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さくらインターネットは、2020年4月より「リモートワークを前提とした新しい働き方」にシフトしました。その結果、オフィスに出社する従業員は大幅に減少しています。
多くの従業員がリモートワークを続けるなか、当社ではオフィスを業務の場からコミュニケーションやイノベーションを生む場へと再構築を進めており、その一環として東京支社の3.5フロアを2フロアに縮小いたしました。
そこで今回は、リモートワーク前提への転換・オフィス再構築に取り組む、総務および人事担当者の声をお届けします。苦労したこと、それぞれの取り組みの結果起こった変化などについて語ってもらいました。
左上:ユウ 昌日(ゆう ちゃんいる)
総務部 情報システムグループ。東京支社オフィス縮小を担当。
右上:小泉 行生(こいずみ ゆきお)
総務部 情報システムグループ。リモートワークに関する対応や配信ブースの設置などを担当。
右下:弓場 淳代(ゆば あつよ)
ES本部 人事・人材支援担当。新卒採用イベントの運営や面接を担当。
左下:小川 貴良(おがわ たかよし)
ES本部 人事・労務担当。コロナ禍では安全衛生についても担当。
新しい設計が必要だった
ーー「オフィス再構築」「リモートワーク前提への転換」は、コロナウイルスの感染拡大がひとつのきっかけになっていると思いますが、管理系の部門として、大変だったことはありますか?
ユウ 昌日(以下、ユウ):昨年の緊急事態宣言にともなってほとんどの従業員がリモートワークになり、新しい設計が必要だったので大変でした。僕だけでなく、人事担当の方もそうだったと思います。
リモートワークへの転換に関しては、当社ではもともと業務やルール自体はリモートワーク可能な環境を整備してあったので、実はリモートワークそのものへの対応自体は大変だった印象はないですね。
一方で、コロナウイルス感染拡大防止という観点で、出社や来訪、イベント開催などをどこまで抑制するのかというルールや陽性者発生時の消毒対応などは、新たに設計する必要があり、大変でした。2度目の緊急事態宣言のときは、すでに「リモートワーク前提」となっていたので、さほど混乱はなかったと思います。
小泉 行生(以下、小泉):1回目の緊急事態宣言のときは、リモートワークを長期間行うのは初めての従業員がとても多かったので、普段とは違う質問が社内から多くあがりました。なんとかリモートワークをしたいので助けてほしいというお問い合わせですね。
2回目の緊急事態宣言では、みなさん1回目の教訓を生かしていて、リモートワークはできているけど、ちょっと不便だからなんとかしてほしい、今の状態よりももうちょっとリモートワークしやすくしたい、というような質問があがってきています。ただ、1回目のときのように問い合わせの対応に忙殺されているという感じではないですね。
弓場 淳代(以下、弓場):私は、新卒採用や新入従業員の受け入れを担当しているのですが、1回目の緊急事態宣言が発令される前から、イベントの開催可否などは影響を受けました。
2020年卒の方の入社準備と、2021年卒の採用活動が並行していたのですが、緊急事態宣言の前に、大人数を集めて開催するイベントや面接などをすべてオンライン化することを決めました。これまで対面で開催していたイベントをオンライン化する準備がとても大変でした。緊急事態宣言が発令されたときにはすでに方向性が決まっていたので、むしろ発令前のほうが大変でしたね。
ただ、例年に比べて、地方の学生が説明会に参加してくれる割合は増えたんです。学生さんにとっては、説明会や面接で移動するための時間や金銭的な負担が軽減できたのが良かったのかもしれません。また、今後の働き方を考えると比較的スムーズにリモートワークに移行できた企業が多いIT業界への注目が高かったのかもしれません。応募数も例年の1.5倍ぐらい増えました。これはオンライン化したことによるメリットですね。
ちなみに、今年4月に入社する新卒の関連イベント(面接や入社式など)もすべてオンラインで対応します。
小川 貴良(以下、小川):まず、安全衛生については、決めるべきことがたくさんあったので大変でした。例えば、実際に従業員が新型コロナに感染したときのオペレーションをどうするか、などです。はじめてのことですので、本当に手探りでした。
もうひとつは、労務管理ですね。具体的にはリモートワークへの移行です。次年度に向けた施策は、基本的に出社を前提に準備していました。例えば、毎年年度末におこなっている全従業員が集まる会議も、残念ながら中止になりました。勤怠管理も、出社前提でフローを作っていたので、一から見直しをしました。
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従業員との対話を重視
ーー新しい働き方に向けて、人事では昨年2月からリモートワークの推進に着手し、総務・情報システムでは今年1月で東京支社のオフィス縮小が一段落したところだと思います。これらの対応を進めるにあたって、はじめに設定していた目標や意識していたことはあったのでしょうか?
ユウ:目標は実はそこまで大きくなくて、リモートワークになっても生産性を落とさず、業務に影響が出ないようにするということです。オフィス縮小に関して意識していたところは、オフィスを使う機会は減っているものの、従業員への影響はすごく大きいので、従業員に納得感を得てもらうための対話をすることですね。
当社は緊急事態宣言の前からリモートワーク前提の働き方にシフトして、その後、1度目の緊急事態宣言が発令されて、緊急事態宣言が解除されて現在に至るまで、出社率10%台で推移しています。そういった状況の中で、オフィスどうする?という声が各所からあがったんですね。それでアンケートを実施してみると、従業員のほうから「オフィスいらないんじゃない?」という意見がでたことがスタートだったんです。
そこから、どうやって縮小していくか、逆にどういうものなら必要なのかということを詰めていきました。
小川:労務担当としては、定量的な目標を明言していませんでした。ただ、意識していたのは、いわゆるX理論・Y理論の後者「従業員を信じるY理論=性善説」という前提を継続することです。
「従業員はリモートワーク下でも仕事をする」と、従業員を信じるという前提にたって、勤怠システムなどを見直しました。あと、紙ベースの手続きは電子化やフローの見直しにより、ペーパーレス化を図りました。
新卒の入社希望者は増加
ーー各部門で、「オフィス再構築」「リモートワーク前提への転換」において、具体的にはどのようなことをしていたのか教えてください。
小泉:僕自身の業務については、子どもの都合などで出社できないこともあり、ある程度リモートワークでも対応できる状態にしてあったんです。ただ、チームとしては従業員のPCの設定など物理的な業務をおこなっている部隊なので、そこをどうしていくかずっと考えています。
ユウ:小泉さんは、いま引っ張りだこですよ。以前のような人を集めるイベントがほぼできなくなっているので、オンラインイベントをどう運営していくかについての相談が多いですよね。
小泉:そうですね。オフィス縮小関連の話になるのですが、オンラインイベントや配信などがおこなえるよう、縮小後のオフィスの一部を使って配信ブースやスタジオのようなものをつくりたいという話が出たので、業者側と設置する機材などについての調整をしました。
ユウさんがおっしゃったように、従業員から「イベントの配信をしたい」「こういう収録をしたい」といったニーズがあるので、そういったことが問題なくできるよう努力しています。
弓場:人事のメンバーは「オフィス勤務」か「リモートワーク」という違いだけで、日常の業務はそこまで変わらないですね。
ただ、学生向けの入社説明会や面接などは、オンラインと対面でおこなう場合を比較して、質の良いものができるのかについては気にしていましたね。
さくらインターネットの雰囲気や働くイメージをつかんでもらうために、以前は社内を実際に見てもらったりしていたので、オンラインでどう表現するかは気を使いました。
学生の方からは「コロナ後の働き方はどうなるのか」「従業員同士のコミュニケーションはどうやっているのか」といった、今までにないご質問もあがりました。2021年卒の方々が就活をしていた時期は、こういった状況がここまで長く続くことを想像しにくかったでしょうし、とても大変だったと思います。
今年入社する社員の研修はすべてオンラインでおこなう予定です。コミュニケーションの不安はあると思いますが、新卒入社の方が当社にしっかり定着していただけるような取り組みを計画中です。
安心して働くために
小川:労務として取り組んだのは、リモートワーク前提の働き方の基盤を作ることです。一方で、当社にはデータセンターに勤務する従業員もいます。24時間365日安定稼働するために、緊急事態宣言中も、出社する従業員への配慮も必要でした。
そこで田中さん(さくらインターネット代表)は、このような状況下でも出社せざるを得ない従業員を、労うために手当(※)の支給を決めました。
※2020年4月の緊急事態宣言中、データセンターの保守などリモートでは対応できない業務を担当し、やむをえず出社する従業員に、1日あたり5,000円の緊急出勤手当を支給。
検討から決定までは、非常に早かったです。正直に言うと、結構ギリギリのスケジュールで計算したので、大変ではありました(笑)。ただ、田中さんからも支給する意図を発信してくれたので、従業員にそのメッセージが伝わりましたし、やって良かったと思っています。
ユウ:「リモート前提の働き方」といっても、当社はデータセンター事業をおこなっていますから、人がその場所にいなければならないということはあります。田中さんは、そういったどうしても出社しなければならない方の不安を解消するところまではいかなくても、不利益を被らないようにしたいとおっしゃっていましたね。
ーー出勤手当のほか、通信手当が支給されましたね。こちらも結構スピーディーに決まったように思います。
小川:当社としてはめずらしく、トップダウンで決まりました。物ごとは、基本的に従業員とディスカッションして決めることが多いのです。ただ、このときばかりは緊急性が高かったので、決定後に想いを発信されていたと、記憶しています。
発信というと、従業員の声を聞くために、アンケートも始めました。特殊な状況ですので、従業員が不安を感じてないか、どうしても見えづらくなるためです。それに対し、従業員を監視するような管理をしないとはいえ、今の気持ちや考えを知る必要があるので、実験的に運用してみたアンケートです。それは現在も継続しています。
ーーオフィスにあるディスプレイやイスなどの販売もありましたね。
ユウ:緊急事態宣言のときから、在宅勤務の体制をどのくらい整えられるかというのを不安視される従業員の声をよく耳にしました。なので、緊急的なケアとして既存のディスプレイやイスなどの貸し出しをしたんです。
そのあと、オフィス縮小が決まってからの話になるのですが、やはり「オフィスに行きたい」「自宅の環境が整っていない」という方が結構いたので、オフィスを縮小して利用しなくなる什器が廃棄になるぐらいなら、困っている方々に引き取ってもらえればいいのではないかということで、従業員の方々に買い取っていただけるようにしました。
ただ、会社の資産をそのまま従業員に渡すことはできないので、いったん業者さんに買い取ってもらって所有権を移してから、業者から従業員に販売するという形をとったんです。
少々、ややこしくて大変ではありましたが、結果的に廃棄予定だった総数の3分の2ぐらいは従業員の方々に買い取っていただけましたし、実際の市場価格よりはお手頃に買い取っていただけたのではないかと思います。
オフィス縮小を短期間でやりとげることができた
ーー改めて、いままでお話していただいたできごとや対応を振り返ってみて、良かったこと・悪かったことなどお聞かせください。
ユウ:オフィス縮小は、あまりにもドタバタしていましたね(笑)。決まってから完了までが5か月程度しかなく、スケジュールがタイトでした。ドタバタしすぎて従業員の方々にかなりご迷惑をおかけしてしまったというところが、最大の反省点です。
一方で、そんな短期間でもみなさんのご協力のおかげでやりとげることができたので、本当にさくらは「あったかいなぁ」と感じられました。それは本当に良かった点です。
今のオフィスを利用して10年ぐらい経つのですが、必要かどうかわからない荷物や書類、捨てられないものがどうしてもでてきてしまうんですね。そういったものをどうやって削減するのか、そういった調整がやはりすごく大変でした。
しかもそれをリモートワーク前提の中で短期間でやらないといけませんでしたので、そんな状況の中で、わざわざ出社して荷物の整理などをしてくださった従業員の方々も大変だったと思います。でも、みなさん本当にパワフルに動いてくれて、こんなに短期間で「もうできたの!?」という驚きもありましたね。
弓場:振り返ってみると、本当にただ大変だったなぁとは思うんですが、悪かったという印象はないです。大変な中でも、新しい発見がたくさんあったなという印象のほうが強いですね。「オンラインでこれだけのことができるんだ」と実感できたのは良かった点かなと思います。
例えば、コミュニケーションの取り方についても心配はあったんですけど、リモートで会議をするときに背景でちょっと遊んでみたり、リモートで懇親会をしてみたり……。意外といろいろなことができるという発見がありました。今後はそれをもっとよくするにはどうしたらいいか考えていきたいですね。
より働きやすい環境へ
ーー今後の展望や、具体的な計画などはありますか?
ユウ:東京オフィス縮小は完了したのですが、オフィス再構築はこれですべて終わりということではなく、まだ途上です。
緊急事態宣言下はともかくとして、人が集まることを否定しているわけではないんですよね。オンライン化は進んでいるんですけれど、”人が集まることの価値”は、逆に向上していると考えています。この状況が落ち着いたあとは、また集まりたくなってくるんじゃないかなと思うんですよ。
なので、何のために集まるか、どうやって集めるのかということをよく考えて、”人が集まれる場所”を用意していかないといけないですね。それは、オフィスに限らずです。
アイデアとしてでているのは「カフェ」ですね。従業員に限らず、外部の方も含めみんなが集まれる場所を作ったらどうかという意見がでています。オフィス再構築については、引き続きアンケートをとったりしながら、そのフィードバックを全拠点に展開していけたらいいなと思っています。
小泉:いまは従業員が利用するPCの返却・発送を手作業でやっています。発送の時には担当者が支社に出社して、キッティング・発送するという作業が続いています。
今後は従業員の手元にPCが直送されて、箱を開けたらすぐに業務をはじめることができるような仕組みづくりをしています。これが解決すれば、現在の担当者の手が空いて、新しい業務をやっていただけるようになるかなと思っています。
あと、コロナ禍でリモートワーク前提になり、これまで手作業だったものを簡略化して自動化できるものは増えてきたと感じています。自動化できる業務についてはどんどんすすめていきたいです。
弓場:私も、いまの流れは継続して、今後も引き続きオンラインメインで採用や従業員育成をやっていくことにはなると思います。
でも、コロナが落ち着いたら、実際に集まれるような機会を設定したいですね。あと、新卒で入社される方がしっかりと当社に定着して活躍していけるような後押しをする施策や、いま働いている従業員のみなさんもより働きやすくなるような施策を進めようと考えています。
小川:リモートワーク前提の働き方の基盤作りは進めてきたものの、まだ、横の繋がりをつくることであったり、「対面のほうが良いものは何か」を見直しできていないですね。
例えば、1on1や育成支援といった業務です。今後、リモートでもできるのか、対面のほうが効果があるのかについて検討し、もっといい職場にしていきたいですね。