バレンタインデーのお返しをあげるホワイトデー。日本では浸透していますが、他の国ではあまりみられない文化だそうです。チョコレートをあげて、そのお返しをホワイトデーにもらう。このお互いの絆を確認し合う物々交換はなんなんだ、という違和感がずっと昔からあります。
学生の時は、友達だったり好きな男の子にチョコレートをあげてホワイトデーをワクワク待っていましたが、大人になってからはそんなこともありません。たまたまバレンタインデーの日に会った仕事関係の人に「一応、あの、バレンタインデーなんで、今日……」と小さい声でルマンドを渡すのが精一杯のバレンタインデーです。そんな感じなので、ホワイトデーにお返しをもらうなんてここ数年ありません。
ホワイトデーのあのワクワクをもう一度体験したい。人からお菓子をもらって喜びたい。でも、バレンタインデーに高いチョコを誰かにあげるなんて面倒くさい。 こういう人間の複雑な感情こそ、テクノロジーで解決すべき問題であると考えています。
ということで今回は、「遠隔でホワイトデーのお返しをもらえるマシーン」を作っていきたいと思います。
IoTを使い、遠隔でホワイトデーのお返しをもらえるマシーンを作る
設計図を書きました。sakura.ioを使って、何かしらでクッキーがでてくるマシーンを作ろうと思っております。
賢い読者の皆さま様はお気づきかもしれませんが、この”何かしら”という部分がたいへん重要です。しかし私はその”何かしら”をあまり深く考えていません。なぜなら、すげえ大変そうだからです。なので、とりあえずsakura.ioのほうのセットアップを進めていきます。
前回、前々回と同様に、「Incoming Webhook」を使ってIoTデバイスを作ります。Sakura.ioのコンソールパネルにログインし、sakura.ioのArduinoモジュールの設定とIncoming Webhookの設定を完了させます。そして、サーバーに指定のphpファイルをアップします。これによって、指定のURLにアクセスすると、Arduinoにデータを送信することができるようになるのです。
sakura.ioとArdino
Arduinoとsakura.ioのモジュールをがっしゃんこさせて、サーボモーターを繋げます。
Arduinoにデータを受信したらサーボモーターを動かすプログラムをアップして、完成です。あとは、先ほど放置した”何かしら”の部分を考えるだけなのですが、めんどうなのでNetflixなどを見て日々を過ごしていました。
そろそろ考えないとヤバいなと思ったとき、ふとひらめきました。「ピッチングマシーンを使えばいいんじゃん」と。ひらめくというより、天からのお告げに近いかもしれません。それほど、急に思いついたのです。「ピッチングマシーンでクッキーを飛ばせばいいんじゃん」って。
なので、amazonで安いピッチングマシーンを購入しました。
ピッチングマシーンのスイッチを押す仕組みを作るべく、電池ボックスの部分に少し細工をします。電池ボックスのプラスとマイナスから電線を伸ばし、そこに同じ電圧のACアダプターを繋げます。
「ピッチングマシーン自体を解体してアレコレしたほうがスムーズだろ」と、幻聴が聞こえてきたので一応言っておくと、ネジが特殊で解体しづらくなっていたので、こうしています。ご理解ください。
ACアダプターのプラスと伸ばした電線のプラス部分をサーボモーターが動くことによって接触し、電気が流れる仕組みです。
「サーボモーターじゃなくてリレー使えばいいじゃん」という幻聴が聞こえてきましたが、リレー回路はちょっとめんどうくさかったのでこの仕組みにしました。ご理解ください。
これで、インターネット経由でピッチングマシーンを動かす仕組みが完成しました。
「遠隔でホワイトデーのお返しをもらえるマシーン」完成
できあがりました。こちらが、遠隔でホワイトデーのお返しがもらえるマシーンです。どうだ!
ピッチングマシーンの存在感がすごいですね。
クッキーはどうするかというと、カントリーマアムをクリスマスのオーナメント用の球体に詰め込みます。
ピッチングマシーンにセットしたら、あとは遠隔操作を待つのみです。
さっそく使ってみる
それでは使ってみましょう。
マシーンをセットして、知人たちにメッセージを送ります。
メッセに添付されているリンクを開くと、マシーンが動く仕組みです。
常識的な人は、こんなメッセージに添付されたリンクを開くという行為は、めちゃくちゃ危険だと思うはずですが、はたしてクッキーはもらえるのでしょうか。
クッキーもらえるかな……。
ピーピー……。グオーン。
ピッチングマシーンからすごい音が鳴っている……。
……?
私は全く運動をせずに人生を過ごしてきたのですが、そうか、ピッチングマシーンってこんなに威力が強いんだ。お菓子を入れている球体が天井にぶつかり、砕け、中に入ったカントリーマアムが縦横無尽に飛ばされていきます。
恐怖。久しぶりに、恐怖を感じました。私の中に潜んでいた防衛本能が「頭を守れ」と指令してきます。
その後も数分おきにピッチングマシーンが動かされ、
どうにか拾い上げたカントリーマアムも、ピッチングマシーンの威力によってボロボロに砕けていました。悲しい。私はただホワイトデーのワクワクを感じたいだけなのに……。
せっかく手にしたカントリーマアムを食べているときも、ピッチングマシーンは鳴り止みません。おい、みんな、怪しいリンクを踏むなよ。
おわりに
この仕打ちは一体なんなのでしょうか。「お菓子を望むな」という神からの警鐘でしょうか。 ワクワクしたかったホワイトデーが恐怖の一色に変わり、トラウマになってしまいました。そして、ピッチングマシーンの強さを学ばせていただきました。ピッチングマシーンは強い。これだけは死ぬまで覚えておきます。
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執筆
藤原麻里菜
1993年生まれ。コンテンツクリエイター、文筆家。頭の中に浮かんだ不必要な物を何とか作り上げる「無駄づくり」を主な活動とし、YouTubeを中心にコンテンツを広げている。2013年からYouTubeチャンネル「無駄づくり」を開始。現在に至るまで200個以上の不必要なものを作る。2016年、Google社主催の「YouTubeNextUp」に入賞。2018年、国外での初個展「無用發明展- 無中生有的沒有用部屋in台北」を開催。25000人以上の来場者を記録した。
Instagram : https://www.instagram.com/mudazukuri/
※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。
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