2023年3月、さくらインターネットの新規事業創出プロジェクト「さくら満開プロジェクト」の一環として、「第2回さくらビジネスプランコンテスト」の最終審査会が、Okinawa Innovation Lab(沖縄県那覇市、株式会社みらいおきなわ内)で開催されました。本記事ではその様子をお届けします。
「新たなアイデアを形にするプロセスを通じ、新しいフィールドで活躍できる人材、サービスを増やしていくこと」を目的とし、2021年度から始まった「さくらビジネスプランコンテスト」。第2回目を迎える今回も、さくらインターネットのグループ社員からたくさんの応募がありました。
開催地は沖縄県那覇市。じつは沖縄県は開業率が全国1位の地域で、毎年多くの新規事業が生まれています。そして、さくらインターネットは、2021年に沖縄DX拠点の開設を発表し、現在沖縄の DX を支える施設を構築中。最終審査会の会場に沖縄が選ばれたのはこのような理由があります。
ファイナリスト(登壇順)
書類と動画による1次審査を通過したファイナリストは、5組7名。それぞれのチームにさくらインターネットグループの役員や役職者が2名ずつメンターとしてつき、最終審査会に向けてビジネスプランを練ってきました。
タイトル |
氏名 |
所属 |
SAKURA TRIP special tourism |
小原 栄介 |
さくらインターネット株式会社 事業開発本部 インキュベーション推進部 |
スタートアップに特化した |
山田 修司 |
さくらインターネット株式会社 事業開発本部 インキュベーション推進部 |
Gateway to work in Japan |
樺山 らんじゃん |
さくらインターネット株式会社 クラウド事業本部 プロダクトマーケティング部 |
GO Parking |
湊 弦樹 山口 廉 日野 巧己 |
ビットスター株式会社 サービス事業部 第二事業グループ 社長室 サービス事業部 第二事業グループ |
令和式料理体験「Cook-Hacker」 |
前佛 雅人 |
さくらインターネット株式会社 ES本部 ES部 |
社内外から審査員が参加
最終審査会では、社内外より以下の6名を審査員として迎えることができました。さくらインターネットの役員はもちろん、行政や地域の産業振興、そしてベンチャーキャピタルなど、さまざまな側面から新規事業に携わる方々にご参画いただくことができ、社内のビジネスコンテストとは思えない顔ぶれとなりました(敬称略)。
古謝 玄太 氏(那覇市 副市長) 兼村 光 氏(沖縄ITイノベーション戦略センター(ISCO)) 山田 優大 氏(Partners Fund 代表パートナー) 砂川 恵太 氏(株式会社みらいおきなわ 企画コンサルティング部 部長) 田中 邦裕 (さくらインターネット株式会社 代表取締役社長) 小笠原 治(さくらインターネット株式会社 フェロー) |
5組7名によるプレゼンテーションがスタート
1組あたりのプレゼンテーションは7分、審査員からの質疑応答7分、合計14分程度で、自身のビジネスプランをアピールします。
1組目「SAKURA TRIP special tourism」
最初の登壇者は小原 栄介。世界と地元をつなぐCtoCマッチングプラットフォーム「SAKURA TRIP special tourism」を提案しました。
「外国人観光客は増えているのに対し、地方自治体の対応が遅れていることや、一極集中によるオーバーツーリズム、逆にまったく来ない地域との格差が生まれていることなどに問題意識を抱きました。そこで考えたのが、日本を気軽に体験したい外国人観光客と、地元民おすすめの体験プランをマッチングして提供する、手軽に使えて特別感のある体験を提供するプラットフォーム事業です」
地元民、観光客、地域。観光地にかかわるすべての人に恩恵をもたらすエコシステムの実現を、デジタルの力で実現したい。観光地出身だという小原ならではのビジネスプランでした。
2組目「スタートアップに特化したバックオフィス代行プラットフォーム『BackofficeHQ』」
続いての登壇者は山田 修司。スタートアップに特化したバックオフィス代行プラットフォーム「BackofficeHQ」を提案しました。
「既存のバックオフィス代行サービスは、スタートアップ独自の商習慣やデジタル化・テレワーク化にスムーズに対応しきれておらず、使いにくいという課題があります。そこで、すべて丸投げOKで SaaS の操作は一切不要、さらにプロによるサポートを受けられるという、スタートアップでも使いやすいバックオフィス代行サービスを考えました」
誰もが当たり前に DX/SaaS による恩恵を受けられる社会を作りたい。そんな強い思いが伝わってくるプレゼンテーションでした。
3組目「Gateway to work in Japan 特定技能で働こう!」
続いての登壇者は樺山 らんじゃん。「特定技能ビザで働きたい外国籍の求職者」と「人材確保に悩んでいる中小企業」を人材紹介業者を介在させずダイレクトにつなげるセルフマッチングサービスを提案しました。
「人手不足が深刻化している国内の労働市場において、海外からの労働力確保が今後さらに活発化すると考えられます。このサービスによって、アプリ上で求人企業と特定技能の外国籍人材を直接マッチングさせ、日本社会が抱える人材不足の課題を解決します」
「外国人が日本で就業することで、日本経済も活発化するはず」と事業に対する想いを語る樺山。インドから日本企業に就職した自身の経験を活かしたビジネスプランでした。
4組目「GO Parking – 駐車場難民をゼロにする」
続いては、さくらインターネットのグループ会社であるビットスター株式会社から湊 弦樹、山口 廉、日野 巧己が登壇。スマートフォンで時間貸駐車場の検索から、満空情報の表示、ナビゲーション、キャッシュレス決済、駐車券表示、入出庫まで可能にするアプリケーションサービスを提案しました。
「満車で空いている駐車場が見つからない、キャッシュレス決済が使えないなど、時間貸駐車場には利用者、駐車場経営者ともに多くの課題が残されているのが現状です。これらの課題を解決するさまざまな機能を搭載したアプリケーションを考えました」
貸駐車場利用者と経営者へのアンケート調査にもとづいて提案された本プラン。「駐車場難民をゼロにする」ためのソリューションとして、その便利さを存分にアピールしました。
5組目「令和式料理体験『Cook-Hacker』」
最後の登壇者は前佛 雅人。献立を考える、買い物、食材管理、調理など、どうしても時間と手間がかかりがちな「料理」の負担を、デジタルの力で軽減するアプリ「Cook-Hacker」を提案しました。
「食材在庫、食べたいもの、アレルギーなどの条件をアプリに登録すると、AIが献立を提案してくれます。共働き世帯が増えている中、料理を負担に思っている人も多いようです。このアプリを使うことで、調理までにかかる手間を減らし、家庭に“余白”を生み出します」
OpenAPI による toBサービス化も視野に入れているなど、マネタイズの工夫からも本気度がうかがえる本プラン。「料理体験を楽しいものにしたい」という思いが伝わってくる熱いプレゼンテーションでした。
審査基準
参考となる審査基準は以下5つの項目です(各8点)。
題目 |
視点 |
解決する課題とその顧客 |
● 解決しようとしている課題や対象を明確に設定できているか ● 課題を詳細に見つめられているか |
ソリューション |
● 課題解決のためのソリューションは適切で、魅力あるものか ● そのソリューションは顧客目線で価値を提供できているか |
独自の価値提案(Unique Value Proposition) |
● すでに市場にある競合ソリューションを把握できているか ● 競合ソリューションがある場合、自身のアイデアの優位性は把握できているか |
指標・収益 |
● 将来的に成⻑を見込む市場を狙えるか ● 収益以外の成功を測る指標は示されているか(PV、ユーザー数、反復率……) |
アントレプレナーシップ |
● 事業に対する想いは人を惹きつけるものであるか ● ロジカルに伝えることができたか |
さらに、各審査員は独自の視点で10点まで加点できます。最優秀賞は、これらの点数の合計を参考に審査員の協議によって決定しました。
最優秀賞は「Cook-Hacker」
厳正なる審査の結果、最優秀賞は前佛 雅人の「Cook-Hacker」が受賞。
最優秀賞という結果に、「私でいいんですか?」という驚きの表情を見せる前佛。「今回のコンテストをきっかけに初めてビジネスプランを考えました。プランを考えていく中で、新しい視点が広がっていって、それがおもしろかったですね」とコメントしました。
審査員からのコメント
審査員長を務めた田中は、「まず、最終審査に残っていることが素晴らしい」とファイナリスト5組をねぎらいつつ、「優勝できなかったプランも含め、やる気があるのであれば、会社として支援していきたいと思っています」と、各プランの実現に向けてエールを送りました。
第1回に続いて審査員を務めた小笠原は、「いまのさくらインターネットの事業につながるような、スタートアップ支援やAI活用の話なども出てきたのが印象的でした」と、これからのさくらインターネットに期待を寄せました。
那覇市 副市長の古謝さんは「インバウンドの受入環境整備や、人手不足に対する特定技能の活用促進など、行政課題・地域課題とも重なるプランが多かったように感じました。今後、様々な形で連携していけたらと思います。」とコメントしました。
沖縄ITイノベーション戦略センターの兼村さんは、「『0→1』のサービスを考えるときは、解決策を考える前に、その課題に対してのどのような切り口で”問いを立てるのか?”が大事だと思います。”問い”が正しければおのずと解決策も正しくなるはずです。今日はいろいろな気づきがあったと思うので、ここからさらにブラッシュアップしていってください」とアドバイスを送りました。
Partners Fund 代表パートナーの山田さんからは、「今回優勝できなかったとしても、それは伸びしろがあるということです。今日受けた指摘をどう次に活かすかが大事だと思いますので、ぜひがんばってください」と激励のコメントをいただきました。
今回の会場をご提供いただいた株式会社みらいおきなわの砂川さんは、「所属部署にかかわらず社員の方が自発的に新規事業を考えられる、とても素敵な取り組みだと思いました。また沖縄でコラボレーションできる機会があればうれしいですね」とコンテストを振り返りました。
2回目の開催となった今回のビジネスプランコンテスト。当日は社内向けにライブ配信がおこなわれ、参加者以外も大いに刺激を受けたのではないでしょうか。まさに企業理念の「『やりたいこと』を『できる』に変える」を体現する本イベントが、来年以降も続いていくことを期待したいと思います。