開始を予定する時点から1〜2か月前に事業を主管する主務官庁への事前相談が必要です。担当業種によって相談先の省庁が変わるので、注意します。

参照:産業競争力強化法における事業適応計画について p.46 申請手続のスケジュールイメージ、p.49計画認定の各省庁窓口|経済産業省

 

なお、要件の確認に際しては、本記事でこれまでご紹介した出典元の中でも、次の参照先とDX投資促進税制の概略とQよくある質問に回答された2つの資料は必読といえます。

 

 

ただし、読み解く上での注意したいのは「事業適応計画」としての枠組みで、「DX投資促進税制(情報技術事業適応)」以外にも、産業競争力強化を目的としたエネルギー関連の別の類型の申請も受け付けている点です。

「DX投資促進税制」に関する情報は、「事業適応計画」として共通する部分と、「DX投資促進税制」または「情報技術事業適応」と書かれている部分だけなので、読み違えないよう注意してください。

2.IPAに申請してDX認定を取得する

2.IPAに申請してDX認定を取得する

 

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)に申請し、DX認定を受けます。

次の参照先の手順に従い、DX認定の申請をおこないます。

参照:DX認定制度 Web申請受付中!|IPA(情報処理推進機構)

 

本記事の冒頭でも解説した通り、IPAへの申請から「DX認定」の取得までに60日(実カレンダー上では約3〜4か月)かかるため、申請の後工程のスケジュール管理に気を付ける必要があります。

参照:DX認定制度 申請から認定取得までの期間について|独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

 

DX認定の申請の流れは次でも確認できますが、DX推進ポータルを利用するDX認定の申請はGビズ(gBiz)が必要です。

参照:DX認定制度の概要及び申請のポイントについて p.10 DX推進ポータルにおける申請から認定まで|経済産業省

 

なお、Gビズ(gBiz)アカウント未所持の方は、利用者登録に書類審査がある関係で1週間程度かかるため、DX認定の申請準備を始めるタイミングでアカウント発行をおこないます。

参照:gBizID トップページ|デジタル庁

3.事業適応計画と必要書類を用意して電子申請する

事業適応計画と必要書類を用意し、電子申請をおこないます。なお、計画の申請から審査には1か月程度かかります。

参照:産業競争力強化法における事業適応計画について p.46 申請手続のスケジュールイメージ|経済産業省

 

電子申請にはGビズ(gBiz)を利用するため、利用者マニュアルもよく確認します。基本的にフォームへ入力し、添える必要がある書類は添付するイメージで利用します。

 

また、事業適応計画の申請時のポイントや記載例がわかる次の資料はよく読み込んでおきます。

 

申請先や添付書類のフォーマットについては次をご覧ください。

参照:事業適応計画(産業競争力強化法) 3.申請について|経済産業省

4.計画通りに設備投資をおこなって税務申告と報告をおこなう

計画通りに設備投資をおこない、税務申告と報告をおこないます。税務申告についての詳細は、国税庁の情報を確認します。

 

なお、税務申告の際に次の文書が必要になります。

  • 認定計画の申請書の写し
  • 課税の特例要件への適合性を確認した関係省庁の認定書または確認書の写し

報告では電子申請と同じGビズを使用し、事業適応計画の実施状況報告書を提出します。計画が複数年にまたがる場合、年度ごとの実施状況報告書を提出が必要です。

認定事業適応計画と実施状況報告書は、次のようにweb上で公表されるため、表現には注意します。