勝ち組企業に学ぶ DXで「人材の争奪戦」に勝ち残るための、国際化の重要性

勝ち組企業に学ぶ DXで「人材の争奪戦」に勝ち残るための、国際化の重要性

現在、日本中が「DX」のかけ声で溢れていますが、その一方で、なかなかIT化が進まないという声も聞こえてきます。なかでも最もネックになっているのが人材獲得です。

DXを進めるうえで必要なデジタル人材の不足

かつてITといえば外注が当たり前でした。しかし最近ではトヨタを始め、社内で人材を採用する企業が増えてきています。

なぜトヨタは2022年の再編で「ソフト第一」にし、人材採用を変更するのか

今、DXを進めようと思った会社にとって避けて通れないのが、人材獲得という大きな問題なのです。日本でもずいぶん長く、デジタル人材の不足が報道されています。

2021年7月、NHKは

「急速に広がるデジタル化に対応しようと、企業の間で中途採用の枠を拡大する動きが相次いでいて、ITに精通した即戦力となる人材の獲得競争が激しくなっています」

と報じています。

日本IBMの山口明夫社長は「IT企業に限らず、社会全体でデジタル人材の重要性が増している。中途採用も簡単ではなく、若い人への教育など企業や国が人材の底上げに取り組むことも重要だと思う」と話しています。(*1)
引用:NHK デジタル人材の獲得競争激化 企業で中途採用の枠拡大

 

中途採用が簡単でない時代、もうゼロから人を教育したほうがいいーー

そうは言っても、教育するリソースも時間もない。では、どうやって少ないプールから人材を獲得するのか。海外に目を向けてみると、少し違ったやり方が見えてきます。

シリコンバレーではどうやって優秀なエンジニアを採用しているのか

シリコンバレーではどうやって優秀なエンジニアを採用しているのか

例えば米国のシリコンバレーに目を向けてみると、エンジニア採用には「質が大事だ」とする考え方が根強くあります。できるプログラマーには、お金に糸目を付けずに採用しようという文化があるのです。

優秀なエンジニアは、時にひとりで何人分もの仕事に匹敵することもあるようです。Googleの元プログラマーであるアラン・ユースタスも、エンジニアの質が大事だと言っています。

一流のエンジニアは、平均的なエンジニアの300倍の価値だ。ビル・ゲイツに言わせるとさらに過激で、優秀なソフトウェアプログラマーには平均的なプログラマーの1万倍の価値がある。

引用:ダイヤモンドオンライン 「スマホに1日平均11時間を捧げる現代人」が知っておきたい集中の話

 

ではいったいどうやって「何人分もの働きができる優秀なエンジニア」を見つけて、採用するのでしょうか?

ひとつのキーワードが、「たくさんの人材の中から見つける」です。そのためには、人材プール自体が大きい必要があるというのが、元アップルでシニアマネージャーをやっていた松井博さんです。

彼は著書『僕がアップルで学んだこと』でこう書いています。

アップルのように輝く会社を創りたいなら、人種、性別、容姿、あるいは年齢などで差別をしているようではとうてい及びません。よく「35歳未満のやる気のある男性を募集」などという求人案内を見かけますが、こうした広告を打った時点で35才以上の優秀な男性と全ての女性も一括で門前払いにしているのです。

引用:松井博 著,2012年『僕がアップルで学んだこと』アスキー・メディアワークス

 

日本国内だけで、日本人の男性だけの中から、「優秀なエンジニア」を探して「輝く会社」を作ろうと思っても、なかなか難しい。人材が大事な時代には、国籍など気にしていられないというのです。

避けて通れない「国際採用」の時代

避けて通れない「国際採用」の時代

『僕がアップルで学んだこと』によれば、アップルも、最初は白人の従業員が多かったのだそうです。ところがだんだん非白人比率が下がり、1990年代からは多国籍の人種で構成されてきたのだそうです。

多国籍の人種から選ぶメリットは、優秀な人材を取りやすいだけではありません。

「外国生まれの高度技能労働者」が、イノベーションを高めているという言説もあります。『2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ』にはこんな文章が出てきます。

数年前、カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究チームが、移民とこの絶対的基準のあいだに直接的な関連性を見いだした。2001年から2014年のあいだに、外国生まれの高度技能労働者を採用したすべてのアメリカ企業で製品再配置率を追跡したところ、きわめて明確なシグナルが浮かび上がった。技能の高い外国人労働者を採用した企業は、イノベーションのペースが高まり、そのイノベーションが市場に与える影響も増大した。

引用:ピーター・ディアマンディス , スティーブン・コトラー (著),2020年『2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ』ニューズピックス

 

言われてみると、Googleのセルゲイ・ブリンもロシア移民ですし、アップルのスティーブ・ジョブズはシリア人の父親とアメリカ人の母親から生まれています。カーン・アカデミーを作ったサルマン・カーンは父親がバングラデシュ出身で母親がインド出身です。

本書によれば、第二次世界大戦の前後に移住したユダヤ系移民の多くが、アメリカの寄与に発展したとあります。アメリカの強さはこんなところにあるかもしれません。

では外国人と働く環境をどう作るか

移民というと、どうしても単純作業をしてもらう人を思い浮かべるかもしれませんが、日本でもインド系の移民などを中心にIT分野での活躍が始まっています。その一方で、高度技術を持った外国人と働くことは、イメージするほど簡単ではないかもしれません。コミュニケーション方法が異なることがあるからです。

日本の経営者やマネージャーには、宗教や習慣の違う人と働くことに慣れていない人もいるでしょう。

しかし、外国人従業員が誇りを持って働いてもらえるような環境づくりのためには、意識改革が必要となります。日本人的な以心伝心や「一緒に一生懸命頑張ろう」といった学校のノリが通用しないためです。

いわゆる「ジョブ・ディスクリプション」による仕事範囲の明確化や、「グローバルなマナー」も必要になってきます。「不公平感」をもたずにどうやってやる気になってもらうか、全く別のマネジメント方法が必要になっていくでしょう。

グローバル化の波に乗りたいかどうかは別にして、少なくともIT業界において、多国籍に目を向けるのが、ひとつの勝利戦略となるのは間違いありません。DXを推し進めながら、まずDXを推し進めるための社内改革も、同時に進めることを忘れないようにしてください。

 

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