CXとは?その意味や向上の手法など解説

マーケティング施策や経営戦略において、CX という言葉を目にする人も多いのではないでしょうか。この記事では、マーケティング用語として使用される CX について解説します。

 

UX や CS など、CX と関連する用語の意味やそれぞれの違い、CX向上に必要となる具体的な手法なども説明するのでぜひ参考にしてください。

CX とは「顧客体験」を意味するマーケティング用語

CX(カスタマーエクスペリエンス)は、顧客が商品・サービスの購入や利用を検討する段階から、購入および利用後のアフターフォローなど、商品やサービスに関連する顧客の体験すべてを指します。

【CXの具体例】

購入/利用前

・検討段階で目にするプロモーション
・問い合わせ時の対応

購入/利用時

・店舗の雰囲気(内装・BGM・香りなど)
・店舗での接客対応

購入/利用後

・アフターサービス
・メンテナンス

 

たとえば、これまでに体験したことのない購入方法や感じの良い接客、他店にはないコンセプトや雰囲気などの価値ある体験が CX に該当します。

 

また、商品やサービスを購入および利用したあとの手厚いアフターサービスやメンテナンスなどの対応も CX の一部です。

 

購入時だけでなく、商品やサービスに関わるすべてのタイミングにおける顧客の心理的価値を含む体験が CX です。

CX はコーポレートトランスフォーメーションの略としても使われている

「コーポレートトランスフォーメーション」とは、企業の根幹的な変革のことです。

 

企業が時代や社会情勢の変容に対応し、事業継続性を確保するためにおこなわれます。コーポレートトランスフォーメーションによって、生産性の向上や優秀な人材の獲得が期待できます。

 

また、ビジネスでの優位性を得るために必要とされる DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現には、コーポレートトランスフォーメーションが重要です。企業の DX をデジタル導入で終わらせることなく、ビジネス成長につなげていくためには、組織内の抜本的な変革が求められます。

 

なお、DX とは、デジタル技術を活用してビジネスに変容をもたらすことです。DX推進に関する課題や解決策については、「日本企業におけるDX推進の課題と解決策を解説」で解説しています。

UX や CS との違い

UX や CSなど、CX(カスタマーエクスペリエンス)と類似する言葉がいくつかあります。

 

【類似用語の例】

用語

意味

UX(ユーザーエクスペリエンス)

顧客の購入/利用時の体験

CS(カスタマーサティスファクション)

顧客の商品やサービスに対する満足度

CS(カスタマーサクセス)

顧客の成功体験支援

 

たとえば UX は、購入および利用時の体験そのものを指します。購入・利用前後の体験を含まない点で CX とは異なります。

 

続いて、CS(カスタマーサティスファクション)とは顧客満足度のことです。商品やサービスへの満足度の指標となるものであり、CX の延長線上にあります。また、CS は 「カスタマーサクセス」の略称でもあり、顧客の成功体験支援を指すケースもあります。

 

なお、これらの用語は対象となる顧客の体験や心理が異なります。CX は UX を含む体験であり、CX の延長線上に CS(カスタマーサティスファクション)があるため、マーケティングにおいてそれぞれが関連しているといえます。

CX が重要視される理由

CX向上には以下のようなメリットがあるため、企業のマーケティング活動において重要視されています。

さらに、CX が重視される背景には、2つのことがあげられます。1つ目は、情報化が進む現代社会において顧客との接点が複雑化したこと、2つ目は、モノがあふれる社会で商品やサービスの差別化が難しくなっていることです。

 

複雑化する市場で優位性を確保するため、マーケティング戦略において CX向上が重要視されるのです。

 

では、上記にあげたCX向上の3つのメリットについて1つずつ解説します。

顧客やリピーターを獲得できる

顧客が商品やサービスのファンになると「ロイヤルティ」を高めることができます。ロイヤルティとは、企業や商品、サービスなどに対する愛着や信頼のことです。

 

世の中には、さまざまな商品やサービスがあふれています。購入した商品そのものに満足したとしても、購入方法が煩雑だったりアフターサービスに不満が生じたりした場合、その顧客はリピーターにならないかもしれません。

 

一方、類似するものの中から購入する商品を選ぶ際に、購入前の問い合わせ対応に好感を持ったり、店舗の居心地がよく魅力的に感じたりした場合、顧客は次回も商品を購入する可能性が高まります。

 

新規顧客やリピーターを獲得するためには、商品やサービスそのものだけでなく、顧客に価値ある体験を提供することが重要です。そのため、CX を重視し向上する必要があるといえるでしょう。

ブランディングに直結する

魅力ある CX を通して、顧客に商品やサービスのファンになってもらうことで、ブランドとしての信頼を得ることができます。

 

マーケティングにおける「ブランディング」とは、企業イメージの確立や競合との差別化を図る活動のことです。ブランディングの成功によって、新規顧客の獲得や既存顧客の長期的な購入・利用につながります。

 

ブランディングを成功させるためにも、顧客の期待を裏切らない質の高い CX を提供していく必要があります。

口コミによる宣伝効果が期待できる

顧客満足度の高いCX であれば、SNS などで発信・拡散され、商品やサービスの認知度を高めてくれる可能性があります。

 

たとえば、思わず誰かに話したくなるような体験をすると、友人や知人に話したり、SNS で発信したりする場合があります。また、信頼できる友人や影響力のある人が発信した口コミを参考にする人もいます。

 

消費者庁の調査によると、購入に際して消費者のレビューを参考にする人は 58.2% と半数以上にのぼります。*1 満足度の高い CX によって、口コミをする顧客が増えれば、企業や商品・サービスに対する消費者の期待も高まるといえるでしょう。

 

顧客にポジティブな発信をしてもらえるような CX を提供するために、企業努力が必要です。

CX向上に必要な3つのステップ

CX向上に必要なステップは、おおまかに分類して以下の3つです。

  • 顧客の行動を整理する
  • 現状を把握し戦略を策定する
  • 定期的な検証および改善をおこなう

顧客の行動を整理する

まずは商品やサービスの対象となる顧客像を設定したうえで、顧客行動を整理します。顧客行動を整理するときは「カスタマージャーニーマップ」を作成しましょう。

 

カスタマージャーニーマップとは、顧客が商品やサービスを認知した段階から購入に至るまでの接点を時系列に整理したものです。これにより「認知」「興味関心」「検討」「購入・利用」「購入・利用後」それぞれの段階での顧客の行動や心理を可視化します。

顧客の行動を段階別に整理することで、顧客目線で現状の課題点が把握しやすくなります。

現状を把握し戦略を策定する

作成したカスタマージャーニーマップをもとに、現状を把握し戦略を策定します。まずは段階に分けて顧客との接点を想定し、心理やニーズを把握します。そのうえで、提供する CX の内容や CX を提供するタイミングなど具体的な戦略を立てていきます。

 

たとえば、「検討」段階にある顧客が「購入・利用」に至るためにできる施策は何か検討します。また、「興味関心」が「購入・利用」につながらなかった原因を推測し改善策を練るなど、施策だけでなく各段階における課題を解決していく必要もあるでしょう。

なお、ECサイトなどオンラインで商品やサービスを提供している場合、カスタマージャーニーの全段階を通して、一貫性のあるイメージを訴求することを意識してみましょう。企業からのメッセージを伝えやすくなり、顧客とのコミュニケーションが円滑になります。

定期的な検証および改善をおこなう

カスタマージャーニーマップから把握した課題を解決しているか検証し、また、実際に提供したCX に対する顧客の反応を確認のうえ、改善していきましょう。CX に対する顧客の反応は、アンケート調査やカスタマーサポートに寄せられた意見などを通して取得します。

 

さらに、改善から新たな CX の提供や経営課題の解決につながるケースもあります。

 

このように、課題を明確にしたうえで、定期的に検証や改善をおこないながら、CX の質を高めていくようにしましょう。

CX 向上を成功に導くための取り組み

CX向上のための具体的な取り組みの例を3つ紹介します。ただし、企業やターゲットとなる顧客層によって必要となる取り組みは異なりますので、状況に応じて検討し、CX向上のヒントにしてください。

  • 顧客データを適切に活用する
  • 顧客感情に寄り添うアプローチ
  • DXを推進する

顧客データを適切に活用する

顧客データを通して、課題の把握や顧客目線で改善が可能です。

 

たとえば、アンケートやカスタマーサポートに寄せられた意見などから顧客データを取得し、自社のイメージやロイヤルティを分析するなどの活用方法があります。顧客の声であるデータから、潜在需要や経営課題を読み取り、CX や課題解決につなげられます。

 

また、ECサイト上で閲覧したページや、購入履歴などを活用し、顧客が関心を持っている商品のセール情報を表示するなども可能です。さらに一定の顧客層を設定し、限定クーポンを発行することで顧客に特別感を体験してもらいながら、利用を促す方法もあります。

 

なお、顧客データの適切な利用が課題となっている場合には、データを活用するためのプラットフォームを構築しましょう。社内でのプラットフォーム構築が難しい場合は、マーケティングオートメーションなど専用の ITツールを利用する方法もあります。

顧客感情に寄り添うアプローチ

顧客のさまざまな感情にアプローチすることで、きめ細やかな CX を提供できるでしょう。

【顧客感情に寄り添うアプローチの例】

訴求対象

アプローチ

感覚

・店頭での接遇
・カスタマーサポートでの対応
・アフターフォロー

知覚

・店舗のデザインやレイアウト
・店内の BGM や香り

興味関心

・購入履歴に応じたおすすめ
・SNS の利用履歴に基づく広告表示

 

たとえば、従業員によるサービスやコミュニケーションなど「感覚に訴えるアプローチ」があります。「感覚に訴えるアプローチ」は、購入時の店頭での接遇やカスタマーサポートでの対応、アフターフォローなどです。

 

また、店舗のデザインや BGM、香りなどは「知覚に訴えるアプローチ」です。

Web上の購入履歴に基づくおすすめ商品の表示や、SNS の利用履歴に基づく広告表示など「興味関心に応じたアプローチ」もあります。

 

商品やサービスの提供における顧客の接点を整理し、自社に適したアプローチを取り入れてみてください。

DXを推進する

CX向上のための DX推進として、コールセンターの問い合わせ対応にチャット機能を導入する方法があります。有人対応の場合、対応内容や人員数によって顧客を待たせてしまうことがありますが、チャットでの対応によって顧客を待たせることなく的確な回答を提供できる可能性があります。

 

また、紙ではなく、オンラインでアンケートの回答ができるようにすることで、CX向上につながる場合もあります。オンラインであれば、手書きのアンケートと比べて、気軽に回答しやすくなります。企業側にとっても、個別の要望に対応しやすくなるなどのメリットが考えられます

 

なお、DX推進によって CX が向上した事例については、「患者の待ち時間を大幅に短縮した「たける眼科」の DX」が参考になります。

CX向上に成功した事例

加入者2億人超の動画ストリーミングサービスでは、「感情分析」によって CX を向上させました。ユーザーの視聴履歴から好みに応じた作品を全面的に表示させ、予告編を効率的に短縮することで継続的な加入を促しています。

 

また、アプリと実店舗を連携させ、CX を向上させたスポーツ用品メーカーがあります。店舗の在庫や取り置き状況をアプリで確認できるしくみをつくることで、利便性の高い購入体験を顧客に提供できるようになりました。

 

なお、これらはあくまでも一例であり、Web上や実店舗、またデジタルと実店舗を連動させる方法など、さまざまな取り組みが考えられます。自社の商品やサービスに合った施策を検討してみてください。